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ミチュペチュへの旅 ⑥
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「ところで教授たちが好きなのは呪物とか呪術とかの類じゃない。ここよりヘイチの方が楽しいんじゃないの?」
その荘厳にして偉大なるウンカの神殿を見学しながら、僕はふと思い至って教授に聞いてみた。
だって相当お気に入りだもん。
「あれはあれで素晴らしい土地だが、このミチュペチュはだな、その存在そのものが超常なのだ。人間の理解を遥かに超えた摩訶不思議な遺跡。それがこのミチュペチュだ。」
『呪物とは次元の違う神秘があるのだ。この神殿跡には見えざる力、超自然の何かがある。我らの分野だ』
「へぇー」
オカルトヲタクに反応するとめんどくさいのは前世も今世も変わらない。ここはスルーするのが吉と見た。
「教授、一体あれらの巨石を古代の彼らはどうやって運んだとお考えですか?」
「うむ、それはだな、一説にはこう言われておって…」
「それにあの岩石の切断面。あれほど滑らかな断面。古代においてどのような刃物を用い切り出されたのか」
『私の考えではつまり…』
ああ…、ユーリがうっかり乗ってしまった…。
そう言えばユーリはこのミチュペチュに入ってから実に楽しそうだ。こんなウキウキしたユーリを見るのは久しぶりかもしれない。始めてマァの村は来た時以来か!あのトネリコを見るユーリもこんな顔してたっけ。
歴史を感じさせる荘厳なものが好きなのか…。そう言えば古い美術品なんかも好きだもんな。
僕は古い物にももちろん歴史や伝統を感じて感動するけど、どちらかと言ったら進化していくものを見るのが好きだ。
パソコンやモニターなんかも新製品が出るとすぐに高スペックのものに買い替え…おや?スヴァルトさんがこちらを見ている。気がする。
「どうしましたスヴァルトさん」
『いや、ユーリ君に聞いたが西の『ヴァシル像』、そして中央で〝守護神の石像”を見てきたと…』
「あれね…」
『あれほど巨像にせぬでもよいものを…』
「何でもデカい方がいいってもんでも無いのにね」
不思議な連帯感が今芽生えた。
「それよりアッシュ。さきほど現地の者から聞いたのだけどね、このミチュペチュには人魚の伝承があるらしい」
「人魚…」
「公爵様、それはあれだな」
ユーリが原住民から聞いてきた伝承。
なんでもこの遺跡の山を越えた更に向こうの山の奥には全く別の遺跡があって、そこには人魚が住んでいるのだとか…。
でもその人魚を追い求めて幻の遺跡を探しに行って戻ってきた者は一人としていないのだ…
怪奇!山中の人魚!
………
「いやいやいやいや。山の向こうの山って、要するにボルティス国じゃん。人魚って…アプカルルのことでしょ?なんだって山に居たのか知らないけど…。帰って来ないって…捕縛されたとか?あ!食われた!あ痛!教授!何すんの!」
「お前は本当にロマンが無いな!」
「アッシュ、こういうことは分かっていても言わないものだ」
『アッシュは現実論者であるのか?』
「フルボッコ…」
イヤめっちゃファンタジー論者だからね?って言うかファンタジーの体現者だからね?
2時間ほどをかけてその神殿をゆっくり見てまわると少し遅めの昼食だ。
「二人ともこちらだ。親しくなった村の夫婦が昼食を用意してくれるらしい。現地民の食事だぞ」
「えぇー、楽しみ!」
その村には放牧中の牛とアルパカが自由気ままに遊んでいる。アルパカか…。名前のよしみでアルパ君に何かアルパカ製品でも買って行ってやろうかな。
「わぁ!お料理が一杯!」
「ああ。実に豪勢だ。」
地元の人が地元の食材を用いた御馳走。そのメニューとは…
トウモロコシを発酵させたお酒にトウモロコシと羊肉の揚げ物、茹でたトウモロコシもあるしトウモロコシ粉を蒸したパンみたいなものもある。
ああそうそう。サラダはトウモロコシとチーズと木の芽を和えたもので、スープはコーンスープだ。
イモ尽くしのマァの村、再び…!トウモロコシ尽くしやないかーい!
「アッシュ、これは北で始めたトウモロコシとは違うようだ…」
「ここのは種類が違うんだよ。うちのはスイートコーンだから。ここのは言うなればトウモロコシの先祖だ」
『このトウモロコシを用いた酒は神への供物。北の里人が呪術と共存したように南の、特にこの辺境の里人は太陽と共存したのだな』
「いくら調べても調べ尽くせぬ!実に素晴らしい!神秘の宝庫だ!」
ほろ酔い気分の教授はこの後下山できるんだろうか?
実に楽しそうな教授とスヴァルトさん。そして剣と話す教授を気にも留めない村の夫妻。良い光景だな…。
北と南、風土の違いと言い切るには余りに違いすぎる末路。その大きな理由がたった一人の欲望だったなんてね…。
過ぎたるは猶及ばざるが如し…祖母の格言がまた一つ胸に思い浮かんだ…。
その荘厳にして偉大なるウンカの神殿を見学しながら、僕はふと思い至って教授に聞いてみた。
だって相当お気に入りだもん。
「あれはあれで素晴らしい土地だが、このミチュペチュはだな、その存在そのものが超常なのだ。人間の理解を遥かに超えた摩訶不思議な遺跡。それがこのミチュペチュだ。」
『呪物とは次元の違う神秘があるのだ。この神殿跡には見えざる力、超自然の何かがある。我らの分野だ』
「へぇー」
オカルトヲタクに反応するとめんどくさいのは前世も今世も変わらない。ここはスルーするのが吉と見た。
「教授、一体あれらの巨石を古代の彼らはどうやって運んだとお考えですか?」
「うむ、それはだな、一説にはこう言われておって…」
「それにあの岩石の切断面。あれほど滑らかな断面。古代においてどのような刃物を用い切り出されたのか」
『私の考えではつまり…』
ああ…、ユーリがうっかり乗ってしまった…。
そう言えばユーリはこのミチュペチュに入ってから実に楽しそうだ。こんなウキウキしたユーリを見るのは久しぶりかもしれない。始めてマァの村は来た時以来か!あのトネリコを見るユーリもこんな顔してたっけ。
歴史を感じさせる荘厳なものが好きなのか…。そう言えば古い美術品なんかも好きだもんな。
僕は古い物にももちろん歴史や伝統を感じて感動するけど、どちらかと言ったら進化していくものを見るのが好きだ。
パソコンやモニターなんかも新製品が出るとすぐに高スペックのものに買い替え…おや?スヴァルトさんがこちらを見ている。気がする。
「どうしましたスヴァルトさん」
『いや、ユーリ君に聞いたが西の『ヴァシル像』、そして中央で〝守護神の石像”を見てきたと…』
「あれね…」
『あれほど巨像にせぬでもよいものを…』
「何でもデカい方がいいってもんでも無いのにね」
不思議な連帯感が今芽生えた。
「それよりアッシュ。さきほど現地の者から聞いたのだけどね、このミチュペチュには人魚の伝承があるらしい」
「人魚…」
「公爵様、それはあれだな」
ユーリが原住民から聞いてきた伝承。
なんでもこの遺跡の山を越えた更に向こうの山の奥には全く別の遺跡があって、そこには人魚が住んでいるのだとか…。
でもその人魚を追い求めて幻の遺跡を探しに行って戻ってきた者は一人としていないのだ…
怪奇!山中の人魚!
………
「いやいやいやいや。山の向こうの山って、要するにボルティス国じゃん。人魚って…アプカルルのことでしょ?なんだって山に居たのか知らないけど…。帰って来ないって…捕縛されたとか?あ!食われた!あ痛!教授!何すんの!」
「お前は本当にロマンが無いな!」
「アッシュ、こういうことは分かっていても言わないものだ」
『アッシュは現実論者であるのか?』
「フルボッコ…」
イヤめっちゃファンタジー論者だからね?って言うかファンタジーの体現者だからね?
2時間ほどをかけてその神殿をゆっくり見てまわると少し遅めの昼食だ。
「二人ともこちらだ。親しくなった村の夫婦が昼食を用意してくれるらしい。現地民の食事だぞ」
「えぇー、楽しみ!」
その村には放牧中の牛とアルパカが自由気ままに遊んでいる。アルパカか…。名前のよしみでアルパ君に何かアルパカ製品でも買って行ってやろうかな。
「わぁ!お料理が一杯!」
「ああ。実に豪勢だ。」
地元の人が地元の食材を用いた御馳走。そのメニューとは…
トウモロコシを発酵させたお酒にトウモロコシと羊肉の揚げ物、茹でたトウモロコシもあるしトウモロコシ粉を蒸したパンみたいなものもある。
ああそうそう。サラダはトウモロコシとチーズと木の芽を和えたもので、スープはコーンスープだ。
イモ尽くしのマァの村、再び…!トウモロコシ尽くしやないかーい!
「アッシュ、これは北で始めたトウモロコシとは違うようだ…」
「ここのは種類が違うんだよ。うちのはスイートコーンだから。ここのは言うなればトウモロコシの先祖だ」
『このトウモロコシを用いた酒は神への供物。北の里人が呪術と共存したように南の、特にこの辺境の里人は太陽と共存したのだな』
「いくら調べても調べ尽くせぬ!実に素晴らしい!神秘の宝庫だ!」
ほろ酔い気分の教授はこの後下山できるんだろうか?
実に楽しそうな教授とスヴァルトさん。そして剣と話す教授を気にも留めない村の夫妻。良い光景だな…。
北と南、風土の違いと言い切るには余りに違いすぎる末路。その大きな理由がたった一人の欲望だったなんてね…。
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