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ぼくのおともだち
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「ベルナール様、ではこの場合はどのようにすればいいよですか?」
「うん、この場合はある程度の値切りを見越してはじめから三割ほど高値をつけておくんだよ」
「なるほど…勉強になったねシーモア」
「ほんとだねフラン」
本日は小さな友人たちを招きちょっとした茶会を開いている。
お誘いしたのは四名。先のティーパーティーから親しくしているマルク子爵家のフラン君、アルデンヌ伯爵家のシーモア君、ドルー伯爵家のピエール君と、ルーブロア侯爵家のフィリップ君だ。
右も左も小姓がいっぱい…ホワワン…
僕は僕と従者だけでなく、信頼と絆で結ばれた同輩の男色関係にも心の癒しを見出だしている。
うーん、目の保養…
「ところでシーモアは相変わらず石を集めてるの?」
「はい!あれからさらにいっぱい集まりました!ベルナール様にも今度お見せしますね!」
見たところ彼は四人の中でもっとも幼いというか…その無邪気さこそがまさに原石。
彼の父アルデンヌ伯爵は狩りと冒険を楽しむ自由人だ。領地運営を家令に任せ国中を自由に飛び回っている。まさしくその血を彼は受け継いでいるのだろう。
「楽しみにしてるよ」
「ふふ…」
「どうしたの?」
「いえ、フランとベルナール様は僕の趣味を笑わないので…嬉しいなと思って」
「シーモア…、笑うわけないよ!君は大事な友だちじゃないか!」
シーモア…笑うわけないよ!ほとんど孫を見てるようなものじゃないか!
コホ…「シーモアは嫡男だったね」
「はい。当家はアランブールの傘下。お父様からはベルナール様にはよくお仕えするよう言われています」
ふむ…暖簾分けした子店みたいなものか。
であれば共に栄えねばなるまい。商売とはみんなで豊かになるべきと僕は考えている。
「フランは子爵家だったよね」
「ですが僕は四男ですので」
「また子沢山だね」
「ふふ、母は後妻ですよ。先の夫人は上の兄を出産する際お亡くなりに…」
「そう、失礼なことを言ってごめんね」
「いえそんな…」
前世も今世もお産とは大変な危険を伴うものである。だからこそ人々は若く体力のあるうちにと結婚を急ぐのだ。特に跡継ぎを産まなくてはならない貴族のご令嬢はね。
アルデンヌ伯爵家がアランブールの傘下であるように、このマルク子爵家はアルデンヌ家の傘下になる。
つまりアランブール伯爵家が旗本だとしたらアルデンヌ伯爵家は御家人、その下、マルク子爵家は郷士とでも言おうか。
マルク子爵はアルデンヌ領の一部を受け持ち農村の管理を手伝っている。
そこで旧知の仲であるアルデンヌ伯は将来の家臣としてフランの二つ上の兄(三男)を、そしてそのおまけでこのフランをアルデンヌの王都邸で預かっているのだとか。
フラン、彼は四人の中で一番おっとりした少年だ。
ふむ…言うなれば彼フランは正真正銘シーモアの小姓。ごちそうさまです。
「さっ、そろそろピエールとフィリップを呼びに行こうか」
ピエールとフィリップ、この二人はあのティーパーティーの時、二人で戦っていた元気有り余る少年たちだ。
彼らは現在、僕の勧めで王都邸付きの騎士から稽古をつけてもらっていた。
将来は騎士になりたい、と勇ましく宣言したピエール君。彼はドルー伯爵家の次男である。
貴族家の次男とは全く以て気の毒な立場だ。
嫡男のスペアとして大切にされながらも嫡男ほどの権限は持てず、かと言って三男以下のように自由気ままな人生は許されていない。
もっとも貴族社会において自由に生きることを当人たちが望むかどうかは甚だ疑問だが、そんなわけで彼は定番中の定番、お城か大貴族家の騎士になることを夢見ていた。
ドルー伯爵家はアルデンヌ伯爵家と大して序列の変わらない、アランブールから見ればかなり格下の家門である。二百ほどある伯爵家の中で筆頭がこのアランブール、彼らの家は真ん中からやや下、といったところだ。
侯爵家をもしのぐ財を持つアランブール。なのに伯爵位でとどまっているのは、おじいさまを含めた過去の当主が権威争いにあまり積極的ではなかったから、ただそれだけの理由だ。
名より実を取る。僕も大いに賛成だ。名で飯が食えるものなら没落する貴族は居ない。
そう。ピエールの相棒フィリップ、まさに彼の家は正直…没落寸前の侯爵家である。
ルーブロア侯爵家とは四十ほどある侯爵家の中で序列最下位の、実質アランブールよりもかなり劣る侯爵家である。
没落の理由は長年続く収穫不良の積み重ね。ルーブロア領は岩山の多い、どちらかというと農業に不向きな土地なのだとか。
貴族とはとかく面倒な生き物である。
前世の武士にも『武士は食わねど高楊枝』といった、貧しくとも気高く生きよという粋なことわざがあったものだが、どれほど困窮していても見栄と矜持を失っては貴族たるもの侮られる。
かと言って、地代や配当金と言った、不労所得以外の金策をすればそれもまた侮られるのだから話にならない。
ルーブロア侯爵は領の立て直しを考えこのアランブールとお近づきになりたいようだ。
そしておじいさまが彼、ルーブロアの嫡男をあの茶会に招待したのであれば、それは面倒を見てやれということなのだろう。
ふむ…、だが僕の利はなんだ。
と、そこに稽古を終えた二人が連れだってやってくるではないか。
「ピエール、最後の一打はすごかった。次は負けないからな」
「フィリップこそ。右からの一撃は受けた腕がしびれたよ。さすがだね」
笑いながら肩を抱き合う二人の少年……上半身裸の。
「……服は?」ジィィ
「これはベルナール様!」
「し、失礼しました。汗がすごかったものですから…」
「ううんいいの。気にしないで」ジィィ
「あの、稽古させていただきありがとうございます!」
「とても有意義な時間でした!」
「それはなにより」ジィィ「あっ!離れないで!風邪ひくといけないから部屋までくっついて行った方がいいよ」
「くっついて…ですか?」
「ほら、腰に手をまわして」
「あ、はい」
これでよし。
いやー、いいもの見せてもらったわ。よし、ルーブロアのフィリップ。君の将来は僕に任せておけ!これこそがご褒美!
そして十数年後。
僕の指示でシーモアはルーブロアの岩山を(趣味で)散策し、そこで見つけた黒い石をアランブールの出資により採掘し始めたことで、石炭の産出領として一気にルーブロアの領地経営は改善し、ルーブロア侯爵家、アランブール伯爵家、アルデンヌ伯爵家の三家がまとめて潤うことになるのだが…それはまた別のお話。
「うん、この場合はある程度の値切りを見越してはじめから三割ほど高値をつけておくんだよ」
「なるほど…勉強になったねシーモア」
「ほんとだねフラン」
本日は小さな友人たちを招きちょっとした茶会を開いている。
お誘いしたのは四名。先のティーパーティーから親しくしているマルク子爵家のフラン君、アルデンヌ伯爵家のシーモア君、ドルー伯爵家のピエール君と、ルーブロア侯爵家のフィリップ君だ。
右も左も小姓がいっぱい…ホワワン…
僕は僕と従者だけでなく、信頼と絆で結ばれた同輩の男色関係にも心の癒しを見出だしている。
うーん、目の保養…
「ところでシーモアは相変わらず石を集めてるの?」
「はい!あれからさらにいっぱい集まりました!ベルナール様にも今度お見せしますね!」
見たところ彼は四人の中でもっとも幼いというか…その無邪気さこそがまさに原石。
彼の父アルデンヌ伯爵は狩りと冒険を楽しむ自由人だ。領地運営を家令に任せ国中を自由に飛び回っている。まさしくその血を彼は受け継いでいるのだろう。
「楽しみにしてるよ」
「ふふ…」
「どうしたの?」
「いえ、フランとベルナール様は僕の趣味を笑わないので…嬉しいなと思って」
「シーモア…、笑うわけないよ!君は大事な友だちじゃないか!」
シーモア…笑うわけないよ!ほとんど孫を見てるようなものじゃないか!
コホ…「シーモアは嫡男だったね」
「はい。当家はアランブールの傘下。お父様からはベルナール様にはよくお仕えするよう言われています」
ふむ…暖簾分けした子店みたいなものか。
であれば共に栄えねばなるまい。商売とはみんなで豊かになるべきと僕は考えている。
「フランは子爵家だったよね」
「ですが僕は四男ですので」
「また子沢山だね」
「ふふ、母は後妻ですよ。先の夫人は上の兄を出産する際お亡くなりに…」
「そう、失礼なことを言ってごめんね」
「いえそんな…」
前世も今世もお産とは大変な危険を伴うものである。だからこそ人々は若く体力のあるうちにと結婚を急ぐのだ。特に跡継ぎを産まなくてはならない貴族のご令嬢はね。
アルデンヌ伯爵家がアランブールの傘下であるように、このマルク子爵家はアルデンヌ家の傘下になる。
つまりアランブール伯爵家が旗本だとしたらアルデンヌ伯爵家は御家人、その下、マルク子爵家は郷士とでも言おうか。
マルク子爵はアルデンヌ領の一部を受け持ち農村の管理を手伝っている。
そこで旧知の仲であるアルデンヌ伯は将来の家臣としてフランの二つ上の兄(三男)を、そしてそのおまけでこのフランをアルデンヌの王都邸で預かっているのだとか。
フラン、彼は四人の中で一番おっとりした少年だ。
ふむ…言うなれば彼フランは正真正銘シーモアの小姓。ごちそうさまです。
「さっ、そろそろピエールとフィリップを呼びに行こうか」
ピエールとフィリップ、この二人はあのティーパーティーの時、二人で戦っていた元気有り余る少年たちだ。
彼らは現在、僕の勧めで王都邸付きの騎士から稽古をつけてもらっていた。
将来は騎士になりたい、と勇ましく宣言したピエール君。彼はドルー伯爵家の次男である。
貴族家の次男とは全く以て気の毒な立場だ。
嫡男のスペアとして大切にされながらも嫡男ほどの権限は持てず、かと言って三男以下のように自由気ままな人生は許されていない。
もっとも貴族社会において自由に生きることを当人たちが望むかどうかは甚だ疑問だが、そんなわけで彼は定番中の定番、お城か大貴族家の騎士になることを夢見ていた。
ドルー伯爵家はアルデンヌ伯爵家と大して序列の変わらない、アランブールから見ればかなり格下の家門である。二百ほどある伯爵家の中で筆頭がこのアランブール、彼らの家は真ん中からやや下、といったところだ。
侯爵家をもしのぐ財を持つアランブール。なのに伯爵位でとどまっているのは、おじいさまを含めた過去の当主が権威争いにあまり積極的ではなかったから、ただそれだけの理由だ。
名より実を取る。僕も大いに賛成だ。名で飯が食えるものなら没落する貴族は居ない。
そう。ピエールの相棒フィリップ、まさに彼の家は正直…没落寸前の侯爵家である。
ルーブロア侯爵家とは四十ほどある侯爵家の中で序列最下位の、実質アランブールよりもかなり劣る侯爵家である。
没落の理由は長年続く収穫不良の積み重ね。ルーブロア領は岩山の多い、どちらかというと農業に不向きな土地なのだとか。
貴族とはとかく面倒な生き物である。
前世の武士にも『武士は食わねど高楊枝』といった、貧しくとも気高く生きよという粋なことわざがあったものだが、どれほど困窮していても見栄と矜持を失っては貴族たるもの侮られる。
かと言って、地代や配当金と言った、不労所得以外の金策をすればそれもまた侮られるのだから話にならない。
ルーブロア侯爵は領の立て直しを考えこのアランブールとお近づきになりたいようだ。
そしておじいさまが彼、ルーブロアの嫡男をあの茶会に招待したのであれば、それは面倒を見てやれということなのだろう。
ふむ…、だが僕の利はなんだ。
と、そこに稽古を終えた二人が連れだってやってくるではないか。
「ピエール、最後の一打はすごかった。次は負けないからな」
「フィリップこそ。右からの一撃は受けた腕がしびれたよ。さすがだね」
笑いながら肩を抱き合う二人の少年……上半身裸の。
「……服は?」ジィィ
「これはベルナール様!」
「し、失礼しました。汗がすごかったものですから…」
「ううんいいの。気にしないで」ジィィ
「あの、稽古させていただきありがとうございます!」
「とても有意義な時間でした!」
「それはなにより」ジィィ「あっ!離れないで!風邪ひくといけないから部屋までくっついて行った方がいいよ」
「くっついて…ですか?」
「ほら、腰に手をまわして」
「あ、はい」
これでよし。
いやー、いいもの見せてもらったわ。よし、ルーブロアのフィリップ。君の将来は僕に任せておけ!これこそがご褒美!
そして十数年後。
僕の指示でシーモアはルーブロアの岩山を(趣味で)散策し、そこで見つけた黒い石をアランブールの出資により採掘し始めたことで、石炭の産出領として一気にルーブロアの領地経営は改善し、ルーブロア侯爵家、アランブール伯爵家、アルデンヌ伯爵家の三家がまとめて潤うことになるのだが…それはまた別のお話。
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