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ミチュペチュへの旅 ⑤
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ユーリが結婚式の打ち合わせに参加している間、僕は現地の騎士さん達に案内されて、山だ、川だと遊び回った。
遊び回ったと言えば響きは良いが、引きずり回された、と言った方が正解かも知れない。体力お化けたちめ…。
だけど光の反射する角度で5色に輝くあの川は実に素晴らしいものだった。僕は帰ったら絶対カメラを開発しよう、とそう固く心に誓った。
この広大な領では10日間などあっという間だ。
淋しいけれど西部の皆様とはここでお別れして、僕とユーリは教授の待つ東部へと向かう事になる。
馬車で1週間の長旅だ。ちいさ、…小柄な僕はまだいいけど長身のユーリは大変だ。宿屋に着いたら腰でも揉んであげようかな?
…要らぬ仏心でむしろ僕の腰が大変なことになるんだけどそれはまた別のお話ってことで。
「アッシュ、その先が君の言っていた石像が立ち並ぶ大湖畔だ。そこで休憩するとしよう」
「モアイか…。わぁ、楽しみだな」
「って、こ、これは…っ!」
「どうかしたかい?」
コロポックルを知らないユーリには分かるまい…。だけどこの像、この姿…。
バンダナで頭をくるんだ2頭身の姿。その右手にはフキの傘を手にしている…。これは…この像は…まさかの…
コロポックル…10人のデカイコロポックルがモアイのように並んでいる…
間違いない!これはクルポックル様だ!だからなんで何でも巨大化させんの!この領の人達は!
なんだこれ…うそでしょ…。マァの村にだってクルポックル様の像も姿絵も残ってないのに何でっ?
あ!クルポックル様ってもともと南の賢者だった!すっかり北の神様みたいな気がしてたけど…こっちが本拠地だった!南の辺境に像が建ってても全然おかしくない!
「アッシュ、この像は…可愛らしい姿がどことなく君に似ているね」
「ギクッ!そ、そうかな…?そんなこと無いと思うんだけど…」
「いや似ているよ。君を大きくしたらこんな石像になるだろう」
ここでいう大きくとは成長ではなく拡大のことだ…。
「アッシュ、もしかしてこれは…」
「いいや違う!違うと思うよ僕は!」
「ふふ、リッターホルムにも建ててしまおうか。そうだ!リッターホルムらしく木像はどうだろうか」
「本気でやめて…。それに北でそれやるとノームになるから。」
まさかここでスヴァルトさんと気持ちを共有することになるとはね…そっか…、こういう気分か…
軽く心にダメージを受けながらなんとか僕らはミチュペチュの地へ。
この国で一番長い山脈、ナンデス山脈の中にあるウンバルンバの谷沿いにある古代ウンカ文明の遺跡、ミチュペチュ。
ここに一般貴族は一家たりとも住んではいない。居るのは原住民である領民と、王家、辺境伯家からのお役目を持つ者だけだ。領民の数でいったらリッターホルムといい勝負だ。
どうやらここは大昔王族の避暑地として存在したらしい。なのにいつからそうでなくなったのか…。
教授が言うには過去西側で起きた亜人の襲撃を恐れた何代か前の王より辺境への避暑は無くなったのだとか。
そして取り残されたのが巨大な遺跡…。大昔の無骨な王宮跡だとか神殿だったりとか…
その神殿は尋常でない長さの石段を上がった山頂にあり、天国に最も近い神殿と呼ばれている。どっかで聞いたようなフレーズだな…。
その遺跡を取り囲むのが傾斜を利用した段々畑だったり大自然での放牧だったり、とにかく四方八方どこを見ても…
圧倒的に素晴らしい眺めだ!まさに天空の遺跡!
今では中央で宿泊して1~2泊ここに観光に来るのが定番なんだとか。その際は辺境伯別邸に泊めていただく。そこは宿泊施設兼、大使館みたいなものでもあるのだ。
現在辺境伯の息子さんは領民達と牧歌的な生活をしながらこれら壮大な遺跡を守っているのだとか…。
とても意義のある仕事だ。これらは絶対に守り抜くべき歴史の道標!
「ほう。アッシュはここが相当気に入ったようだな。」
「教授!気に入ったなんてもんじゃないよ!言葉にならないくらい感動した…」
「アッシュ、神殿には明日行こう。これは少し休んで英気を養うべきだ。」
『そうとも。あの神殿に行くには相当体力が必要だ』
スヴァルトさんは教授に携帯されてるから疲れないけどね。
『だがその石段脇には現地の民が昔ながらの作法で暮らしている。それを見聞きするのもまた醍醐味だ』
「現地の民…。スヴァルト殿、その民たちの話す言語は…」
『ユーリ君、君はスパイン語を話せるかね?ここの言語は一種独特でね』
「お任せください。問題ありません」
「ええー!ユーリってばスパイン語まで話せるの⁉ すご…、カッコイイ…」
「…、ふふ、大したことではないよ。ほんの嗜みだ。」
「話してるとこ見たいな。通訳してね。ああ…ますます楽しみだよ…」
「エストイ デサンド ケ レーゲ マナナ」
「何て‼」
「明日が楽しみだと言ったんだ」
スパイン語はスパイン語であってスペイン語でもポルトガル語でもない。残念ながら僕の中にその言語は存在しない…。
ノールさんから急遽教わったいくつかのフレーズしか話せない僕とは雲泥の差だ。こんなことならもっと早くから勉強しておけばよかった。けどミチュペチュに来ることがあるとは思わなかったし…。
「ユーリ…、惚れ直したよ…。」
ユーリの拳が小さくガッツポーズをして見えたのは…
気のせいかな?
遊び回ったと言えば響きは良いが、引きずり回された、と言った方が正解かも知れない。体力お化けたちめ…。
だけど光の反射する角度で5色に輝くあの川は実に素晴らしいものだった。僕は帰ったら絶対カメラを開発しよう、とそう固く心に誓った。
この広大な領では10日間などあっという間だ。
淋しいけれど西部の皆様とはここでお別れして、僕とユーリは教授の待つ東部へと向かう事になる。
馬車で1週間の長旅だ。ちいさ、…小柄な僕はまだいいけど長身のユーリは大変だ。宿屋に着いたら腰でも揉んであげようかな?
…要らぬ仏心でむしろ僕の腰が大変なことになるんだけどそれはまた別のお話ってことで。
「アッシュ、その先が君の言っていた石像が立ち並ぶ大湖畔だ。そこで休憩するとしよう」
「モアイか…。わぁ、楽しみだな」
「って、こ、これは…っ!」
「どうかしたかい?」
コロポックルを知らないユーリには分かるまい…。だけどこの像、この姿…。
バンダナで頭をくるんだ2頭身の姿。その右手にはフキの傘を手にしている…。これは…この像は…まさかの…
コロポックル…10人のデカイコロポックルがモアイのように並んでいる…
間違いない!これはクルポックル様だ!だからなんで何でも巨大化させんの!この領の人達は!
なんだこれ…うそでしょ…。マァの村にだってクルポックル様の像も姿絵も残ってないのに何でっ?
あ!クルポックル様ってもともと南の賢者だった!すっかり北の神様みたいな気がしてたけど…こっちが本拠地だった!南の辺境に像が建ってても全然おかしくない!
「アッシュ、この像は…可愛らしい姿がどことなく君に似ているね」
「ギクッ!そ、そうかな…?そんなこと無いと思うんだけど…」
「いや似ているよ。君を大きくしたらこんな石像になるだろう」
ここでいう大きくとは成長ではなく拡大のことだ…。
「アッシュ、もしかしてこれは…」
「いいや違う!違うと思うよ僕は!」
「ふふ、リッターホルムにも建ててしまおうか。そうだ!リッターホルムらしく木像はどうだろうか」
「本気でやめて…。それに北でそれやるとノームになるから。」
まさかここでスヴァルトさんと気持ちを共有することになるとはね…そっか…、こういう気分か…
軽く心にダメージを受けながらなんとか僕らはミチュペチュの地へ。
この国で一番長い山脈、ナンデス山脈の中にあるウンバルンバの谷沿いにある古代ウンカ文明の遺跡、ミチュペチュ。
ここに一般貴族は一家たりとも住んではいない。居るのは原住民である領民と、王家、辺境伯家からのお役目を持つ者だけだ。領民の数でいったらリッターホルムといい勝負だ。
どうやらここは大昔王族の避暑地として存在したらしい。なのにいつからそうでなくなったのか…。
教授が言うには過去西側で起きた亜人の襲撃を恐れた何代か前の王より辺境への避暑は無くなったのだとか。
そして取り残されたのが巨大な遺跡…。大昔の無骨な王宮跡だとか神殿だったりとか…
その神殿は尋常でない長さの石段を上がった山頂にあり、天国に最も近い神殿と呼ばれている。どっかで聞いたようなフレーズだな…。
その遺跡を取り囲むのが傾斜を利用した段々畑だったり大自然での放牧だったり、とにかく四方八方どこを見ても…
圧倒的に素晴らしい眺めだ!まさに天空の遺跡!
今では中央で宿泊して1~2泊ここに観光に来るのが定番なんだとか。その際は辺境伯別邸に泊めていただく。そこは宿泊施設兼、大使館みたいなものでもあるのだ。
現在辺境伯の息子さんは領民達と牧歌的な生活をしながらこれら壮大な遺跡を守っているのだとか…。
とても意義のある仕事だ。これらは絶対に守り抜くべき歴史の道標!
「ほう。アッシュはここが相当気に入ったようだな。」
「教授!気に入ったなんてもんじゃないよ!言葉にならないくらい感動した…」
「アッシュ、神殿には明日行こう。これは少し休んで英気を養うべきだ。」
『そうとも。あの神殿に行くには相当体力が必要だ』
スヴァルトさんは教授に携帯されてるから疲れないけどね。
『だがその石段脇には現地の民が昔ながらの作法で暮らしている。それを見聞きするのもまた醍醐味だ』
「現地の民…。スヴァルト殿、その民たちの話す言語は…」
『ユーリ君、君はスパイン語を話せるかね?ここの言語は一種独特でね』
「お任せください。問題ありません」
「ええー!ユーリってばスパイン語まで話せるの⁉ すご…、カッコイイ…」
「…、ふふ、大したことではないよ。ほんの嗜みだ。」
「話してるとこ見たいな。通訳してね。ああ…ますます楽しみだよ…」
「エストイ デサンド ケ レーゲ マナナ」
「何て‼」
「明日が楽しみだと言ったんだ」
スパイン語はスパイン語であってスペイン語でもポルトガル語でもない。残念ながら僕の中にその言語は存在しない…。
ノールさんから急遽教わったいくつかのフレーズしか話せない僕とは雲泥の差だ。こんなことならもっと早くから勉強しておけばよかった。けどミチュペチュに来ることがあるとは思わなかったし…。
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