チートな転生農家の息子は悪の公爵を溺愛する

kozzy

文字の大きさ
228 / 277
連載

おまけ ①

しおりを挟む
王都から一報が来た。どこよりも早いホットラインで。

あのどさくさに紛れてミスリルのヨルガオは今もケネスの胸の上だ。
それを嫌がったユーリは自分のヨルガオもタピオ兄さんに渡し、そのうえで僕とユーリの新しいヨルガオにはミスリルの銀の上に一粒のブラウンダイヤモンドが埋め込まれた。
ユーリの銀と僕の栗色、そう言う事だよね。


とにかくケネスの一報とは…、シグリット姫の婚礼の儀が前倒しになったと、その報告だった…。

めでたい話だから前倒しでもいいんだけどね…とはいえ、実情を知ってる僕たちはみんな微妙な反応で…、ま、まぁいい!誰も傷ついてないんだからいいじゃないか!

なんにしろ、公爵家として急遽お祝いに出向くことになったのだ。それはあの感動のユーリの誕生日からひと月ほどたった頃の事だった。


「でもまたなんだってこんな急に…、年明け春って言ってなかったっけ?」
「僕分かっちゃった~」
「えっ!なに?何が分かったのナッツ!」

「赤ちゃんだよ赤ちゃん」
「赤ちゃん…」

「あの…、ナッツさん、赤ちゃんがどうかしたのですか?」
「アルパはお姫さまから何も聞いてないの~?気持ち悪いとか~」


通りがかりのアルパ君がシグリット姫の名前を聞いてキョトン…と問いかけた。可愛いな。
彼はシグリット姫のお手伝いとして、リッターホルムが領民の子供に施す読み書き計算のメソッドをまとめて定期的に送っている。そのため手紙のやりとりを続けている訳で…、因みにその手紙を届けるのは姫の…恋人である。
蛇足だが、ヨルガオの進呈は固く辞退された…


「そう言えば体調がすぐれないと先日受け取った手紙に追記してありました。静かに過ごしたいので冬の間は別荘で過ごすと」

「いやいやいや、体調がすぐれないのに真冬のリッターホルムっておかしいでしょ。風邪ひくって。静かには違いないけど」
「あの…、夏にいらした時お泊りになった真新しい別荘をとても気に入られたようでした。とても落ち着くと仰られて」

「アルパのお見舞いに来たときだね~、ふ~ん、なるほど。」
「あー……、なるほど。」

「あの…、なるほどって何が…」

「いいのいいの、アルパ君は知らなくて」
「そのうちいやでも分かるから~」


僕らは彼の未経験を…この瞬間確信した…。





王都に向かったのは僕とユーリ。前倒しの婚礼の儀は端折れるところは端折って間に合わせたと言うのだが…
端折った理由はそれだけではあるまい。きっと身体に負担をかけないためだ。


「ヘンリックさんこの度はおめでとう。いろんな意味で。」
「何か言いたげだね」

「私からも言わせてくれ。これで生まれるのが男児なら後継の心配はもう無くなったと言うことか。おめでとう」
「さすがお二方。勘が良いですね」

「見抜いたのはナッツだよ」
「ナッツ君か…。だがこれで父を安心させてやれるのでね。問題ない」


僕は一つだけヘンリックさんに聞いてみた。後継と言ったって生まれてくるのは伝令さんの子で…。その子が侯爵家の跡継ぎに…それで平気なのかって。
そうしたら彼は事も無げにこう言ったんだ。


「人はどう生まれたかでなくどう育ったかで決まるものだ。高位貴族家にも下劣に育つ者は往々にして居る。だがスラムの孤児からも高潔な人物は育つ。アレクシのようにね。私は生まれてくる子を侯爵家の後継者として感謝と愛情をもって大切に育てると誓うよ。秘密の恋心を捨てられなかった償いにね」


それだけの覚悟を持ってたんだな…。まさに男だ…すごいよヘンリックさん…。




そして3日後、大神殿の身廊を抜け祭壇の前ではいつもの大司教が真っ白な法衣で美男美女を待っていた。
そして厳かに行われる婚礼の儀。その後彼らはオーブンカーならぬオープン馬車で神殿から王城までをパレードしていった。

行ったが…


「あれ?どうして大公まだここに…。それに元王妃さまも…ねぇ、何でユーリも王子も帰らないの?」
「アッシュよ、ヴェッティと母はだな…」
「え?何々?あ、何か始まった」

「アッシュ、殿下、お静かに」
「あゴメン」
「すまぬ」


うっそぉぉぉぉ!マジですかぁぁぁぁぁ!

そこで行われたのは大公と元王妃様の婚姻の儀。見守るのは僕とユーリとケネスだけ。家族だけに見守られた本当にささやかな儀式で…でも十分だって思った。豪華なセレモニーなんか無くったって、いろんな想いを乗り越えた二人の絆を繋ぐにはこれで十分だって…。

それにしてもユーリと言い大公といい、メイン式典に婚姻の儀ぶっこんで来るのは何の遺伝なの?
あ、分かった。ユーリの入れ知恵だな、さては…。

後でこっそり聞いた話じゃ、大公と元王妃様は若い頃恋仲だったんだとか。
そこに横恋慕した前王とノリノリの元王妃様の家族、結局洗脳のスキルには抗えず彼女は王妃となり…、そしてもともと子供を持とうと思ってなかった大公はそのまま妻も待たずに元王妃を想い続けていたんだって。

ああ…これぞ純愛…。




「えへへ、ユーリにお母さんが出来たね」
「ああそうだ、そうだな」

「ではお前は私の弟になったのだな。」
「なっ!」

「遠慮なくお兄様と呼んでもいいのだぞ」
「結構だ!」
「呼んだらいいのに」
「やめてくれ!」

「さあ呼ぶのだ、ケネスお兄様と!ユーリウス、可愛い弟よ!」



大神殿の身廊には、ユーリの悲鳴にも近い叫びがどこまでも響き渡っていた…











しおりを挟む
感想 392

あなたにおすすめの小説

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

役目を終えた悪役令息は、第二の人生で呪われた冷徹公爵に見初められました

綺沙きさき(きさきさき)
BL
旧題:悪役令息の役目も終わったので第二の人生、歩ませていただきます 〜一年だけの契約結婚のはずがなぜか公爵様に溺愛されています〜 【元・悪役令息の溺愛セカンドライフ物語】 *真面目で紳士的だが少し天然気味のスパダリ系公爵✕元・悪役令息 「ダリル・コッド、君との婚約はこの場をもって破棄する!」 婚約者のアルフレッドの言葉に、ダリルは俯き、震える拳を握りしめた。 (……や、やっと、これで悪役令息の役目から開放される!) 悪役令息、ダリル・コッドは知っている。 この世界が、妹の書いたBL小説の世界だと……――。 ダリルには前世の記憶があり、自分がBL小説『薔薇色の君』に登場する悪役令息だということも理解している。 最初は悪役令息の言動に抵抗があり、穏便に婚約破棄の流れに持っていけないか奮闘していたダリルだが、物語と違った行動をする度に過去に飛ばされやり直しを強いられてしまう。 そのやり直しで弟を巻き込んでしまい彼を死なせてしまったダリルは、心を鬼にして悪役令息の役目をやり通すことを決めた。 そしてついに、婚約者のアルフレッドから婚約破棄を言い渡された……――。 (もうこれからは小説の展開なんか気にしないで自由に生きれるんだ……!) 学園追放&勘当され、晴れて自由の身となったダリルは、高額な給金につられ、呪われていると噂されるハウエル公爵家の使用人として働き始める。 そこで、顔の痣のせいで心を閉ざすハウエル家令息のカイルに気に入られ、さらには父親――ハウエル公爵家現当主であるカーティスと再婚してほしいとせがまれ、一年だけの契約結婚をすることになったのだが……―― 元・悪役令息が第二の人生で公爵様に溺愛されるお話です。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新 プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまいネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください! 表紙や動画はAIを使用していますが、文章にはAIを一切使用しておりません。 名前が  *   ゆるゆ  になりました。 これからもどうぞよろしくお願い致します! 表紙にはAIを使用していますが、文章にはAIを一切使用しておりません。 校正も自力です(笑)

超絶美形な悪役として生まれ変わりました

みるきぃ
BL
転生したのは人気アニメの序盤で消える超絶美形の悪役でした。

なぜ処刑予定の悪役子息の俺が溺愛されている?

詩河とんぼ
BL
 前世では過労死し、バース性があるBLゲームに転生した俺は、なる方が珍しいバットエンド以外は全て処刑されるというの世界の悪役子息・カイラントになっていた。処刑されるのはもちろん嫌だし、知識を付けてそれなりのところで働くか婿入りできたらいいな……と思っていたのだが、攻略対象者で王太子のアルスタから猛アプローチを受ける。……どうしてこうなった?

いらない子の悪役令息はラスボスになる前に消えます

日色
BL
「ぼく、あくやくれいそくだ」弟の誕生と同時に前世を思い出した七海は、悪役令息キルナ=フェルライトに転生していた。闇と水という典型的な悪役属性な上、肝心の魔力はほぼゼロに近い。雑魚キャラで死亡フラグ立ちまくりの中、なぜか第一王子に溺愛され!?

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  ゆるゆ
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが、びっくりして憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! ノィユとヴィルの動画を作ってみました!(笑)  インスタ @yuruyu0   Youtube @BL小説動画 です!  プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったらお話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです! ヴィル×ノィユのお話です。 本編完結しました! 『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編、完結しました! 時々おまけのお話を更新するかもです。 名前が  *   ゆるゆ  になりました。 これからもどうぞよろしくお願い致します! 表紙や動画はAIを使用していますが、文章にはAIを一切使用しておりません。

王家の影一族に転生した僕にはどうやら才能があるらしい。(完結)

薄明 喰
BL
アーバスノイヤー公爵家の次男として生誕した僕、ルナイス・アーバスノイヤーは日本という異世界で生きていた記憶を持って生まれてきた。 アーバスノイヤー公爵家は表向きは代々王家に仕える近衛騎士として名を挙げている一族であるが、実は陰で王家に牙を向ける者達の処分や面倒ごとを片付ける暗躍一族なのだ。 そんな公爵家に生まれた僕も将来は家業を熟さないといけないのだけど…前世でなんの才もなくぼんやりと生きてきた僕には無理ですよ!! え? 僕には暗躍一族としての才能に恵まれている!? ※すべてフィクションであり実在する物、人、言語とは異なることをご了承ください。  色んな国の言葉をMIXさせています。 本作は皆様の暖かな支援のおかげで第13回BL大賞にて学園BL賞を受賞いたしました! 心よりお礼申し上げます。 ただ今、感謝の番外編を少しずつ更新中です。 よければお時間のある時にお楽しみくださいませ

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。