チートな転生農家の息子は悪の公爵を溺愛する

kozzy

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ミチュペチュへの旅 ②

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そんな訳でやって来たのは南の端の辺境領。

とても快適だった気球の旅、翼竜の旅と基本ユーリの行動は変わらないのでそこは割愛する。空だと僕に逃げ場がないと思ってやりたい放題になるんだよね、ユーリってば…

しかし…ここが辺境かぁ…



「アッシュ、この辺境伯領はね、聖王国でもっとも標高が低く真冬でさえ上着が要らないのだよ。」


山岳地帯と熱帯雨林、所によっては乾燥地帯に囲まれたここは前世で言ったら南米に似た風土の領だ。おまけに辺境伯邸のこの豪奢なバロック建築…、まるでエクアドルのキト市街みたい。
すこし山側に行くと立派な滝があったり、砂漠地帯には地上絵があったり、モアイ像に似た像が立ち並ぶ草原まであるって言うし…あー、WEB小説の投稿者に一人居たな、南米ヲタク…。本編に出てこない辺境だからって目一杯設定遊んだな?


「ねぇユーリ、10日間で周りきれるかなぁ…」
「一度に無理なら何度でもこればいい。私たちにはいくらだって時間があるだろう?だがそのためにも辺境伯とは懇意にしておかなくてはね」


辺境伯…、どんな人だろうか…。






「よく来たユーリウス、そしてアッシュ。伯よ、この小人が熱気球の発案者だ」
「こっ!小人っ!」


ケネス…後で〆る…


「おお!これはこれは北の公爵閣下。ユーリウス様であらせられるな。このような無骨な所へよくぞ来られた。このような辺境への旅がこれほど容易になったのも、ここにおられる細君のおかげであるか。感謝する」グワシ!

「いいっ!」

手砕けるっ!砕けるからっ!

「すまないベングト辺境伯殿。私の妻はとてもか弱いのだ。その手を離してやってくれないか」
「え…、いや全然平気だし。なんならもっと力込めてくれても大丈夫だし。金属だって曲げれるし。錫だけど…」

「錫…」


僕のささやかなプライドを下向いて笑ったのは護衛で付いてきたイングウェイさんだ。失礼な…

とにかく。この南の辺境伯、ベングトさんは力強くて大柄で、とても豪快な人だった。いやぁ良かった。大将軍閣下!みたいな怖い人が出てきたら仲良くなれなかったよ…


「ケネス、さっそくだけど紹介してよ。例の…、可憐なマチルダさんを」






ドキドキ…ドキドキ…

今僕とユーリは辺境伯邸のサロンでご息女の登場を待ちわびている。
ほぼほぼ本決まりになりつつあるケネスの正妃候補。身分の上では申し分なしだ。

と言うか、何故正妃選びがここまで混迷を極めたかと言うと、それはひとえにケネスの過去の所業タラシがひどすぎたからだ。おかげで6家のあの癖の強いご息女たちは、みなそれは上手いこと言って辞退した…。

ちなみに今の側妃は過去ちょっと手を出しちゃった女性らしい。なんかお兄さんのおかげで?最終的に側妃となったんだとか。それは…いいのか?
笑えることに実はケネスの側妃…、もう一人いるのだ。第一側妃の経緯を聞いた長い付き合いの遊び相手が、「私にも責任取りなさいよ!」と怒鳴りこんできたらしい。大店の令嬢だけに正妃にはなれなかったみたいだけど…強者だ。


「お待たせして申し訳ございません。辺境伯三女のマチルダと申します。公爵閣下に置かれましては遠路はるばるおいで頂き、こうして御目文字叶いましたこと大変光栄に思いますわ。」

「楽にしたまえ。君は未来の王妃となる女性だ。」
「いえそんな…。まだ正式に書類を取り交わしたわけではございませんもの。本当にいいのかしら…。ケネス様のお相手がこんな辺境しか知らないわたくしなどで…。洗練された王都の侯爵令嬢のお方々に見劣りしそうで申し訳ない気持ちですの。」


おおっ!楚々とした美人じゃないか!どこはかとなく王妃様に似ている…。ケネス…、マザコン疑惑…。


ボフッ!

「ちょっ!なにすんの!」
「いや…。お前今良からぬことを考えたであろう…」


ケネスの感知能力が上がっている…。


「まぁケネス様。公爵夫人にクッションをぶつけるなど…、…いけませんわよ。悪い王子様ですわね。めっ!」
「す、すまぬマチルダ…。今の、今のをもう一回…」


…ケネスお前…

だがしかし。

僕のこのホームズなみに何でも見つける眼力は、ほんのちょっとの違和感すらも見逃さない…。
マチルダさん…、めっ!の眼がマジだった…。これは…




ユーリが辺境伯、そしてケネスと(多分)婚姻の打ち合わせをしている間に、僕はマチルダさんをチェスに誘った。古今東西、勝負事にこそ人間性は現れるものだ。


彼女の打ち筋は実に大胆だ。大人しそうな顔して実に不敵だ。その戦略は自信と決断力に満ち溢れている。
そして分かった!彼女の振舞いは恐らく計算され尽くしたもの!

可憐さを装っているが…多分ホントは知的美人だ。だって天真爛漫な言動は時々レーザービームのようだし、純朴な佇まいで居ながら、その眼は常に一手先を読んでいる。

間違いない…。彼女は猫を被っている…。それも相当巧妙な猫だ。ノルウェージャンである猫を何故か長毛の雑種と言い張っている…。


「マチルダさん…、本当のことをお教えください。僕はケネスの、あー、ゴホン、友人として彼の不幸を見逃せない。あなたの狙いは一体…」

「ばれてしまっては仕方ありませんわね。わたくしの正体は…シグリットの友人!コーネイン侯爵家の夜会で意気投合した彼女を通して元老院から頼まれましたの。この国の未来のためにどうか殿下を支えて欲しいと。一皮むけたとは言えともすればすぐにフラフラと脱線する殿下をうまく操縦できるのはこの辺境の軍師である貴女しか居ない、と。」

「なぬっ!」

「そうまで言われては仕方ありませんわ…。それで戦略をたてましたの。ケネス様の心を的確に射止めるにはどうすれば一番効果的かつ効率的か…と。わたくしの読み、ピタリ的中しましたわね」

「え…、そこに愛は…」

「勿論ございますわ。わたくしああ言った単純で素直な方大好きですのよ。わたくしの掌でコロコロして…とても可愛らしい。御心配には及びません。わたくし殿下を歴代の誰よりも慕われ尊敬される王へと導いて見せますわ」



や、頼もしい…。ケネス…。溜まった年貢、納めてください…






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