僕はゼッタイユルサナイ

kozzy

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前哨戦 ちょこっと※

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林の周囲は四人の護衛ががっちり守りを固めている。
僕の信頼篤い彼等であれば一人の乱入者もけして許さぬはずだ。

ドキドキドキ…

今こそめくるめく衆道の炎に身を焦がす時!

「さあご入浴くださいベル様」
「じゃあまず背中を流してもらおうかな」

焦らない焦らない。
どんな時も入浴の礼儀は守らないとね。

「ディディエ、支度を」
「ああ」

「ちょっと待った」
「なんですかベル様」

「なんでもなにも…」

ここは温泉。天然の湧き湯だ。
一人用の浴槽を使う屋敷での入浴ならいざ知らず、僕は二人としっぽりが楽しみだったのだが…

「なんで服着てるの。早く脱いで。一緒に入るよ」

「えっ?」
「そうなのですね…」

戸惑いをみせる二人の従者。おや?この反応は…

し、しまった!
温泉を知る僕には当たり前過ぎて二人への説明をすっかり忘れていたが、他人と湯船に浸かる習慣のない彼等は、当然いつも通り僕の入浴を手伝うつもりでいたのだろう。


ここで説明しておこう。

この国では宗教観の違いから(というか教会の陰謀により)他者に裸を見せるのは不道徳である、という価値観が強く根付いている。
幸い入浴の手伝いをする使用人は主人の所有物、という扱いになるため例外とされているが、それでも使用人は着衣のまま、主人は薄衣を羽織って湯船に浸かり、薄衣越しに身体を洗うのが通常である。(あ、僕は手ぬぐいを腰に巻いてたよ)



と言うことは…、リオネルはここで何をする気でいたんだよ!って、洗浄か…

「……」フー…

しっぽりはどうした!しっぽりは!

「リオネルにしては読みが甘いんじゃない?」
「これは失礼しました」

「けどベル様、ここじゃ不味くないか?」
「誰も来ないから気にしないで。ほら早く」
「いや、でも」

「早くっ!」

ディディエのやんちゃなくせに奥ゆかしいところが僕は好きだが、今この時は恥ずかしがり屋なのに大胆、でもいいんじゃないだろうか。

「そうですか…。理解しました。そういうことなら遠慮なく」サラリ…

何かを察し先んじて上着を脱ぎ始めたリオネル。それに促されようやくディディエも後に続く。

二人のスラリとした若々しい肢体。
騎士であるピエールやフィリップのように鍛えあげているわけではない、けれど無駄な贅肉の無い引き締まった身体だ。

「な、なんだよ。いつも見てるだろ…」
「見過ぎですベル様」

「あ。ごめん」

何故だろう。二人の着替えなど何度となく見ているはずなのにいつもと違って見えるのは…ああ邪心…

「ふっ、ディディエ。ベル様の思し召しだ。念入りに洗って差し上げろ。
「…それもそうだな。ベル様。お背中お流しします」

「うむ。苦しゅうない。ちこう寄れ」

使うのは当然『セドリック美容商会』のぬか袋だ。ディディエは片手に持ったそれで僕の背中をくるくると…くるくると…くるく…

「…ディディエディディエ。前は自分で洗うから」
「いいやベル様。せっかく野外でこれだけ開放的なんだ。全部俺に任せろよ」

「えー…」

本物の殿様であれば何もかもあますとこなく洗われるのだろう。
当然この国においても、王族及び高位貴族などは侍女や侍従が付きっ切りで隅々まで洗うのが普通だ。

が!
如何せん。僕の前世は商人である。小僧は居ても小姓なぞ居たことがない。
そのため僕は浴槽を使えるようになった時から、前世持ちの嗜みとして手足と背中以外は自分自身で洗っていた。
まあ…当時はディディエも子供だったし…大人としての倫理感だよ。

「ベル様、主人たるものそろそろこういったことにも慣れていただかないと。先はまだ長いのですよ」
「リオネル…」

なんだろうこの指揮官…みたいな気を放つリオネルは。どうにも逆らうことが憚られる。

「…確かに一理ある…か。わ、わかったディディエ。前もマカセル!」
「声裏返ってますよベル様」
「リオネルうるしゃい!」

「まーまー、じゃまずここな」

くるっ

「ひあぁぁぁぁ…」

「なんつー声出すんだよ」
「いやぁ…」

女性にょしょうでもないのに胸をまさぐられる感覚ときたら…

「ディディエ。これを使え」

リオネルが放ってよこしたのは石鹸。それも最近改良された非常に香りの良いものだ。

「おっ!良い匂いだな」
「ベル様。これは百貨の店で取り扱いを始めた新製品です。しっかりご使用になり後ほど感想をお聞かせください」

「感想とな…」

商売の一環ではしかたがない。僕はどこまでも白く柔らかな泡に身を委ねた。

ツルッ

「う…ひぃ」
「いい滑りだな」

ヌルッ

「うひょぉう」
「よし、泡のキメは申し分ない」

ああああ!胸から脇腹、そして下腹と泡はどんどんと僕を侵略していきあと一か所を残すのみ…残すのみぃー!

こ、これくらいなんだ!
僕は殿様だ殿様だ殿様だ…

「う…、よし!よきにはからえディディエ!」
「おう!」

ギュウ!

「sdfghjkj!!!」

「あ、悪いベル様。つい緊張のあまり力が…」
「馬鹿ディディエ!なにをしている!」

ジワ…ツツー「はーはーはー…」

ディディエめ…よくも大事な息子に無体を働いたな!もう許さない!

「悪い悪い今度は気をつけるって。ベル様手をどかしてくれよ」

「嫌だ!これ以上乱暴に扱われて使い物にならなくなったらどうしてくれる!」
「今度は大丈夫だって」
「信用ならん!」

大体ディディエは繊細さに欠けるんだよ!常日頃から!所作が!

「仕方ない。ディディエ腕を」

ガッ!

ん?この体勢には覚えが…
それもわりと最近…

「しっかりつかまえてろディディエ。洗浄は私が行う」

なにぃ!!!

「ちょま、あ、あああーーー!」

いかんいかん!暴発するー!

「もういい!もういいから!」
「そうですね。洗いすぎても良くありませんし」

「はぁっ、はぁっ…やっとお、終わったか…」

主人としての威厳が損なわれるところだった…

「いいえあと一か所残っております」

「え?」

スポ






ザバァ…

「さあこれでよし。ベル様、湯船にお浸かりください」

「う、うん…」グッタリ…

どうしてみんなこんなことされて平気なんだろう…完敗だよ…







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