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176 真昼の作戦会議
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「どうすればよろしいですか?私は何をすれば…。どれだけ考えても最善が分からないのです…」
おやおや、感情を見せないはずのヴェストが随分困惑してるじやないか。
それ自体がどれほどこの状況が深刻かを物語っているわけだが、だからこそ僕まで狼狽えるわけにはいかないね。
「アデリーナにはこう返事をしたんだ。一か月の猶予が欲しい、僕にだって終活期間は必要だってね。」
「終っ…、やめて!アッシュ君、冗談でもそんなこと言わないで!」
「ごめんごめん、でもアデリーナは僕を生かしてなんかおかないよ。だって僕を宿敵の賢者だと思ってるんだから。そうでしょ?まぁ宿敵には違いないけど。」
「アッシュ、君さらりと言うね…」
「誤解しないでよ。僕は簡単にやられたりしない。不本意な死に方はもうしないって決めてるんだ。」
ほらまただ、こうして彼はまた一つ僕の確信を裏付ける…。
アッシュ…、彼は折につけ、ちょっとした瞬間にこういう言い回しをする。本人もノールも気付いていないようだが…僕は言葉の、文字の専門家だ。
気付いた違和感を無視するなんてことはとてもできないさ。
「だからユーリの説得に協力して。黙っては行けない、それじゃぁ結末は同じだ。ユーリにはなにがなんでも納得してもらわなきゃ…」
「そりゃぁ…、過去最大の難問だ。」
しかし、相変わらずご執心な事だ。
ユーリ君を救うために生まれてきた、か。アッシュ、それは一体どこからだい?
「では私は王都に向けて手紙を出しましょう。大公閣下、ヴェッティ王の身辺に誰か付けなければ。信用の置ける者を」
「誰を?コーネイン侯爵とか?」
「殿下です。」
「王子を⁉」
「殿下には拘束のスキルがあります。瞬時に曲者の動きを止めるのなら剣を振るうよりも早く確実です。それに制約のスキルもある。やりようによってはその曲者の行動を制することも出来る。」
「そ…、そうだよ。殿下は魔女が近づけば悪寒がすると言ったもの…、アッシュ君が近づいてもすぐわかると言っていたし…。殿下は人一倍危機に敏感なのかも!」
そういやケネスってば、ノールさんの気配なら3つ向こうの角からでも分かるっていってたな。
ノールさん、その探知能力を底上げしたのは間違いなくノールさんだよ…言わないけどね…
「すぐ僕も王宮にあてて手紙を書くよ。ヴェッティ王の身辺に気を付けてって」
「ちょと待ったー!ノールさん、アデリーナは手紙を閲覧する手段を持っているかもしれない…、そのまま書いちゃまずいよ、多分…」
「監視網か…。確かにあり得るね。いや当然といって然るべきか」
「あっ…!」
ああもう!よく考えたらわかる事じゃないか。こんな…、こんな初歩的な推理!
だけど今の僕は少し動揺しているのかもしれない…、事はアッシュ君の命に関わる、平常心でなど居られないもの…
それより、どうしてこの二人はこんなに落ち着いていられるの?ヴェストもいつも通り無表情だし…。僕だけ一人で狼狽えて…馬鹿みたいじゃない!
…そうじゃない。この二人はいつだって物の見方が捻くれてる…。だから魔女の行動だって簡単に予測をたてる…。
「献上品としてこのネックレスを送ろう。ヨルガオのネックレス。そうしたら随時様子も聞けるし丁度いい。」
「駄目だよ、それはユーリウス様と対のネックレスじゃないか…。じゃぁ僕のを送ればいい!」
「はぁ~、ノールさん…、カッパーのネックレじゃ献上品にならないよ。」
「まあそうだね。せめてミスリル程度は価値がないとね。」
こ、この二人は…!
だけどエスターはともかくとしてアッシュ君がこれほど世慣れているのはどうしてだろう?彼はここに来るまでマァの村から出た事など無かったはずなのに…。
…実は仮説ならもう立ててある。
異国の骨董を集める父の影響で僕は異国の文化に少し詳しい。
どの国にも存在しない彼だけが持つ知識。ねえアッシュ君、その知識は一体どこから得たのかな?
「それに…僕が持ってて万が一にもアデリーナに奪われる事があったらもっと嫌だ。ユーリには僕から話す。だから…ヴェストさん、これを送って。いい?みんなここから先は何一つ躊躇わないで。ユーリを護ること以外何一つ。」
彼はあの時言ったのだ。適材適所、私の居場所は彼の側だと。そしてその言葉通りに私は私の居場所を得た。
その彼の望みはユーリウス様を救う事。その為に彼は命すら賭けようとしている…。
彼の望みは私の望み。だがアッシュ様を失えば私はまた居場所を失う。
では私のすべきことは、アッシュ様の危険を最小限に抑え、且つユーリウス様の心をお守りする事。…それが最善だ。
「何度でも言うよ。僕に何があろうが躊躇わないで!肝心なのはユーリに人を傷つけさせない事!それこそが最も優先されるべき至上の命題なんだ‼」
「ナッツ、少し良い?」
「アッシュ…、ど~したの~?変な顔して~」
「どうしようかと思ったんだけど…、でもナッツは友達だし、それに頭の回転早いから伝えとこうと思って」
夕食後、厨房に顔を出したのはいつもと様子の違うアッシュ。どうしたのかな?
でもエヘヘ、友達だって。それに頭の回転早いって…。
アッシュはスゴく頭が良いのに、いつもこんなバカな僕のこと、「リアリティーのある頭の良さってナッツみたいなのを言うんだよ」、そう言ってくれるんだ。「シェフに関してはおかしくなるけどね」そうも言うけど仕方ないよね?
そんなアッシュから聞かされたのはとても笑ってごまかせない内容で…
「ホントに行くの?」
「行くよ。行かなきゃ!」
「それ…大丈夫なの…?」
「大丈夫!勝算はある!はず!どこかに!」
「今は無いんじゃん…」
ああやだ。泣きそう。アッシュにもしものことがあったら僕は…
ううん、きっと大丈夫!
エスターもノールも、二人とも言ったんだから。アッシュは普通の人じゃないって。
「アッシュは恐らく異世界からの転生者だ。彼の言葉の節々がそれを裏付けている。じゃなきゃ言葉の整合性がないだろう?」
「アッシュ君には前世の記憶があるみたいなんだ。そしてね、その前世はきっとここより未来の世界だと僕は考えている」
何だか知らないけど食後のデザートを準備する僕の後ろで、入れ替わり立ち代わり…
「石板に書かれた最初の文字、〝人であり人ならざる者”、アッシュが言うよう、その本来の意味が〝異世界から召喚された勇者”なら、鍵になるのは勇者ではなく異世界という部分だ」
「石板の示す〝人であり人ならざる者”、指し示すのが異世界からの召喚者なら、未来からの転生者だって要は同じだと思ったんだ」
僕に話しかけてるようでいて、まるで独り言のように二人しておんなじことを言ったんだ。
「アッシュが異世界人ならすべてうなずけるってものだ。僕の知らない書物の名前や聞き覚えのない奇妙な単語。それが理由なら同じ土俵では戦えないさ、そうだろう?」
「アッシュ君に未来の記憶があるならいろんな事にも納得がいく。そうだよ。彼は頭に答えを持っている。それなら知識で僕が敵わないことにも理由がつく」
よくわからないけど二人は違う何かと戦っていたってこと?
「この件が片付いたらぜひ彼の知る全ての書物を書き出してもらわないとね」
「この件が片付いたらぜひ彼の知る全ての知識を伝授してもらうつもりだよ」
二人ともアッシュが無事に帰ってくるって信じてるんだ。だったら僕も。
僕の親友、アッシュの無事を信じるよ!
おやおや、感情を見せないはずのヴェストが随分困惑してるじやないか。
それ自体がどれほどこの状況が深刻かを物語っているわけだが、だからこそ僕まで狼狽えるわけにはいかないね。
「アデリーナにはこう返事をしたんだ。一か月の猶予が欲しい、僕にだって終活期間は必要だってね。」
「終っ…、やめて!アッシュ君、冗談でもそんなこと言わないで!」
「ごめんごめん、でもアデリーナは僕を生かしてなんかおかないよ。だって僕を宿敵の賢者だと思ってるんだから。そうでしょ?まぁ宿敵には違いないけど。」
「アッシュ、君さらりと言うね…」
「誤解しないでよ。僕は簡単にやられたりしない。不本意な死に方はもうしないって決めてるんだ。」
ほらまただ、こうして彼はまた一つ僕の確信を裏付ける…。
アッシュ…、彼は折につけ、ちょっとした瞬間にこういう言い回しをする。本人もノールも気付いていないようだが…僕は言葉の、文字の専門家だ。
気付いた違和感を無視するなんてことはとてもできないさ。
「だからユーリの説得に協力して。黙っては行けない、それじゃぁ結末は同じだ。ユーリにはなにがなんでも納得してもらわなきゃ…」
「そりゃぁ…、過去最大の難問だ。」
しかし、相変わらずご執心な事だ。
ユーリ君を救うために生まれてきた、か。アッシュ、それは一体どこからだい?
「では私は王都に向けて手紙を出しましょう。大公閣下、ヴェッティ王の身辺に誰か付けなければ。信用の置ける者を」
「誰を?コーネイン侯爵とか?」
「殿下です。」
「王子を⁉」
「殿下には拘束のスキルがあります。瞬時に曲者の動きを止めるのなら剣を振るうよりも早く確実です。それに制約のスキルもある。やりようによってはその曲者の行動を制することも出来る。」
「そ…、そうだよ。殿下は魔女が近づけば悪寒がすると言ったもの…、アッシュ君が近づいてもすぐわかると言っていたし…。殿下は人一倍危機に敏感なのかも!」
そういやケネスってば、ノールさんの気配なら3つ向こうの角からでも分かるっていってたな。
ノールさん、その探知能力を底上げしたのは間違いなくノールさんだよ…言わないけどね…
「すぐ僕も王宮にあてて手紙を書くよ。ヴェッティ王の身辺に気を付けてって」
「ちょと待ったー!ノールさん、アデリーナは手紙を閲覧する手段を持っているかもしれない…、そのまま書いちゃまずいよ、多分…」
「監視網か…。確かにあり得るね。いや当然といって然るべきか」
「あっ…!」
ああもう!よく考えたらわかる事じゃないか。こんな…、こんな初歩的な推理!
だけど今の僕は少し動揺しているのかもしれない…、事はアッシュ君の命に関わる、平常心でなど居られないもの…
それより、どうしてこの二人はこんなに落ち着いていられるの?ヴェストもいつも通り無表情だし…。僕だけ一人で狼狽えて…馬鹿みたいじゃない!
…そうじゃない。この二人はいつだって物の見方が捻くれてる…。だから魔女の行動だって簡単に予測をたてる…。
「献上品としてこのネックレスを送ろう。ヨルガオのネックレス。そうしたら随時様子も聞けるし丁度いい。」
「駄目だよ、それはユーリウス様と対のネックレスじゃないか…。じゃぁ僕のを送ればいい!」
「はぁ~、ノールさん…、カッパーのネックレじゃ献上品にならないよ。」
「まあそうだね。せめてミスリル程度は価値がないとね。」
こ、この二人は…!
だけどエスターはともかくとしてアッシュ君がこれほど世慣れているのはどうしてだろう?彼はここに来るまでマァの村から出た事など無かったはずなのに…。
…実は仮説ならもう立ててある。
異国の骨董を集める父の影響で僕は異国の文化に少し詳しい。
どの国にも存在しない彼だけが持つ知識。ねえアッシュ君、その知識は一体どこから得たのかな?
「それに…僕が持ってて万が一にもアデリーナに奪われる事があったらもっと嫌だ。ユーリには僕から話す。だから…ヴェストさん、これを送って。いい?みんなここから先は何一つ躊躇わないで。ユーリを護ること以外何一つ。」
彼はあの時言ったのだ。適材適所、私の居場所は彼の側だと。そしてその言葉通りに私は私の居場所を得た。
その彼の望みはユーリウス様を救う事。その為に彼は命すら賭けようとしている…。
彼の望みは私の望み。だがアッシュ様を失えば私はまた居場所を失う。
では私のすべきことは、アッシュ様の危険を最小限に抑え、且つユーリウス様の心をお守りする事。…それが最善だ。
「何度でも言うよ。僕に何があろうが躊躇わないで!肝心なのはユーリに人を傷つけさせない事!それこそが最も優先されるべき至上の命題なんだ‼」
「ナッツ、少し良い?」
「アッシュ…、ど~したの~?変な顔して~」
「どうしようかと思ったんだけど…、でもナッツは友達だし、それに頭の回転早いから伝えとこうと思って」
夕食後、厨房に顔を出したのはいつもと様子の違うアッシュ。どうしたのかな?
でもエヘヘ、友達だって。それに頭の回転早いって…。
アッシュはスゴく頭が良いのに、いつもこんなバカな僕のこと、「リアリティーのある頭の良さってナッツみたいなのを言うんだよ」、そう言ってくれるんだ。「シェフに関してはおかしくなるけどね」そうも言うけど仕方ないよね?
そんなアッシュから聞かされたのはとても笑ってごまかせない内容で…
「ホントに行くの?」
「行くよ。行かなきゃ!」
「それ…大丈夫なの…?」
「大丈夫!勝算はある!はず!どこかに!」
「今は無いんじゃん…」
ああやだ。泣きそう。アッシュにもしものことがあったら僕は…
ううん、きっと大丈夫!
エスターもノールも、二人とも言ったんだから。アッシュは普通の人じゃないって。
「アッシュは恐らく異世界からの転生者だ。彼の言葉の節々がそれを裏付けている。じゃなきゃ言葉の整合性がないだろう?」
「アッシュ君には前世の記憶があるみたいなんだ。そしてね、その前世はきっとここより未来の世界だと僕は考えている」
何だか知らないけど食後のデザートを準備する僕の後ろで、入れ替わり立ち代わり…
「石板に書かれた最初の文字、〝人であり人ならざる者”、アッシュが言うよう、その本来の意味が〝異世界から召喚された勇者”なら、鍵になるのは勇者ではなく異世界という部分だ」
「石板の示す〝人であり人ならざる者”、指し示すのが異世界からの召喚者なら、未来からの転生者だって要は同じだと思ったんだ」
僕に話しかけてるようでいて、まるで独り言のように二人しておんなじことを言ったんだ。
「アッシュが異世界人ならすべてうなずけるってものだ。僕の知らない書物の名前や聞き覚えのない奇妙な単語。それが理由なら同じ土俵では戦えないさ、そうだろう?」
「アッシュ君に未来の記憶があるならいろんな事にも納得がいく。そうだよ。彼は頭に答えを持っている。それなら知識で僕が敵わないことにも理由がつく」
よくわからないけど二人は違う何かと戦っていたってこと?
「この件が片付いたらぜひ彼の知る全ての書物を書き出してもらわないとね」
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