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推し活満喫編
おかれた状況を把握する
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僕はラノベやRPGなどを楽しんできた下地があったためファンタジーの世界観は抵抗なく受け入れられた。そしてこれが異世界転移?的ななにかだということもぼんやりと理解してた。
だって現代社会でこんな舗装もされてないうっそうとした森の中を乗り心地最悪の馬車でガタゴト揺れながら移動なんてありえないし。そのうえ御者の人曰くこの先には魔獣の住まう森があるらしいし。魔獣って何?マジこわいっ。
それにさっきからメイドの人達お湯沸かしたり明かり灯したりするのに魔法?的ななにか使ってるし。ちょっとテンション上がったよ。てな訳で、これが異世界じゃなきゃなんなんだよって話でしょ。
そして僕が入ったこの白い顔の少年はアデル・カマーフィールドという名の伯爵令息らしく、さらにはメイドさんたちが泣きながら話す断片的な情報を総合すると僕は今ドナドナされてる真っ最中みたい。
カマーフィールド家は貴族家とはいえ領地も小さく官吏にもつけず没落寸前まで落ちぶれてる伯爵家。僕はそこの3男。メイドさんいわく現伯爵は人は良いが領地運営は決して長けているとはいえず国に納める税すらも滞りがちなよう。再三再四国からお叱りを受け、それでも貧しい領民に増税はしたくないと金策に奔走していたところ国王様から「魔獣が跋扈し瘴気に覆われた暗澹たる地バーガンディを治める辺境伯に婚姻相手として息子を一人差し出すなら滞った税金は免除しよう」とお達しがあったらしい。
この世界では婚姻や妊娠に関して性別の区別はないみたいだ。結婚はともかく妊娠も⁉驚きだよ。実に遠回しにあれやこれや聞き出したところちゃんと男性でも子供を生せる方法があることがわかった。
そしてこの世界の妊娠は受精時に内蔵した魔力も掛け合わさるとかで性別よりも魔力の相性や質のほうが重視されるんだって。
辺境伯様はこのリーガル王国現国王ドノヴァン・リーガル様の年の離れた実弟だ。王位継承権放棄し臣籍に下るなら本来公爵位を賜るはずなんだけど王位継承順位一位の皇太子派に対して叛意は無いとわかりやすく示すため自ら誰もが忌避したこのバーガンディ辺境伯位を望んだらしい。
なぜならこの王弟グラナダ・リーガル様は王国随一の魔力をもち尚且つ成人前からソードマスターのクラスを持つ剣の達人。まだ年若い頃から王位簒奪をそそのかすものが絶えなかったほどの強者らしい。自分の意思に反し常に諍いの渦中に置かれ人間不信を拗らせたグラナダ様は忠臣だけを随伴し辺境伯領に引きこもりその有り余る力を使って魔獣を討伐し続けた。それがかれこれ10年前。
だけどグラナダ様の類まれな力の後継を望む王家を含めた高位貴族たちはこぞって婚姻に色気を出した。だけど困ったことに、なんと常に魔獣の地を浴び続けたグラナダ様は身を包むオーラが魔獣の瘴気に近く変質してしまわれダークブルーの髪に赤い瞳の色合いも威圧を含み暗く深まり、それ故にグラナダ様を一目見たものは皆恐れ慄き逃げ帰ってしまう有様だ。呪われた辺境伯、魔人卿などと嘲られ今では領内の者以外誰もグラナダ様に近寄ろうとするものは居なくなってしまったらしい。
だけど強い血をもつ後継者をどうしてもあきらめきれない王様は税の免除と引き換えに我がカマーフィールド家に嫁を出せと脅した訳だ。
もともとバーガンディは濃い瘴気にも耐えられる高魔力の者か魔力量の多い者しか足を踏み入れることのできない土地。
なのに我が家にそんな要求をしてきたのには理由があって…カマーフィールドの血筋は代々もれなく魔力のレベルが高く修行次第で相当高難度の魔法も使いこなせるらしい。マジか。すごい。たぎる。なのにどうして没落寸前なの?
出世や権力に欲も関心もないお父さんは貴族社会の仄暗い部分には関わらないで細々とやってきたようだけど…やれてないよね?どうなのそれって…
ここまでが辺境の地へと向かう長い道中で聞き出せた情報。おかげでメイドさんたちの言う「おかわいそうに」「おいたわしや」の意味が解ったよね。はぁマジか~。
アデルは伯爵家の3男。伯爵家の兄弟たちは皆一様に魔力が高いが嫡子とその予備である次男を嫁に出すわけにはいかないので3男のアデルが婚姻を結ぶことになったって。
アデルはどうやら相当な箱入り息子。優しく気の弱い儚げ美人。多分だけどどっちかというとネガティブ志向な気がする。この婚姻が決まってからずっとずっと泣き暮らしていたようだ。
脳内情報だろうか?アデルの自我はもう無いのに記憶だけは残っている。体が馴染んでくるのと同時にアデルとしての記憶も全部じゃないけど少しずつ戻ってきている。
これはぼくの願望だけどこれが異世界転移じゃなくて入れ替わり案件だったらいいのにな。そしたらアデルは新太として新しい人生を生きられるでしょ?それにあちらの両親を悲しませる事もない。いきなり性格の変わった息子に戸惑うかもしれないけど失うよりはいいよね?きっと。
そうして僕は腹をくくって辺境伯領へと向かった。
だって現代社会でこんな舗装もされてないうっそうとした森の中を乗り心地最悪の馬車でガタゴト揺れながら移動なんてありえないし。そのうえ御者の人曰くこの先には魔獣の住まう森があるらしいし。魔獣って何?マジこわいっ。
それにさっきからメイドの人達お湯沸かしたり明かり灯したりするのに魔法?的ななにか使ってるし。ちょっとテンション上がったよ。てな訳で、これが異世界じゃなきゃなんなんだよって話でしょ。
そして僕が入ったこの白い顔の少年はアデル・カマーフィールドという名の伯爵令息らしく、さらにはメイドさんたちが泣きながら話す断片的な情報を総合すると僕は今ドナドナされてる真っ最中みたい。
カマーフィールド家は貴族家とはいえ領地も小さく官吏にもつけず没落寸前まで落ちぶれてる伯爵家。僕はそこの3男。メイドさんいわく現伯爵は人は良いが領地運営は決して長けているとはいえず国に納める税すらも滞りがちなよう。再三再四国からお叱りを受け、それでも貧しい領民に増税はしたくないと金策に奔走していたところ国王様から「魔獣が跋扈し瘴気に覆われた暗澹たる地バーガンディを治める辺境伯に婚姻相手として息子を一人差し出すなら滞った税金は免除しよう」とお達しがあったらしい。
この世界では婚姻や妊娠に関して性別の区別はないみたいだ。結婚はともかく妊娠も⁉驚きだよ。実に遠回しにあれやこれや聞き出したところちゃんと男性でも子供を生せる方法があることがわかった。
そしてこの世界の妊娠は受精時に内蔵した魔力も掛け合わさるとかで性別よりも魔力の相性や質のほうが重視されるんだって。
辺境伯様はこのリーガル王国現国王ドノヴァン・リーガル様の年の離れた実弟だ。王位継承権放棄し臣籍に下るなら本来公爵位を賜るはずなんだけど王位継承順位一位の皇太子派に対して叛意は無いとわかりやすく示すため自ら誰もが忌避したこのバーガンディ辺境伯位を望んだらしい。
なぜならこの王弟グラナダ・リーガル様は王国随一の魔力をもち尚且つ成人前からソードマスターのクラスを持つ剣の達人。まだ年若い頃から王位簒奪をそそのかすものが絶えなかったほどの強者らしい。自分の意思に反し常に諍いの渦中に置かれ人間不信を拗らせたグラナダ様は忠臣だけを随伴し辺境伯領に引きこもりその有り余る力を使って魔獣を討伐し続けた。それがかれこれ10年前。
だけどグラナダ様の類まれな力の後継を望む王家を含めた高位貴族たちはこぞって婚姻に色気を出した。だけど困ったことに、なんと常に魔獣の地を浴び続けたグラナダ様は身を包むオーラが魔獣の瘴気に近く変質してしまわれダークブルーの髪に赤い瞳の色合いも威圧を含み暗く深まり、それ故にグラナダ様を一目見たものは皆恐れ慄き逃げ帰ってしまう有様だ。呪われた辺境伯、魔人卿などと嘲られ今では領内の者以外誰もグラナダ様に近寄ろうとするものは居なくなってしまったらしい。
だけど強い血をもつ後継者をどうしてもあきらめきれない王様は税の免除と引き換えに我がカマーフィールド家に嫁を出せと脅した訳だ。
もともとバーガンディは濃い瘴気にも耐えられる高魔力の者か魔力量の多い者しか足を踏み入れることのできない土地。
なのに我が家にそんな要求をしてきたのには理由があって…カマーフィールドの血筋は代々もれなく魔力のレベルが高く修行次第で相当高難度の魔法も使いこなせるらしい。マジか。すごい。たぎる。なのにどうして没落寸前なの?
出世や権力に欲も関心もないお父さんは貴族社会の仄暗い部分には関わらないで細々とやってきたようだけど…やれてないよね?どうなのそれって…
ここまでが辺境の地へと向かう長い道中で聞き出せた情報。おかげでメイドさんたちの言う「おかわいそうに」「おいたわしや」の意味が解ったよね。はぁマジか~。
アデルは伯爵家の3男。伯爵家の兄弟たちは皆一様に魔力が高いが嫡子とその予備である次男を嫁に出すわけにはいかないので3男のアデルが婚姻を結ぶことになったって。
アデルはどうやら相当な箱入り息子。優しく気の弱い儚げ美人。多分だけどどっちかというとネガティブ志向な気がする。この婚姻が決まってからずっとずっと泣き暮らしていたようだ。
脳内情報だろうか?アデルの自我はもう無いのに記憶だけは残っている。体が馴染んでくるのと同時にアデルとしての記憶も全部じゃないけど少しずつ戻ってきている。
これはぼくの願望だけどこれが異世界転移じゃなくて入れ替わり案件だったらいいのにな。そしたらアデルは新太として新しい人生を生きられるでしょ?それにあちらの両親を悲しませる事もない。いきなり性格の変わった息子に戸惑うかもしれないけど失うよりはいいよね?きっと。
そうして僕は腹をくくって辺境伯領へと向かった。
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