260 / 277
連載
おまけ ⑫
しおりを挟む
と、まぁ、早々にユーリと大公、コルトバご老公なんかが下船していき、高位貴族ばかりとは言え緊張の緩んだキャラベル船。仮支配人の僕は今回全行程を引率だ。
残った面々、そこでは如何にこの船を有益に運用するかと言った話で終始持ちきりだった。非常に有意義な時間だったともいえる。
そんなこんなで一家づつ下船しながら到着したのは最東の伯爵領に面した最終地点。つまりここが折り返しである。
「あっ!にいさ~ん!タピオにいさ~ん!」
「アッシュー!」
久々に会う兄さんは母さんからの差し入れを山ほど持参していた。船には専属シェフが居るって言っといたんだけどな…。
でもまぁ、これも母の愛。美味しく頂こう…。
「しかしスゴイ船だな。」
「今まで川に浮かべる数人乗りの手漕ぎ船しかなかったもんね。驚いた?」
「金貨貯めて今度はこれで行くのもいいな。王都にも近くなるし。高いのか?」
「兄さんなら顔パスOKだよ…。いつも思うけど何で払う気でいんの?そこが我が家の良い所だけどね。ところで何?王都に行きたいの?」
「ケネスに遊びに来いって言われてんだよ。面白い場所に案内するからって何度も催促されてて…、結婚したら遊びづらくなるから今のうちに、だってさ。はは、あいつ真面目に仕事してんのか?」
「へ、へぇ~…」
ケネスめ…。兄さんを悪の道に誘うとは許すまじ…。今度会ったらお説教決定だな。
けど王子様からの催促ではいくら人手が…って言ったって父さん母さんも頷くしか無いだろう。
春の植え付けが終わったら出向くというので僕はその場で兄さんの乗船予約を取っ…たうえで釘をさすのも忘れない。
「兄さん。今回の乗船料はケネスに請求しとくから遠慮なく使ってね。それからいくら王子の案内だからっておかしな場所には付いてかなくていいから。」
「分かった分かった。心配すんな、よしよし」
兄さんからのよしよし…これだけでもここに来たかいがあったというもの…。
ほとんどの高位貴族が下船をした空っぽの船、と思うでしょ?甘いな…。この僕がそんな無駄な運航をするとでも?
帰りは帰りで興味津々の裕福な伯爵家や小金持ちの男爵家当主などを乗せ船は西へと戻っていく。
もう少し暑い時期なら停泊して泳いだりできるんだけどな。今は釣りくらいしか…あっ、そうだ!
「公爵夫人、これは?」
「凧…カイトだよ。厨房からタコ糸貰ってきて作ってみた。良かった~、『冬休みの親子工作』読んどいて~。ううんこっちの話。ほら、ここ持ってこう!」
「おお!」
「これはあれですな。今流行のハ…ハン…」
「ハンググライダーね。まぁ確かに似てるっちゃ似てるかな」
「確かもう一種あるのでしたな?」
「パラグライダーね。男爵、詳しいですね」
「私は流行りものに目が無いのですよ。何しろ感性が若いもので。」
「へー…」
うん?パラグライダー…パラセーリング…、これは…閃いた!
とは言え、水温の低いこの季節、ドライスーツのないここではちょっと難しいだろう。この船上アクティビティは夏季限定だな。そう心のメモ用紙に書きとめ、僕は船尾で凧あげにはしゃぐ中年達を尻目にアルパ君を探しに行った。
新婚夫婦の邪魔は極力したく無いのだが…今の僕は支配人だからね。随時進行状況をお伝えしなければ…。
「アルパ君、次の停泊地でユーリとヴェストさんを拾って明後日にはリッターホルム川岸に到着だからね。お疲れさまでした。疲れてない?」
「いえ、とても快適に過ごせました。景観も素晴らしいものでしたし。むしろ元気が出ました。」
「アッシュ様、これをご覧くださいまし。途中山から舞い落ちてきた花びらですの。押し花にしたのですよ。うふ、可愛い…」
「可愛いのは貴女です。キャロライン」
「ま、まぁ…」
「ヒューヒュー!あー、熱い熱い。真夏かと思っちゃったよ。おかしいよね?今4月なのに」
「アッシュ様ってば…。」
と思ったら、いきなり思いに耽るアルパ君。まぁ何考えてるか想像は付くけどね。
「…まだ信じられません。伯爵家の息子、それも私の立場でこのように晴れやかな婚儀の日を迎えることができるなんて…。2年前にはとても考えられなかった…」
「うーん…、魚心あれば水心ありってね。僕たちも助かってるんだからアルパ君は堂々と大きな顔しててね」
「ふふ。はい。」
穏やかな新婚夫婦の姿に笑みをこぼさずにはいられない。良かった。あの日彼を失わずに済んで…。
だからって2か月後ハネムーンベビーの報告を受けた時には意外が過ぎて、僕も、さすがのユーリも、アルパ君の顔を二度見するほどびっくりしたけどねっ!
残った面々、そこでは如何にこの船を有益に運用するかと言った話で終始持ちきりだった。非常に有意義な時間だったともいえる。
そんなこんなで一家づつ下船しながら到着したのは最東の伯爵領に面した最終地点。つまりここが折り返しである。
「あっ!にいさ~ん!タピオにいさ~ん!」
「アッシュー!」
久々に会う兄さんは母さんからの差し入れを山ほど持参していた。船には専属シェフが居るって言っといたんだけどな…。
でもまぁ、これも母の愛。美味しく頂こう…。
「しかしスゴイ船だな。」
「今まで川に浮かべる数人乗りの手漕ぎ船しかなかったもんね。驚いた?」
「金貨貯めて今度はこれで行くのもいいな。王都にも近くなるし。高いのか?」
「兄さんなら顔パスOKだよ…。いつも思うけど何で払う気でいんの?そこが我が家の良い所だけどね。ところで何?王都に行きたいの?」
「ケネスに遊びに来いって言われてんだよ。面白い場所に案内するからって何度も催促されてて…、結婚したら遊びづらくなるから今のうちに、だってさ。はは、あいつ真面目に仕事してんのか?」
「へ、へぇ~…」
ケネスめ…。兄さんを悪の道に誘うとは許すまじ…。今度会ったらお説教決定だな。
けど王子様からの催促ではいくら人手が…って言ったって父さん母さんも頷くしか無いだろう。
春の植え付けが終わったら出向くというので僕はその場で兄さんの乗船予約を取っ…たうえで釘をさすのも忘れない。
「兄さん。今回の乗船料はケネスに請求しとくから遠慮なく使ってね。それからいくら王子の案内だからっておかしな場所には付いてかなくていいから。」
「分かった分かった。心配すんな、よしよし」
兄さんからのよしよし…これだけでもここに来たかいがあったというもの…。
ほとんどの高位貴族が下船をした空っぽの船、と思うでしょ?甘いな…。この僕がそんな無駄な運航をするとでも?
帰りは帰りで興味津々の裕福な伯爵家や小金持ちの男爵家当主などを乗せ船は西へと戻っていく。
もう少し暑い時期なら停泊して泳いだりできるんだけどな。今は釣りくらいしか…あっ、そうだ!
「公爵夫人、これは?」
「凧…カイトだよ。厨房からタコ糸貰ってきて作ってみた。良かった~、『冬休みの親子工作』読んどいて~。ううんこっちの話。ほら、ここ持ってこう!」
「おお!」
「これはあれですな。今流行のハ…ハン…」
「ハンググライダーね。まぁ確かに似てるっちゃ似てるかな」
「確かもう一種あるのでしたな?」
「パラグライダーね。男爵、詳しいですね」
「私は流行りものに目が無いのですよ。何しろ感性が若いもので。」
「へー…」
うん?パラグライダー…パラセーリング…、これは…閃いた!
とは言え、水温の低いこの季節、ドライスーツのないここではちょっと難しいだろう。この船上アクティビティは夏季限定だな。そう心のメモ用紙に書きとめ、僕は船尾で凧あげにはしゃぐ中年達を尻目にアルパ君を探しに行った。
新婚夫婦の邪魔は極力したく無いのだが…今の僕は支配人だからね。随時進行状況をお伝えしなければ…。
「アルパ君、次の停泊地でユーリとヴェストさんを拾って明後日にはリッターホルム川岸に到着だからね。お疲れさまでした。疲れてない?」
「いえ、とても快適に過ごせました。景観も素晴らしいものでしたし。むしろ元気が出ました。」
「アッシュ様、これをご覧くださいまし。途中山から舞い落ちてきた花びらですの。押し花にしたのですよ。うふ、可愛い…」
「可愛いのは貴女です。キャロライン」
「ま、まぁ…」
「ヒューヒュー!あー、熱い熱い。真夏かと思っちゃったよ。おかしいよね?今4月なのに」
「アッシュ様ってば…。」
と思ったら、いきなり思いに耽るアルパ君。まぁ何考えてるか想像は付くけどね。
「…まだ信じられません。伯爵家の息子、それも私の立場でこのように晴れやかな婚儀の日を迎えることができるなんて…。2年前にはとても考えられなかった…」
「うーん…、魚心あれば水心ありってね。僕たちも助かってるんだからアルパ君は堂々と大きな顔しててね」
「ふふ。はい。」
穏やかな新婚夫婦の姿に笑みをこぼさずにはいられない。良かった。あの日彼を失わずに済んで…。
だからって2か月後ハネムーンベビーの報告を受けた時には意外が過ぎて、僕も、さすがのユーリも、アルパ君の顔を二度見するほどびっくりしたけどねっ!
271
あなたにおすすめの小説
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまいネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
表紙や動画はAIを使用していますが、文章にはAIを一切使用しておりません。
名前が * ゆるゆ になりました。
これからもどうぞよろしくお願い致します!
表紙にはAIを使用していますが、文章にはAIを一切使用しておりません。
校正も自力です(笑)
なぜ処刑予定の悪役子息の俺が溺愛されている?
詩河とんぼ
BL
前世では過労死し、バース性があるBLゲームに転生した俺は、なる方が珍しいバットエンド以外は全て処刑されるというの世界の悪役子息・カイラントになっていた。処刑されるのはもちろん嫌だし、知識を付けてそれなりのところで働くか婿入りできたらいいな……と思っていたのだが、攻略対象者で王太子のアルスタから猛アプローチを受ける。……どうしてこうなった?
【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします
* ゆるゆ
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!?
しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが、びっくりして憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です!
めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので!
ノィユとヴィルの動画を作ってみました!(笑)
インスタ @yuruyu0
Youtube @BL小説動画 です!
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったらお話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです!
ヴィル×ノィユのお話です。
本編完結しました!
『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編、完結しました!
時々おまけのお話を更新するかもです。
名前が * ゆるゆ になりました。
これからもどうぞよろしくお願い致します!
表紙や動画はAIを使用していますが、文章にはAIを一切使用しておりません。
王家の影一族に転生した僕にはどうやら才能があるらしい。(完結)
薄明 喰
BL
アーバスノイヤー公爵家の次男として生誕した僕、ルナイス・アーバスノイヤーは日本という異世界で生きていた記憶を持って生まれてきた。
アーバスノイヤー公爵家は表向きは代々王家に仕える近衛騎士として名を挙げている一族であるが、実は陰で王家に牙を向ける者達の処分や面倒ごとを片付ける暗躍一族なのだ。
そんな公爵家に生まれた僕も将来は家業を熟さないといけないのだけど…前世でなんの才もなくぼんやりと生きてきた僕には無理ですよ!!
え?
僕には暗躍一族としての才能に恵まれている!?
※すべてフィクションであり実在する物、人、言語とは異なることをご了承ください。
色んな国の言葉をMIXさせています。
本作は皆様の暖かな支援のおかげで第13回BL大賞にて学園BL賞を受賞いたしました!
心よりお礼申し上げます。
ただ今、感謝の番外編を少しずつ更新中です。
よければお時間のある時にお楽しみくださいませ
余命僅かの悪役令息に転生したけど、攻略対象者達が何やら離してくれない
上総啓
BL
ある日トラックに轢かれて死んだ成瀬は、前世のめり込んでいたBLゲームの悪役令息フェリアルに転生した。
フェリアルはゲーム内の悪役として15歳で断罪される運命。
前世で周囲からの愛情に恵まれなかった成瀬は、今世でも誰にも愛されない事実に絶望し、転生直後にゲーム通りの人生を受け入れようと諦観する。
声すら発さず、家族に対しても無反応を貫き人形のように接するフェリアル。そんなフェリアルに周囲の過保護と溺愛は予想外に増していき、いつの間にかゲームのシナリオとズレた展開が巻き起こっていく。
気付けば兄達は勿論、妖艶な魔塔主や最恐の暗殺者、次期大公に皇太子…ゲームの攻略対象者達がフェリアルに執着するようになり…――?
周囲の愛に疎い悪役令息の無自覚総愛されライフ。
※最終的に固定カプ
悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
* ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。
BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃がはじまる──! といいな!(笑)
本編完結済、ロデア大公立学園編、はじめました!
本編のあと、恋愛ルートやおまけのお話に進まずに、すぐロデア大公立学園編に続く感じです。
きーちゃんと皆の動画をつくりました!
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけです!
名前が * ゆるゆ になりました。
これからもどうぞよろしくお願い致します!
表紙や動画はAIを使用していますが、文章にはAIを一切使用しておりません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。