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154 彼の平穏な日常
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あの事件から早数か月、このリッターホルムにはいくつか事件の置き土産がある…
リッターホルムの北の山。そこはエスターの編纂した山岳図によってすでに未開の山ではなくなっている。
地形はもとより、ボーイたちが拾い集めた様々な物体…珍しいキノコや形の良い枝、光る砂利とかすごく固い石…何集めてたんだろう彼ら…、と、ともかくそれらによって、植物の分布や資源の採掘できそうな場所までが全てわかりやすくまとめられ今後のリッターホルム楽園化計画に一役かってくれそうだ。
そしてその山中には今までなかった新しい果実、ブルーベリーによく似た、でもブルーベリーよりもうんと栄養価の高いハスカップがすっかり自生の種として根付いている。
そしてもう一つ、サルナシ。「幻の珍果」と言われるその実がリッターホルムの山では珍しいものではなくなってしまった。
この国に未だ確認されていないキゥイ。その親戚でもあるサルナシはとても甘くそして程よく酸味がありとても美味しい。
これらは流通させずリッターホルムで独り占めすることにしよう…、希少価値って大切だしね。
それだけじゃない。
あのジップラインはその後、果実や収穫物の運搬に今も利用されている。そのうえ興味を持ったボーイたちの密かなアクティビティにもなっている。…モノ好きな…
そのボーイたちの意見に後押しされて、カレッジの裏手の山にも100メートル程度のジップラインと山麓の池の付近に白樺の遊歩道を作らされたけど…。
まぁ、どちらも後年大人気の観光スポットとなっていくわけなのだが…思いがけない観光資源だ。
そしてもう一つ。僕の知らないところで進化していたユーリの毒素…
「自由に出せる?え?い、いつから?いつの間にコントロール出来るようになってたの?もう激怒…とか憤怒…とか要らないの?あっ!あの制御の特訓!僕と特訓したから…、そうか…、僕の協力は無駄じゃなかった…」ジーン…
「アッシュ君…、きみ変なとこで純粋だよね」
「ん?」
「ともかく必要になると思い色々と用意した。ノールの協力を仰いでね。必要無ければそれはそれで良いのだし、いずれにしても無駄にはならないだろう?サーダの状態変化、状態分離、あれらの力は実に有用だね」
「希釈の為の溶剤フランキンセンスは僕が複製したんだよ。それからね、調合にはナッツも手を貸してくれたんだ。」
「ナッツが?ああ、計量か…」
「あれからさらに調べたんだけどね、希釈と加えるハーブの配合具合で解毒の強さや効き目が変わるみたいなんだ。ごくごく薄いものはちょっとした雑菌に。濃いものは命に関わる強い生物毒に。ロビンに使ったようなね」
そんなところまですでに実験は進んでいるのか…すごいな。さすが学習に熱心なノールさんだ…。
ってことは研究が進めば内服薬も出来たりするのかな?それじゃあ万能薬だ。ユーリスゴイや。ん?あれ?万能、ばんの…う…
末子のスキル…、それは〝妙薬生成”
ユーリは末子に近づいている!呪いがあろうが無かろうが、一歩一歩、自分の力で…。
感動に震える僕に、それこそ感動に震えた声がかけられる。声の主はもちろんユーリだ。
「私こそ正直とても驚いたよ。あのヨルガオ、あれは何がどうなって…、まさか!」
「いい読みだねユーリ。その通り。あれはアレクシさんの転移だよ。声を転移してもらったの。送ると受け取るっていう概念さえあれば形の有無は関係ないかと思って。ヨルガオはその媒体。言うなればこれは〝転送”。アレクシさんのスキルは進化したんだ!」
「アレクシ…きみすごいよ。あんな非常時に進化だなんて…、本当に凄い」
「ノールさん、アレクシさんの進化はロビンの為だよ。ロビンを助けるために、それからノールさんを悲しませないために、大切な友人の為だからアレクシさんは必死になったんだ。」
「そ、そう…。アレクシ、君が居てくれて良かった…。その、紫のハンカチ…あれを見て安心したんだ…本当に…」
「…大して役には立たなかったさ…それよりロビンが間に合って良かったよ…」
向かい合った二人からはなんだか暖かい空気を感じる。友情っていいな。それを横目に僕は今回の収穫を噛みしめた。
山の地図、珍しい果実。観光資源。それから万能の薬に電話とファックス。
災い転じて福となすとはこのことだ。
それにしても電話を手に入れたのは大きい。例え一方向性とは言え…
「とりあえずいつまでもヨルガオって訳にはいかないな。ユーリ、何かイイ感じの受信器考えてよ」
「ではこのヨルガオをかたどったネックレスを作らせよう。送る、受け取るの概念が大切なら媒体は小さくても良いんだろう?ふふ、君と私、二人揃い、」
「いいねそれ。ネックレスは魔除けでもあるし。そうか…じゃぁみんなお揃いで持とうよ!チームのシンボルだ!」
「………」
「あ、あー、アッシュ君、君とユーリウス様は銀で…、僕達は銅とか鉄とか、木彫りでも良いよ。ねぇアレクシ」
「あ、ああ。ユーリウス様と君のは白金…、いやミスリルでどうだろう。私たちは…カッパーかブロンズで作る。それでどうでしょうかユーリウス様…」
「…まあいい。それで進めてくれ」
やった!チームグッズが出来た!
そんなある日の事だった。
初秋とはいえまだまだ汗ばむ陽気の中、フォレストから戻った僕を待っていたのは意外な人物。
「ただいま~!」
「…おかえりアッシュ…」
「なに?どうしたのユーリ、酷い顔…」
「帰ったかアッシュ。王太子を待たせるとはお前何様のつもりだ!」
「ケネスの飼い主アッシュ様だよ。なんだ王子、来てたの」
そこにいたのは王太子ケネス。
苦手なノールさんのいるリッターホルムに用もないのによく来たな。
「なにしに来たのさ」
「なにってもうじきコイツの誕生日だろうが。祝いに来てやったぞ。」
「不要だ…、特にあなたからの祝いは」
「それだけとは思えないなぁ…本当は?」
「今王都で話題になっているジップラインを見たくてな」
「やっぱり。にしても、ふぅん話題なんだ…」
「お付きたちには秘密裏に私も試させてくれ。乗りたくてしょうがないのだ」
にじり寄りコッソリ耳打ちしたのはどうでもいいお願い…。
呆れたな…。遊びに来たのか…。ヤル気あんのかコイツ。…けど…兄弟仲が悪いよりは良いよね?チラ…
「アッシュ、何を考えたか言わなくても分かった。私と殿下は遠縁だが兄弟ではない。余計な取成しは無用だ。それから殿下…、私のアッシュから離れろ!馴れ馴れしいにも程がある!」
「ユーリウス、お前も大概しつこいな。そんなに心が狭くちゃ嫌われるぞ。」
「器ごと小さい王子が何言ってんの!ほら、ユーリの肩に腕まわさないの!」ユーリが限界まで顔しかめてんじゃん」
「いいからジップラインに連れて行け。一国の王太子が話題の遊戯を知らぬとは恥であろうが」
そんな恥聞いたこと無い…。まぁでも大した事でもないしいっか。でもただでって訳には…そうだ!
「ユーリ、ほらあれ。」
「あれ?」
「地下の罪人だよ。制約必要だって言ったじゃん。」
「ああ」
王子、ナイスタイミングである。
リッターホルムの北の山。そこはエスターの編纂した山岳図によってすでに未開の山ではなくなっている。
地形はもとより、ボーイたちが拾い集めた様々な物体…珍しいキノコや形の良い枝、光る砂利とかすごく固い石…何集めてたんだろう彼ら…、と、ともかくそれらによって、植物の分布や資源の採掘できそうな場所までが全てわかりやすくまとめられ今後のリッターホルム楽園化計画に一役かってくれそうだ。
そしてその山中には今までなかった新しい果実、ブルーベリーによく似た、でもブルーベリーよりもうんと栄養価の高いハスカップがすっかり自生の種として根付いている。
そしてもう一つ、サルナシ。「幻の珍果」と言われるその実がリッターホルムの山では珍しいものではなくなってしまった。
この国に未だ確認されていないキゥイ。その親戚でもあるサルナシはとても甘くそして程よく酸味がありとても美味しい。
これらは流通させずリッターホルムで独り占めすることにしよう…、希少価値って大切だしね。
それだけじゃない。
あのジップラインはその後、果実や収穫物の運搬に今も利用されている。そのうえ興味を持ったボーイたちの密かなアクティビティにもなっている。…モノ好きな…
そのボーイたちの意見に後押しされて、カレッジの裏手の山にも100メートル程度のジップラインと山麓の池の付近に白樺の遊歩道を作らされたけど…。
まぁ、どちらも後年大人気の観光スポットとなっていくわけなのだが…思いがけない観光資源だ。
そしてもう一つ。僕の知らないところで進化していたユーリの毒素…
「自由に出せる?え?い、いつから?いつの間にコントロール出来るようになってたの?もう激怒…とか憤怒…とか要らないの?あっ!あの制御の特訓!僕と特訓したから…、そうか…、僕の協力は無駄じゃなかった…」ジーン…
「アッシュ君…、きみ変なとこで純粋だよね」
「ん?」
「ともかく必要になると思い色々と用意した。ノールの協力を仰いでね。必要無ければそれはそれで良いのだし、いずれにしても無駄にはならないだろう?サーダの状態変化、状態分離、あれらの力は実に有用だね」
「希釈の為の溶剤フランキンセンスは僕が複製したんだよ。それからね、調合にはナッツも手を貸してくれたんだ。」
「ナッツが?ああ、計量か…」
「あれからさらに調べたんだけどね、希釈と加えるハーブの配合具合で解毒の強さや効き目が変わるみたいなんだ。ごくごく薄いものはちょっとした雑菌に。濃いものは命に関わる強い生物毒に。ロビンに使ったようなね」
そんなところまですでに実験は進んでいるのか…すごいな。さすが学習に熱心なノールさんだ…。
ってことは研究が進めば内服薬も出来たりするのかな?それじゃあ万能薬だ。ユーリスゴイや。ん?あれ?万能、ばんの…う…
末子のスキル…、それは〝妙薬生成”
ユーリは末子に近づいている!呪いがあろうが無かろうが、一歩一歩、自分の力で…。
感動に震える僕に、それこそ感動に震えた声がかけられる。声の主はもちろんユーリだ。
「私こそ正直とても驚いたよ。あのヨルガオ、あれは何がどうなって…、まさか!」
「いい読みだねユーリ。その通り。あれはアレクシさんの転移だよ。声を転移してもらったの。送ると受け取るっていう概念さえあれば形の有無は関係ないかと思って。ヨルガオはその媒体。言うなればこれは〝転送”。アレクシさんのスキルは進化したんだ!」
「アレクシ…きみすごいよ。あんな非常時に進化だなんて…、本当に凄い」
「ノールさん、アレクシさんの進化はロビンの為だよ。ロビンを助けるために、それからノールさんを悲しませないために、大切な友人の為だからアレクシさんは必死になったんだ。」
「そ、そう…。アレクシ、君が居てくれて良かった…。その、紫のハンカチ…あれを見て安心したんだ…本当に…」
「…大して役には立たなかったさ…それよりロビンが間に合って良かったよ…」
向かい合った二人からはなんだか暖かい空気を感じる。友情っていいな。それを横目に僕は今回の収穫を噛みしめた。
山の地図、珍しい果実。観光資源。それから万能の薬に電話とファックス。
災い転じて福となすとはこのことだ。
それにしても電話を手に入れたのは大きい。例え一方向性とは言え…
「とりあえずいつまでもヨルガオって訳にはいかないな。ユーリ、何かイイ感じの受信器考えてよ」
「ではこのヨルガオをかたどったネックレスを作らせよう。送る、受け取るの概念が大切なら媒体は小さくても良いんだろう?ふふ、君と私、二人揃い、」
「いいねそれ。ネックレスは魔除けでもあるし。そうか…じゃぁみんなお揃いで持とうよ!チームのシンボルだ!」
「………」
「あ、あー、アッシュ君、君とユーリウス様は銀で…、僕達は銅とか鉄とか、木彫りでも良いよ。ねぇアレクシ」
「あ、ああ。ユーリウス様と君のは白金…、いやミスリルでどうだろう。私たちは…カッパーかブロンズで作る。それでどうでしょうかユーリウス様…」
「…まあいい。それで進めてくれ」
やった!チームグッズが出来た!
そんなある日の事だった。
初秋とはいえまだまだ汗ばむ陽気の中、フォレストから戻った僕を待っていたのは意外な人物。
「ただいま~!」
「…おかえりアッシュ…」
「なに?どうしたのユーリ、酷い顔…」
「帰ったかアッシュ。王太子を待たせるとはお前何様のつもりだ!」
「ケネスの飼い主アッシュ様だよ。なんだ王子、来てたの」
そこにいたのは王太子ケネス。
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「なにしに来たのさ」
「なにってもうじきコイツの誕生日だろうが。祝いに来てやったぞ。」
「不要だ…、特にあなたからの祝いは」
「それだけとは思えないなぁ…本当は?」
「今王都で話題になっているジップラインを見たくてな」
「やっぱり。にしても、ふぅん話題なんだ…」
「お付きたちには秘密裏に私も試させてくれ。乗りたくてしょうがないのだ」
にじり寄りコッソリ耳打ちしたのはどうでもいいお願い…。
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「アッシュ、何を考えたか言わなくても分かった。私と殿下は遠縁だが兄弟ではない。余計な取成しは無用だ。それから殿下…、私のアッシュから離れろ!馴れ馴れしいにも程がある!」
「ユーリウス、お前も大概しつこいな。そんなに心が狭くちゃ嫌われるぞ。」
「器ごと小さい王子が何言ってんの!ほら、ユーリの肩に腕まわさないの!」ユーリが限界まで顔しかめてんじゃん」
「いいからジップラインに連れて行け。一国の王太子が話題の遊戯を知らぬとは恥であろうが」
そんな恥聞いたこと無い…。まぁでも大した事でもないしいっか。でもただでって訳には…そうだ!
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