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208 アデリーナの焦り
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計画を全て白紙に戻して急ぎユーリウスを追いかけて来たのはいいが…どうやって王都へ入るか…
手段を選ばなければどうとでもなる。
ビルギッタでなくとも、わたくしに心酔する有力者なら他にも居るのだ。それこそ財を持つ豪商であればどのような手でも使えるだろう…
「義母への手紙はこれで良いわ。後は…、色々と面倒だけど仕方が無いわね…。その頃にはどうせ全て…あら何かしら?」
気乗りのしない手紙を休息のため寄った宿屋でしたためていた、その時だった。女中たちのよもやま話が扉越しに聞こえてきた。
「ちょっとあんた聞いたかい?殿下が王都にやってきたあのリッターホルムの公爵様を捕まえなさって、なんでも北にあるマァの村まで連れて行くんだとさ。」
「へぇ。マァの村にかい?何でまた」
「あそこには高い高い塀があるだろう?なんでも公爵様がリッターホルムの農地を殿下の許しも得ず勝手しちゃったんだってさ。そんなわけで怒った殿下がお仕置きにマァの村に連れてくって話だよ」
「そりゃあ難儀だねぇ。けど殿下が怒ったって…、大した話なんじゃないのかい?」
「そうだろうねぇ。何やったんだろうねぇ?それで?この辺りはいつ通ってくんだい?」
「明日の午後にはここいらを通り抜けるそうだよ。見に行くかい?」
「行くともさ。あの王子様はそりゃあお綺麗だからねぇ…」
マァの村 ‼
何ですって!冗談じゃないわ!一体どういう事⁉
リッターホルムの腐食に腹を立てたあのバカ王子がマァの村にユーリウスを封じようとしている…。そういう事なの⁉
そうだわ。あの王子はリッターホルムを気に入っていた。遊戯が多く楽しめるからと、社交の場でもいつもそう吹聴して回って…。馬鹿な…、そんなことで…?
ああっ…!あの王子は昔からユーリウスを嫌っていた。毛嫌いしていたではないの!絶好の機会を得たとでも思ったと言うの…? どうせ何も出来ぬ無能だからと放っておくのではなかった…何てことなの!
あの村にユーリウスを封じられるなど…それだけは…それだけはなんとしても阻止しなければ!
あの村の塀は女賢者によって封印の術が刻まれている。賢者の魂を賭して封じた術は強固にして不変。
あの塀の中に一度閉じ込められてしまえば…、穢れた者に二度と解放は無い!
わたくしでさえあの塀に触れることは出来なかった。あの人の手助けがなければ恐らくは今でも…
ではユーリウスはどう?
蟲毒により心に怨嗟を生んだ末子の末裔。毒を吐き毒素によって大地を腐食させるユーリウスが封じられぬと誰に言えるの!
ましてや…、女賢者の封印とユーリウスの怨嗟。どちらが勝るか分からないではないの!
急がなくては…。先回りをするのよ。あれらが村に入る前に…
「ヒルダ!クレメル夫人!今すぐ北に向かうわよ!」
「奥様、またリッターホルムに向かうのですか?」
「いいえ。リッターホルムでは無いわ。マァの村よ!道中同行できる者が居ないか声を掛けていって頂戴。男が良いわ。腕のたちそうな…、命知らずのならず者よ…。謝礼は言い値で支払うとそう言ってやりなさい!なんだってくれてやるわ!」
「それでクレメル夫人、男どもはどれくらい集まったの?」
「えっ、ええ。今の所10名程…。でもまだ道中ありますもの。到着までにあと数日、もう10名くらいは集めて見せますわ。」
「そうして頂戴…」
ここのところマァの付近に潜ませている駒からの連絡はない。もっともわたくしの所在が不明瞭だったせいもあるのだけれど…。
嫌だわ…。嫌な感じ…。
何なのかしら…、この妙な胸騒ぎは…
手段を選ばなければどうとでもなる。
ビルギッタでなくとも、わたくしに心酔する有力者なら他にも居るのだ。それこそ財を持つ豪商であればどのような手でも使えるだろう…
「義母への手紙はこれで良いわ。後は…、色々と面倒だけど仕方が無いわね…。その頃にはどうせ全て…あら何かしら?」
気乗りのしない手紙を休息のため寄った宿屋でしたためていた、その時だった。女中たちのよもやま話が扉越しに聞こえてきた。
「ちょっとあんた聞いたかい?殿下が王都にやってきたあのリッターホルムの公爵様を捕まえなさって、なんでも北にあるマァの村まで連れて行くんだとさ。」
「へぇ。マァの村にかい?何でまた」
「あそこには高い高い塀があるだろう?なんでも公爵様がリッターホルムの農地を殿下の許しも得ず勝手しちゃったんだってさ。そんなわけで怒った殿下がお仕置きにマァの村に連れてくって話だよ」
「そりゃあ難儀だねぇ。けど殿下が怒ったって…、大した話なんじゃないのかい?」
「そうだろうねぇ。何やったんだろうねぇ?それで?この辺りはいつ通ってくんだい?」
「明日の午後にはここいらを通り抜けるそうだよ。見に行くかい?」
「行くともさ。あの王子様はそりゃあお綺麗だからねぇ…」
マァの村 ‼
何ですって!冗談じゃないわ!一体どういう事⁉
リッターホルムの腐食に腹を立てたあのバカ王子がマァの村にユーリウスを封じようとしている…。そういう事なの⁉
そうだわ。あの王子はリッターホルムを気に入っていた。遊戯が多く楽しめるからと、社交の場でもいつもそう吹聴して回って…。馬鹿な…、そんなことで…?
ああっ…!あの王子は昔からユーリウスを嫌っていた。毛嫌いしていたではないの!絶好の機会を得たとでも思ったと言うの…? どうせ何も出来ぬ無能だからと放っておくのではなかった…何てことなの!
あの村にユーリウスを封じられるなど…それだけは…それだけはなんとしても阻止しなければ!
あの村の塀は女賢者によって封印の術が刻まれている。賢者の魂を賭して封じた術は強固にして不変。
あの塀の中に一度閉じ込められてしまえば…、穢れた者に二度と解放は無い!
わたくしでさえあの塀に触れることは出来なかった。あの人の手助けがなければ恐らくは今でも…
ではユーリウスはどう?
蟲毒により心に怨嗟を生んだ末子の末裔。毒を吐き毒素によって大地を腐食させるユーリウスが封じられぬと誰に言えるの!
ましてや…、女賢者の封印とユーリウスの怨嗟。どちらが勝るか分からないではないの!
急がなくては…。先回りをするのよ。あれらが村に入る前に…
「ヒルダ!クレメル夫人!今すぐ北に向かうわよ!」
「奥様、またリッターホルムに向かうのですか?」
「いいえ。リッターホルムでは無いわ。マァの村よ!道中同行できる者が居ないか声を掛けていって頂戴。男が良いわ。腕のたちそうな…、命知らずのならず者よ…。謝礼は言い値で支払うとそう言ってやりなさい!なんだってくれてやるわ!」
「それでクレメル夫人、男どもはどれくらい集まったの?」
「えっ、ええ。今の所10名程…。でもまだ道中ありますもの。到着までにあと数日、もう10名くらいは集めて見せますわ。」
「そうして頂戴…」
ここのところマァの付近に潜ませている駒からの連絡はない。もっともわたくしの所在が不明瞭だったせいもあるのだけれど…。
嫌だわ…。嫌な感じ…。
何なのかしら…、この妙な胸騒ぎは…
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