コスプレ令息 王子を養う

kozzy

文字の大きさ
56 / 225

真心には真心…と少しの邪心

しおりを挟む
あのあと、スカーフと伊達メガネで変装した僕を見て、「眼鏡の多面性…なるほど理解した…」と息をのんだマルティノはようやくメガネの持つ魅力に気が付いたようだ。
だが貴族街を歩いて帰るつもりでいた僕に「一人で帰すなど紳士として出来るものか!病院まで送ろう!いや送らせてほしい」としつこく言い張るのを制止するのがどれ程大変だったことか。これだからクソ真面目は!
なんとか「週刊冊子の記者に見られたら困りますから!」と言ってお断りしたけど…



さて、病院に眼科からお借りした診察道具を返却して、向かうは拘置所の衛兵スタッフルーム。

「こんにちわー。セルジオかフランコ居る?」

「エヴァちゃん。あれ?今日は仕事休みの日じゃなかった?」
「休日出勤があって…今終わったとこ。二人は?」

「今呼ぶよ、少し待っててね」
「ハーイ、あ、これお土産、お手製のカルメ焼きね」

「いつも気が利くねエヴァちゃんは」
「ううん、いつもありがとう」

気配りは人付き合いの潤滑剤だからね。

汗臭くむさ苦しい衛兵の休憩室だが、コスイベントでぎゅうぎゅう詰めの中着替えてメイクしていた僕は逆にホーム感?

そうして少し待つと制服により二割増しになったフランコが姿を現す。

「なんだ早かったな。もう少し遅くなるんじゃなかったのか」
「それが意外にもわりと早く片付いちゃったの」
「じゃあそこで少し待ってろ。あと一時間で上がりだ」

「それよりフランコ。来月の第二土曜、非番?」
「勤務だな。土曜は手当てが出るんだよ」
「じゃあ有給とって休みにして」
「ゆうきゅう?なんだそりゃ」
「いいから休んで付き合って」
「お前な…無理言うなよ。休みは取らない。勤務表はもう決まってるんだ。みんなに迷惑かかるだろうが」
「…仲間思いだな…フランコのくせに」

「あのなぁ!イ、…いつもいつもそうやって我儘が通ると思ったら大間違いだ!俺はな、」
「ほーん?そんなこと言ってもいいのかな。これなーんだ」

「手紙…?」
「モニカさんからの…手紙でーす!フランコ宛の!」
「なんだと!よ、寄こせ!」
「お休み取ったら渡したげる」

「お、お前ってやつは…」ワナワナワナ…「おい!誰か休み替わってくれ!」

はい、一名確保ー!中身はただの検診案内だよーん!

「おい、なんの騒ぎだ。フランコ!お前まだ勤務中だろうが。持ち場に戻れ!」

「セルジオ!良い所に!」
「なんだエヴァか」
「ねえねえセルジオ、来月の第二土曜って…仕事?」

「いや非番だ。ロッシと釣りに行く予定でな」

ナイススケジュール!

「ロッシさーん、来月の第二土曜…セルジオ借りちゃ…ダメ?」チラリン

「セルジオでいいならいくらでもどうぞ!エヴァちゃんの頼みだもんね」

「おいおい、俺の自由意思は?」
「ない!」

二人目確保ー!本日は大漁じゃー!


-----------------------


所変わってここは、毎度おなじみいつものダイニング。

本日のメニューは大きな鍋いっぱいに作ったクリームシチュー。ベシャメルソースの濃厚な味わいはフラヴィオの舌を虜にしたようだ。彼は品よくパンで掬うと美味しそうに口に運んでいる。

ああそうそう。朝から仕込んでおいたこの大鍋だが、これは明日チーズとチョウチョのパスタを加えグラタンもどきに変身する予定である。何度も言うが残り物のアレンジは節約の以下略。

さて、お皿が空になるタイミングを見計らって僕は特別な話を切り出すつもりでいた。
実は寄木細工のプレゼントが嬉しすぎて、僕もフラヴィオを喜ばせたくなっちゃったのだ。

フラヴィオは何を喜ぶんだろう…

色々考えた結果、いつも他国を気にするグローバルなフラヴィオの為に、同じくグローバルな話題が中心の若手勉強会参加券をプレゼントすることにした。

彼は喜んでくれるだろうか?ワクワク…ドキドキ…

「…あのフラヴィオ。王城で不定期に開かれる若手貴公子の勉強会があるんですけど…知ってます?」
「ほう?それは興味深い。城内で催される勉強会か…さぞ高尚なものなのだろうね」
「主催はアマーディオ殿下なんですけど…そこに呼ばれるだけでも名誉な集まりだってテキストに書いてありましたよ?」
「名誉か…さもありなんだ。行ってみたいが…今の私には夢のような話だな…」

「…もしかして行きたいですか?」
「当然だろう」

よっしゃー!全力でガッツポーズだぜ!

「じゃじゃーん!実は主催である殿下から直接招待状もぎ取りました!行ってらっしゃい!!!」

カチャーン…

「フラヴィオ、スプーン…」

「まさかイヴそんな…冗談だろう?」
「あれ?なんか言ってませんでしたっけ?サルディーニャの社交界で国外情勢に詳しい伝手が欲しいって」
「言ったがイヴ…、だからといってこれは…王城の勉強会などと…」

「アマーディオ殿下の勉強会は新進気鋭のヤングエリートばかりですよ?」

あ、これゲームにあったガチ情報ね。

「それにトップオブセレブばかりだからどこよりも最新の情報が集まりますし…保守派のおっさんたちより若手の彼らの方がグローバルな視点をお持ちだと思うんですけど…ダメでした?」

「い、いや!願ってもない機会だ!だがサルディーニャに来てたった半年足らずでまさかこのような機会に恵まれるとは考えてもみなかったのでね、少し驚いたよ…」

「良かったぁ~。実はもう制作に入っちゃったから…新作楽しみにしててくださいね」
「それはもしや…私の衣装だろうか?」
「もちろん!お城に行くのに気合入れないわけにはいきませんから!」

「イヴ…君という人は…」
「……」ニコニコ

こっそり種明かしね。

先日の朗読会は子爵家主催の下位貴族の集まりである。それに夜会と違い参加人数にも限りがある。

フラヴィオのサルディーニャ社交界デビューにはうってつけの規模だったが、僕のビジネス的にはあれっぽっちの周知ではちょっと物足りない…

だって彼らは高位貴族の集まりにはなかなか呼ばれないから。せっかくの最新デザインなのにこれじゃあバズらないんだって!

てことでこう、もっとネームバリューのある宣伝力の強い人物にアピールしたい!そう!これこそ僕がフラヴィオに託す第二の狙いだ!

アマーディオの勉強会、そこに来るのは前世で言ったらフォロワー数100万越えのトップインフルエンサーたち。
家柄は申し分なく、父親が要職に就いてて、顔も頭もスタイルも良く、既婚なら愛人に、独身ならば鵜の目鷹の目で結婚相手に狙われる真の貴公子たち!彼らの動向、その全てが社交界の関心事で、もしその彼らがフラヴィオの衣装に注目すれば…


その時点で僕の勝利だ!






しおりを挟む
感想 609

あなたにおすすめの小説

溺愛の加速が尋常じゃない!?~味方作りに全振りしたら兄たちに溺愛されました~

液体猫(299)
BL
毎日投稿だけど時間は不定期   【《血の繋がりは"絶対"ではない。》この言葉を胸にクリスがひたすら愛され、大好きな兄と暮らす】  アルバディア王国の第五皇子クリスは冤罪によって処刑されてしまう。  次に目を覚ましたとき、九年前へと戻っていた。    巻き戻す前の世界とは異なるけれど同じ場所で、クリスは生き残るために知恵を振り絞る。  かわいい末っ子が過保護な兄たちに可愛がられ、溺愛されていく。  やり直しもほどほどに。罪を着せた者への復讐はついで。そんな気持ちで新たな人生を謳歌する、コミカル&シリアスなハッピーエンド確定物語。  主人公は後に18歳へと成長します(*・ω・)*_ _)ペコリ ⚠️濡れ場のサブタイトルに*のマークがついてます。冒頭のみ重い展開あり。それ以降はコミカルでほのぼの✌ ⚠️本格的な塗れ場シーンは三章(18歳になって)からとなります。

お前らの目は節穴か?BLゲーム主人公の従者になりました!

MEIKO
BL
 本編完結しています。お直し中。第12回BL大賞奨励賞いただきました。  僕、エリオット・アノーは伯爵家嫡男の身分を隠して公爵家令息のジュリアス・エドモアの従者をしている。事の発端は十歳の時…家族から虐げられていた僕は、我慢の限界で田舎の領地から家を出て来た。もう二度と戻る事はないと己の身分を捨て、心機一転王都へやって来たものの、現実は厳しく死にかける僕。薄汚い格好でフラフラと彷徨っている所を救ってくれたのが完璧貴公子ジュリアスだ。だけど初めて会った時、不思議な感覚を覚える。えっ、このジュリアスって人…会ったことなかったっけ?その瞬間突然閃く!  「ここって…もしかして、BLゲームの世界じゃない?おまけに僕の最愛の推し〜ジュリアス様!」  知らぬ間にBLゲームの中の名も無き登場人物に転生してしまっていた僕は、命の恩人である坊ちゃまを幸せにしようと奔走する。そして大好きなゲームのイベントも近くで楽しんじゃうもんね〜ワックワク!  だけど何で…全然シナリオ通りじゃないんですけど。坊ちゃまってば、僕のこと大好き過ぎない?  ※貴族的表現を使っていますが、別の世界です。ですのでそれにのっとっていない事がありますがご了承下さい。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

婚約破棄された婚活オメガの憂鬱な日々

月歌(ツキウタ)
BL
運命の番と巡り合う確率はとても低い。なのに、俺の婚約者のアルファが運命の番と巡り合ってしまった。運命の番が出逢った場合、二人が結ばれる措置として婚約破棄や離婚することが認められている。これは国の法律で、婚約破棄または離婚された人物には一生一人で生きていけるだけの年金が支給される。ただし、運命の番となった二人に関わることは一生禁じられ、破れば投獄されることも。 俺は年金をもらい実家暮らししている。だが、一人で暮らすのは辛いので婚活を始めることにした。

推しの為なら悪役令息になるのは大歓迎です!

こうらい ゆあ
BL
「モブレッド・アテウーマ、貴様との婚約を破棄する!」王太子の宣言で始まった待ちに待った断罪イベント!悪役令息であるモブレッドはこの日を心待ちにしていた。すべては推しである主人公ユレイユの幸せのため!推しの幸せを願い、日夜フラグを必死に回収していくモブレッド。ところが、予想外の展開が待っていて…?

悪役令息上等です。悪の華は可憐に咲き誇る

竜鳴躍
BL
異性間でも子どもが産まれにくくなった世界。 子どもは魔法の力を借りて同性間でも産めるようになったため、性別に関係なく結婚するようになった世界。 ファーマ王国のアレン=ファーメット公爵令息は、白銀に近い髪に真っ赤な瞳、真っ白な肌を持つ。 神秘的で美しい姿に王子に見初められた彼は公爵家の長男でありながら唯一の王子の婚約者に選ばれてしまった。どこに行くにも欠かせない大きな日傘。日に焼けると爛れてしまいかねない皮膚。 公爵家は両親とも黒髪黒目であるが、彼一人が色が違う。 それは彼が全てアルビノだったからなのに、成長した教養のない王子は、アレンを魔女扱いした上、聖女らしき男爵令嬢に現を抜かして婚約破棄の上スラム街に追放してしまう。 だが、王子は知らない。 アレンにも王位継承権があることを。 従者を一人連れてスラムに行ったアレンは、イケメンでスパダリな従者に溺愛されながらスラムを改革していって……!? *誤字報告ありがとうございます! *カエサル=プレート 修正しました。

悪役令嬢は永眠しました

詩海猫(8/29書籍発売)
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」 長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。 だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。 ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」 *思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

[離婚宣告]平凡オメガは結婚式当日にアルファから離婚されたのに反撃できません

月歌(ツキウタ)
BL
結婚式の当日に平凡オメガはアルファから離婚を切り出された。お色直しの衣装係がアルファの運命の番だったから、離婚してくれって酷くない? ☆表紙絵 AIピカソとAIイラストメーカーで作成しました。

処理中です...