チートな転生農家の息子は悪の公爵を溺愛する

kozzy

文字の大きさ
190 / 277
連載

205のその時に ささやかな準備

しおりを挟む
「アッシュ、篝火へ誘導するのはお前なんだな。」


アレクシさんによるユーリとの会話。その終了を待って、神妙な顔をした兄さんはそう声をかけてきた。心配かけるつもりはさらさら無いんだけどな…。


「誘導って言うか…、ユーリと挟み撃ちにしてなんとか。最悪まぁ蔓で引っ張って無理やり…。でも…」
「でもなんだ」

「魔女だって分かってても見た目人間だと思うと気が引けるよね…だってこれって火あぶり…」

「アッシュ…。お前のそういうとこ兄さんは良いと思う。けどな、今はダメだ」
「分かってるって。…ビビ…らない。ビビったりしない!」


だって現代人としてはちょっとね…。いろんな意味で覚悟はしてるんだけど。実際目の前で見たらビビり倒すかもしれない…。



「そんな顔すんな、そん時は兄さんの背に隠れてろ。…それよりアッシュ、お前篝火の台作るのにナナカマド作ったろ?あれ御神木に似てるよな」

「うん?まあね葉とか花とか似てるよね。縁起担ぎって言っても御神木は使えないからね。ナナカマドも魔除けや招福の木なんだよ。少しでもご利益あるかと思って。篝火…、ホントは朴の木とかが良いんだろうけど…、ナナカマドもよく燃えるしね。」

「へぇ…。なら逆に燃えにくい木は知ってるか?」


知ってるか…知ってる…知って…、もちろん知っているとも!
『美しき寺社仏閣』あれにはちゃんと記されていた。神社などに植樹された多くの木が、その建造物を火災から守るために植えられた〝火伏の木”なのだと。
〝火伏の木”…、それは水分が多く油が少ない、着火の遅い防炎の樹。それだけじゃない。熱を遮断し拡散を抑え、一説には熱を浴びるとと葉が水を放出するとも言われている、とんでもないお役立ち植物だ。


「もちろん知ってるよ。銀杏とか珊瑚樹とか…、名前からして火に強そうだよね。」

「珊瑚ってなんだ?」

「それは刺胞動物門の…だー!めんどくさい!限りなく植物みたいな生物だよ!ペガサスの血とか厄除けとか魔除けとか言われるキレイな…生、植物?」


魔除け、魔除け、魔除け…小さなことからコツコツと。塵も積もれば山と…ならないか?

魔女との戦いに際し、片っ端から引っ張り出した(頭から)対魔女のあんな本やこんな本。その中の一冊、『世界のお守り 魔除けの秘石』そこには珊瑚は魔除けの石だと間違いなくそう書かれていた。
僕はしみじみ思ったもんだ。あれは厳密には石でなく海洋生物のカルシウムなのに…、藻が絡んでる分まだ『スピリチュアル植物大全』のほうがしっくりくるのにな、と…。


「魔除け…、それって泉の底にはないのか?」
「ないよ。綺麗で温暖な海にしか居ない。」

「そうか。残念だな」

「え?兄さん欲しいの?厄除けだから?兄さんがそういうのに頼るとは意外だったな。あー、ならさ、御神木の森でヤドリギ探したら?あれも強力な魔除けだよ。悪霊や幽霊から守ってもらうために一年中吊るしてる国だってあるんだから」
「そうなのか?」

「そうそう。悪霊に幽霊、それから魔女を追い払ってくれるんだって。こんなに何でも祓ってくれるなんて気前良いよね」

「そうか。行ってみるか。おい、母さんにはナイショだぞ。禁足地に入ったなんて言ったらげんこつが落ちる」
「分かってるって!」


そんな風に笑い合う僕と兄さん。兄弟水入らずもあと少し。あと数日もしたら…

ユーリに会える!




しおりを挟む
感想 392

あなたにおすすめの小説

なぜ処刑予定の悪役子息の俺が溺愛されている?

詩河とんぼ
BL
 前世では過労死し、バース性があるBLゲームに転生した俺は、なる方が珍しいバットエンド以外は全て処刑されるというの世界の悪役子息・カイラントになっていた。処刑されるのはもちろん嫌だし、知識を付けてそれなりのところで働くか婿入りできたらいいな……と思っていたのだが、攻略対象者で王太子のアルスタから猛アプローチを受ける。……どうしてこうなった?

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も皆の小話もあがります。 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新! プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

悪役令嬢の兄でしたが、追放後は参謀として騎士たちに囲まれています。- 第1巻 - 婚約破棄と一族追放

大の字だい
BL
王国にその名を轟かせる名門・ブラックウッド公爵家。 嫡男レイモンドは比類なき才知と冷徹な眼差しを持つ若き天才であった。 だが妹リディアナが王太子の許嫁でありながら、王太子が心奪われたのは庶民の少女リーシャ・グレイヴェル。 嫉妬と憎悪が社交界を揺るがす愚行へと繋がり、王宮での婚約破棄、王の御前での一族追放へと至る。 混乱の只中、妹を庇おうとするレイモンドの前に立ちはだかったのは、王国騎士団副団長にしてリーシャの異母兄、ヴィンセント・グレイヴェル。 琥珀の瞳に嗜虐を宿した彼は言う―― 「この才を捨てるは惜しい。ゆえに、我が手で飼い馴らそう」 知略と支配欲を秘めた騎士と、没落した宰相家の天才青年。 耽美と背徳の物語が、冷たい鎖と熱い口づけの中で幕を開ける。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

超絶美形な悪役として生まれ変わりました

みるきぃ
BL
転生したのは人気アニメの序盤で消える超絶美形の悪役でした。

主人公の義弟兼当て馬の俺は原作に巻き込まれないためにも旅にでたい

発光食品
BL
『リュミエール王国と光の騎士〜愛と魔法で世界を救え〜』 そんないかにもなタイトルで始まる冒険RPG通称リュミ騎士。結構自由度の高いゲームで種族から、地位、自分の持つ魔法、職業なんかを決め、好きにプレーできるということで人気を誇っていた。そんな中主人公のみに共通して持っている力は光属性。前提として主人公は光属性の力を使い、世界を救わなければいけない。そのエンドコンテンツとして、世界中を旅するも良し、結婚して子供を作ることができる。これまた凄い機能なのだが、この世界は女同士でも男同士でも結婚することが出来る。子供も光属性の加護?とやらで作れるというめちゃくちゃ設定だ。 そんな世界に転生してしまった隼人。もちろん主人公に転生したものと思っていたが、属性は闇。 あれ?おかしいぞ?そう思った隼人だったが、すぐそばにいたこの世界の兄を見て現実を知ってしまう。 「あ、こいつが主人公だ」 超絶美形完璧光属性兄攻め×そんな兄から逃げたい闇属性受けの繰り広げるファンタジーラブストーリー

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。