僕はゼッタイユルサナイ

kozzy

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分かち合う大望

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「…」パクパク…

「おや?動じないかと思いましたのに」
「いや動じてない。全く問題ない。けど以心伝心過ぎて…ちょっとね」

「以心伝心ですか。そうだと思っておりましたよ」

なにっ!バレてた…だと?

「やはりあなたは面白い方だ」

…僕はそれほど顔に出ていただろうか…
おかしいな。貴族子として、そして人生二度目の転生者として常に平静を心掛けてきたのに…
うーん…修行が足りんな僕も。自重自重。

「で?なにが面白いって?」

「…男色は教会に言わせれば悪魔の思想らしいですよ。あなたのように高貴なお方がそれを承知でなんと恐れ知らずな。ふふ」

笑いながらそれを言える時点でリオネルも大概じゃないか。
もっともリオネルは僕の背中を見ながら商いというものを長年学んできた。
だからそのなんだ、多少私生活にまで影響を及ぼしてしまったことは否めない。

まあいずれにしてもだ。

落とす醍醐味が損なわれたことは残念といえば残念だが、話が早いと思えばなんのことはない。
状況を分析するに、要はリオネルも僕のものとなることに異論はないと…

ふむ…


「教会の目が怖くはありませんか」
「別に」

大貴族である僕は知っている。
教会のトップは一部ほんのり腐敗していると。
だからこそ僕はいつだって、教会へは気前良くお布施を納めているのだ。

けれど、ここだろうが前世だろうが、お布施の額で信仰心を量る坊主など生臭と相場は決まっている。

「僕は神とさえ交渉する男。悪魔なんか怖くない。というか信じない」
「それは頼もしい」

いや事実だし。

因みに神様からはあの後、夢枕という形で無事ジーンの幸多き転生を見せてもらったよ。報告まで。


本題にもどって、そもそも男色が悪魔の思想っていうなら、男色天国でお暮しだった古代の神々、彼らが信仰するその尊き神すら否定することになるとは思わないんだろうか?

「神は全てを超越した存在ですから」
「都合のいい解釈だな」

全てを超越した存在が人間如き些末な生き物の性習慣に口を挟むだろうか?いいや。そんな覗き見根性を持つのは生身の人間しか居ない。

「それからリオネル、僕は男色家なわけじゃない」
「そうなのですか?」

「そりゃ身体の結びつきは大切なことだし不可欠だと思ってる」

だけど僕が心から焦がれてやまないのは主従における、命さえ惜しまぬ忠義の心だ!
その先にあるのが衆道!そうじゃないか!

そう!互いに想うは一生にただ一人という、単なる肉欲を越えた精神の繋がり!
高潔で義に背かぬ誠の武士道こそが僕の大望!!!

「まるで騎士道のようなことを仰るのですね」
「騎士、騎士か…」

騎士道と武士道、それは非常に近しいが微妙に異なるものだ。
だがまあ今の問題はそこではない。

「いずれにしてもしばらくは無理だな。残念だけど」
「と言いますと?」

「百貨の店が落ち着くまでは大人しくしていないとね。見聞に寄ればあれは身体への負担が大きいそうだから」

今やリオネルは僕にとって欠かせぬ片腕…。この大事な時に負担をかけて寝込まれては困るからね。

「失礼。ベル様の成人に気が逸るあまりそれを失念しておりました。尤もなことです。今暫く待ちましょう」

「あー、せっかくその気のところ悪いね」
「いえ問題ありません」

「ククク…」
「フフフ…」

よし。リオネルとは話が付いた。残るは…


「ところでリオネル。僕はディディエともそういう関係を望んでいるのだけど…」
「存じておりましたよ」

なんでも知ってるんだな…
人生二度目の爺として、これは情けない。

僕は今夜からの表情訓練を心に誓った。

「ま、まあいいや…。じゃ聞くけどどう思う?まだ早いかな」

ミレイユのことがあったばかりだし、もう少し落ち着くまで…

「そうですね。少々時期早々かと」

「やっぱり?」
「ええ。彼の感情では準備出来ておりますが如何せん、技術が…」

「ぶふっ!」
「先ほどから何度も汚いですよベル様」
「いやぁちょっと…」

そうきたか…

けど確かにリオネルの言う通りだ。

思えば年齢一桁からここにいるディディエの私生活について、僕はほぼ全てを知り尽くしている。
彼は男とか女とかそう言う問題でなく、何がとは言わないが、彼はまっさらな新品で間違いない。

それこそ僕の望むところなわけだが、問題は彼をリードできるほどの技術が僕にも備わっていないことだ。

何度も言うが、衆道とは前世の憧れであって僕に経験は無い!

「あー、でもディディエは初心うぶなところが好ましいと言うか……」
「いいえ、ベル様のお相手を務めるのであれば粗相がないようそれなりの技を備えねば。困るのはベル様ですから」

な、何!
そ、そうか…
受け入れる側にも技がないと僕が本懐を遂げられない、そういう事だな。
これは困った…

「よければディディエには私から手ほどきをいたしましょうか」
「え」

な、なにぃぃ!!!

「そ、そそ、それは口頭…で…?」
「いえ、実地で」

「じっ!」

「私はディディエのことも可愛い弟分として親愛の情を感じています」
「…気、いやなんでも」

気が多いな!と言おうと思ったが…自分もだった。
…んー、そうとも。僕は主従の関係に焦がれているが、切磋琢磨する同輩の関係も好物じゃないか。
ならこれでいい…のか?

「ふふ、何もかもを暴きたいと思うベル様への感情と親鳥のような気持で見守るディディエへの感情は別なのですよ」

…それ…なんならディディエの方が本命じゃないのか、リオネルお前…

「腑に落ちるような落ちないような…」
「誤解なさらないでください。私はただ、ベル様にとって唯一無二の、替えの利かない誰よりも有能な臣下で居たいのですよ」

唯一無二の臣下!リオネルはすでに衆道を理解し始めている!

「そ、そうか…」ホクホク…「ちょい待て!リオネル、その、経験は…」

「ベル様の望みを理解し同じ感情を自覚した時から学びを重ねて参りました。ご安心ください」

「…どこで…?」

「蛇の道は蛇。しかるべき場所にはいるのですよ、男色専用のが」

な、なるほど。さすがリオネル、勉強になる……




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