チートな転生農家の息子は悪の公爵を溺愛する

kozzy

文字の大きさ
243 / 277
連載

ミチュペチュへの旅 ⑦

しおりを挟む
10日ほどを予定していたこの東部での滞在。それを1週間でお暇するのには止むを得ない理由がある。


「いやぁ、アッシュ殿は実に可愛らしい。こう…ぎゅぅぅっ!と、したくなるような…」

「え…そのガタイでされたら僕死んじゃうから…」

「だが、そこの出窓に飾っておきたい可愛さだ。」
「出窓…?」

「そこのサイドチェストでもいいかもしれない。あなたが人妻でさえなければ。うーん、惜しいな…」

「いや何にも惜しくな」
「私の妻に秋波を送るのは止めていただこうか。ご嫡子オスカー殿。」

「いやいや、誤解召されるなユーリウス公爵閣下。私はただ小さきものを傍に置くのが好きなのですよ。例えば我が家の犬はこの領で人気のドゴ・アルヘンティーノ ではなくテチチです。」

「テチチ…、あっ!チワワか…」

「温室に居るのはコンドルではなく数羽のハチドリです。この腕にとまったハチドリは可愛いですよ。」

「後ほど見せて頂こう…」

「別室にはナキウサギもいるのですよ。彼らのために専属の冷室を作ったのですが、侮るなかれ。彼らは小さいのにタフなのです」

「…それは興味深い。まるで私の妻のようだ」
「ユーリ?」

「なにしろ私はこの体格ですのでね。それだけでなくこの領の女性は大きな者が多いのですよ。いやぁ親子は好みが似るものです。それゆえ父も母の小柄なところに一目惚れをしたのだとか。おかげで妹たちは程よい高さになりました。はっはっは」


確かにここの女性たちはやたらでかい…辺境伯、でかしたと言うべき…?


「小型種が好きなのは理解しました。なおのこと妻に近づくのは遠慮願いたい」
「小型種って?」

「そうですか…。いや実に残念…いや全く…せめて持ち上げてみても?」




といったセクハラに耐えかね、夫夫揃ってスケジュールの前倒しを決定したのだ。


そんなわけで今夜はお別れの晩餐会。
と言ってもここに居るのは役人ばかり。納会みたいな雰囲気なのもご愛敬だ。

ちなみに教授はこの辺境伯別邸に泊まったことは無いのだとか。
現地の人に混ざってこそ真の理解がなんとかかんとか…そう言っていつも村落にお邪魔するのだとか。
確かにあの気の良い現地の人は快く泊めてくれそうだった。

その教授は一足先にリッターホルムへと帰っていった。新学期があるからね。むしろ僕たちが来るのをギリギリまで滞在を伸ばして待っててくれたんだよね。
おかげでとても楽しい観光が出来た。二人には感謝だ。


さて。当主代理オスカーさんには三人の妹がいる。その一人が…言うまでもない、マチルダさんだ。
つまりあと二人妹がいる訳で、そのお二人はここ東部に居る。お兄さんの手助けをしているらしい。


「ヒルダさん、アルミナさん。短い間でしたがお世話になりました。」
「機会があればお二方にもリッターホルムへ来ていただきたい。北の大自然もなかなかなものだ。ぜひ見比べていただければ」

「まぁ公爵閣下。そのような対抗心をお持ちでしたの?ほほほ、北…ようございますわね」キラリ
「うふふ。わたくし南から出たことがありませんの。…それ…ご招待…と思って構いませんわね?」ギラリ

「「…北にスラリとした美形の殿方は居るかしら?」」


2人とも目がマジである…。
そうか…。この二人はスラリとした美形が好きなのか…。でもここにはイケメンでもがっちりしたマッチョイケメンしか居ない…。

だから二人とも独身なんだな…。

因みにヒルダさんの名前もアルミナさんの名前も意味は戦士である…。南って…








「ユーリ!厩舎にリャマが居る!」


明日ここを発つというその前日。僕とユーリはお土産を買いに小さな広場へ行く事にした。
そして玄関に向かおうとしたところ、何故か厩舎へと案内されそこで目にしたのがリャマだった。


「せっかくですからこれに乗って行ってはいかがです?閣下は馬に…」
「無論乗れるとも」

「アッシュ殿は…」

「妻が乗るのは私の」
「何言ってんのユーリ!あー、んん!気にしないで今のは!」

「私の前と言おうとしたのだが…」
「あ…」


墓穴である。




そこは小さなマーケット。狭い場所いっぱいにぎゅうぎゅうとお土産屋さんがひしめいている。

とてもカラフルな織物や編み物。木の皮を編んで作った工芸品もある。
凄く綺麗な石を使ったアクセサリーや、やっぱりすごくカラフルに着色したお守りなど。盛りだくさんだ。
一番人気は勿論アルパカ製品。暖かそうなそれはリッターホルムでも使えそうだ。

僕は宣言通りアルパ君にアルパカのミニチュアを、他の人達には工芸品やお守りなどをたくさん買い込み、そろそろ帰ろうかと思ったときそれを目にする…、あ、あれは…!


「ユーリ、チェス盤だ。すごく珍しいチェス盤があるよ。大公のお土産にしよう!」
「これは…、すべて古代の戦士やリャマなのか…、歴史の再現!素晴らしい!」




とっておきのお土産も手に入れ、僕達は翌日、なんの心残りもなくミチュペチュを後にした。







しおりを挟む
感想 392

あなたにおすすめの小説

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

なぜ処刑予定の悪役子息の俺が溺愛されている?

詩河とんぼ
BL
 前世では過労死し、バース性があるBLゲームに転生した俺は、なる方が珍しいバットエンド以外は全て処刑されるというの世界の悪役子息・カイラントになっていた。処刑されるのはもちろん嫌だし、知識を付けてそれなりのところで働くか婿入りできたらいいな……と思っていたのだが、攻略対象者で王太子のアルスタから猛アプローチを受ける。……どうしてこうなった?

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も皆の小話もあがります。 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新! プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください

わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。 まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!? 悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。

キュートなモブ令息に転生したボク。可愛さと前世の知識で悪役令息なお義兄さまを守りますっ!

をち。「もう我慢なんて」書籍発売中
BL
これは、あざと可愛い悪役令息の義弟VS.あざと主人公のおはなし。 ボクの名前は、クリストファー。 突然だけど、ボクには前世の記憶がある。 ジルベスターお義兄さまと初めて会ったとき、そのご尊顔を見て 「あああ!《《この人》》、知ってるう!悪役令息っ!」 と思い出したのだ。 あ、この人ゲームの悪役じゃん、って。 そう、俺が今いるこの世界は、ゲームの中の世界だったの! そして、ボクは悪役令息ジルベスターの義弟に転生していたのだ! しかも、モブ。 繰り返します。ボクはモブ!!「完全なるモブ」なのだ! ゲームの中のボクには、モブすぎて名前もキャラデザもなかった。 どおりで今まで毎日自分の顔をみてもなんにも思い出さなかったわけだ! ちなみに、ジルベスターお義兄さまは悪役ながら非常に人気があった。 その理由の第一は、ビジュアル! 夜空に輝く月みたいにキラキラした銀髪。夜の闇を思わせる深い紺碧の瞳。 涼やかに切れ上がった眦はサイコーにクール!! イケメンではなく美形!ビューティフル!ワンダフォー! ありとあらゆる美辞麗句を並び立てたくなるくらいに美しい姿かたちなのだ! 当然ながらボクもそのビジュアルにノックアウトされた。 ネップリももちろんコンプリートしたし、アクスタももちろん手に入れた! そんなボクの推しジルベスターは、その無表情のせいで「人を馬鹿にしている」「心がない」「冷酷」といわれ、悪役令息と呼ばれていた。 でもボクにはわかっていた。全部誤解なんだって。 ジルベスターは優しい人なんだって。 あの無表情の下には確かに温かなものが隠れてるはずなの! なのに誰もそれを理解しようとしなかった。 そして最後に断罪されてしまうのだ!あのピンク頭に惑わされたあんぽんたんたちのせいで!! ジルベスターが断罪されたときには悔し涙にぬれた。 なんとかジルベスターを救おうとすべてのルートを試し、ゲームをやり込みまくった。 でも何をしてもジルベスターは断罪された。 ボクはこの世界で大声で叫ぶ。 ボクのお義兄様はカッコよくて優しい最高のお義兄様なんだからっ! ゲームの世界ならいざしらず、このボクがついてるからには断罪なんてさせないっ! 最高に可愛いハイスぺモブ令息に転生したボクは、可愛さと前世の知識を武器にお義兄さまを守りますっ! ⭐︎⭐︎⭐︎ ご拝読頂きありがとうございます! コメント、エール、いいねお待ちしております♡ 「もう我慢なんてしません!家族からうとまれていた俺は、家を出て冒険者になります!」書籍発売中! 連載続いておりますので、そちらもぜひ♡

悪役令嬢の兄でしたが、追放後は参謀として騎士たちに囲まれています。- 第1巻 - 婚約破棄と一族追放

大の字だい
BL
王国にその名を轟かせる名門・ブラックウッド公爵家。 嫡男レイモンドは比類なき才知と冷徹な眼差しを持つ若き天才であった。 だが妹リディアナが王太子の許嫁でありながら、王太子が心奪われたのは庶民の少女リーシャ・グレイヴェル。 嫉妬と憎悪が社交界を揺るがす愚行へと繋がり、王宮での婚約破棄、王の御前での一族追放へと至る。 混乱の只中、妹を庇おうとするレイモンドの前に立ちはだかったのは、王国騎士団副団長にしてリーシャの異母兄、ヴィンセント・グレイヴェル。 琥珀の瞳に嗜虐を宿した彼は言う―― 「この才を捨てるは惜しい。ゆえに、我が手で飼い馴らそう」 知略と支配欲を秘めた騎士と、没落した宰相家の天才青年。 耽美と背徳の物語が、冷たい鎖と熱い口づけの中で幕を開ける。

【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。 BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑) 本編完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 きーちゃんと皆の動画をつくりました! もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。 インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら! 本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。