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再会の親子
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やってきました。ここはアランブール伯爵領。おじいさまの住まう広大な領地だ。
アランブール家は伯爵位ではあるが、歴史の古い名門貴族だ。
何度となく有益な婚姻を結んできたこと、非常に優秀な家令に恵まれたこと、等々の理由から伯爵家と言ってもそこらの侯爵家よりも広い領地と財を持つ。だからこそ後継者が重要問題なのだし、アシルのちょっとした散財ごとき、屁でもないってわけだね。
僕たちは今日からここに1ヶ月ほど滞在する。
「ここに父さんが…」
「二年近く会ってないものね。楽しみ?」
「別に…」
ふふ、顔に楽しみって書いてあるよ。素直じゃないなあ。
王都邸よりももっと大きなお屋敷。その玄関でもある大ホールで出迎えてくださったのはティーパーティー以来のおじいさまとおばあさま。
「よく来たなベルナール。ここがいずれはお前のものとなるアランブールの地だ。お前の祖先がどれほど大切にこの地を護って来たか…余すことなく見ていくがよい」
「すごく楽しみだったんですよ」
「そうかそうか」
満足そうにうなずくおじいさまはまた少しお痩せになられた。
侍医でもある大先生は専属になって以来、体調に波の出やすい真夏と真冬はこちらに滞在して付きっきりでおじいさまの健康管理をなさっている。
その大先生による見立てでは、おじいさまの持病とは心臓にあるらしく、すぐにどうこうということではないみたいだが、極力心労をかけず安静にすごさないといけないらしい。
あまり王都へお呼びは出来ないな…
ああ…早く成人になっておじいさまをお助けしたい。そうしたらこの膨大な原資をお助けどころか倍にしてやるのに!
あと九年…くっ!未だ無力な子供のこの身が口惜しい…!
まあ今は言ってもしょうがない。気を取り直して…
「ディディエ荷物は?」
「全て下ろし終えました」
ディディエの父親はここの鍛冶室に居る。
父親の名はパスカル、彼は細工師だ。おじいさまは事情のある彼を快く受け入れ、鍛冶室で日用品の加工及び、ちょっとした細工物を作らせていたりする。
先に再会だな…
「ベルナール、夕食まで部屋でゆっくりなさいな。疲れたでしょう?」
「いいえおばあさま。むしろ身体を動かしたくて…裏庭に出てもいいですか?」
「ほほ、あまり遠くに行くのではありませんよ」
これは敷地内をぐるりと塀で囲ってある王都邸と違い、ここは裏庭が囲いのない大自然だからだ。
なんという規模!
そもそも邸内の部屋数だって王都邸の倍だと言うし、使用人の数は百人以上だという。
感覚的ではあるが、これは僕の知る長者を遥かに超えている。これが今世の分限者か…恐るべし大貴族…
よ、よぉし!この目で見てやろうじゃないか!
「リオネル、護衛の用意を」
「かしこまりました」
この遠出に際して、僕は二人の従者(リオネルとディディエね)、二人の護衛を供にしている。
夜間の立ち寄り先はそれぞれおじいさまが懇意にしている知人の屋敷。到着してしまえばそれぞれ屋敷にはメイドが居るため道中だけならこれで十分だ。
護衛の彼らは本来この領地を守るための騎士たちである。
けれど王都にいる僕を護るため、定期的に交代しながら常に幾人か王都の屋敷に常駐している。
因みに王都邸の警備には他に傭兵を雇ってるからご心配なく。
二人は腰に剣をさし馬に乗った凛々しい騎士であり、その姿はどうもこう…前世の何某かを思い出させる。
武…武…おサムら…だめだ。思い出せない。
二人の騎士は馬を領主邸の馬丁に預け、談笑しながら僕たちのもとへと近づいてくる。
「ゴーティエ、久しぶりの領地だ。早朝二人で思い切り馬を走らせないか」
「それより先輩、久々に皆を誘って戦試合をするのはどうですか?ご当主様もきっとお喜びになると思います」
「懲りないなお前も。よし!いつも通り土をつけてやる」
「なんの返り討ちです!負けませんよ!」
「なんだと生意気な!」ガシ
「わっ!やめてください先輩!」
トクン…
じゃれ合う一組の主従…
何か…何かを思い出せそうな…
「…」ジー
「こ、これは失礼しましたベルナール様!」
「す、すいません!久々の領地でつい気が…」
ニコ「何も問題ないです。そのままで」
うん。彼らのことは特に目をかけるとしよう。
さて、こうして始めた散策だが、僕は再び驚愕することになる。
何しろ飼育する馬の数と言えば何十頭、それらの馬小屋、厩舎、騎士の宿舎、訓練場、おまけに鍛冶室まである。
見事なまでの庭園、温室、果樹園の向こうには、家内消費用の農園があり、なんと家畜まで居る有様だ。
これがここ以外にも数カ所あると言うのだから驚きだ。
これは…すさまじいな。ここだけで二万石はくだらないんじゃないか?
はっ!二万石…?僕は何を?石とは一体…
まあそれはどうでもいいとして。
「ディディエ、さっきからソワソワしてるね。どうしたの?」
「別に…」
「焦るなディディエ。恋しいのはわかるが」
「こ、恋しくなんか…」
「恥ずかしいことじゃないだろう」
「うるせー!」
「おやおや。すっかり元通りだ。これじゃあガッカリされるなディディエ」
「ガッカリって…」
「成長した姿を見せるんだろう?それで安心させたい、そう言ったじゃないか」
「…ゴホン、ベル様、そろそろ移動しませんか」
「いいよ行こうか」
いざ再会の鍛冶室へ!
鍛冶場に近づいた時、おりしも小屋の外で休憩を取る線の細い一人の男性が居た。
「父さん!」
思わず駆け出すディディエ。そうか…あれが彼の…
「ディディエ!その顔…ディディエなのかい?」
「ああ俺だ…」
「ディディエ!」
抱擁する親子。感動の一瞬。
「どうだ?立派になっただろ?」
「どこのお坊ちゃんかと思ったよ…。ああディディエ、会いたかった…」
「父さんは元気だったか」
「ここは良い人ばかりだよ」
ここにいちゃ野暮だな…
「リオネル、小屋周り一周しようか」
「いいですね」
今夜は良い夢見れそうだ。
アランブール家は伯爵位ではあるが、歴史の古い名門貴族だ。
何度となく有益な婚姻を結んできたこと、非常に優秀な家令に恵まれたこと、等々の理由から伯爵家と言ってもそこらの侯爵家よりも広い領地と財を持つ。だからこそ後継者が重要問題なのだし、アシルのちょっとした散財ごとき、屁でもないってわけだね。
僕たちは今日からここに1ヶ月ほど滞在する。
「ここに父さんが…」
「二年近く会ってないものね。楽しみ?」
「別に…」
ふふ、顔に楽しみって書いてあるよ。素直じゃないなあ。
王都邸よりももっと大きなお屋敷。その玄関でもある大ホールで出迎えてくださったのはティーパーティー以来のおじいさまとおばあさま。
「よく来たなベルナール。ここがいずれはお前のものとなるアランブールの地だ。お前の祖先がどれほど大切にこの地を護って来たか…余すことなく見ていくがよい」
「すごく楽しみだったんですよ」
「そうかそうか」
満足そうにうなずくおじいさまはまた少しお痩せになられた。
侍医でもある大先生は専属になって以来、体調に波の出やすい真夏と真冬はこちらに滞在して付きっきりでおじいさまの健康管理をなさっている。
その大先生による見立てでは、おじいさまの持病とは心臓にあるらしく、すぐにどうこうということではないみたいだが、極力心労をかけず安静にすごさないといけないらしい。
あまり王都へお呼びは出来ないな…
ああ…早く成人になっておじいさまをお助けしたい。そうしたらこの膨大な原資をお助けどころか倍にしてやるのに!
あと九年…くっ!未だ無力な子供のこの身が口惜しい…!
まあ今は言ってもしょうがない。気を取り直して…
「ディディエ荷物は?」
「全て下ろし終えました」
ディディエの父親はここの鍛冶室に居る。
父親の名はパスカル、彼は細工師だ。おじいさまは事情のある彼を快く受け入れ、鍛冶室で日用品の加工及び、ちょっとした細工物を作らせていたりする。
先に再会だな…
「ベルナール、夕食まで部屋でゆっくりなさいな。疲れたでしょう?」
「いいえおばあさま。むしろ身体を動かしたくて…裏庭に出てもいいですか?」
「ほほ、あまり遠くに行くのではありませんよ」
これは敷地内をぐるりと塀で囲ってある王都邸と違い、ここは裏庭が囲いのない大自然だからだ。
なんという規模!
そもそも邸内の部屋数だって王都邸の倍だと言うし、使用人の数は百人以上だという。
感覚的ではあるが、これは僕の知る長者を遥かに超えている。これが今世の分限者か…恐るべし大貴族…
よ、よぉし!この目で見てやろうじゃないか!
「リオネル、護衛の用意を」
「かしこまりました」
この遠出に際して、僕は二人の従者(リオネルとディディエね)、二人の護衛を供にしている。
夜間の立ち寄り先はそれぞれおじいさまが懇意にしている知人の屋敷。到着してしまえばそれぞれ屋敷にはメイドが居るため道中だけならこれで十分だ。
護衛の彼らは本来この領地を守るための騎士たちである。
けれど王都にいる僕を護るため、定期的に交代しながら常に幾人か王都の屋敷に常駐している。
因みに王都邸の警備には他に傭兵を雇ってるからご心配なく。
二人は腰に剣をさし馬に乗った凛々しい騎士であり、その姿はどうもこう…前世の何某かを思い出させる。
武…武…おサムら…だめだ。思い出せない。
二人の騎士は馬を領主邸の馬丁に預け、談笑しながら僕たちのもとへと近づいてくる。
「ゴーティエ、久しぶりの領地だ。早朝二人で思い切り馬を走らせないか」
「それより先輩、久々に皆を誘って戦試合をするのはどうですか?ご当主様もきっとお喜びになると思います」
「懲りないなお前も。よし!いつも通り土をつけてやる」
「なんの返り討ちです!負けませんよ!」
「なんだと生意気な!」ガシ
「わっ!やめてください先輩!」
トクン…
じゃれ合う一組の主従…
何か…何かを思い出せそうな…
「…」ジー
「こ、これは失礼しましたベルナール様!」
「す、すいません!久々の領地でつい気が…」
ニコ「何も問題ないです。そのままで」
うん。彼らのことは特に目をかけるとしよう。
さて、こうして始めた散策だが、僕は再び驚愕することになる。
何しろ飼育する馬の数と言えば何十頭、それらの馬小屋、厩舎、騎士の宿舎、訓練場、おまけに鍛冶室まである。
見事なまでの庭園、温室、果樹園の向こうには、家内消費用の農園があり、なんと家畜まで居る有様だ。
これがここ以外にも数カ所あると言うのだから驚きだ。
これは…すさまじいな。ここだけで二万石はくだらないんじゃないか?
はっ!二万石…?僕は何を?石とは一体…
まあそれはどうでもいいとして。
「ディディエ、さっきからソワソワしてるね。どうしたの?」
「別に…」
「焦るなディディエ。恋しいのはわかるが」
「こ、恋しくなんか…」
「恥ずかしいことじゃないだろう」
「うるせー!」
「おやおや。すっかり元通りだ。これじゃあガッカリされるなディディエ」
「ガッカリって…」
「成長した姿を見せるんだろう?それで安心させたい、そう言ったじゃないか」
「…ゴホン、ベル様、そろそろ移動しませんか」
「いいよ行こうか」
いざ再会の鍛冶室へ!
鍛冶場に近づいた時、おりしも小屋の外で休憩を取る線の細い一人の男性が居た。
「父さん!」
思わず駆け出すディディエ。そうか…あれが彼の…
「ディディエ!その顔…ディディエなのかい?」
「ああ俺だ…」
「ディディエ!」
抱擁する親子。感動の一瞬。
「どうだ?立派になっただろ?」
「どこのお坊ちゃんかと思ったよ…。ああディディエ、会いたかった…」
「父さんは元気だったか」
「ここは良い人ばかりだよ」
ここにいちゃ野暮だな…
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