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真心には真心…と少しの邪心
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あのあと、スカーフと伊達メガネで変装した僕を見て、「眼鏡の多面性…なるほど理解した…」と息をのんだマルティノはようやくメガネの持つ魅力に気が付いたようだ。
だが貴族街を歩いて帰るつもりでいた僕に「一人で帰すなど紳士として出来るものか!病院まで送ろう!いや送らせてほしい」としつこく言い張るのを制止するのがどれ程大変だったことか。これだからクソ真面目は!
なんとか「週刊冊子の記者に見られたら困りますから!」と言ってお断りしたけど…
さて、病院に眼科からお借りした診察道具を返却して、向かうは拘置所の衛兵スタッフルーム。
「こんにちわー。セルジオかフランコ居る?」
「エヴァちゃん。あれ?今日は仕事休みの日じゃなかった?」
「休日出勤があって…今終わったとこ。二人は?」
「今呼ぶよ、少し待っててね」
「ハーイ、あ、これお土産、お手製のカルメ焼きね」
「いつも気が利くねエヴァちゃんは」
「ううん、いつもありがとう」
気配りは人付き合いの潤滑剤だからね。
汗臭くむさ苦しい衛兵の休憩室だが、コスイベントでぎゅうぎゅう詰めの中着替えてメイクしていた僕は逆にホーム感?
そうして少し待つと制服により二割増しになったフランコが姿を現す。
「なんだ早かったな。もう少し遅くなるんじゃなかったのか」
「それが意外にもわりと早く片付いちゃったの」
「じゃあそこで少し待ってろ。あと一時間で上がりだ」
「それよりフランコ。来月の第二土曜、非番?」
「勤務だな。土曜は手当てが出るんだよ」
「じゃあ有給とって休みにして」
「ゆうきゅう?なんだそりゃ」
「いいから休んで付き合って」
「お前な…無理言うなよ。休みは取らない。勤務表はもう決まってるんだ。みんなに迷惑かかるだろうが」
「…仲間思いだな…フランコのくせに」
「あのなぁ!イ、…いつもいつもそうやって我儘が通ると思ったら大間違いだ!俺はな、」
「ほーん?そんなこと言ってもいいのかな。これなーんだ」
「手紙…?」
「モニカさんからの…手紙でーす!フランコ宛の!」
「なんだと!よ、寄こせ!」
「お休み取ったら渡したげる」
「お、お前ってやつは…」ワナワナワナ…「おい!誰か休み替わってくれ!」
はい、一名確保ー!中身はただの検診案内だよーん!
「おい、なんの騒ぎだ。フランコ!お前まだ勤務中だろうが。持ち場に戻れ!」
「セルジオ!良い所に!」
「なんだエヴァか」
「ねえねえセルジオ、来月の第二土曜って…仕事?」
「いや非番だ。ロッシと釣りに行く予定でな」
ナイススケジュール!
「ロッシさーん、来月の第二土曜…セルジオ借りちゃ…ダメ?」チラリン
「セルジオでいいならいくらでもどうぞ!エヴァちゃんの頼みだもんね」
「おいおい、俺の自由意思は?」
「ない!」
二人目確保ー!本日は大漁じゃー!
-----------------------
所変わってここは、毎度おなじみいつものダイニング。
本日のメニューは大きな鍋いっぱいに作ったクリームシチュー。ベシャメルソースの濃厚な味わいはフラヴィオの舌を虜にしたようだ。彼は品よくパンで掬うと美味しそうに口に運んでいる。
ああそうそう。朝から仕込んでおいたこの大鍋だが、これは明日チーズとチョウチョのパスタを加えグラタンもどきに変身する予定である。何度も言うが残り物のアレンジは節約の以下略。
さて、お皿が空になるタイミングを見計らって僕は特別な話を切り出すつもりでいた。
実は寄木細工のプレゼントが嬉しすぎて、僕もフラヴィオを喜ばせたくなっちゃったのだ。
フラヴィオは何を喜ぶんだろう…
色々考えた結果、いつも他国を気にするグローバルなフラヴィオの為に、同じくグローバルな話題が中心の若手勉強会参加券をプレゼントすることにした。
彼は喜んでくれるだろうか?ワクワク…ドキドキ…
「…あのフラヴィオ。王城で不定期に開かれる若手貴公子の勉強会があるんですけど…知ってます?」
「ほう?それは興味深い。城内で催される勉強会か…さぞ高尚なものなのだろうね」
「主催はアマーディオ殿下なんですけど…そこに呼ばれるだけでも名誉な集まりだってテキストに書いてありましたよ?」
「名誉か…さもありなんだ。行ってみたいが…今の私には夢のような話だな…」
「…もしかして行きたいですか?」
「当然だろう」
よっしゃー!全力でガッツポーズだぜ!
「じゃじゃーん!実は主催である殿下から直接招待状もぎ取りました!行ってらっしゃい!!!」
カチャーン…
「フラヴィオ、スプーン…」
「まさかイヴそんな…冗談だろう?」
「あれ?なんか言ってませんでしたっけ?サルディーニャの社交界で国外情勢に詳しい伝手が欲しいって」
「言ったがイヴ…、だからといってこれは…王城の勉強会などと…」
「アマーディオ殿下の勉強会は新進気鋭のヤングエリートばかりですよ?」
あ、これゲームにあったガチ情報ね。
「それにトップオブセレブばかりだからどこよりも最新の情報が集まりますし…保守派のおっさんたちより若手の彼らの方がグローバルな視点をお持ちだと思うんですけど…ダメでした?」
「い、いや!願ってもない機会だ!だがサルディーニャに来てたった半年足らずでまさかこのような機会に恵まれるとは考えてもみなかったのでね、少し驚いたよ…」
「良かったぁ~。実はもう制作に入っちゃったから…新作楽しみにしててくださいね」
「それはもしや…私の衣装だろうか?」
「もちろん!お城に行くのに気合入れないわけにはいきませんから!」
「イヴ…君という人は…」
「……」ニコニコ
こっそり種明かしね。
先日の朗読会は子爵家主催の下位貴族の集まりである。それに夜会と違い参加人数にも限りがある。
フラヴィオのサルディーニャ社交界デビューにはうってつけの規模だったが、僕のビジネス的にはあれっぽっちの周知ではちょっと物足りない…
だって彼らは高位貴族の集まりにはなかなか呼ばれないから。せっかくの最新デザインなのにこれじゃあバズらないんだって!
てことでこう、もっとネームバリューのある宣伝力の強い人物にアピールしたい!そう!これこそ僕がフラヴィオに託す第二の狙いだ!
アマーディオの勉強会、そこに来るのは前世で言ったらフォロワー数100万越えのトップインフルエンサーたち。
家柄は申し分なく、父親が要職に就いてて、顔も頭もスタイルも良く、既婚なら愛人に、独身ならば鵜の目鷹の目で結婚相手に狙われる真の貴公子たち!彼らの動向、その全てが社交界の関心事で、もしその彼らがフラヴィオの衣装に注目すれば…
その時点で僕の勝利だ!
だが貴族街を歩いて帰るつもりでいた僕に「一人で帰すなど紳士として出来るものか!病院まで送ろう!いや送らせてほしい」としつこく言い張るのを制止するのがどれ程大変だったことか。これだからクソ真面目は!
なんとか「週刊冊子の記者に見られたら困りますから!」と言ってお断りしたけど…
さて、病院に眼科からお借りした診察道具を返却して、向かうは拘置所の衛兵スタッフルーム。
「こんにちわー。セルジオかフランコ居る?」
「エヴァちゃん。あれ?今日は仕事休みの日じゃなかった?」
「休日出勤があって…今終わったとこ。二人は?」
「今呼ぶよ、少し待っててね」
「ハーイ、あ、これお土産、お手製のカルメ焼きね」
「いつも気が利くねエヴァちゃんは」
「ううん、いつもありがとう」
気配りは人付き合いの潤滑剤だからね。
汗臭くむさ苦しい衛兵の休憩室だが、コスイベントでぎゅうぎゅう詰めの中着替えてメイクしていた僕は逆にホーム感?
そうして少し待つと制服により二割増しになったフランコが姿を現す。
「なんだ早かったな。もう少し遅くなるんじゃなかったのか」
「それが意外にもわりと早く片付いちゃったの」
「じゃあそこで少し待ってろ。あと一時間で上がりだ」
「それよりフランコ。来月の第二土曜、非番?」
「勤務だな。土曜は手当てが出るんだよ」
「じゃあ有給とって休みにして」
「ゆうきゅう?なんだそりゃ」
「いいから休んで付き合って」
「お前な…無理言うなよ。休みは取らない。勤務表はもう決まってるんだ。みんなに迷惑かかるだろうが」
「…仲間思いだな…フランコのくせに」
「あのなぁ!イ、…いつもいつもそうやって我儘が通ると思ったら大間違いだ!俺はな、」
「ほーん?そんなこと言ってもいいのかな。これなーんだ」
「手紙…?」
「モニカさんからの…手紙でーす!フランコ宛の!」
「なんだと!よ、寄こせ!」
「お休み取ったら渡したげる」
「お、お前ってやつは…」ワナワナワナ…「おい!誰か休み替わってくれ!」
はい、一名確保ー!中身はただの検診案内だよーん!
「おい、なんの騒ぎだ。フランコ!お前まだ勤務中だろうが。持ち場に戻れ!」
「セルジオ!良い所に!」
「なんだエヴァか」
「ねえねえセルジオ、来月の第二土曜って…仕事?」
「いや非番だ。ロッシと釣りに行く予定でな」
ナイススケジュール!
「ロッシさーん、来月の第二土曜…セルジオ借りちゃ…ダメ?」チラリン
「セルジオでいいならいくらでもどうぞ!エヴァちゃんの頼みだもんね」
「おいおい、俺の自由意思は?」
「ない!」
二人目確保ー!本日は大漁じゃー!
-----------------------
所変わってここは、毎度おなじみいつものダイニング。
本日のメニューは大きな鍋いっぱいに作ったクリームシチュー。ベシャメルソースの濃厚な味わいはフラヴィオの舌を虜にしたようだ。彼は品よくパンで掬うと美味しそうに口に運んでいる。
ああそうそう。朝から仕込んでおいたこの大鍋だが、これは明日チーズとチョウチョのパスタを加えグラタンもどきに変身する予定である。何度も言うが残り物のアレンジは節約の以下略。
さて、お皿が空になるタイミングを見計らって僕は特別な話を切り出すつもりでいた。
実は寄木細工のプレゼントが嬉しすぎて、僕もフラヴィオを喜ばせたくなっちゃったのだ。
フラヴィオは何を喜ぶんだろう…
色々考えた結果、いつも他国を気にするグローバルなフラヴィオの為に、同じくグローバルな話題が中心の若手勉強会参加券をプレゼントすることにした。
彼は喜んでくれるだろうか?ワクワク…ドキドキ…
「…あのフラヴィオ。王城で不定期に開かれる若手貴公子の勉強会があるんですけど…知ってます?」
「ほう?それは興味深い。城内で催される勉強会か…さぞ高尚なものなのだろうね」
「主催はアマーディオ殿下なんですけど…そこに呼ばれるだけでも名誉な集まりだってテキストに書いてありましたよ?」
「名誉か…さもありなんだ。行ってみたいが…今の私には夢のような話だな…」
「…もしかして行きたいですか?」
「当然だろう」
よっしゃー!全力でガッツポーズだぜ!
「じゃじゃーん!実は主催である殿下から直接招待状もぎ取りました!行ってらっしゃい!!!」
カチャーン…
「フラヴィオ、スプーン…」
「まさかイヴそんな…冗談だろう?」
「あれ?なんか言ってませんでしたっけ?サルディーニャの社交界で国外情勢に詳しい伝手が欲しいって」
「言ったがイヴ…、だからといってこれは…王城の勉強会などと…」
「アマーディオ殿下の勉強会は新進気鋭のヤングエリートばかりですよ?」
あ、これゲームにあったガチ情報ね。
「それにトップオブセレブばかりだからどこよりも最新の情報が集まりますし…保守派のおっさんたちより若手の彼らの方がグローバルな視点をお持ちだと思うんですけど…ダメでした?」
「い、いや!願ってもない機会だ!だがサルディーニャに来てたった半年足らずでまさかこのような機会に恵まれるとは考えてもみなかったのでね、少し驚いたよ…」
「良かったぁ~。実はもう制作に入っちゃったから…新作楽しみにしててくださいね」
「それはもしや…私の衣装だろうか?」
「もちろん!お城に行くのに気合入れないわけにはいきませんから!」
「イヴ…君という人は…」
「……」ニコニコ
こっそり種明かしね。
先日の朗読会は子爵家主催の下位貴族の集まりである。それに夜会と違い参加人数にも限りがある。
フラヴィオのサルディーニャ社交界デビューにはうってつけの規模だったが、僕のビジネス的にはあれっぽっちの周知ではちょっと物足りない…
だって彼らは高位貴族の集まりにはなかなか呼ばれないから。せっかくの最新デザインなのにこれじゃあバズらないんだって!
てことでこう、もっとネームバリューのある宣伝力の強い人物にアピールしたい!そう!これこそ僕がフラヴィオに託す第二の狙いだ!
アマーディオの勉強会、そこに来るのは前世で言ったらフォロワー数100万越えのトップインフルエンサーたち。
家柄は申し分なく、父親が要職に就いてて、顔も頭もスタイルも良く、既婚なら愛人に、独身ならば鵜の目鷹の目で結婚相手に狙われる真の貴公子たち!彼らの動向、その全てが社交界の関心事で、もしその彼らがフラヴィオの衣装に注目すれば…
その時点で僕の勝利だ!
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