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ミチュペチュへの旅 ③
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この大自然に囲まれたグランヴィル辺境伯領は西部と東部に分かれている。
同じく自然に囲まれたリッターホルムに住む僕らではあるけれど、その質感というか、空気感と言うか…、真反対の風土だ。
領主である辺境伯はこの西部にある本邸に留まり、後継者である長男が東部を抜かりなく治めている。
ここは他国への盾となる土地。独特の発展を遂げた領だ。
西部にはすこし古風な領都があり、その中心にある大きな公園には不思議な石像が点在していると言う。
そして中心から離れた西部の最西には立派な神殿や要塞があり、そこにはすっごく背の高い石像があるらしい。…石像ばかりじゃないか!
あー、んん!まぁいい、まさにその西部の最西こそが北の賢者、スヴァルトさん因縁の地、ヘイチだ…。
滞在中に花を手向けに行く事は既に辺境伯へ伝えてある。
教授たちは既に一度訪れているはずだが、そこで彼らは何を想ったのか…
…、多分なにも想ってないな。
あの二人が考える事と言ったら、呪物とか、呪物とか、呪物とかなんだから…。
その教授たちが今滞在しているミチュペチュは東部にある。
天空の遺跡と呼ばれるそこには、歴史の浪漫が全て詰まっている!
ああ楽しみだ…
そして西と東を繋ぐ中央には手付かずのまま守られた大自然の宝箱。
大湖畔にはモアイみたいな像が並んでいたり、ナスカみたいな地上絵があったり、いやいやそれだけじゃない。修行僧も真っ青って言うとてつもない滝があったりもする。
…南米詰め合わせかいっ!
しかし…、流石に今回中央にそれほど時間は割けないな…残念!
それでもモアイくらいなら通り道に寄れるだろうか。
辺境伯が開いてくれた晩さん会には、物理的距離で滅多に会えない北の公爵にご挨拶しようと、辺境の貴族たちが余すことなく集まった。
「なんで南の人ってああもガタイが良いんだろう…?ユーリ…、むさ苦しいのに囲まれて大変だろうけど頑張ってね…」
「辺境の民はここから出ないものが多いからね。そういう民族だと思ったほうがいい。私は大丈夫だ。後で君に癒してもらうから。…そういえば君も大変そうだが大丈夫かい?」
「え、何のこと?」
「あらぁ~!あなた様があのオーガニックスキンケアコスメ〝マーニ”の開発者、アッシュ様でいらっしゃるのね~!」
「相談がございますの!このシミ!このポツンとできた茶色いシミ!何とかならないかしら…」
「いいえそれよりこの目尻ですわ!内助の功をと思い夫に付き合い一晩中ポーカーに興じたばかりに…ああっ!」
「新商品は!新商品はまだかしら!?」
「もっとこの南に流通させていただかなくては困りますわ。南は北以上に乾燥しますし日差しも強うございますのよ!どうお考えなのかしら!」
「あう…」
ゴールデンに囲まれたチワワみたいになった僕を、ユーリが「妻を返していただけますか」と、さりげなく救出してくれたり、マチルダさんが「ではこの辺境に支所をつくりますわね」と、援護してくれたり、ケネスが「シグリットが試供品の麹パックで肌が白くなったと絶賛しておったぞ!」「なんですって!」、などとさらに燃料を投下してみたり…
もみくちゃになって過ごした3日間。延々続いた晩餐会と茶会と言う名の苦行を乗り越えようやくやってきたのは、最西の地へイチだ!
「あー、やっと開放された…」
「女性の美に対する執着は実に恐ろしいものだ…」
「古今東西、それで破滅しちゃう人も居るからね。それよりユーリ、花持った?」
「勿論だ。スヴァルト殿は今やリッターホルムに無くてはならない恩方だからね」
アラート…として?
と言うのは冗談で!
このヘイチはまだ聖王国が高貴なる一族と呼ばれていた大昔、征服を試みるボルティス国や黒ドワーフなどの亜人と絶え間なく争そっていた場所なんだとか。
だから誰だよ…そんな設定作ったの…
とにかくそのため古代の要塞や昔の拠点が廃墟になって残っていたりする。
とくにその要塞では、当時の亜人が持ち込んだ呪物が時折発掘されると言い、それを求めて訪れたのがスヴァルトさんと教授だ。
アデリーナとの戦いが済んで、翌夏速攻出かけていったのには驚いた。あの行動力…見習うべきものがある。
でも帰ってきた二人が、特にスヴァルトさんが微妙な反応だったのはどうしたことだろう…。
もっと興奮して帰ってくると思ったのにな。
やっぱり現地に来たら嫌な思い出でも蘇って来たんだろうか…なんてあの時は同情してたんだけど…
「『ヴァシル像』…こ、これって…」
「巨大な聖人の像…。アッシュ、もしやこれは…」
「もしかしなくても…多分北の賢者様だよね?」
北で亡くなった南の賢者が北で伝説の妖精になった様に、南で亡くなった北の賢者もまた、南で巨大な像となり弔われ祀られたのか…。
だからってこれは…。苦悶に満ちた賢者様の顔。きっと威厳、とか崇高さ、とか、そう言ったのを表現しようとしたんだろうけど…
「これ…、ありがたいけど…嬉しいことだけど…体長40メートルはありそうな寝起きの像…」
「ああ。本人が見たら少し…。お会いしたら聞いてみよう。この像は似ているのか、と」
「止めたげて、ユーリ」
寝起きの顔にしか見えない…聖人の像。南にもっとましな工芸家は居なかったんだろうか…
そういやこの土地、どっちかと言うと体育会系だもんな…
そりゃスヴァルトさんも微妙な顔するって。顔無いけど…
同じく自然に囲まれたリッターホルムに住む僕らではあるけれど、その質感というか、空気感と言うか…、真反対の風土だ。
領主である辺境伯はこの西部にある本邸に留まり、後継者である長男が東部を抜かりなく治めている。
ここは他国への盾となる土地。独特の発展を遂げた領だ。
西部にはすこし古風な領都があり、その中心にある大きな公園には不思議な石像が点在していると言う。
そして中心から離れた西部の最西には立派な神殿や要塞があり、そこにはすっごく背の高い石像があるらしい。…石像ばかりじゃないか!
あー、んん!まぁいい、まさにその西部の最西こそが北の賢者、スヴァルトさん因縁の地、ヘイチだ…。
滞在中に花を手向けに行く事は既に辺境伯へ伝えてある。
教授たちは既に一度訪れているはずだが、そこで彼らは何を想ったのか…
…、多分なにも想ってないな。
あの二人が考える事と言ったら、呪物とか、呪物とか、呪物とかなんだから…。
その教授たちが今滞在しているミチュペチュは東部にある。
天空の遺跡と呼ばれるそこには、歴史の浪漫が全て詰まっている!
ああ楽しみだ…
そして西と東を繋ぐ中央には手付かずのまま守られた大自然の宝箱。
大湖畔にはモアイみたいな像が並んでいたり、ナスカみたいな地上絵があったり、いやいやそれだけじゃない。修行僧も真っ青って言うとてつもない滝があったりもする。
…南米詰め合わせかいっ!
しかし…、流石に今回中央にそれほど時間は割けないな…残念!
それでもモアイくらいなら通り道に寄れるだろうか。
辺境伯が開いてくれた晩さん会には、物理的距離で滅多に会えない北の公爵にご挨拶しようと、辺境の貴族たちが余すことなく集まった。
「なんで南の人ってああもガタイが良いんだろう…?ユーリ…、むさ苦しいのに囲まれて大変だろうけど頑張ってね…」
「辺境の民はここから出ないものが多いからね。そういう民族だと思ったほうがいい。私は大丈夫だ。後で君に癒してもらうから。…そういえば君も大変そうだが大丈夫かい?」
「え、何のこと?」
「あらぁ~!あなた様があのオーガニックスキンケアコスメ〝マーニ”の開発者、アッシュ様でいらっしゃるのね~!」
「相談がございますの!このシミ!このポツンとできた茶色いシミ!何とかならないかしら…」
「いいえそれよりこの目尻ですわ!内助の功をと思い夫に付き合い一晩中ポーカーに興じたばかりに…ああっ!」
「新商品は!新商品はまだかしら!?」
「もっとこの南に流通させていただかなくては困りますわ。南は北以上に乾燥しますし日差しも強うございますのよ!どうお考えなのかしら!」
「あう…」
ゴールデンに囲まれたチワワみたいになった僕を、ユーリが「妻を返していただけますか」と、さりげなく救出してくれたり、マチルダさんが「ではこの辺境に支所をつくりますわね」と、援護してくれたり、ケネスが「シグリットが試供品の麹パックで肌が白くなったと絶賛しておったぞ!」「なんですって!」、などとさらに燃料を投下してみたり…
もみくちゃになって過ごした3日間。延々続いた晩餐会と茶会と言う名の苦行を乗り越えようやくやってきたのは、最西の地へイチだ!
「あー、やっと開放された…」
「女性の美に対する執着は実に恐ろしいものだ…」
「古今東西、それで破滅しちゃう人も居るからね。それよりユーリ、花持った?」
「勿論だ。スヴァルト殿は今やリッターホルムに無くてはならない恩方だからね」
アラート…として?
と言うのは冗談で!
このヘイチはまだ聖王国が高貴なる一族と呼ばれていた大昔、征服を試みるボルティス国や黒ドワーフなどの亜人と絶え間なく争そっていた場所なんだとか。
だから誰だよ…そんな設定作ったの…
とにかくそのため古代の要塞や昔の拠点が廃墟になって残っていたりする。
とくにその要塞では、当時の亜人が持ち込んだ呪物が時折発掘されると言い、それを求めて訪れたのがスヴァルトさんと教授だ。
アデリーナとの戦いが済んで、翌夏速攻出かけていったのには驚いた。あの行動力…見習うべきものがある。
でも帰ってきた二人が、特にスヴァルトさんが微妙な反応だったのはどうしたことだろう…。
もっと興奮して帰ってくると思ったのにな。
やっぱり現地に来たら嫌な思い出でも蘇って来たんだろうか…なんてあの時は同情してたんだけど…
「『ヴァシル像』…こ、これって…」
「巨大な聖人の像…。アッシュ、もしやこれは…」
「もしかしなくても…多分北の賢者様だよね?」
北で亡くなった南の賢者が北で伝説の妖精になった様に、南で亡くなった北の賢者もまた、南で巨大な像となり弔われ祀られたのか…。
だからってこれは…。苦悶に満ちた賢者様の顔。きっと威厳、とか崇高さ、とか、そう言ったのを表現しようとしたんだろうけど…
「これ…、ありがたいけど…嬉しいことだけど…体長40メートルはありそうな寝起きの像…」
「ああ。本人が見たら少し…。お会いしたら聞いてみよう。この像は似ているのか、と」
「止めたげて、ユーリ」
寝起きの顔にしか見えない…聖人の像。南にもっとましな工芸家は居なかったんだろうか…
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