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a day フィンくん
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歩き始めを待ってエルフの里へと引き取られていったエルウィン。すっかり寂しくなったが仕方ない。
悪戯好きなエルフの血を引くエルウィンは、魔法の練習と称して演習場をミステリーサークルみたくお絵描き帳代わりにしたり、庭の植樹をあちこち動かして積み木代わりにしたり、みんな叱りもしないで甘やかしているが使用人達の仕事を無駄に増やすわけにはいかない。僕は出来た雇用者なのだ。
独りになってしまったフィンもさぞ淋しがっている事だろうと思いきや…意外とそうでもない。
兄弟に会いたければヴォルフに強請ってクーデンホーフ領まで連れて行ってもらっているし、僕に付いて王城に行ったりもする。
そして王城のルカには第一第二王女のもとに生まれた従兄弟たちがいるし、ウルグレイス王都に住むラシエールも近居にたくさん分家の従兄弟が居る。
クーデンホーフ領にやってきた分家からの乳母は、従者にと歳の近い我が子を連れてきた。グリージオの良い友人になることだろう。
それに歩き始めたフィンは身体を動かして遊ぶのが楽しいみたいだ。エルウィンもグリージオも、こういう遊びはしないからね。目下の遊び相手は騎士たちだ。
だからと言って騎士団の訓練を邪魔するのはいただけない。
争いの無いこの領内において騎士たちの仕事は主に領地の安全を守る事だ。ダウンタウン及び農村部は自警団に任せているが、要人の多いヴィラ及びアッパータウンの巡回警護は彼らの仕事だ。そして南北にある門及び街道周辺の見張り業務、エルフが出没する東の山中、そして西の山中における封鎖石封印石の確認業務。その合間を縫って行われる訓練も遊びではないのだ。一言言ってやらなくては…
「フィン様、こっちですよこっち!かかってきなさい」
「やー!」コケッ
「フィン様!ホラホラ、後ろががら空きですよ」
「たー!」トタッ
「捕まえられますか?この俺を」
「むー!!」ヨチヨチ
「俺の心を一瞬で掴んだレジー様を彷彿とさせる…」
「天使だ…、天使の再来だ…」
「あー!レジー様!連れて行かないでください!俺たちの天使を!」
あ、うん。大丈夫みたい。むしろ大丈夫なのか?…うちの騎士たちは…。
おっとこうしてはいられない。一緒に出掛ける予定のシャリムがフィンを迎えにやって来た。
「フィン…、神殿に行く時間…。早く来て」
「シャル!」
活舌のおぼつかないフィンはシャリムがシャルになる。それがまた可愛いのなんのって!
「フィンおいで…」
「やー!」
「わがまま言わないの。一人で歩かせたら時間がかかってしょうがない。大人しくシャリムに抱っこされなさい!」
「やー!やー!」
「抱っこする…」
あ、闇魔法で拘束された。ぷっ!
シャリムは今のところもっとも意思疎通の楽な相手ということもあってフィンの懐きっぷりが半端ない。おかげですっかりお兄ちゃん的なポジションに収まっている。どこかまんざらでもなさそうなシャリムに僕も満足だ。
「ヴォルフは?」
「人形劇は見ないって…。終わったら呼べって」
ヴォルフにはダメパパの称号を授けよう…。とは言えヴォルフを公式にパパとして連れまわせるわけもなく、それはヴォルフも納得済みだ。
そして到着した神殿。
今日は神殿に領内の子供たちが集まってありがたい教えを拝聴する日。もちろん子供たちがそんなの楽しみにしているはずは無く、お目当てはその後のおやつと人形劇だ。
本日の教えは女神官ニコ氏による古代の神話。ニコ曰く、安全に留意するよう促すお話しなのだとか。そうそう、昔話って注意喚起のために作られたものも多かったりするんだよね。
なんでも今日の題材はギリシア神話をベースにしたものだとか。僕は詳しくないけどさすがニコ。知識の幅が広い。どれどれ僕も…
「いいですか。こうして愛し合う二人は一人の男の嫉妬によってあっけなく引き裂かれました。その美少年は頭に愛する人の円盤を受け致命傷を負ってしまったのです」
「かわいそー…」
「神様もかわいそう…」
うぅっ…。なんて悲しいお話しなんだ。恋人同士のキャッキャウフフが一転して悲劇に…
「そうです。みなさんも人をフル時には言動に気をつけましょうね」
「「「はーい…」」」
「そうして愛する人を失った男神は深く嘆き悲しみ、その美少年の血がしみ込んんだ場所に一輪の花を咲かせました。それがヒヤシンスです」
だ、男神!? あ…、登場人物全員男か…ぶれないなニコ…。
「なのでいいですか。本日のテーマです。皆さんは必ず危険な遊びをするときは胴着、ヘルメット、籠手、必ず防具を忘れないようにしましょうね。愛する人を悲しませてはいけません。注意一生ケガ一秒ですよ」
「「「はーい」」」
強引にまとめたな…。さすがだニコ。
その後はおやつを食べながらパペット劇を観覧する。…が、なんだこの作品…。
節操のない神様が地上の美少年を大鷲に化けて攫ってきて自宅で給仕をさせるとか…いったい倫理観はどうなってるんでしょうね古代神。
「いいですか。こういったことが起こり得ますから領外に出る時は決し単独行動をしてはいけませんよ。大人の言う事を良く聞いて、いいですね」
「「「はーい」」」
そ、そうか…。これも子供に言い聞かす為の題材ってことか…。ぬかりないなニコ。
ま、概ね子供たちは楽しんでるようだし、フィンも大鷲のくだりに興奮してたし、少々もにょるが後でお礼のお菓子でも送っておくとしよう。
悪戯好きなエルフの血を引くエルウィンは、魔法の練習と称して演習場をミステリーサークルみたくお絵描き帳代わりにしたり、庭の植樹をあちこち動かして積み木代わりにしたり、みんな叱りもしないで甘やかしているが使用人達の仕事を無駄に増やすわけにはいかない。僕は出来た雇用者なのだ。
独りになってしまったフィンもさぞ淋しがっている事だろうと思いきや…意外とそうでもない。
兄弟に会いたければヴォルフに強請ってクーデンホーフ領まで連れて行ってもらっているし、僕に付いて王城に行ったりもする。
そして王城のルカには第一第二王女のもとに生まれた従兄弟たちがいるし、ウルグレイス王都に住むラシエールも近居にたくさん分家の従兄弟が居る。
クーデンホーフ領にやってきた分家からの乳母は、従者にと歳の近い我が子を連れてきた。グリージオの良い友人になることだろう。
それに歩き始めたフィンは身体を動かして遊ぶのが楽しいみたいだ。エルウィンもグリージオも、こういう遊びはしないからね。目下の遊び相手は騎士たちだ。
だからと言って騎士団の訓練を邪魔するのはいただけない。
争いの無いこの領内において騎士たちの仕事は主に領地の安全を守る事だ。ダウンタウン及び農村部は自警団に任せているが、要人の多いヴィラ及びアッパータウンの巡回警護は彼らの仕事だ。そして南北にある門及び街道周辺の見張り業務、エルフが出没する東の山中、そして西の山中における封鎖石封印石の確認業務。その合間を縫って行われる訓練も遊びではないのだ。一言言ってやらなくては…
「フィン様、こっちですよこっち!かかってきなさい」
「やー!」コケッ
「フィン様!ホラホラ、後ろががら空きですよ」
「たー!」トタッ
「捕まえられますか?この俺を」
「むー!!」ヨチヨチ
「俺の心を一瞬で掴んだレジー様を彷彿とさせる…」
「天使だ…、天使の再来だ…」
「あー!レジー様!連れて行かないでください!俺たちの天使を!」
あ、うん。大丈夫みたい。むしろ大丈夫なのか?…うちの騎士たちは…。
おっとこうしてはいられない。一緒に出掛ける予定のシャリムがフィンを迎えにやって来た。
「フィン…、神殿に行く時間…。早く来て」
「シャル!」
活舌のおぼつかないフィンはシャリムがシャルになる。それがまた可愛いのなんのって!
「フィンおいで…」
「やー!」
「わがまま言わないの。一人で歩かせたら時間がかかってしょうがない。大人しくシャリムに抱っこされなさい!」
「やー!やー!」
「抱っこする…」
あ、闇魔法で拘束された。ぷっ!
シャリムは今のところもっとも意思疎通の楽な相手ということもあってフィンの懐きっぷりが半端ない。おかげですっかりお兄ちゃん的なポジションに収まっている。どこかまんざらでもなさそうなシャリムに僕も満足だ。
「ヴォルフは?」
「人形劇は見ないって…。終わったら呼べって」
ヴォルフにはダメパパの称号を授けよう…。とは言えヴォルフを公式にパパとして連れまわせるわけもなく、それはヴォルフも納得済みだ。
そして到着した神殿。
今日は神殿に領内の子供たちが集まってありがたい教えを拝聴する日。もちろん子供たちがそんなの楽しみにしているはずは無く、お目当てはその後のおやつと人形劇だ。
本日の教えは女神官ニコ氏による古代の神話。ニコ曰く、安全に留意するよう促すお話しなのだとか。そうそう、昔話って注意喚起のために作られたものも多かったりするんだよね。
なんでも今日の題材はギリシア神話をベースにしたものだとか。僕は詳しくないけどさすがニコ。知識の幅が広い。どれどれ僕も…
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「かわいそー…」
「神様もかわいそう…」
うぅっ…。なんて悲しいお話しなんだ。恋人同士のキャッキャウフフが一転して悲劇に…
「そうです。みなさんも人をフル時には言動に気をつけましょうね」
「「「はーい…」」」
「そうして愛する人を失った男神は深く嘆き悲しみ、その美少年の血がしみ込んんだ場所に一輪の花を咲かせました。それがヒヤシンスです」
だ、男神!? あ…、登場人物全員男か…ぶれないなニコ…。
「なのでいいですか。本日のテーマです。皆さんは必ず危険な遊びをするときは胴着、ヘルメット、籠手、必ず防具を忘れないようにしましょうね。愛する人を悲しませてはいけません。注意一生ケガ一秒ですよ」
「「「はーい」」」
強引にまとめたな…。さすがだニコ。
その後はおやつを食べながらパペット劇を観覧する。…が、なんだこの作品…。
節操のない神様が地上の美少年を大鷲に化けて攫ってきて自宅で給仕をさせるとか…いったい倫理観はどうなってるんでしょうね古代神。
「いいですか。こういったことが起こり得ますから領外に出る時は決し単独行動をしてはいけませんよ。大人の言う事を良く聞いて、いいですね」
「「「はーい」」」
そ、そうか…。これも子供に言い聞かす為の題材ってことか…。ぬかりないなニコ。
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