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210 アデリーナの好運
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高く積み上げられたその石塀は、世俗との関りを面白いほど遮断している。
無骨な石塀を隠すかのように、塀の両側には林のような木々が重厚な扉まで広がっている。
あの扉を一歩くぐれば…そこは何百年も前から変わりばえのない世界。
「ここはこんなだったかしら?…あまりよく覚えていないわね。あの人に支えられ必死だったもの…。それにしても相変わらずつまらない村…」
観劇もなければサロンもない。吟遊詩人もここには来ない。碌な娯楽のない退屈極まりない農村。
誰一人煌びやかな宝飾品すら持たず、不便の中で助け合い…それでも皆笑い合って幸福そうに暮らしている。なんて不愉快な村…。
あの扉に封じられたらわたくしに逃れる術はない。必ずや村の外でユーリウスを手に入れなければ…。
集めたならず者は総勢30名。どれも手の付けられない粗暴なゴロツキども、まさにうってつけだわね。
中には子供もわずかながら混じっている…。呆れた…、大した英才教育だこと。
「先回りが出来て本当に良かったわ。良いことあなた方。これから王家の馬車が来る。聞くところによれば王家と言っても殿下の勝手で動かした寄せ集めの隊列よ。正式な騎士団は王都の事後処理に駆り出されているの。これだけの人数が集まったのですもの。あなた方でもやれるはずよ。」
「王家の騎士を襲って…で、公爵の乗った馬車に外から鍵かけてをあんたに引き渡せばいいんだな。それであのぎっしり詰まった金袋が全部俺たちのもんか」
「そうよ。それから戦利品もお好きになさい。あの王子は煌びやかなものがお好きですもの。馬車の装飾も見せかけの剣も、さぞ見事でしょうよ」
「こりゃあ楽しみだ。いっそ王子様を攫って身代金でも要求するか」
「どうぞご勝手に」
「おいおい、穏やかじゃ無いな。ここには今から王太子殿下がいらっしゃるんだ。景観を汚すのはやめてくれよ。」
その時わたくしたちにの前に現れたのは思い思いの農具を持ったマァの村の男たち。
村の入り口には門番が居る。それらが手勢を集めたのね。農民風情が生意気に…
「あなた達…、そんなちゃちな農具で勝てるとお思い?」
「俺たちを舐めんなよ!行くぞタピオ!」
「おう!」
「やるのか!おい!お前らやっちまえ!」
「この田舎者らが先だ!」
なんて見苦しい…。
嫌だわ…。大口をたたきながら情けない…。あれほど居たならず者が王子の到着を待たずに減っていくじゃないの!
「早く片付けなさい!王子が来てしまうわ!」
「お、奥様…、子供までが乱闘に…。そこの坊や!危ないからこっちにいらっしゃい!」
「坊やじゃねえよ!俺は一人前だ、ばばあ!」
「口の悪い子ね…。放っておきなさい。あら…、あなた!その手に持っているものは何かしら…?」
「村ん中の教会で見つけたんだ。見ろよ、銀の燭台に銀の聖杯、それから…銀の小瓶だぜ。宝物庫なんかチョロいぜ!俺は鍵破んの得意なんだ!」
この銀の小瓶は…間違いない!これはユーリウスの毒ではないの!
何故ここに…?どうやってここに…?いえ、どうでもいいわそんな事。ああ…天はわたくしを見放さなかった。このくだらない世界を壊してしまえと、そう言っているのね。
それにしても…。
子供の姿だからと言って油断するなど…。男どもが賊退治に集まり村中が手薄とは言え、これだから田舎者は甘いのよ。子供が生まれつき善などと何故思えるのかしら…。愚かだこと。
「よくやったわぼうや。その銀の小瓶をわたくしに寄越してくださる?」
「いやだね!lこれは町に行って売るんだからな!母ちゃんに美味しいもん買って帰るんだよ!」
「そう…。分かり易くて良いわ。では市価の倍、いいえ、欲しいだけ差上げる!いくら欲しいの」
「いくらでもいいのか…?じゃ、じゃあ金!金貨を5枚!それでもいいのかよ?」
「しっかり者ね、将来が楽しみだわ。ほら」
「金貨5枚…、やったぜ!」
「それを使う将来があると良いわね…。っ!来たわ!あれがユーリウスを連れた王家の行列…。あなた達お遊びはそこまでよ!狙いはあちら!見なさいな、金銀宝石…お宝がやってきたわ!好きなだけ奪いなさい!」
半数ほど残った欲深い者ならず者。彼らは村人に背を向け王家の列へと標的を変えて行く。
それはさらなる混乱を招き、馬の悲鳴と争いの怒号が響き渡る。そして砂埃の中、小窓に映る銀の髪…、あれがユーリウスね…。
ユーリウスの馬車だけが不気味に静まり返っている…。
無骨な石塀を隠すかのように、塀の両側には林のような木々が重厚な扉まで広がっている。
あの扉を一歩くぐれば…そこは何百年も前から変わりばえのない世界。
「ここはこんなだったかしら?…あまりよく覚えていないわね。あの人に支えられ必死だったもの…。それにしても相変わらずつまらない村…」
観劇もなければサロンもない。吟遊詩人もここには来ない。碌な娯楽のない退屈極まりない農村。
誰一人煌びやかな宝飾品すら持たず、不便の中で助け合い…それでも皆笑い合って幸福そうに暮らしている。なんて不愉快な村…。
あの扉に封じられたらわたくしに逃れる術はない。必ずや村の外でユーリウスを手に入れなければ…。
集めたならず者は総勢30名。どれも手の付けられない粗暴なゴロツキども、まさにうってつけだわね。
中には子供もわずかながら混じっている…。呆れた…、大した英才教育だこと。
「先回りが出来て本当に良かったわ。良いことあなた方。これから王家の馬車が来る。聞くところによれば王家と言っても殿下の勝手で動かした寄せ集めの隊列よ。正式な騎士団は王都の事後処理に駆り出されているの。これだけの人数が集まったのですもの。あなた方でもやれるはずよ。」
「王家の騎士を襲って…で、公爵の乗った馬車に外から鍵かけてをあんたに引き渡せばいいんだな。それであのぎっしり詰まった金袋が全部俺たちのもんか」
「そうよ。それから戦利品もお好きになさい。あの王子は煌びやかなものがお好きですもの。馬車の装飾も見せかけの剣も、さぞ見事でしょうよ」
「こりゃあ楽しみだ。いっそ王子様を攫って身代金でも要求するか」
「どうぞご勝手に」
「おいおい、穏やかじゃ無いな。ここには今から王太子殿下がいらっしゃるんだ。景観を汚すのはやめてくれよ。」
その時わたくしたちにの前に現れたのは思い思いの農具を持ったマァの村の男たち。
村の入り口には門番が居る。それらが手勢を集めたのね。農民風情が生意気に…
「あなた達…、そんなちゃちな農具で勝てるとお思い?」
「俺たちを舐めんなよ!行くぞタピオ!」
「おう!」
「やるのか!おい!お前らやっちまえ!」
「この田舎者らが先だ!」
なんて見苦しい…。
嫌だわ…。大口をたたきながら情けない…。あれほど居たならず者が王子の到着を待たずに減っていくじゃないの!
「早く片付けなさい!王子が来てしまうわ!」
「お、奥様…、子供までが乱闘に…。そこの坊や!危ないからこっちにいらっしゃい!」
「坊やじゃねえよ!俺は一人前だ、ばばあ!」
「口の悪い子ね…。放っておきなさい。あら…、あなた!その手に持っているものは何かしら…?」
「村ん中の教会で見つけたんだ。見ろよ、銀の燭台に銀の聖杯、それから…銀の小瓶だぜ。宝物庫なんかチョロいぜ!俺は鍵破んの得意なんだ!」
この銀の小瓶は…間違いない!これはユーリウスの毒ではないの!
何故ここに…?どうやってここに…?いえ、どうでもいいわそんな事。ああ…天はわたくしを見放さなかった。このくだらない世界を壊してしまえと、そう言っているのね。
それにしても…。
子供の姿だからと言って油断するなど…。男どもが賊退治に集まり村中が手薄とは言え、これだから田舎者は甘いのよ。子供が生まれつき善などと何故思えるのかしら…。愚かだこと。
「よくやったわぼうや。その銀の小瓶をわたくしに寄越してくださる?」
「いやだね!lこれは町に行って売るんだからな!母ちゃんに美味しいもん買って帰るんだよ!」
「そう…。分かり易くて良いわ。では市価の倍、いいえ、欲しいだけ差上げる!いくら欲しいの」
「いくらでもいいのか…?じゃ、じゃあ金!金貨を5枚!それでもいいのかよ?」
「しっかり者ね、将来が楽しみだわ。ほら」
「金貨5枚…、やったぜ!」
「それを使う将来があると良いわね…。っ!来たわ!あれがユーリウスを連れた王家の行列…。あなた達お遊びはそこまでよ!狙いはあちら!見なさいな、金銀宝石…お宝がやってきたわ!好きなだけ奪いなさい!」
半数ほど残った欲深い者ならず者。彼らは村人に背を向け王家の列へと標的を変えて行く。
それはさらなる混乱を招き、馬の悲鳴と争いの怒号が響き渡る。そして砂埃の中、小窓に映る銀の髪…、あれがユーリウスね…。
ユーリウスの馬車だけが不気味に静まり返っている…。
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