僕はゼッタイユルサナイ

kozzy

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鍵となるもの

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「や、感動の再会は落ち着いた?」

少したって戻ると彼らは休憩用のテーブルを囲み椅子に腰掛け近況報告を続けていた。

スッと立ち上がるディディエに僕が誰かを察したのだろう。
パスカルも慌てて頭を下げた。

「あなたがディディエのご主人さまでいらっしゃいますね」

「そう。僕の名はベルナール、ここの次期当主だよ。それから隣にいるのがリオネル、あなたをここに連れてきたセドリックの息子ね」

跪こうとしたパスカルを制止し四人でもう一度テーブルを囲む。
じゃないとどうしても大人の彼が子供の僕を見下ろす形になっちゃうからね。

「どう?ここの住み心地は」
「おかげさまで楽しく暮らしております。この度の温情心より感謝祭申し上げますベルナール様」

「お礼なんて…、もとは僕のお父様も悪いんだから」
「いえ、そんな…」

アシルとミレイユ、二人の再婚はミレイユ主導であり、パスカルへの襲撃もミレイユの独断だが、アシルに責任が全くないわけではない。
だから一応ね。

「それよりなんというか、その…」

目の前の彼、パスカルは僕の想像と違っていた。

あのミレイユが結婚相手に選んだぐらいだし、ディディエの容姿からして美男子なんだろうとは思っていたが…

男性というよりどちらかというと中性…女性的…?

視線の意味に気付いたのだろう。パスカルは苦笑しながら答えをくれる。

「実は…」

な、なな、なんと!
彼は子孫繁栄の玉を失ったことで月日とともに女性っぽくなってしまったのだと言うじゃないか!

それで華奢なのに丸みを感じるのか…

彼が顔を赤らめて言うにはち、チブサ…もほんのり盛り上がったようだ。ほんのりね。

「父さん…。様子がおかしいなと思ってたんだよ。さすがに聞けなかったけど…」

言いにくそうに父親を気遣う息子ディディエ。
そりゃ確かに「父さん、少し会わない間に女っぷりがあがりましたね」とは言えないだろう。

そうか…あれが男性の男性たる部分の根幹だったのか。一つ勉強になったな。
隣ではリオネルも目を丸くしている。この事実を知ったら大先生も食いつくに違いない。

「その事については誰も何も?」
「その…、鍛冶師のアイザックだけは知っています」ポ

ポ?

「いつもそばにいる彼には気付かれてしまいました」
「事情は話したの?」
「ええ。彼は全てを知って…それでも私に優しくしてくれます。その…素敵な人です」

「…」ジト

何そのキャ、言っちゃった、みたいな仕草。いや可愛いけど。

「父さん、俺もその人に会わせてくれよ」
「もちろんだよディディエ。お前にはいつか会わせたいと思っていたんだ。こんなに早くその機会が訪れるなんてね。アイザックもお前に会いたがっていたんだよ」

僕の勘が告げている。これはただならない事態だと。不穏…とは違う、何がどうとは表現しずらいのだが…う、ううむ…

強いて言うなら、「ディディエ、君のお父さんはお母さんになって新しいお父さんが出来るかもしれないよ」と。

「あ、ああそう…。まあ秘密を抱えるのはしんどいし一人でも理解者が居て良かったよね」

そうだ。とにかく今の彼が幸せならそれでいいじゃないか。

ザク

そのとき耳に聞こえてきたのは力強く土を踏む音。しばらくして姿を現したのは大きな金槌をもった大柄な男だ。
煤に汚れた彼が誰かは尋ねるまでもない。

「もしかしてあなたがアイザック?」

胡乱気に部屋中を見回す彼はひどく無口だ。

「…パスカル、彼らは?」
「アイザック、彼はご当主様のお孫さまだよ」

「こ!これは失礼を!」

見るからに朴訥そうなアイザック。だが彼のパスカルをみる目はどこまでも優しい。
そしてそんなアイザックをかいがいしく世話するパスカルはすでに女房のようだ。

ここにきて何かに気付きはじめたディディエ、彼の目は戸惑いに泳いでいる。

仕方ない。助け船だ。

「パスカル、アイザック、おめでとうでいいのかな」

「…」ポリポリ
「そんな…」ポ

こういうことは騒ぎ立てない方がいいだろう。自然に、ごく自然に…

「ベル様…、それって…」

「祝福してあげなよディディエ」

僕の言葉を受けリオネルが援護に入る。

「あの女からあんな目にあわされたんだ。女嫌いになるのも無理ないだろう」
「そりゃそうだけど…」

「ごめんよディディエ。父さんを嫌いになってしまったかい?」
「嫌いになんかなるもんか!ただその…ちょっと驚いただけで」

男同士の色事。略して男色か…

金の玉欠乏による影響…変化は身体だけで済まなかったようだ。
なるほど。身体構造上、男らしさが減退することで相対的に女らしさが増幅する、と。そしてそれは精神性に反映されるのか…。

これはこれで別に。だが何かが違う。そうじゃない。

僕が求めるのはもっとこう!女性の代わりとか、女性のような、ではなく凛とした男と男でありながらそこに存在するもっと精神的な深いつながり。それこそが尊い男色の契り…

はっ!男色の契りだと!何かが頭の片隅に!

シュ…しゅう…しゅうど…

「…ベルナール様はこういった関係をどう思われますか?」

もう!なにか思い出せそうだったのに!すごく大事な何かを!
だけどオドオドと心配そうなパスカルを今は安心させねばなるまい。

「え?いや。いいんじゃないかな。性別なんて大した問題じゃない」

異性愛なら何でもいいってもんじゃない。みるがいい。異性愛の伝道者アシルを。

「いいのですか?教会は良しとしていませんが…」
「そこにあるのが享楽でなく信頼と敬意であるなら人の心は自由であるべきだよ」

「そうですか…」
「そうなんだ…」

こちらを見てしみじみとつぶやく二人の従者。何その顔?よくわからないがろくなもんじゃない。

くわばらくわばら。






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