チートな転生農家の息子は悪の公爵を溺愛する

kozzy

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167 彼と彼の仲間達

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「てな訳で教授が春になったら来るんだけど色々迷惑かけてるから手土産の一つでも…と、思ってね」
「それで王宮の宝物庫を漁ったのかい?すごいな」

「ちゃんと王子の許可ありきだよ。大公にも言ってあるし。事後報告で」
「事後…まぁいいさ。それで何を持って来たって?父は高価な宝飾なんか喜ばないと思うけど?」

「そこはバッチリ。宝物庫の奥に怪しげな封印が施してある箱を見つけたからそれ持って来た。封印ってことはあれでしょ」

「呪物かそれに準じるものってことだね。しかし…王宮の宝物庫の管理は少し杜撰じゃないかい?呪物をその程度の封印で調度品と一緒に押し込めるとは…度し難いな。」

「あ…えと…、ほら、僕があれであれして王宮半壊したでしょ?そん時ぐちゃぐちゃになってそのままだったって…。その後も王様の退位とか色々あってなんやかんや、ゴホン、と、ところでそんなことよりエスターにも、はいお土産。『王家の紋所』っていうすっごい長い散文だよ。場所とるから持ってって良いって王子が…」

「じゃぁ遠慮なく。読み応えがありそうだ。ゆっくり楽しむよ。で父は元気だったかい?」

「そりゃもう。しっかし賢者を素材って…、賢者ってそんなに特別なの?」


スキーの一件で若干風邪気味な僕はここのところ毎日書庫でぬくぬく過ごしてる。
ささくれた心を癒すにはここが一番だ。落ち着く…

そんな訳でエスターと王都の報告やら、どうでもいい話をだらだらしながら暇をつぶしていたんだけど…


「賢者はその時代に一人しか現れないんだ。万物の神に最も近しいもの、それが賢者だ。アッシュ、きみ聖王の前で叫んだのがミーミルで幸いだったよ。彼は神と名はついてるが知識の番人と言ったほうが良い立ち位置だからね。じゃなきゃ今ごろ賢者だなんだと祭り上げられてたさ」

「祭り上げられ…ゾッとするな。僕は自分で偉そうにするのは好きだけど周りにそうやって騒がれるのは好きじゃないんだ。」


僕のことを、僕の行動や僕の考えを僕以外の誰かが知ったかぶって仕切るのは我慢できない。それは僕最大の地雷源!
とっさにミーミルを名乗った僕ってばとってもファインプレー!


「しかしミーミルか。君知ってるかい?この国の伝承ではミーミルの守る知恵の泉のほとりには大きなトネリコの樹があってね、そのトネリコの根は悪い蛇に齧られているそうだ。ああそういえば…、トネリコの周りには4頭の牡鹿が住んで居てね、困った事にその牡鹿はトネリコの葉を餌にするんだよ。代わりにその角から噴き出す甘い汁で知恵の泉を満たすんだとさ。」


君知ってるかい…知ってるかい…知って…、もちろん知っているとも。

あのWEB小説には変えてはいけないルールがいくつかある。その一つが異世界とは言え中世ファンタジーベースの世界観を壊さない事だ。
あの小説に侍は出てこない。カンフー娘も出てこないし取ってつけたような文明の利器も出てこない。不便だけれどそこが良いところ。例外は唯一水回りだけ…。

だからこそなんだかんだ言いながら、中世ファンタジーヲタク〝名前を言ってはいけないあの人”の投稿は、世界観の設定に関しては一番多く取り上げられた。

その彼の好きな2大ファンタジー、それが指輪と魔法少年の物語。そしてその設定の元ネタは数々の神話な訳で…投稿の元ネタの元ネタとして生かされていても全然おかしくはない。

しかしそこに気付くとは…。さすがエスター。洞察力がすごいな…。



「言い得て妙じゃないか。悪い蛇はを痛めつけ、4頭の牡鹿はに生かされ知恵の泉に還元する。…アッシュ、あの石板は一体どこから来たんだろうね」

「エスター…、石板がどこから来たかなんてもうどうでもいいことなんだよ。フラグは立ってしまったんだから。でもそうだね、あの石板を作った人は…人達は、この世界が大好きで、とても大切で、この世界が滅びる事なんか少しも望んでないってことだけは確かだね。」

「そうかい…」


それを聞いたエスターはそうとは分からないくらい少し、ほんの少しだけ嬉しそうに目を細めた。







「ノール、例の件は殿下に?」

「はい。王城ではどこで誰が聞き耳をたたているかわからないですし…。ここへ戻る馬車の中、二人きりの間によく言っておきました。呪い…魔女が関わる事に関しては殿下も真剣に耳を傾けて下さいます。しっかり頷いて下さいましたよ。アッシュ君の事に関しては微塵も漏らしてはいけないのだと…。何しろ大切な妹姫が当事者ですし…、アッシュ君になにかあればシグリット姫殿下が助からなくなってしまいますしね…」


最近のユーリウス様は学ぶ科目も少なくなり、いままで学習に充てていた時間は何かと書類仕事を頼まれることが多くなった。
アレクシが家令となり不在が増え、カイとダリはまだまだ子供。僕は事実上秘書のような立場になってしまっている。

そのうえユーリウス様はカレッジの開校にあたり、週の何日かはあちらに行っても良いが引き続きこちらを中心で頼むとまで仰ってくださって…何だろう…、こうして必要とされることがとても嬉しい…。

そして今日も手元の書類を片付けながらユーリウス様が危惧される例の件を話し合っている。


「そうか、そうだな。だが殿下に関してはどうも迂闊に思えて…」

「ふふ、馬車の中で面白い話を聞きましたよ。」
「面白い話だと?」


「その昔王宮の夜会にペルクリット伯…マテアスと夫人であるアデリーナがやってきたんですって。二人から挨拶を受け、あのアデリーナがそれはもう妖艶に微笑んだと言うのに殿下は嫌な気がしたって…」

「あの女好きな殿下がか⁉」

「それだけじゃないんです。それからいくらか時間がたって何の気なしに窓から外を眺めていた時、その窓には殿下の背中に視線を送るアデリーナが映っていたと…」

「殿下を篭絡でもするつもりだったか」

「どうでしょう…、ですがその…殿下は「窓に移った冷たいその顔からは何の感情も感じられなかった、笑みを浮かべた顔までが作り物のようで血の気が引いた」と…」

「本能がアデリーナを警戒しているのか…。では安心だ。あの女に誑かされる心配は無用なようだ」
「ええ。」




「時にノール、ヘンリックから随分気弱な手紙が来たが?」

「えっ? 何を、あの…いえ、そ…、何でもありません…」


殿下の話に一息ついたその時、ユーリウス様の口から今一番僕を悩ませる、その問題についての言葉が投げかけられた…。
気弱な手紙…?参ったな…ヘンリックは一体ユーリウス様に何を書いて寄こしたんだろう…?


「アッシュがよく言うのだ。ヘンリック、彼はまるで太陽の貴公子だと。彼が太陽神ならば多少の事で下を向くことは無い。しっかり受け止め思うがままの返事をすればいい。それが例えどういった返事でも」


ユーリウス様のその言葉を聞きながら、だけど今の僕には何の答えも見いだせなかった…






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