182 / 246
151.5 安堵
しおりを挟む
「現場ぐらい一人で行けるってのに…なんだよ?なにか話があるんだろ?言ってみろよ」
「アーニー。私は貴方に謝らなければならない」
「何の話だよ」
彼にこのように身勝手な話を持ち掛けるのは心苦しい…。しかし私も安易な気持ちでこうすることを決めたのではない。
葛藤の中、レジナルド殿をお守りするためになら私の小さな矜持など捨て去るべきと考えたのだから。
パウルを苦しめたあの過ちを…私は二度と繰り返してはならない…!
「君たちとレジナルド殿の絆は重々承知している。だが社交界というのは…、君たちが思う以上に魑魅魍魎の住む世界だ。それは私自身を見ていればわかるだろう?」
「まあな。だから俺たちも王子とレジーの婚約を受け入れた。…しゃーねぇ」
「特に今のエトゥーリア社交界は未だ不安定な状況、何がいつどう揺れるか…火の粉を避けるためには先んじて手を打つのが得策と考える」
「…かもな」
意外なほど淡々と話すアーニーに拍子抜けしながらも私は話を続ける。彼の理解はどこまでなのか。誤解を招くのは本意でない。
「ではセザール殿の話は…?」
「本人から説明があった。何でもウルグレイスの王様は一見優男だが折れない男だってな。あいつがレジーと出来てると思わせとけばこれ以上の無茶は言わないだろう、ってのがあいつの考えだ。王様の欲しいのは単純に家系の枝分かれだとさ」
「家系の枝分かれ…?だが男同士では…」
「ウルグレイスには秘術があるとかないとか…。知るか!これ以上はセザール本人に聞けよ!」
なるほど…。ウルグレイスの目的は血の流れ。狂魔力の発現は無作為。系譜の誰に現れるかは誰にも分からない。つまり家系さえウルグレイスに繋がれば…、そういう事か。
「では私がエトゥーリア側の側夫として名乗りを上げたら…。君はどう思う?許してもらえるだろうか…」
「何 !? そりゃそんな冗談も言ってたけどよ…」
「パウルに言われたのだ…。起こり得る危機を回避するためには私が身を挺してレジナルド殿を守るべきだと。」
「どういうことだよ…」
私は私自身でさえ見落としていた、パウルによって気付かされた危険因子についてアーニーに説明してゆく。そして、それを回避するにあたり、例え側夫であろうと婚姻関係にあるのがもっとも確実なのだとも。
狂魔力の継承者であるレジナルド殿を力で以て手に入れることなど出来はしない。考えられるのは色事による篭絡。
ウルグレイスが〝側夫”という手段に出た以上、同じことを考えるものが出てこないとも限らない。
だからこそ先手を打たねば。エトゥーリア側の安全な〝側夫”。その相手は彼と彼らを知る私でなくてはならない。
「あー…、なるほどな。ヴォルフならなんて言うか…。いや、あいつは何も言わねぇな。多分…」
「そうだろうか…?」
「あいつが言ったんだよ。問題は相手が誰かって事とわきまえてるかどうかだってな。」
「それはどういう意味だろうか…」
「相変わらず鈍いな。相手ってのはレジーにとって必要な相手で…尚且つ腹黒くない奴って事だ。」
「それから?」
「自分の立場をわきまえてりゃそれでいい。相手が誰だろうと俺たちより下だってな。シュバルツ、お前みたいに分かってりゃいい。俺たちとレジーの絆を」
「…もちろん分かっているとも。」
「王子がレジーの夫だってんなら王都ではそう振舞えばいい。セザールがあいつの楯になるってんならウルグレイスでは夫として振舞えばいい。それから」
彼の言葉に曇りはない。
「シュバルツ、お前があいつを守りたいならエトゥーリアではそう振舞やいいさ。お前はれっきとした侯爵であいつの隣に居て見劣りしねぇ。良いんじゃねぇの?けどな、このウエストエンドでは誰であろうと俺たちより下だ!いいか、それだけは覚えとけ!」
これが本心であるなら彼らの絆はそこまで昇華されているということか…。
「アーニー…。すまない。だが理解いただけて感謝する…」
「いいさ。筋を通す奴は嫌いじゃねぇよ。あとはレジー次第だけどな」
「それが最も難しい…。だが正直に向き合うつもりだ。彼の前で何一つ言葉を飾る必要はない」
「明日までに話は済ませろよ。このあと俺たちはドワーフの国だ。当分忙しくなる」
「心得た」
一つの杞憂が消えてなくなりほんの僅かだが楽になる。だがこの先は…私の人生において最も重要な局面となる…。恐らくは暗い洞窟で彼と出会った、…あの日に次ぐ重要な局面に…。
「アーニー。私は貴方に謝らなければならない」
「何の話だよ」
彼にこのように身勝手な話を持ち掛けるのは心苦しい…。しかし私も安易な気持ちでこうすることを決めたのではない。
葛藤の中、レジナルド殿をお守りするためになら私の小さな矜持など捨て去るべきと考えたのだから。
パウルを苦しめたあの過ちを…私は二度と繰り返してはならない…!
「君たちとレジナルド殿の絆は重々承知している。だが社交界というのは…、君たちが思う以上に魑魅魍魎の住む世界だ。それは私自身を見ていればわかるだろう?」
「まあな。だから俺たちも王子とレジーの婚約を受け入れた。…しゃーねぇ」
「特に今のエトゥーリア社交界は未だ不安定な状況、何がいつどう揺れるか…火の粉を避けるためには先んじて手を打つのが得策と考える」
「…かもな」
意外なほど淡々と話すアーニーに拍子抜けしながらも私は話を続ける。彼の理解はどこまでなのか。誤解を招くのは本意でない。
「ではセザール殿の話は…?」
「本人から説明があった。何でもウルグレイスの王様は一見優男だが折れない男だってな。あいつがレジーと出来てると思わせとけばこれ以上の無茶は言わないだろう、ってのがあいつの考えだ。王様の欲しいのは単純に家系の枝分かれだとさ」
「家系の枝分かれ…?だが男同士では…」
「ウルグレイスには秘術があるとかないとか…。知るか!これ以上はセザール本人に聞けよ!」
なるほど…。ウルグレイスの目的は血の流れ。狂魔力の発現は無作為。系譜の誰に現れるかは誰にも分からない。つまり家系さえウルグレイスに繋がれば…、そういう事か。
「では私がエトゥーリア側の側夫として名乗りを上げたら…。君はどう思う?許してもらえるだろうか…」
「何 !? そりゃそんな冗談も言ってたけどよ…」
「パウルに言われたのだ…。起こり得る危機を回避するためには私が身を挺してレジナルド殿を守るべきだと。」
「どういうことだよ…」
私は私自身でさえ見落としていた、パウルによって気付かされた危険因子についてアーニーに説明してゆく。そして、それを回避するにあたり、例え側夫であろうと婚姻関係にあるのがもっとも確実なのだとも。
狂魔力の継承者であるレジナルド殿を力で以て手に入れることなど出来はしない。考えられるのは色事による篭絡。
ウルグレイスが〝側夫”という手段に出た以上、同じことを考えるものが出てこないとも限らない。
だからこそ先手を打たねば。エトゥーリア側の安全な〝側夫”。その相手は彼と彼らを知る私でなくてはならない。
「あー…、なるほどな。ヴォルフならなんて言うか…。いや、あいつは何も言わねぇな。多分…」
「そうだろうか…?」
「あいつが言ったんだよ。問題は相手が誰かって事とわきまえてるかどうかだってな。」
「それはどういう意味だろうか…」
「相変わらず鈍いな。相手ってのはレジーにとって必要な相手で…尚且つ腹黒くない奴って事だ。」
「それから?」
「自分の立場をわきまえてりゃそれでいい。相手が誰だろうと俺たちより下だってな。シュバルツ、お前みたいに分かってりゃいい。俺たちとレジーの絆を」
「…もちろん分かっているとも。」
「王子がレジーの夫だってんなら王都ではそう振舞えばいい。セザールがあいつの楯になるってんならウルグレイスでは夫として振舞えばいい。それから」
彼の言葉に曇りはない。
「シュバルツ、お前があいつを守りたいならエトゥーリアではそう振舞やいいさ。お前はれっきとした侯爵であいつの隣に居て見劣りしねぇ。良いんじゃねぇの?けどな、このウエストエンドでは誰であろうと俺たちより下だ!いいか、それだけは覚えとけ!」
これが本心であるなら彼らの絆はそこまで昇華されているということか…。
「アーニー…。すまない。だが理解いただけて感謝する…」
「いいさ。筋を通す奴は嫌いじゃねぇよ。あとはレジー次第だけどな」
「それが最も難しい…。だが正直に向き合うつもりだ。彼の前で何一つ言葉を飾る必要はない」
「明日までに話は済ませろよ。このあと俺たちはドワーフの国だ。当分忙しくなる」
「心得た」
一つの杞憂が消えてなくなりほんの僅かだが楽になる。だがこの先は…私の人生において最も重要な局面となる…。恐らくは暗い洞窟で彼と出会った、…あの日に次ぐ重要な局面に…。
295
あなたにおすすめの小説
義理の家族に虐げられている伯爵令息ですが、気にしてないので平気です。王子にも興味はありません。
竜鳴躍
BL
性格の悪い傲慢な王太子のどこが素敵なのか分かりません。王妃なんて一番めんどくさいポジションだと思います。僕は一応伯爵令息ですが、子どもの頃に両親が亡くなって叔父家族が伯爵家を相続したので、居候のようなものです。
あれこれめんどくさいです。
学校も身づくろいも適当でいいんです。僕は、僕の才能を使いたい人のために使います。
冴えない取り柄もないと思っていた主人公が、実は…。
主人公は虐げる人の知らないところで輝いています。
全てを知って後悔するのは…。
☆2022年6月29日 BL 1位ありがとうございます!一瞬でも嬉しいです!
☆2,022年7月7日 実は子どもが主人公の話を始めてます。
囚われの親指王子が瀕死の騎士を助けたら、王子さまでした。https://www.alphapolis.co.jp/novel/355043923/237646317
【完】ラスボス(予定)に転生しましたが、家を出て幸せになります
ナナメ
BL
8歳の頃ここが『光の勇者と救世の御子』の小説、もしくはそれに類似した世界であるという記憶が甦ったウル。
家族に疎まれながら育った自分は囮で偽物の王太子の婚約者である事、同い年の義弟ハガルが本物の婚約者である事、真実を告げられた日に全てを失い絶望して魔王になってしまう事ーーそれを、思い出した。
思い出したからには思いどおりになるものか、そして小説のちょい役である推しの元で幸せになってみせる!と10年かけて下地を築いた卒業パーティーの日ーー
ーーさあ、早く来い!僕の10年の努力の成果よ今ここに!
魔王になりたくないラスボス(予定)と、本来超脇役のおっさんとの物語。
※体調次第で書いておりますのでかなりの鈍足更新になっております。ご了承頂ければ幸いです。
※表紙はAI作成です
婚約破棄された俺の農業異世界生活
深山恐竜
BL
「もう一度婚約してくれ」
冤罪で婚約破棄された俺の中身は、異世界転生した農学専攻の大学生!
庶民になって好きなだけ農業に勤しんでいたら、いつの間にか「畑の賢者」と呼ばれていた。
そこに皇子からの迎えが来て復縁を求められる。
皇子の魔の手から逃げ回ってると、幼馴染みの神官が‥。
(ムーンライトノベルズ様、fujossy様にも掲載中)
(第四回fujossy小説大賞エントリー中)
悪役令嬢の兄、閨の講義をする。
猫宮乾
BL
ある日前世の記憶がよみがえり、自分が悪役令嬢の兄だと気づいた僕(フェルナ)。断罪してくる王太子にはなるべく近づかないで過ごすと決め、万が一に備えて語学の勉強に励んでいたら、ある日閨の講義を頼まれる。
寄るな。触るな。近付くな。
きっせつ
BL
ある日、ハースト伯爵家の次男、であるシュネーは前世の記憶を取り戻した。
頭を打って?
病気で生死を彷徨って?
いいえ、でもそれはある意味衝撃な出来事。人の情事を目撃して、衝撃のあまり思い出したのだ。しかも、男と男の情事で…。
見たくもないものを見せられて。その上、シュネーだった筈の今世の自身は情事を見た衝撃で何処かへ行ってしまったのだ。
シュネーは何処かに行ってしまった今世の自身の代わりにシュネーを変態から守りつつ、貴族や騎士がいるフェルメルン王国で生きていく。
しかし問題は山積みで、情事を目撃した事でエリアスという侯爵家嫡男にも目を付けられてしまう。シュネーは今世の自身が帰ってくるまで自身を守りきれるのか。
ーーーーーーーーーーー
初めての投稿です。
結構ノリに任せて書いているのでかなり読み辛いし、分かり辛いかもしれませんがよろしくお願いします。主人公がボーイズでラブするのはかなり先になる予定です。
※ストックが切れ次第緩やかに投稿していきます。
婚約破棄させた愛し合う2人にザマァされた俺。とその後
結人
BL
王太子妃になるために頑張ってた公爵家の三男アランが愛する2人の愛でザマァされ…溺愛される話。
※男しかいない世界で男同士でも結婚できます。子供はなんかしたら作ることができます。きっと…。
全5話完結。予約更新します。
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
シナリオ回避失敗して投獄された悪役令息は隊長様に抱かれました
無味無臭(不定期更新)
BL
悪役令嬢の道連れで従兄弟だった僕まで投獄されることになった。
前世持ちだが結局役に立たなかった。
そもそもシナリオに抗うなど無理なことだったのだ。
そんなことを思いながら収監された牢屋で眠りについた。
目を覚ますと僕は見知らぬ人に抱かれていた。
…あれ?
僕に風俗墜ちシナリオありましたっけ?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる