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スパリゾート ノースランド
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「いらっしゃいロアン夫人。とその護衛」
「シャノン様…」
「君は相変わらずだな…」
「何を仰いますかコンラッド。これも友人ゆえの軽口でしょうが」
「そういう事にしておこう」
「で?どうしたのいきなり?この間二人の結婚式で会ったばかりじゃない」
晴れ渡ったある初夏の日。副王都を訪ねてきたのはロアン侯爵夫妻である。そう。言わずと知れたアーロンとコンラッドだね。
コンラッドが十の難行をやり遂げ王城へと帰還したのが昨年末。そして年明け、神霊祭後の晩餐会でロアン侯爵家復活と結婚を告げ(って言ってももう周知だったけど)、二人は離れ離れの期間が婚約期間と見なされていたので、それほど間を開けず、この春花々が咲き誇る中、自然豊かな新しいロアン侯爵領にてこじんまりとした、だけど祝福に包まれた温かな結婚式を執り行ったのだ。
認めたくないが僕とコンラッドは義兄弟…えーえー、行きましたとも祝福に。もっともアーロンのことは純粋に祝福したかったしね。
そして現在。あれからまだ三か月しかたっていない…
「以前僕が体験させていただいた炭酸泉なのですが…、その話をよもやま話でしましたところコンラッドが是非自分も試したいと仰られまして」
「へー?」
「何しろ私は二年近くも国中を周っていたのだ。戻ってからも式典礼典、やることは山積み…いい加減この辺りで身体の疲れを癒したい…」
「確かに…」
言われてみれば、現在この国で最も肉体的にお疲れなのはコンラッドなのかもしれない。
ん?戦線に居る元帥?あれは嬉々として前線に立ってるから。むしろ活力の元?
こうしてコンラッドとアーロン、僕とアレイスター、総勢四名で僕たちは慰労のために、このすっかり北部名物となった、魅惑のスパ施設『ノースランド』へと向かったのだ。
「じゃあ男湯はそっち。僕たちは受け湯(女湯)だから。また後でね」
「ところでシャノン、ここではマッサージとやらを受けられると聞いたが…」
「よくご存じですねコンラッド。色々ありますけどどれがいいかな…」
オイルを使ったラグジュアリーなアロママッサージから凝り固まった身体をグイグイ伸ばしていくタイ式マッサージまで…各種取り揃えて、今ではこのスパ人気をけん引しているのがこれらメニューだ。
「ではシャノン。コンラッドと共に私の分も予約を」
「アレイスターもお疲れですか?」
「ここのところ気の張る政務が多かったのでね」
「じゃあ時間になったら呼び出しがありますのでそれまでは炭酸泉をご堪能下さい」
ということでここは受け湯内…僕とアーロンは湯舟にトレイに乗ったレモン水を浮かべ、優雅に全身を弛緩させている。
「…それで…還俗して向かえた新婚生活はどう?」
「ふふ…。シャノン様とアレイスター様のように仲良くやっておりますよ」
冒頭余分じゃないかな?
「今ならシャノン様の仰った「愛されるより愛したい」その意味がよく分かります」
「そう?」
「愛する気持ちは誰にも奪えない…それなら今の僕は世界一幸せ者です。母を愛しロアンを愛しコンラッドを愛し…そしてシャノン様を愛してどんどん増えた愛が溢れんほど満ちていますから」
「そう…」ホワホワ
さすが光のヒロイン。良いこと言うなあ…と思った時が僕にもありました。次の言葉を聞かなければ。
「コンラッドともよく話すのです。子を成せない僕たちの愛の営みは何と崇高で純粋なのだろう…と」
ブフォッ!
「ですがコンラッドは魂を高めるためにもっと愛し合おうと時々無茶をなさいます。アレイスター様は大丈夫ですか?」
「ゴホゴホゴホ!!!おかげさまで!」
聞きたくないわ!コンラッドのエッチ事情なんて!というか、僕はエロ話とか下ネタとか…そういうのに不慣れなんだってば!何しろ前世は十五で入院以下略…
「それに一度誰かに聞いてみたかったのです…皆様はどこで手に入れているのでしょう?」
「???何を?」
「潤滑油を」
「だっ!」
「いつもはコンラッドがご用意くださるのですが…今の油はどうにも具合が良くなくて…」
ブクブクブク…
「シャノン様!?」
そ、そうか。カマ神の悪しき置き土産…ピュアすぎるってのはこういう弊害があるのか…
僕は「オイルの件はアレイスターからコンラッドに上物をプレゼントさせるから」、と伝えこの話をなんとか切り上げたのだが、無駄に全身が火照っているのはお湯のせいだけじゃない。コンラッドめ…お前がしっかりしないから…
ガヤガヤ…
「あ、男風呂が騒がしいね。そろそろマッサージの時間かな?」
「あの…僕もコンラッドの部屋で見ていていいですか?」
「どーぞどーぞ」
と言うことは僕は放置か…僕はここの責任者なのに放置か…放置…放置プレイ…いや待て?
…ピコーン!閃いた!
「シャノン様…」
「君は相変わらずだな…」
「何を仰いますかコンラッド。これも友人ゆえの軽口でしょうが」
「そういう事にしておこう」
「で?どうしたのいきなり?この間二人の結婚式で会ったばかりじゃない」
晴れ渡ったある初夏の日。副王都を訪ねてきたのはロアン侯爵夫妻である。そう。言わずと知れたアーロンとコンラッドだね。
コンラッドが十の難行をやり遂げ王城へと帰還したのが昨年末。そして年明け、神霊祭後の晩餐会でロアン侯爵家復活と結婚を告げ(って言ってももう周知だったけど)、二人は離れ離れの期間が婚約期間と見なされていたので、それほど間を開けず、この春花々が咲き誇る中、自然豊かな新しいロアン侯爵領にてこじんまりとした、だけど祝福に包まれた温かな結婚式を執り行ったのだ。
認めたくないが僕とコンラッドは義兄弟…えーえー、行きましたとも祝福に。もっともアーロンのことは純粋に祝福したかったしね。
そして現在。あれからまだ三か月しかたっていない…
「以前僕が体験させていただいた炭酸泉なのですが…、その話をよもやま話でしましたところコンラッドが是非自分も試したいと仰られまして」
「へー?」
「何しろ私は二年近くも国中を周っていたのだ。戻ってからも式典礼典、やることは山積み…いい加減この辺りで身体の疲れを癒したい…」
「確かに…」
言われてみれば、現在この国で最も肉体的にお疲れなのはコンラッドなのかもしれない。
ん?戦線に居る元帥?あれは嬉々として前線に立ってるから。むしろ活力の元?
こうしてコンラッドとアーロン、僕とアレイスター、総勢四名で僕たちは慰労のために、このすっかり北部名物となった、魅惑のスパ施設『ノースランド』へと向かったのだ。
「じゃあ男湯はそっち。僕たちは受け湯(女湯)だから。また後でね」
「ところでシャノン、ここではマッサージとやらを受けられると聞いたが…」
「よくご存じですねコンラッド。色々ありますけどどれがいいかな…」
オイルを使ったラグジュアリーなアロママッサージから凝り固まった身体をグイグイ伸ばしていくタイ式マッサージまで…各種取り揃えて、今ではこのスパ人気をけん引しているのがこれらメニューだ。
「ではシャノン。コンラッドと共に私の分も予約を」
「アレイスターもお疲れですか?」
「ここのところ気の張る政務が多かったのでね」
「じゃあ時間になったら呼び出しがありますのでそれまでは炭酸泉をご堪能下さい」
ということでここは受け湯内…僕とアーロンは湯舟にトレイに乗ったレモン水を浮かべ、優雅に全身を弛緩させている。
「…それで…還俗して向かえた新婚生活はどう?」
「ふふ…。シャノン様とアレイスター様のように仲良くやっておりますよ」
冒頭余分じゃないかな?
「今ならシャノン様の仰った「愛されるより愛したい」その意味がよく分かります」
「そう?」
「愛する気持ちは誰にも奪えない…それなら今の僕は世界一幸せ者です。母を愛しロアンを愛しコンラッドを愛し…そしてシャノン様を愛してどんどん増えた愛が溢れんほど満ちていますから」
「そう…」ホワホワ
さすが光のヒロイン。良いこと言うなあ…と思った時が僕にもありました。次の言葉を聞かなければ。
「コンラッドともよく話すのです。子を成せない僕たちの愛の営みは何と崇高で純粋なのだろう…と」
ブフォッ!
「ですがコンラッドは魂を高めるためにもっと愛し合おうと時々無茶をなさいます。アレイスター様は大丈夫ですか?」
「ゴホゴホゴホ!!!おかげさまで!」
聞きたくないわ!コンラッドのエッチ事情なんて!というか、僕はエロ話とか下ネタとか…そういうのに不慣れなんだってば!何しろ前世は十五で入院以下略…
「それに一度誰かに聞いてみたかったのです…皆様はどこで手に入れているのでしょう?」
「???何を?」
「潤滑油を」
「だっ!」
「いつもはコンラッドがご用意くださるのですが…今の油はどうにも具合が良くなくて…」
ブクブクブク…
「シャノン様!?」
そ、そうか。カマ神の悪しき置き土産…ピュアすぎるってのはこういう弊害があるのか…
僕は「オイルの件はアレイスターからコンラッドに上物をプレゼントさせるから」、と伝えこの話をなんとか切り上げたのだが、無駄に全身が火照っているのはお湯のせいだけじゃない。コンラッドめ…お前がしっかりしないから…
ガヤガヤ…
「あ、男風呂が騒がしいね。そろそろマッサージの時間かな?」
「あの…僕もコンラッドの部屋で見ていていいですか?」
「どーぞどーぞ」
と言うことは僕は放置か…僕はここの責任者なのに放置か…放置…放置プレイ…いや待て?
…ピコーン!閃いた!
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