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僕の事情 ②
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視界に入る両腕のヒラヒラした袖口は、自作の衣装に似ているがそれよりずっと上等な生地感だ。
ふと横を見ればピカピカに磨かれた銀製の水差しがある。そこに映った自分の姿は、さっきと同じ自分の姿だけど…どこか違って見えるのは…それがメイクの顔じゃないように見えるから。
ゴシゴシ…
やっぱり…。どれほど目をこすってもメイクらしき残骸は手を汚さない。ってことは全てが本物、この顔も自前の素顔…ってことか。良いんだか悪いんだか…。いや、美形なんだけどね?見慣れても居るんだけどね?やっぱ愛着のあった自分の顔じゃなくなったのは…寂しいもんだわ。
けどこれではっきりした!これは転生!ん?転移?どっちだ?ま、まあいい!
ああー!!!異世界に来ちゃったのかー!あちゃー、やっちゃったかー!圧死?打撲死?あのイベントの歴史に名を刻んだと思えば…残念なような申し訳ないような…いや、一周回って嬉しいわー!
「呆然としてどうした!ショックで声も出ないか!だが私は運命の相手を見つけたのだ。お前のように傲慢な男を妻に娶るのは御免被る!」
はぁん?ショックなもんか!僕はオタクのサラブレット。キングオブキングのオタク。異世界転生に動じるようなニワカじゃない。もう慣れた!なんなら魔法でも魔物でもドンとこいだ!
スーハー…我に返り目の前の男をもう一度落ち着いて見て見れば…
ああぁ!この顔は!!!
目の前に居たのは『ドッキドキ♡ナイト キャッスルにようこそ』に出て来る攻略キャラの一人である公爵家のご令息パンナコッタ、…じゃなくてパンクラツィオじゃないか!
そう。実を言うとイヴァーノはBLゲー『ドキナイ』に出て来る攻略キャラの一人であるこのパンキーの婚約者だったのだ!
イヴァーノのシナリオ内での立場はこいつの婚約者だが、実はゲーム全体の大きな括りで言うと最重要キャラともいえる。
何故かと言うと、大部分のイベントがイヴァーノの嫌がらせに端を発して発生するからだ。
それだけ出番が多いからこそ、イヴァーノは脇役でありながら人気があったっていうワケだね。
…ってことは分析するに、イヴァーノのコスをしていた僕はリアルイヴァーノに転生したってことか…
え?じゃあ本物のイヴァーノは?もしや…あっち?やっばいわー。頭打っておかしくなったとか思われてるんじゃ…ププ…イヴァーノのことだからイキリ散らかしてるだろうし、オモシロ…待て待て、現世の僕がどうなったかは後で考えるとして…とりあえずは目の前の問題に向き合おう。
冷静に考えれば僕は浮気者の婚約者に辟易している侯爵令息。ヒロイン(♂)に目移りした婚約者と婚約者にちょっかいかけたヒロイン(♂)に意地悪するのも当然と言えば当然。こうなってみると「何が悪い!」とぶちまけてやりたい気分だ…よしっ!
「それはこっちの台詞だ!誰が嫁に貰ってくれって頼んだ!家同士が決めた結婚じゃなきゃ誰がお前みたいな浮気者なんかと結婚するもんか」
僕はゲーム時からこの侯爵令息パンクラツィオが好きではなかった。
他のキャラは婚約者が居なかったり、居たとしても婚約者に対しては罪悪感を感じてたりするのに、このパンクラツィオときたら悪びれもせずイヴァーノも参加している夜会にヒロインを伴い出席したりする厚かましさだったんだから。
ゲーム内ではそれがグイグイ引っ張る俺様キャラになってて一定の人気を博していたが…リアルだとかなりイタイからね?多分公爵子息…という高い身分にふんぞり返っているんだろう。胸糞悪い…
「さっきからいちいちエラソーに…。偉いのはお前のおとうさんでお前じゃない!言っとくけどお前なんか好きだったこと一度もないから!」
プレイ中の話だけど!
「な、なんだと!はっ!散々ニコラに嫌がらせをしておいて今更強がりのつもりか!」
強がりじゃなくて強いんだけど?僕は言われたら三倍にして返すタイプだ!
ああしたとも嫌がらせ!それがどうした!言っておくが僕の嫌がらせが無ければ、あーんなのやこーんなのや、お前ら攻略者が好感度上げるイベント自体発生しないんだからな!むしろ大感謝祭を開いてもらいたいくらいだ!
「婚約解消?上等じゃないか!この顔だけの軟派男!こっちこそ願い下げだ!」
ファッ〇ュー!地獄に堕ちろ!
ザワザワザワ…
あ、あれ?もしかして…なんかやっちゃった?
「衛兵!この不敬な馬鹿者を捉えよ!そしてコレッティ侯爵家の当主をすぐに呼び立てよ!」
あ!
終わった…そういやここ階級社会だったわ…
”長いものには逆らうな”僕はこの世界で初めての学びを得た。
ふと横を見ればピカピカに磨かれた銀製の水差しがある。そこに映った自分の姿は、さっきと同じ自分の姿だけど…どこか違って見えるのは…それがメイクの顔じゃないように見えるから。
ゴシゴシ…
やっぱり…。どれほど目をこすってもメイクらしき残骸は手を汚さない。ってことは全てが本物、この顔も自前の素顔…ってことか。良いんだか悪いんだか…。いや、美形なんだけどね?見慣れても居るんだけどね?やっぱ愛着のあった自分の顔じゃなくなったのは…寂しいもんだわ。
けどこれではっきりした!これは転生!ん?転移?どっちだ?ま、まあいい!
ああー!!!異世界に来ちゃったのかー!あちゃー、やっちゃったかー!圧死?打撲死?あのイベントの歴史に名を刻んだと思えば…残念なような申し訳ないような…いや、一周回って嬉しいわー!
「呆然としてどうした!ショックで声も出ないか!だが私は運命の相手を見つけたのだ。お前のように傲慢な男を妻に娶るのは御免被る!」
はぁん?ショックなもんか!僕はオタクのサラブレット。キングオブキングのオタク。異世界転生に動じるようなニワカじゃない。もう慣れた!なんなら魔法でも魔物でもドンとこいだ!
スーハー…我に返り目の前の男をもう一度落ち着いて見て見れば…
ああぁ!この顔は!!!
目の前に居たのは『ドッキドキ♡ナイト キャッスルにようこそ』に出て来る攻略キャラの一人である公爵家のご令息パンナコッタ、…じゃなくてパンクラツィオじゃないか!
そう。実を言うとイヴァーノはBLゲー『ドキナイ』に出て来る攻略キャラの一人であるこのパンキーの婚約者だったのだ!
イヴァーノのシナリオ内での立場はこいつの婚約者だが、実はゲーム全体の大きな括りで言うと最重要キャラともいえる。
何故かと言うと、大部分のイベントがイヴァーノの嫌がらせに端を発して発生するからだ。
それだけ出番が多いからこそ、イヴァーノは脇役でありながら人気があったっていうワケだね。
…ってことは分析するに、イヴァーノのコスをしていた僕はリアルイヴァーノに転生したってことか…
え?じゃあ本物のイヴァーノは?もしや…あっち?やっばいわー。頭打っておかしくなったとか思われてるんじゃ…ププ…イヴァーノのことだからイキリ散らかしてるだろうし、オモシロ…待て待て、現世の僕がどうなったかは後で考えるとして…とりあえずは目の前の問題に向き合おう。
冷静に考えれば僕は浮気者の婚約者に辟易している侯爵令息。ヒロイン(♂)に目移りした婚約者と婚約者にちょっかいかけたヒロイン(♂)に意地悪するのも当然と言えば当然。こうなってみると「何が悪い!」とぶちまけてやりたい気分だ…よしっ!
「それはこっちの台詞だ!誰が嫁に貰ってくれって頼んだ!家同士が決めた結婚じゃなきゃ誰がお前みたいな浮気者なんかと結婚するもんか」
僕はゲーム時からこの侯爵令息パンクラツィオが好きではなかった。
他のキャラは婚約者が居なかったり、居たとしても婚約者に対しては罪悪感を感じてたりするのに、このパンクラツィオときたら悪びれもせずイヴァーノも参加している夜会にヒロインを伴い出席したりする厚かましさだったんだから。
ゲーム内ではそれがグイグイ引っ張る俺様キャラになってて一定の人気を博していたが…リアルだとかなりイタイからね?多分公爵子息…という高い身分にふんぞり返っているんだろう。胸糞悪い…
「さっきからいちいちエラソーに…。偉いのはお前のおとうさんでお前じゃない!言っとくけどお前なんか好きだったこと一度もないから!」
プレイ中の話だけど!
「な、なんだと!はっ!散々ニコラに嫌がらせをしておいて今更強がりのつもりか!」
強がりじゃなくて強いんだけど?僕は言われたら三倍にして返すタイプだ!
ああしたとも嫌がらせ!それがどうした!言っておくが僕の嫌がらせが無ければ、あーんなのやこーんなのや、お前ら攻略者が好感度上げるイベント自体発生しないんだからな!むしろ大感謝祭を開いてもらいたいくらいだ!
「婚約解消?上等じゃないか!この顔だけの軟派男!こっちこそ願い下げだ!」
ファッ〇ュー!地獄に堕ちろ!
ザワザワザワ…
あ、あれ?もしかして…なんかやっちゃった?
「衛兵!この不敬な馬鹿者を捉えよ!そしてコレッティ侯爵家の当主をすぐに呼び立てよ!」
あ!
終わった…そういやここ階級社会だったわ…
”長いものには逆らうな”僕はこの世界で初めての学びを得た。
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