僕はゼッタイユルサナイ

kozzy

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協力者捕獲!

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領地から祖父母もやって来て、ジーンの葬儀は厳粛に行われた。
嘘くさい涙を流すアシル。あれが僕を形作った半分かと思うと言いようがないほど腹立たしい。

おっと、前方に見えるは間に合わなかった侍医じゃないか!
侍医はおじいさまから強く叱責を受けている。

事情を知っている僕的には侍医を責めるのはなんだかな…

この侍医は伯爵家お抱えのお医者様で、おじいさまの支援受けて、貴族街の片隅で研究所兼診療所を営んでいる。
見立てはいいが処世術のあまりうまくない人物だ。その人がおじいさまに見放されたらそれは一巻の終わりを意味する。

待てよ…

いくら僕の中身が人生二周目の大人でも、悲しいかな今は五歳児。せめて成人までは誰か大人の保護者が必要になる。
だがその保護者が、いくら父親とは言えあのアシルだけでは非常に困る。困るんだよ!

年の頃五十くらいの侍医には、手伝いをする二十代後半の息子と、更にその手伝いをする十歳ぐらいの孫息子がいる。

もと商人の眼力が冴える。
彼らは実直で誠実な善人一家だ。医者と言う事から分かるように彼らはブルジョワ階級、育ちも頭も悪くない。だが志高く未知の病を研究する侍医一家はパトロンに対し頭があがらない。そりゃもう一インチも。

フムフム…僕の手足にはもってこいだね。

良し!商売人らしく売ってくるか!盛大に恩を!

「おじいさまぁ~」
「おおベルナールや。少し待ちなさい。私は今ドクターに」
「おじいさまぁ、どうか大先生をゆるしてあげて。どうせお母様は何をしてももう助からなかった。だって…」
「だってなんだね?」

「ずっと側にいた僕の名前じゃなくどれ程待っても姿を見せないお父様の名前を呼び続けていたから…うぅ!グスングスン…」
「ベルナール…」

なんてね。さりげなく奴の行動をチクる感じで。

「アシルは急を要する手紙を書くため書斎に籠っていたと聞いたが…」

おっ?どっかから書斎バレして誤魔化したつもりか?そうは問屋がおろさないってね。もと商人だけに。

「お父様は一秒も来ませんでしたよ?妻が死にかけてるのに。妻の命と天秤にかけるほど大事な手紙がお父様にありますぅ?」

当主でもないのに。

「アシルは見舞いに出向いたがメイドに止められたと言ったが…」
「僕前の夜からずっと側にいましたけどお父様が部屋の前に来た気配はありませんでした」キッパリ
「そうか…」

書斎のことを言わないのは僕の目撃情報以外の証拠が何一つないからだ。あの男は弁が立つ。上手く言い逃れられては余計厄介なことになる。
全ては法で裁ける範疇ではないのだ。ここはおじいさまに少しばかりの不信感が芽生えればそれでいい。

あの男が持つのは全てジーンから与えられたもの。僕はそれを何もかもすべて、取り上げたい。
そのためにも僕は何も見ていないし聞いていない。今の僕では子供過ぎる。自由に采配出来るようになるまで、今は油断していてもらわないと。

「おじいさま僕悲しい!」ヒシッ!
「なんと痛ましい…」
「大先生は僕がこの屋敷で執事の次に信頼する大人です。どうか馘にしないで!」

僕の言葉に驚いているのは大先生の方だ。だって子供である僕との接点なんてそれほど多くない。先生が来るのは何事も無ければ二か月に一度の健康診断。それだってほとんどは大人同士の時間だ。

ときどき孫のリオネルが一緒に来て僕の相手をしてたけど、それだって毎回じゃない。

「おじいさま、僕先生の研究に興味があります。大先生は流感撲滅の研究をしておいでです。僕…僕…お母様のためにも後援者になりたいです。それでここの離れに住んでほしい…だめ?」キュルルン

「おおベルナール…!」

ブルジョワ階級とは庶民とは一線を画すが貴族ではない。本物の貴族とは職業を持たないものだ。

彼らは内科医の大先生(侍医)、経理と調薬を行う息子と役目を分業しており、独身時代とある貴族家でナニーをしていた夫人を含め、一家そろってかなりの博識。本来ならそれほど困窮することはない。
だが前述した通り、医学の進歩に熱心な親子は報酬をほとんどその研究に費やしてしまう。

そのため一応身分柄、貴族街の端に診療所を兼用したテラスハウスを借りているのだが、その高額な家賃がかなり負担だと…以前うちのメイド相手にボヤいていたのを僕は覚えている。

ここに住み込むという事は居住費がかからないという事。それに離れには専用の使用人もいる。食材燃料等々も屋敷持ちでいい。
おまけにこのアランブール伯爵家専属になり、他家への訪問診療が無くなれば空いた時間で思う存分研究に没頭できる。彼らにとっても悪い話ではないはずだ。

「だがここの離れにかね…」
「とっても心細いの…。でもぉ…持病のあるおじいさまにご無理はさせられない」
「なんと優しい子だ…」
「それにぃ…ここに住んでいれば僕が倒れてももう間に合わないなんてこと無いでしょ?」

これが決定打。おじいさまはあっさり陥落した。


「そこでおじいさまにたってのお願いが」

僕はまごう事無きこの伯爵家の後継者だ。けれどこのままでは成人まで、様々な決済を保護者であるアシルが、実の父親が行うことになる。

それこそが奴らの狙いなわけだが、僕は親子間に一人、監査人を設けて欲しいとお願いしたのだ。

監査人、これは少しばかり厄介な存在で、前世の商売時であれば税の不正がないかを確認する存在である。が、この場合だと財務が健全かつ適切に行われ、僕の財産が問題なく保護されているか、利害を持たない第三者として監督し精査する人物になる。管財人と言ってもいい。

「お母様に聞きました。息子のセドリック氏は診療所の経理を一手に引き受けていた数字にお強い方なんですって。研究資金の管理もなさっていましたし適任です」
「うむ」

「僕…お父様任せにしないで全ての伝票にキチンと自分で目を通して領主となるため帳簿の勉強したいと思ってます」キリッ
「お前は思慮深い子だねベルナール。よろしい。お前の言う通りにしよう」

やったね!

だっておじいさまは離れて暮らしている。いくら伯爵家当主だからと言ってここに居ないおじいさまを出し抜く方法なんかいくらでもある。汚い奴ほど狡猾だ。

それにジーンが亡くなり、僕はジーンが持っていた少なくない曾祖母の遺産全てを受け継ぐことになる。奴らの狙いはまさしくこれだ。

何度も言うが子供の僕では出来ることと出来ないことがある。
かと言って品の良い執事では太刀打ちできないことは、すでにもう分かっている。彼は温和な質だしどこまでいっても使用人だ。僕の父であるアシルに徹底抗戦は出来ないだろう。

だが、先生一家の後援者になるのは奴ではなくおじいさまで、セドリックが護るのは僕個人だ。セドリック氏が奴に忖度する理由はどこにもない。

これは最初の盾であり僕の目であり耳であり手足となる。

そして僕には考えていることがもう一つある。

それが盾になるか矢になるか、今はまだわからないけど…





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