チートな転生農家の息子は悪の公爵を溺愛する

kozzy

文字の大きさ
186 / 277
連載

203 彼と鋼の頭脳 ②

しおりを挟む
「クラウス様、一体どうして王城までがこの様な…。王の居室のあるこの城は何より安全な場所なのではないのですか!?」

「そうあるのが本来の姿でしょうね。実は王家の抱える騎士団は高位になればなるほど前王の一言で引き立てられた騎士が多いのです。」
「そうなのですか…」

「もちろん正規の評価を経てその地位へと至った者も居ます。ですが前王はあの通りのお方でしたので…。見目の良い者、巧言の上手い者ほど優遇されておりました。」

実力が伴わないと仰りたいのだろうか?
答えを求めた僕にコーネイン家の護衛騎士、クラウス様は、ため息をつきながら内部事情を教えて下さる。
それによると、前王の名に胡坐をかき鍛錬を怠った怠け者はヴェッティ王の統治下、新たなる組閣の元で降格されたのだと。その遺恨は火種となって彼らの中に燻ぶり続け…

「あろうことか彼らは城の中に居ながら徒党を組んでこの機に乗じたのです。」

そして今まさに前王派と合流し彼らを城に招き入れようとしているのだと…。




剣を交えるクラウス様に守られようやくついた執務室では、皆が顔を突き合わせながら策を論じ合っていた。
そんな中僕に気付いたヘンリックは大股で近づき僕を一喝した。


「ノール!早く北の地へ戻るんだ!君の居場所はユーリウス様のお側だろう!」

「戻らない!君が何と言おうと絶対戻らないよ!アッシュ君だって言ってくれた。雪解けまでまだ時間はあるから大丈夫って…。ユーリウス様の為にもヴェッティ王を失う訳にはいかない。殿下は大切な僕の教え子だ。何より…君に無事で居て欲しい…。だから僕は…、いつも君が助けてくれたように今度は君の助けになろうって、そう決めてここに来たんだ!」

「聞くんだノール!」

「さあヘンリック、状況はどう?前王派はどうなってるの?こうみえて僕はあのアッシュ君に鍛えられてるんだよ。剣は振るえないけど知恵なら少しは貸せると思う。」

「君って人は…。そうだ。君は昔から誰よりも頑固だったね…」



諦めたようにようやく重い口を開くヘンリック。
平等を謳うヴェッティ王に叛意を持つ貴族は僕が思うよりもずっと多い。
中には新興とは言え元老院に籍を置く貴族もいる。その事実が、聖王に至るまでの腐敗した長い年月を物語る…。


「メンドーサ侯は前王派についた。元老院からはもう一家、ルーテンバリ侯も造反した…。実に残念な事だ。だが新興貴族の中で最も影響力のあるコルトバ侯がヴェッティ王についたことは幸いだった。」

「意外だったね。コルトバ侯はてっきり王を煙たく思っているかと…、その…自領の税率を下げられたりとか…あったでしょう?」

「ああ。彼は目先の減収よりもっと大局を見据えていると言うことだろう。だがメンドーサ侯…、彼はリッターホルムの事業から締め出されたことを相当悔しがっていた」


人は利に目が眩むとここまで浅慮になるのか…。都合のいい解釈だけを信じて己の立つ道が破滅の道だと気付かない…。


「オーケソンは聖王の封蝋環をもって、これが前王の意志による聖戦だと嘯いている。王家の封蝋環は王座を意味する大切な神器。あれがあちらにある限り向こうに靡くものが後を絶えない…厄介な事だ」

「封蝋環…、…ヘンリック、機会を見てどうにかそれを僕が目にする場面を作って。考えがある。それにね、寝返るものは寝返らせればいい。アッシュ君ならきっとこう言うよ。「僕はあきらめの悪い男。敵に寝返るような奴、ゴミ掃除が出来たと思えばいい。願ったり叶ったりだ!」ってね」

「ゴミ掃除…、そうだ、きっと彼ならそう言う。はは、ならば徹底的に行わなくては!」







少数と言えど精鋭ぞろいのコーネイン家、そしてファークランツ家の騎士団。
彼らはアッシュ君仕込みの戦術、〝縦深防御” を、たかが若輩の話だと言うのに真剣に聞き入れ城内の守りに取り入れて下さる。その度量こそが彼らの有能さを物語っている。

それでも特権に固執する前王派の数は少なくない。
数の力に押し負け一部の侵入を許すと、彼らは王の身柄を求め奥へと向かう。

一つは前王を求め捕らえられた収監塔へ。そしてもう一つが現王の居る玉座の間。

無用な流血を嫌ったヴェッティ王は逃げも隠れもせず堂々と待っておられるのだ。何という胆力…。
その威厳を供えた現王に対し、不遜にも声を張り上げ己の大義を掲げるオーケソン侯爵。これを見てもなお器の差が理解できないなんて…

アッシュくんが言っていた。「バカはバカでも底なしのバカは無敵なんだよ。めんどくさい」と…。あれはこういう意味か…。


「ヴェッティ大公!其方は王の封蝋環を持たぬ者、正式な王とは認められぬ!まだ整わぬ殿下を誑かし操るとは言語道断!我らは聖王の代理として使命を以て王座を奪還する!」

「私は誑かされてなどおらぬ!お前のその使命とは何を以て証明する!其の方らこそ詭弁であろう!」
「聖王の代理とはずいぶん大口をたたく。王は辺境に籠っておられた。いつどのように代理の任を得たというのだ!証明できるものならして見せよ!」


煽るヘンリックの言葉にオーケソン侯爵は恭しく台座に乗った封蝋環を捧げ持った。


「見るがいい!これこそが王の証、聖王の封蝋環!では聞くがヴェッティ!其方は何を以て王などと謀るか!」

「封蝋環なら私の物がある!」
「殿下!それは王太子の証であって王の証ではございませぬ!なんの証明にもなりませぬぞ!」

「ぐ…」
「差し出せぬならこれより武を以て偽王を制圧する!皆準備は良いか!」

「お待ちください!封蝋環ならばここに!」


殿下の横に並んでいた僕が後ろ手からそっと差し出す物、それは王の封蝋環。二つとあるはずのない封蝋環が現れた事で前王派の動揺が伝わってくる。

「なっ!なんと!封蝋環が二つ!」
「ええい!何を言うか、偽物であろう!」

「若造!戯言をぬかすでないわ!私がそのような事を信じると思うのか!」

「お疑いならば受益をもたぬ他者を呼ぶがいいでしょう。」

「ならば大司教を呼べ。聖神殿の大司教。彼こそ誰よりも公正な者。そして神器に詳しい者。これ以上裁定に相応しいものはおらぬ!拒めばそれこそが偽物だと言うことだ!〝制約”によってそれまで手出しはさせぬ!良いなオーケソン!」

「よ、よし!殿下の申し出に異論はない!」



アデリーナから渡された封蝋環に彼らは絶大な自信を持っていたのだろう。その申し入れは受け入れられ、そして護衛に連れられた大司教様はその二つの封蝋環を見比べるや確信をもって言い放った。


「ヴェッティ王の持つものが真実本物でございます。」
「な!何を言うか!大司教ともあろうものがその目は節穴か!私は此度の乱に入る前、何人もの鑑定家に見せておるのだぞ!その誰もが本物だと断定したのだ!」

「ですが侯爵閣下…、この溝の底にある小さな小さな小傷をご覧ください。」
「何⁉」

「溝の底に隠れ上手く見えませぬが小さな傷が入ってございます。これが真実本物であればこのような傷入ろうはずがございませぬ。封蝋環は聖なる神器。塵ほどの傷もつかぬのです」


大司教の言葉に狼狽えたのは反乱軍の騎士たちだ。気の毒に…。彼らは今この瞬間、大義を失ったのだ…。


「ええい!ここまできて今更引けぬわ!いけ‼ヴェッティを討ち取るのだ!」


「ノール下がれ!」
「ヘンリック、その前にこれを!」


手渡したのはペリドットを埋め込んだ蹄鉄のブローチ。
出会った頃に彼がくれた綺麗な緑の石…。考え込んではすぐにふさぎ込む僕にと彼がくれた勇気の石。これだけはどれほど暮らしに困窮しても手放さなかった友情の証…。


「君のヘリオライトほどじゃないけど…、でも役立てて。」
「勇気が湧くよ。ありがとうノール」




石を媒体にして発されるヘンリックのスキル〝陽光” 
それは直視できない程の激しい光で彼らの視力を一時的に奪い…その瞬間、僕らは勝利の手ごたえを確かに感じた…。







しおりを挟む
感想 392

あなたにおすすめの小説

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

役目を終えた悪役令息は、第二の人生で呪われた冷徹公爵に見初められました

綺沙きさき(きさきさき)
BL
旧題:悪役令息の役目も終わったので第二の人生、歩ませていただきます 〜一年だけの契約結婚のはずがなぜか公爵様に溺愛されています〜 【元・悪役令息の溺愛セカンドライフ物語】 *真面目で紳士的だが少し天然気味のスパダリ系公爵✕元・悪役令息 「ダリル・コッド、君との婚約はこの場をもって破棄する!」 婚約者のアルフレッドの言葉に、ダリルは俯き、震える拳を握りしめた。 (……や、やっと、これで悪役令息の役目から開放される!) 悪役令息、ダリル・コッドは知っている。 この世界が、妹の書いたBL小説の世界だと……――。 ダリルには前世の記憶があり、自分がBL小説『薔薇色の君』に登場する悪役令息だということも理解している。 最初は悪役令息の言動に抵抗があり、穏便に婚約破棄の流れに持っていけないか奮闘していたダリルだが、物語と違った行動をする度に過去に飛ばされやり直しを強いられてしまう。 そのやり直しで弟を巻き込んでしまい彼を死なせてしまったダリルは、心を鬼にして悪役令息の役目をやり通すことを決めた。 そしてついに、婚約者のアルフレッドから婚約破棄を言い渡された……――。 (もうこれからは小説の展開なんか気にしないで自由に生きれるんだ……!) 学園追放&勘当され、晴れて自由の身となったダリルは、高額な給金につられ、呪われていると噂されるハウエル公爵家の使用人として働き始める。 そこで、顔の痣のせいで心を閉ざすハウエル家令息のカイルに気に入られ、さらには父親――ハウエル公爵家現当主であるカーティスと再婚してほしいとせがまれ、一年だけの契約結婚をすることになったのだが……―― 元・悪役令息が第二の人生で公爵様に溺愛されるお話です。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新 プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまいネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください! 表紙や動画はAIを使用していますが、文章にはAIを一切使用しておりません。 名前が  *   ゆるゆ  になりました。 これからもどうぞよろしくお願い致します! 表紙にはAIを使用していますが、文章にはAIを一切使用しておりません。 校正も自力です(笑)

超絶美形な悪役として生まれ変わりました

みるきぃ
BL
転生したのは人気アニメの序盤で消える超絶美形の悪役でした。

なぜ処刑予定の悪役子息の俺が溺愛されている?

詩河とんぼ
BL
 前世では過労死し、バース性があるBLゲームに転生した俺は、なる方が珍しいバットエンド以外は全て処刑されるというの世界の悪役子息・カイラントになっていた。処刑されるのはもちろん嫌だし、知識を付けてそれなりのところで働くか婿入りできたらいいな……と思っていたのだが、攻略対象者で王太子のアルスタから猛アプローチを受ける。……どうしてこうなった?

いらない子の悪役令息はラスボスになる前に消えます

日色
BL
「ぼく、あくやくれいそくだ」弟の誕生と同時に前世を思い出した七海は、悪役令息キルナ=フェルライトに転生していた。闇と水という典型的な悪役属性な上、肝心の魔力はほぼゼロに近い。雑魚キャラで死亡フラグ立ちまくりの中、なぜか第一王子に溺愛され!?

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  ゆるゆ
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが、びっくりして憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! ノィユとヴィルの動画を作ってみました!(笑)  インスタ @yuruyu0   Youtube @BL小説動画 です!  プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったらお話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです! ヴィル×ノィユのお話です。 本編完結しました! 『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編、完結しました! 時々おまけのお話を更新するかもです。 名前が  *   ゆるゆ  になりました。 これからもどうぞよろしくお願い致します! 表紙や動画はAIを使用していますが、文章にはAIを一切使用しておりません。

王家の影一族に転生した僕にはどうやら才能があるらしい。(完結)

薄明 喰
BL
アーバスノイヤー公爵家の次男として生誕した僕、ルナイス・アーバスノイヤーは日本という異世界で生きていた記憶を持って生まれてきた。 アーバスノイヤー公爵家は表向きは代々王家に仕える近衛騎士として名を挙げている一族であるが、実は陰で王家に牙を向ける者達の処分や面倒ごとを片付ける暗躍一族なのだ。 そんな公爵家に生まれた僕も将来は家業を熟さないといけないのだけど…前世でなんの才もなくぼんやりと生きてきた僕には無理ですよ!! え? 僕には暗躍一族としての才能に恵まれている!? ※すべてフィクションであり実在する物、人、言語とは異なることをご了承ください。  色んな国の言葉をMIXさせています。 本作は皆様の暖かな支援のおかげで第13回BL大賞にて学園BL賞を受賞いたしました! 心よりお礼申し上げます。 ただ今、感謝の番外編を少しずつ更新中です。 よければお時間のある時にお楽しみくださいませ

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。