チートな転生農家の息子は悪の公爵を溺愛する

kozzy

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おまけ ⑧

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ついにその日が来てしまった…。アルパ君の合同お見合いの日が…っ!

顔だけは良かったアデリーナとマテアスの因子はアルパ君に余すとこなく受け継がれ、その存在感の無さや覇気の無さで失われていた輝きさえこのリッターホルムで開花した。
今彼はまるで『人形愛の世界』で見たビスクドール、それもちょっと不気味なアンティークじゃなく、現代作家のドールのようだ。

一人だけ世界観が違う…

ってイヤイヤ、僕だって負けてないから。とってもチャーミングだから。僕だっていつもユーリから花の精って言われてて…

「何の花?」って聞いたら「君と私の愛のシンボル。どんぐりだ」って。

どんぐり花じゃないからね…


って、そんなことはいいんだけど、お見合いの前にアルパ君にはもう一度ちゃんと意思確認をしておきたい。無理強いなんて…、そんなの僕は絶対嫌だから。


「アルパ君はどこだ…。すっかり屋敷に馴染んで…おかげで所在が…ん?あれは…」


そこは従士たちの宿舎横、皆が思い思いに過ごすパティオみたいな場所だ。そこのベンチに探していたアルパ君、そして…隣にはビョルンさんが居る…え…?修羅場?


「アルパ様、その…お見合いなさると聞きまして…。」
「ええ。ユーリウス様はじめ、皆様が良き方をお選びくださいまして。6人ほどの女性と…、少し多いと思うのですけど、でも仕方ありませんね。色々な貴族家との駆け引きもありますし」

「良いのですか…?」
「何がですか?」

「アルパ様はその…、アレクシ様を…。あの方を慕っておられるのではないのですか?」
「ビョルン…」


ド直球ー!マジかビョルンさん!皆その件にはなるべく触れないようにしてたのに…躊躇ないな!男らしい男らしいとは思ってたけど…


「このまま気持ちを押し隠してお見合いなどなさっても良いのですか?せめてお気持ちだけでも伝えられては…後悔なさいますよ?」


ビョルンさん…、彼は意外なことにアルパ君の背中を押そうとしている。恋敵の背中を押すなんて…ああ、彼はやっぱりしっかり者のお兄ちゃんだ。タピオ兄さんにはジェラシー全開だけど…


「ビョルン…、ふふ。そんな風に思ってらしたんですね。でも違うのですよ。そうではないのです。」
「アルパ様…」

「確かに私はアレクシ様にほのかな想いを抱いておりました。でもそれは…愛とか恋とか、そう言ったものではないと思うのです。」
「とてもそうは思えません…」

「…あの時の私には他に誰も頼る者がいなかった…。父方のペルクリット家は爵位はく奪により散りじりになり…、あの時共に居た母方の祖母も心労がたたり倒れてしまいました。私を見る周囲の眼は王家に仇を成した稀代の悪女の息子にけっして優しくはなかった…」


そうだろうとも…。アレクシさんから聞いたあの時の彼は収監される寸前だった。
そこへ現れたのがアレクシさんだ。彼がアルパ君の為にどれほどあの時骨折ったか…。


「ふふ。騎士様のように見えたのです。私を守る騎士様に…。実際アレクシ様が居なければ私は今ここにはいなかった。」
「分かります。アレクシ様は誰よりも騎士道をお持ちの方です」

「でもこうして自分の人生を生きられるようになり、悩みながらも模索するうちにこれではいけないと思ったのです」
「いけないとは…?」

いけないとは?


「私は今まで誰かに頼り誰かの言う通りになって生きるだけでした。でも今はそうではありません。私もアレクシ様のように、ノール様のように、そしてアッシュ様のように誰かを護れる人になりたい。」

「護れる人に…」

「2年前のあの頃、私はアレクシ様にいつまでも守られたいと思った。それは恋ではなくきっと依存だったのです。けれど私はもう成長しなくてはならない。その為にむしろ婚姻を望んでさえいるのですよ。両親とは違う…温かさに満ちた家庭を誰かと築き、両親とは違う独りよがりでない愛情を子供に注ぐ…。その時初めて私は呪縛から逃れられる気がするのです」

「アルパ様…!」

アルパ君…!


「私が言うのもおかしな話ですが…、ビョルン、アレクシ様をよろしくお願いしますね。あの方は人のために自分の気持ちを押し隠してしまわれる方だから…。私と居て複雑でない訳がなかったのに…」

「そんなことありません。アレクシ様は心からアルパ様を思い遣っておられました。でも…お任せください。アレクシ様はきっと私が幸せにして見せます!」


いやビョルンさん…、まだその想いは一方通行だからね?


「それからアルパ様。アルパ様の想いは依存などではなくやはり恋だったと思います。その想いは大切になさいませ。それも人生の彩りですから」





いやぁ~、いいこというなビョルンさん。人生の彩りか…。本当にね。

でも思いがけぬ形でアルパ君の気持ちは分かった。ならば尚のこと、彼が温かな家庭を持つにふさわしい令嬢を見極めなければ!





「あのアッシュ様…。お見合いに同席なさるのですか?」


あー!そのキョトン、いつも思うけど反則だから!


「同席するよ。僕は義理の兄だし。令嬢方、この僕のお眼鏡に叶わない限りアルパ君へはたどり着けないと思ってもらおう。準備は良いかな?」



「結構ですわ!このわたくし、ユングリング侯爵家の娘として必ずやアッシュ様を倒して見せます!」

いや倒しちゃダメだから…

「アルツフェルト家の二女として最善を尽くしはしますが…ふぅ…面倒な小姑だこと」

否定はしない!

「兄オトマールからファークランツ家の為にと言われて来ましたが…家に帰って静かに思想に耽りたいですわ…」

さすがインテリ系オトマールさんの妹…

「ルステンソン家の名誉にかけて…というのは建前で、ヴェスト様を眺めに来ましたの。ああ美しい…」

問題外。

「あーこれこれ、これが食べたかったの~。ケーニマルク領では食べられない焼き菓子、最高ですわぁ」

……



こ、こいつら…!6家のご息女は曲者ぞろいか!さすが高貴なる一族の血筋…、癖が強いっ!

おやぁ?彼女は…?




「あ、あの…。わたくしのような新参がこの様な場所に申し訳ございません。場違いでございますわね…」


そこに居たのは静かにチョコンと座っている、水色のドレスとカチューシャがどこはかとなくアリスを思わせる、そんな美少女。ああっ!コルトバ侯のお孫さんかっ!じじバカ全開でねじこんできた…っていう…

彼女は言うなればセレブ美女に囲まれた甘ロリータ。確かにある意味場違いではある。だがそこがいい!


「わたくし静かにお茶をして静かに帰ります。どうぞお気になさらないでくださいまし。それからこれを」

「これは?」
「アルパ様にお近づきの印にと思いまして。白うさぎの帽子、わたくしの手編みですの。せめてこれだけはアルパ様に…」

「アリスインワンダーランド…」


鉄壁のアッシュゾーンを通過したのはなんと、超絶過保護なおじいちゃんに徹底して社交界から切り離され、田舎で浮世離れした生活を続けていた素朴な、そして穢れ無き美少女だった…。


コルトバ侯グッジョブ!




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