チートな転生農家の息子は悪の公爵を溺愛する

kozzy

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おまけ ⑦

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「アッシュ様。少しよろしいですか?」
「ビョルンさん…」


神妙な顔でなんだろう…。って言ってもだいたい中身は想像つくけどね。アレクシさんがらみか…


「この間は無理を言って2週間もリッターホルムを離れてしまい…申し訳ありませんでした」
「いいよ。実際護衛は居たほうがいいしね。アレクシさんはぽやっとしてるから」

「…ぽやっとなどと…。アレクシ様はとても男らしいお方ですよ。道中常に私を気遣ってくださって…。アレクシ様の男らしさは体躯や力を誇るものではないのです。その懐の深さにあるといいますか、人の気付かない些細なことにもよく目を配られて…」
「ビョルンさん、顔にやけてる」
「えっ?そ、そうですか…?」


何だかんだのあの2週間、ビョルンさんにはいい思い出になったようだ。
何があったとも思わないが、二人の距離がぐっと縮まったのは間違いない。アレクシさんからビョルンさんへの態度がとてもフランクになったと思うのだ…。


「それで…どうしたの?」
「いえ、あの…、アッシュ様にはとても感謝しております。その…、折につけ後押しをしていただいて…」
「賭けがね…、ううん、なんでもない」

「そのアッシュ様にこんな事を言うのはなんなのですが…」
「いいよいいよ。遠慮なくどうぞ」
「タピオさんのことです」

「兄さん‼」


ビョルンさんの話はこうだ。
マァの村での滞在中。タピオ兄さんにはとってもお世話になったと。あの大きな篝火の周りでたくさんのお酒や料理を振舞ってもらい、仮装の仮面も兄さんが用意してくれたのだと。


「マァのワルプルギスでは仮面をかぶって踊るのですね。私もアレクシ様とこう手を取り…、いえ、とても楽しめました。」
「そりゃ良かった。で?」

「問題はその後です。タピオさんはその…、アレクシ様だけを連れて何処かに行ってしまいまして…。」
「あー…」
「いえその!た、ただ私は…、私も連れて行ってくださっても良かったんではないかと…、そのお二人でなんて…あんな暗闇で…」

「いや暗闇って、マァの夜はほとんどの場所が暗闇だから。まぁいいや、つまりビョルンさんは兄さんにやきもちをやいた、と。」
「ち、違います!だって私はまだその…、ですが…、実際タピオさんはアレクシ様をどうお思いなのですか?アッシュ様から聞いていただけないでしょうか…」

「な、…なんだと…」




今僕はアレクシさんの部屋に居る…。もちろんビョルンさんに頼まれた例の件だ。
それにしても…、ビョルンさんは失念しているのではないだろうか…。タピオ兄さんにヨルガオを繋げるということはアレクシさんを介す必要があるという事を…。
う~ん、人は恋をすると少しばかりお馬鹿さんになる…。思えばユーリもそうだった…。僕?僕は勿論違うとも。

という訳で…


「アレクシさん。タピオ兄さんにつないでくれる?」
「それは構わないが…」

「もしもし兄さん」
「アッシュ、お前なんでいつも「もしもし」って言うんだ?」
「癖でつい…、それは良いとして、えーと」
「うん?」
「あー、その」
「なんだ?」


アレクシさんにバレないように兄さんに聞く方法なんかあるか?いやない。どうすんの、これ…


「ビョルンさんが、祭りの夜、兄さんとアレクシさん、二人で何してたか、だつて」


うーん!これが限界!


「ああわかった。ビョルンは俺に怒ったんだな。ハハ、なら成功だ」
「成功って…え!? 兄さんはビョルンさんを怒らせたかったの?」

「アッシュ、お前も知ってるだろ?ワルプルギスの風習を」


ワルプルギスの風習、それは北欧派の「名前を言ってはいけないあの人」とドイツ派の「文学さん」が、その主設定をどちらにするかで言い争ったWEB小説内での祭りの記述。
結果、中途半端にミックスされてたマァのワルプルギス…。

大きな篝火を囲んで仮装をした村人は一晩中飲み明かしたうえもれなく全員酔っぱらいとなり、家々は青々とした草木で飾られ…そして若者は迷惑極まりない蛮行に及ぶ…。

時に人んちの庭を荒らし、時に人んちに落書きをし、時に人んちの大切なものを隠す…。
どうせ後からやった当人が元に戻すのにバカバカしいな…と、常々思っていたあの風習…〝魔女の悪戯”。


「はぁぁ…勿論知ってるけどそれがどうしたの?兄さんそれでいつも西のニッチェさんに怒られてるじゃん」

「ビョルンは初参加だから祭りの洗礼を受けなくちゃと思ってな。あいつにとって一番大切なのはアレクシだろ?だから隠したんだよ。ワルプルギスは魔女の祭りだ。悪戯されてこそ醍醐味だからな」


魔女の嫌がらせ、それを退けた時人々には幸運が訪れる。だから一回悪戯を受けたうえで元に戻すというマッチポンプ、田舎の風習なんてこんなものかもしれない。奇天烈で、不条理かつ不合理な物ばかりだ…。


「ビョルンはあん時も必死に俺たちを探しに来て俺からアレクシの腕をひっ掴んで連れて行ったからな。な?そうだろ?」
「まぁ…」


アレクシさんが鈍感なのを差っ引いてもビョルンさんは公私混同はしないはずだ。そのビョルンさんの恋心に、恋愛から一番程遠そうな兄さんが気付くなんて…こりゃビックリ‼


「って、あ!アレクシさん…?」


そこに居たのは結構長い付き合いになるのに今まで見た事無い、初めて見るうろたえっぷりで戸惑うアレクシさんだった…。
アレクシさん、手に持って汗拭いてるのインクの吸い取り紙だから…あ~あ、顔がインクまみれだよ…


とにかく、兄さんのせいで図らずもアレクシさんにビョルンさんの恋心は伝わってしまった。
部屋に戻ってこのことをユーリに話すと、「君たち兄弟は人の恋心を知らせて回るのが特技なのかい?」と冷静に言われてしまった…。聞いたこと無いから、そんな特技…

けどアレクシさんはそれ以来、少しビョルンさんを意識しているようで…この先は分からないけど良い雰囲気なんじゃないかと思う。



後日、「どうしてビョルンさんの大切な人がアレクシさんだって分かったの?」という僕からの素朴な疑問を手紙で送ると兄さんからの返信にはこう記してあった…

「ビョルンはアレクシの護衛だろ?護衛にとって一番大切なのは護衛主だろ?」…と…。


あ、そう言う意味…









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