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152 彼は対抗する
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「とにかくアデリーナのやり口は分かった。王都に居るリッターホルムの関係者は…子爵と…ブッケ教授か。」
ノールさんがロビンを連れて兄弟仲良く領都へ向かったあと、ユーリの執務室には僕とアレクシさん、そしてヴェストさんが居た。
今後の対策を考えなくては。かといって出来ることは少ないのだが…厄介なことに、ドカッと仕掛けてこないからこちらも動けないと言う…。面倒くさい話だ。
魔女の計略、それは誰にも分からないほど少しずつ、いつの間にか狙った相手の足下にまるで蟻の巣のように張り巡らされていく…。
今回の事だって結局アデリーナの関与は立証されない。御者の娘は何も知らずに侍女見習いとして子爵家にいるしロビンの言葉に彼女を指し示す確かなものは何一つ無い。あるのは荒唐無稽な御者の与太話だけだ…。
ああ…回りくどいことこの上ない。
それに対してユーリは、「不死の魔女なら時間の観念が普通の人間とは違うんだろう。常人の5年など魔女にとっては5分に等しい」そう言った。
いわれてみればその通りだ…、彼女はけして焦らない。時間なら腐るほどあるんだ。
悠久の時を生き続けるアデリーナ。
それはどんな気持ちなのだろう…?寂しい?悲しい?それとも…
誰とどんな風に心を通わせても必ず独り残される。それだけは決して覆らない。
失うのを恐れてアレクシさんに壁を作ったユーリ、それなら2000年生きた魔女だって誰にも心は許さないだろう、きっと夫や息子にでさえ…。
「身辺に気をつけるようお二方にはすでに手紙を出しておきました。その、大公閣下にもユーリウス様から送られてはいかがでしょう」
アレクシさんの言葉でハッとする。いけない集中しないと。
「大叔父上は王城に入られたゆえ火急の心配はないだろう。だがそうだな…」
「大公領には私の両親が居ます」
「そうだよっ!…大公領…」
「…関所周りの警戒を厳重にするよう大叔父上には伝えておこう」
このリッターホルムはユーリの指示によって見張りを増やした関所の他、あの地下道の出入り口も、神殿跡と公爵家倉庫を除きすべて二重にも三重にも頑丈に施錠されていた。
リッターホルムの地を踏ませるつもりは毛頭ないけど、ユーリの手際に安心したのは事実だ。
大公領にも同じくらいの警戒をしてもらう必要がある。大公なら抜かりは無いだろうけど。
「後はマァの村か。お義父様にも一筆送ろう」
「ユーリ、送るならタピオ兄さんだ。父さんはダメだよ危機感皆無だから。いいよ、僕が送っとく」
マァの村、幸いにしてあそこには物理的に外界を隔てる高い囲いがある。出入り口には門番も居る。見知らぬ人物の動きに一番目ざとい場所、それがマァの村だ。だからそれほど心配はしてないんだけど…
一応タピオ兄さんに言っておこう。何かあれば言えって言った。兄さんに言っておけばきっと大丈夫だ。
「でも前向きに考えようよ。今回の件は警戒レベルを上げる必要性を分からせてくれた。向こうはロビンが助かって当てが外れただろうけどね。とにかくアデリーナは多分正攻法ではこない。」
「常に搦め手で来るわけか…。厄介なことだ」
「だからって今まで見たいにこそこそ暮らすのはごめんだよ。せっかく準王族の威光も取り戻したのに。ってことは、リッターホルムはこれから人の出入りがもっと多くなる。今まで以上に関所には厳戒態勢をしいてもらおう。最悪でもこのリッターホルムだけはなんとしても死守するんだ。ここなら安心ってみんなに思ってもらいたい」
ここは言うなればセーブポイント、ゲームオーバーもジ・エンドも終幕も、何も気にせず羽を休める場所は絶対必要だ。
人のストレス耐性には限界ってものがあるんだよっ!
「みんなとはどこまでを指すんだろうか?」
「ユーリも仲間も、領民も、ここを頼ってやって来る人も含めてみんなだよ」
「では地下の余った空間を使い有事に備え食料などを揃えましょう。アッシュ様、必要な麦と芋、塩砂糖をご用意下さい。」
…それって荘園とは別で僕にスキルで作れって事か…。人使いが荒いな…さすがヴェストさん…。
「気持ちは分かるが頑張ってくれアッシュ君。備蓄を溜めていることは外に知られないほうがいいだろう?私も生活の常備品など少しずつ揃えるとしよう。ヴェスト、あとで必要なものをリストにしてくれないか」
「かしこまりました」
「そうだ。ユーリウス様、一族の系譜である貴族家の方々に使用人の紹介状を確認するよう一筆送っておきましょう」
「そうだ…。よく気が付いてくれたアレクシ。早急に頼む」
おおっ!アレクシさんが進化している。大きな出来事は人を成長させると言うけど…彼は二皮も三皮も向けたようだ。
「…地下のあの悪党ども。あれらを時期を見計らって王都へ戻してはどうだろう。もちろん殿下の制約、場合によっては元聖王の洗脳を施して。」
「どういうことユーリ?」
「奴らが王都へ戻れば少なくともマテアスは接触する。ならばこちらに都合よく語らせればいい。搦め手には搦め手をだ。」
にやりと笑ったユーリの顔が、一瞬、ほんの少しだけ毒公爵に見えて…あああっ!僕の心臓ワシ掴み‼
「ご、ごちそうさまユーリ…。けどいいね、そうしよう。タイミングは考えなきゃだけどね」
「ああ。最も効果的な場面で使わなくてはね。ところでアッシュ、どうかな?私も二人には負けていないだろう?」
うっ!ウインク直撃!どこでそんな技をっ!
おかしな対抗心はともかくとして、僕の言葉の意味をユーリは理解してくれたようだ。…ごちそうさま、その意味も含めてすべて正確に。
蛇足だが…その夜僕が少しばかりユーリの言いなりになってしまったのは仕方ないよね?
ノールさんがロビンを連れて兄弟仲良く領都へ向かったあと、ユーリの執務室には僕とアレクシさん、そしてヴェストさんが居た。
今後の対策を考えなくては。かといって出来ることは少ないのだが…厄介なことに、ドカッと仕掛けてこないからこちらも動けないと言う…。面倒くさい話だ。
魔女の計略、それは誰にも分からないほど少しずつ、いつの間にか狙った相手の足下にまるで蟻の巣のように張り巡らされていく…。
今回の事だって結局アデリーナの関与は立証されない。御者の娘は何も知らずに侍女見習いとして子爵家にいるしロビンの言葉に彼女を指し示す確かなものは何一つ無い。あるのは荒唐無稽な御者の与太話だけだ…。
ああ…回りくどいことこの上ない。
それに対してユーリは、「不死の魔女なら時間の観念が普通の人間とは違うんだろう。常人の5年など魔女にとっては5分に等しい」そう言った。
いわれてみればその通りだ…、彼女はけして焦らない。時間なら腐るほどあるんだ。
悠久の時を生き続けるアデリーナ。
それはどんな気持ちなのだろう…?寂しい?悲しい?それとも…
誰とどんな風に心を通わせても必ず独り残される。それだけは決して覆らない。
失うのを恐れてアレクシさんに壁を作ったユーリ、それなら2000年生きた魔女だって誰にも心は許さないだろう、きっと夫や息子にでさえ…。
「身辺に気をつけるようお二方にはすでに手紙を出しておきました。その、大公閣下にもユーリウス様から送られてはいかがでしょう」
アレクシさんの言葉でハッとする。いけない集中しないと。
「大叔父上は王城に入られたゆえ火急の心配はないだろう。だがそうだな…」
「大公領には私の両親が居ます」
「そうだよっ!…大公領…」
「…関所周りの警戒を厳重にするよう大叔父上には伝えておこう」
このリッターホルムはユーリの指示によって見張りを増やした関所の他、あの地下道の出入り口も、神殿跡と公爵家倉庫を除きすべて二重にも三重にも頑丈に施錠されていた。
リッターホルムの地を踏ませるつもりは毛頭ないけど、ユーリの手際に安心したのは事実だ。
大公領にも同じくらいの警戒をしてもらう必要がある。大公なら抜かりは無いだろうけど。
「後はマァの村か。お義父様にも一筆送ろう」
「ユーリ、送るならタピオ兄さんだ。父さんはダメだよ危機感皆無だから。いいよ、僕が送っとく」
マァの村、幸いにしてあそこには物理的に外界を隔てる高い囲いがある。出入り口には門番も居る。見知らぬ人物の動きに一番目ざとい場所、それがマァの村だ。だからそれほど心配はしてないんだけど…
一応タピオ兄さんに言っておこう。何かあれば言えって言った。兄さんに言っておけばきっと大丈夫だ。
「でも前向きに考えようよ。今回の件は警戒レベルを上げる必要性を分からせてくれた。向こうはロビンが助かって当てが外れただろうけどね。とにかくアデリーナは多分正攻法ではこない。」
「常に搦め手で来るわけか…。厄介なことだ」
「だからって今まで見たいにこそこそ暮らすのはごめんだよ。せっかく準王族の威光も取り戻したのに。ってことは、リッターホルムはこれから人の出入りがもっと多くなる。今まで以上に関所には厳戒態勢をしいてもらおう。最悪でもこのリッターホルムだけはなんとしても死守するんだ。ここなら安心ってみんなに思ってもらいたい」
ここは言うなればセーブポイント、ゲームオーバーもジ・エンドも終幕も、何も気にせず羽を休める場所は絶対必要だ。
人のストレス耐性には限界ってものがあるんだよっ!
「みんなとはどこまでを指すんだろうか?」
「ユーリも仲間も、領民も、ここを頼ってやって来る人も含めてみんなだよ」
「では地下の余った空間を使い有事に備え食料などを揃えましょう。アッシュ様、必要な麦と芋、塩砂糖をご用意下さい。」
…それって荘園とは別で僕にスキルで作れって事か…。人使いが荒いな…さすがヴェストさん…。
「気持ちは分かるが頑張ってくれアッシュ君。備蓄を溜めていることは外に知られないほうがいいだろう?私も生活の常備品など少しずつ揃えるとしよう。ヴェスト、あとで必要なものをリストにしてくれないか」
「かしこまりました」
「そうだ。ユーリウス様、一族の系譜である貴族家の方々に使用人の紹介状を確認するよう一筆送っておきましょう」
「そうだ…。よく気が付いてくれたアレクシ。早急に頼む」
おおっ!アレクシさんが進化している。大きな出来事は人を成長させると言うけど…彼は二皮も三皮も向けたようだ。
「…地下のあの悪党ども。あれらを時期を見計らって王都へ戻してはどうだろう。もちろん殿下の制約、場合によっては元聖王の洗脳を施して。」
「どういうことユーリ?」
「奴らが王都へ戻れば少なくともマテアスは接触する。ならばこちらに都合よく語らせればいい。搦め手には搦め手をだ。」
にやりと笑ったユーリの顔が、一瞬、ほんの少しだけ毒公爵に見えて…あああっ!僕の心臓ワシ掴み‼
「ご、ごちそうさまユーリ…。けどいいね、そうしよう。タイミングは考えなきゃだけどね」
「ああ。最も効果的な場面で使わなくてはね。ところでアッシュ、どうかな?私も二人には負けていないだろう?」
うっ!ウインク直撃!どこでそんな技をっ!
おかしな対抗心はともかくとして、僕の言葉の意味をユーリは理解してくれたようだ。…ごちそうさま、その意味も含めてすべて正確に。
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