チートな転生農家の息子は悪の公爵を溺愛する

kozzy

文字の大きさ
192 / 277
連載

207 彼との再会

しおりを挟む
アッシュの指示によって整備されたリッターホルムの平らな馬車道。すれ違ったのは…、間違いない。あれは伯爵夫人だ。
彼女はこちらを凝視していた。驚きにその目を見開いて…。

ならば彼女は追ってくるだろう。この私を深淵へと縛り付け、己の呪力の代わりにこの国を崩壊へと導くために…


「すまないコーディ、ヴェストが息子を薦める中、お前がいいなどと無茶を言った。少し休むと良い。」
「…そ、そそそ、その…」

「何も言うな。お前の忠心は分かっている。心から感謝する。」


深い皺を刻んだコーディーの横顔、無事これらが終わったなら…隠居させオスモのように穏やかな余生を過ごさせてやりたい。いや、その前に息子たちには誰か良き相手を探してやらねばならないな…
コーディーの息子たちも良い腕となった。ノールを乗せた馬ゾリはあの積雪の中、細心の注意を払って彼をあの大河の袂まで運び、また彼の家族を無事リッターホルムへ届けてくれた。

そして少し前に王都から戻ったノールには、いくつかの指示と共に関所の再封鎖を申し付けてある。彼の負担は大きいだろうが暫くは我慢してもらわねば。だがこれが終わればその時はカレッジに専念させてやってもいい。彼にとっては何よりの報奨になるだろう…

彼らの先行きを考えられるほど良き未来を信じているのか、私は…


それにしても未だ分からない。何故アッシュはマァの村を目指す私に王都へ向かえと言ったのだ。

警戒する夫人をマァの村へ誘き寄せるのは容易ではない。だからこそ彼女を一度リッターホルムへ招き入れたのだ。
あれは油断を誘うだけでなく私の跡を追わせる為でもある。
自分が囮になるというアッシュを、私が動いたほうが確実だとそう説き伏せると、聡明な彼は不承不承ではあるが終いには納得した。

そのアッシュは私に鎮魂の森に入れと言う…。私とアッシュをあの日分かった泉で待つのだと。


「いやいい。アッシュがそう言うのだ。…私はアッシュを信じる…」
「相変わらずお熱いことだ。それよりそろそろ顔を戻してはどうだい?の顔ではアッシュが心配するだろう?」

「ああそうだな、忘れていた。それよりエスター、君は大神殿に何の用だ」
「神殿に用があるんじゃない。大司教に用があるのさ。ほんの確認とでも言っておこうか」


一人王都へ向かうと言った私に供を願い出たのは思いもよらぬ人物、エスターだった。
神殿に用があるといい、副御者に扮しコーディーの隣に乗ってきたのだ。


「父さんと父さんの剣は僕があそこにいるより役に立つさ。何しろ僕は書物のこと以外大して役には立たないからね。だが君が野営をしながら移動をするというのであれば少なくともノールよりは適任だと思うがね。いざとなれば僕は調理ができる、どうだい?大切なことだろう?」

「ふっ、それは頼もしい」


私とエスターの意外な二人旅を、ヨルガオの向こうでアッシュも声を上げて驚いていた。
こうしてほんの2日間の短い旅路は過ぎて行った。







「おお…よく来たユーリウスよ!どうだ、何も問題は無いか!」

「大叔父上…、それはむしろ大叔父上でしょう。此度の騒ぎ、中心にいるのがそれなりに権威のある高位貴族たちである事をどれほど嘆かわしく思ったことか!」

「良いのだユーリウスよ。お前の教師が言っておったわ。これはゴミ掃除だとな。」
「ええ。アッシュもそう申しておりました。風通しが良くなったと」


久方ぶりの大叔父上のお姿に安堵の息をついた時だ。背後から馴れ馴れしく肩に回される腕…。この私にこのような真似が出来る者など決まっている。


「ユーリウス、ようやく来たか。遅かったな」
「伯爵夫人の出方を見ていたのでね。それよりこの腕を離してもらおう」

「相変わらず可愛げのない…。お前を可愛いなどと、あいつアッシュの眼は節穴だな」
「可愛げなど貴方相手に度必要ない!アッシュがそう思えば十分だ!それより殿下、概要は…」

「万事抜かり無い。あのアッシュが私にお願いとはな!はっはっはっ!ついにこの時が来たか!任せておけ!」


アッシュが私を王都へ向かわせた理由、その中には一点だけ明らかな事がある。それは私ではなく殿下へと指示されたもので、その為には私が一度王城へ入ったという事実が必要なのだ。

そうして後の事は不本意ながら殿下に委ね、私は陽の差す森へとこうしてやってきたのだが…


「泉か…。何が出るのやら…」









「さぁて、今度こそ兄さんの言った通りに…。泉よし。お日様よし。んで僕よし。今行くよユーリ!」


未だ冷たい初春の泉。あの時とどっちが冷たいだろうか?
でもあの時と大きく違うのは僕が非常に落ち着いている事。…もうネタばれしちゃってるからね。それに泉の向こうにはユーリが居る。半年近く離れ離れになっていた、正真正銘僕のパートナーおっとが!


ー 種子創造 ー ううっ‼ 眩しいっ!


眼が眩むようなフラッシュに思わず目を瞑る僕、そしてそぉっと目を開くとそこには…まるでシーキャンドルのような光のアーチ、その中に一本の道が続いていた。
その光の道の中では水中のはずなのに呼吸が塞がることも無く…不思議な感覚…。とてつもないファンタジー感に気分が高揚する…。

よし。インテリジェンスソードイベントのリベンジはこれで果たせた。


意気揚々と向かうその光の途切れた場所、その水面の向こうにいるのは夢に見るほど会いたかった僕のユーリ!
そのユーリときたら僕の姿を見つけると慌てた様子で水中にダイビングだよ!すごくお高い洋服だって言うのに…ユーリってば…。

そして僕の手を取り水面に上がろうとするユーリをむしろ水底へ、湧泉部へと引っ張っていく。
戸惑いながらもされるがままのユーリがとても愛しい…。だってそれって、それぐらい僕を無条件で信じてるってことでしょ?愛だよね。


「はっ、…息が出来る…。アッシュ一体ここは…」
「説明は後!陽が影ったらまた爆発させなきゃいけなくなる!ちょっと遅くなっちゃったから急ごう!」

「待ってアッシュ!これだけは譲れない!」




…いやね、ほんの何十秒だよ、1分にも満たない時間だと思うんだけど…、永遠に続くかと思えてしまったのはそれだけユーリの激情が伝わって来たから…。良いんだけどね…僕もしたかったし。

何をって?言わせないでよ…。



そんなユーリの手を引き、泉の秘密を説明しながら地上に顔を出せたのはギリギリ夕暮れ迫る頃…
隣ではユーリがびしょ濡れのジャケットを脱ぎながら呆然と立ちすくんでいる。


「まさかスキルによってこの泉につながるとは…。考えもしなかった。」

「でもこれで王都とマァの村はショートカットが可能って事だね。」

「当分それは秘密にしよう。間違ってもお調子者でんかをここに呼ばないように!それよりアレクシは…」
「アレクシさんなら禁足地の入り口で待ってるよ。ほんとそういうとこ律儀だよね」

「じゃぁ今は二人きりか…」
「えっ?」






「ユーリウス様、よくご無事で…」
「アレクシ色々とよくやってくれた。それよりアッシュに上着を」

「アッシュ君これを。それにしても…まさか本当に連れて来るとは。いや、聞いてはいたが実際この目で見るとなると…。それにしても何故二人とも上半身裸で…」


「濡れたシャツにもう一度袖を通す気になれなくて、痛っ」バシッ!
「いっ!泉から上がって来たんだもん!お、おかしく無くない?」

「それもそうだな。」


ほらね。こういうところだよ、アレクシさん…。え?なんで上半身裸かって?言わせないでよ…。








しおりを挟む
感想 392

あなたにおすすめの小説

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新 プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまいネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください! 表紙や動画はAIを使用していますが、文章にはAIを一切使用しておりません。 名前が  *   ゆるゆ  になりました。 これからもどうぞよろしくお願い致します! 表紙にはAIを使用していますが、文章にはAIを一切使用しておりません。 校正も自力です(笑)

超絶美形な悪役として生まれ変わりました

みるきぃ
BL
転生したのは人気アニメの序盤で消える超絶美形の悪役でした。

なぜ処刑予定の悪役子息の俺が溺愛されている?

詩河とんぼ
BL
 前世では過労死し、バース性があるBLゲームに転生した俺は、なる方が珍しいバットエンド以外は全て処刑されるというの世界の悪役子息・カイラントになっていた。処刑されるのはもちろん嫌だし、知識を付けてそれなりのところで働くか婿入りできたらいいな……と思っていたのだが、攻略対象者で王太子のアルスタから猛アプローチを受ける。……どうしてこうなった?

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  ゆるゆ
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが、びっくりして憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! ノィユとヴィルの動画を作ってみました!(笑)  インスタ @yuruyu0   Youtube @BL小説動画 です!  プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったらお話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです! ヴィル×ノィユのお話です。 本編完結しました! 『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編、完結しました! 時々おまけのお話を更新するかもです。 名前が  *   ゆるゆ  になりました。 これからもどうぞよろしくお願い致します! 表紙や動画はAIを使用していますが、文章にはAIを一切使用しておりません。

王家の影一族に転生した僕にはどうやら才能があるらしい。(完結)

薄明 喰
BL
アーバスノイヤー公爵家の次男として生誕した僕、ルナイス・アーバスノイヤーは日本という異世界で生きていた記憶を持って生まれてきた。 アーバスノイヤー公爵家は表向きは代々王家に仕える近衛騎士として名を挙げている一族であるが、実は陰で王家に牙を向ける者達の処分や面倒ごとを片付ける暗躍一族なのだ。 そんな公爵家に生まれた僕も将来は家業を熟さないといけないのだけど…前世でなんの才もなくぼんやりと生きてきた僕には無理ですよ!! え? 僕には暗躍一族としての才能に恵まれている!? ※すべてフィクションであり実在する物、人、言語とは異なることをご了承ください。  色んな国の言葉をMIXさせています。 本作は皆様の暖かな支援のおかげで第13回BL大賞にて学園BL賞を受賞いたしました! 心よりお礼申し上げます。 ただ今、感謝の番外編を少しずつ更新中です。 よければお時間のある時にお楽しみくださいませ

余命僅かの悪役令息に転生したけど、攻略対象者達が何やら離してくれない

上総啓
BL
ある日トラックに轢かれて死んだ成瀬は、前世のめり込んでいたBLゲームの悪役令息フェリアルに転生した。 フェリアルはゲーム内の悪役として15歳で断罪される運命。 前世で周囲からの愛情に恵まれなかった成瀬は、今世でも誰にも愛されない事実に絶望し、転生直後にゲーム通りの人生を受け入れようと諦観する。 声すら発さず、家族に対しても無反応を貫き人形のように接するフェリアル。そんなフェリアルに周囲の過保護と溺愛は予想外に増していき、いつの間にかゲームのシナリオとズレた展開が巻き起こっていく。 気付けば兄達は勿論、妖艶な魔塔主や最恐の暗殺者、次期大公に皇太子…ゲームの攻略対象者達がフェリアルに執着するようになり…――? 周囲の愛に疎い悪役令息の無自覚総愛されライフ。 ※最終的に固定カプ

悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。 BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃がはじまる──! といいな!(笑) 本編完結済、ロデア大公立学園編、はじめました! 本編のあと、恋愛ルートやおまけのお話に進まずに、すぐロデア大公立学園編に続く感じです。 きーちゃんと皆の動画をつくりました! プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。 本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけです! 名前が  *   ゆるゆ  になりました。 これからもどうぞよろしくお願い致します! 表紙や動画はAIを使用していますが、文章にはAIを一切使用しておりません。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。