僕はゼッタイユルサナイ

kozzy

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深夜の攻防

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メイドたちが来ないよう、急ぎながらも足音を殺して階段を駆け上がる。微かに声が聞こえるのは昨年まで使っていた三階にある僕の部屋だ。

ああー!灯台下暗しー!

た、確かに僕の寝台はディディエの部屋のものよりも立派で大きい。
そして子供階でもある三階の部屋は全て、甲高い声が大人の居住階である二階に響かないよう、重ね張りの板、厚手のカーテン、何枚ものタペストリーなどで工夫がされている。

ぐ…認めたくはないがさすがだリオネル…

ど、どうする…この扉を開ければ、そこには今まさに裸でくんずほぐれつする二人が居るかもしれない。それは大変申し訳な…い、いや!主人たる僕が何を言っているのか!

そしてこの存在感を示す大きな扉は所詮、静かに開けようが豪快に開けようが開けた瞬間にバレる運命しかない。
となれば正々堂々いくべし!
と思ったが、先ずは盗み聞きから…

「いいから離れろよリオネル!」
「馬鹿を言えディディエ!お前…何も分からずベル様のお身体を傷つけたらどうするつもりだ!」
「そ、それは…。な、なら俺も花売りを買う!それでいいだろ?」
「だめだ」
「なんでだよ!」
「ベル様はお前に穢れ無き状態をお望みだ。花売りなど買ってはお前が汚れる」

ジィィィ…ン…リオネル、よく分かってるじゃないか…

「お、お前だって買っただろ!」
「ベル様は私に純粋さなどお求めでない」

……リオネル…よく分かってるじゃないか…

「お前が汚すのはいいのかよ」
「馬鹿だなディディエ。私がベル様のものであるお前に弁え知らずなことをするものか。直前までだ」

リオネル…さすがの忠誠心、と言いたいところだが、直前とはどの時点をさすのだろうか?

「どうでもいいから早くこの紐を解けよ!」

ブッフォ!
ひ、紐ぉ!!!

リオネル…お前ってやつは…お前ってやつは…

でかしたー!!!

こ、これはますます見学しなければ…。そうとも。これは僕の後学ともいえる。必要な…そう!必要な措置だ!
さ、さあ行くぞ!

グッ!

い、いや。やっぱりこ、こっそり、こっそりね。

ギ、ギ、ギ、う、意外と響くな。しまった、厨房から油を持ってくるべきだったか…こっち見るな、見るなよ二人とも。

キィィィ…


「おやこれは」


扉を開けたのと視線が合ったのはほぼ同時だった…




「ベル様!な、なな、なんでここに!」
「ベル様…あれほどお見せ出来ないと申し上げたのに。仕方のない人ですね」

冷静に言うな!冷静に!

「っていうかどうして二人とも服着てるの!」

「着てて悪いかよ!」
「思った以上にディディエの抵抗が激しく…」

それでもディディエの胸元は解放されている。おおぅ…

「で?」
「で?とはリオネル」

「約束を破ってまで乱入したのです。この後どうされますか」

「さてどうするか…」

「どうするか…じゃない!これ以上何かしたら絶対許さないからな!」

「ディディエ…お前主人の前で何という言い草」
「うるさい!」
「ここに居るのは大好きなベル様だというのに何が問題だ」
「問題しかないだろうが!」

些か外野がうるさくはあるが、僕はその時思考の海に身を委ねていた。

ここまで来たら手ほどきなど待たずいっそのことこのままぶっつけ本番で本懐を遂げる…か。だが初めてが三人というのはいくらなんでも憚られる。するならするで先ずはどちらか一人…

けれどよく考えたらディディエにしてもリオネルにしても、先に選ばれなかった方は気に病むのではないか?

そうとも!

リオネルの覚悟を聞いたばかりだというのに、これで先にディディエを選べば選ばれなかったリオネルは、「私の忠誠心を踏みにじった!」と拗ねるかもしれない。
そして叙爵式の夜という、この状況下で先にリオネルを選べばディディエは、「やっぱり俺が平民だから…」といじけるかもしれない…

ああーーー!主人としての葛藤!ど、どうすればいい僕は!


ガッ

ガッ?

「ああっ!ディディエ!いつの間に紐を!」
「ベル様が悶々としてる間にほどいたんだよ!」
「リオネル、どどど、どういうこと!」

あの紐が良かったのに!じゃなくて!

いつの間にか僕はディディエから羽交い絞めにされ、僕とディディエ二人の前で、すかしたリオネルはその紐を右手に持ちブンブンと振り回している。な、何だろう、この胸騒ぎは…

「なあベル様、覗き見とは良い趣味じゃないか!」

ギクー!

「何故分った…」
「あれだけニヤニヤしておきながらわからいでか!」

いやお勉強がね。

「いつからこんなあくどいことを…」
「ちっ!違う!これは全部リオネルの計画で…」

「けどベル様は全部知ってたんだろ?なら同罪だ!」

あああーーー!!!欲望に身を委ねたばかりに従者の信頼を損なってしまったーーー!!!

「だからってこれはどういう状況?…リ、リオネル?」
「ベル様のおかげで計画が台無しになりましたので」
「う、うん」

「…いっそ先にベル様に手ほどきする方が手っ取り早いかと思いなおしまして。ディディエもそれなら納得でしょうし」
「あ、そっか」ハタ「……」

って、なんだとーーー!

「うそ。ちょっと待ったリオネル。これなんか体勢に問題があるような…」

「いいえ何も問題ございません。ディディエ、ベル様をベッドにお連れしろ」
「了解!」

「はあ?ちょ、放して…」
「嫌だね!」

「待て待て待て!」

「今日の夜着はいつものネグリジェじゃなくガウン一枚か。脱がしやすいな」
「こ、これはガウンじゃなく浴衣…」

って、言ってる場合か!

「ああー!帯ほどかないで!」

「何故抵抗なさるのですか?お望み通りではありませんか」
「そ、そそ、そうだけどなんか…」

そうだ!僕はこの日を待ち望んでいた!

…はずなのに何故だろう…どうしても受け入れ難いのは…

「ああっ!」ドサッ!

よくわからないけど絶体絶命ー!

バタン

「シ、シメオン…」

不味い!リオネルたちと違い昔かたぎのシメオンに衆道を説いても理解出来ないだろう。新たなる絶体絶命!

「これは…見回りの途中なにか気配を感じ来てみれば…」

「あの、違」
「フォークレスリングの真似事ですかな?」

「あ、うん、そう」

ホー…良かった。
シメオンはどうもこれを、祭りの場などで庶民が楽しむ格闘技の真似事と思ったようだ。まさに危機一髪…



「ベルナール様、祝いだからと三人ではしゃぐのも良いですがいい加減静かになさいませ。大旦那様がお目覚めになってしまいます」
「ご、ごめん…」

「ディディエ。ベル様の無茶に何でも付き合うのではありません。良い執事になれませんよ」
「す、すみませんシメオンさん…」

「リオネル、面白がっていないで止めなさい」
「これは失礼しました」

「早くお休みください。いいですね」


バタン


お、お楽しみはまた今度…


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