コスプレ令息 王子を養う

kozzy

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デザイナーイヴの新作

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ここはビアジョッティ伯爵邸…ではなく、わびしい独身衛兵フランコとセルジオが仲良く暮らすシェアハウスの一室だ。
二度手間を避けるため、一式ここに持って来て一斉にお着替えをしてもらっているところである。
ん?何の着替えかって?もちろんお城へ行くドレスアップだよ?


「フラヴィオー、フランコー、セルジオー、用意出来たー?」

「ああまあ…なんか悪いな」
「イヴァーノ、良かったのか俺たちにまで」

「もち!お城に出向くのにフラヴィオの友人が変な恰好じゃ恥ずかしいから。あ、いっけないー!今日のメインゲストはフランコだった。テヘ☆」

「やめろ!いまさらお前が何を言おうが可愛くない!」
「まあ…素を知ってるからな…」

「わぁーんフラヴィオ~!従兄がイジメる~」
「イヴ、フランコが気安いからとあまり甘えてはいけないよ」
「はぁ~い」

とまあ、くだらないお戯れはここまでにして…

僕の用意したフラヴィオの新しい衣装、それは今までの貴族服には無かった、フットワークの軽い若者に合わせてもっと機能性をもたせたものだ。

あの朗読会から早や数か月、それまでのビッグシルエットな貴族服から少しスリムになった意匠は下位貴族を中心に話題になっている。いるにはいるが…

お城に集まるトップセレブたちが、下位貴族から流行ったモノに後乗りで飛びつくとはとても思えない。
ならばさらに時代を先どるまで!

このサルディーニャは文化の進歩と芸術への理解がどこよりも抜きんでた国。なら一歩も二歩も先どったファッションだって…きっと琴線に触れるはず!

現在主流の貴族服とはいかに優雅でゴージャスか、が競われたものだ。この間僕の登録したデザインの数々も、いくら全体のシルエットをスリムにしたとはいえ、魔改造ですら左右のボタンを通す飾りとかゴージャスポイントをおさえている。

そこで今回、僕が前面に出したのはその反対。デキル男感を演出するよりモダンなデザインである。

まずコートは前身ごろを乗馬服のように短くし、背面に大きくスリットを入れることで機動に優れた実行力を演出。
襟や袖口のデザインには軍服テイストを持たせ、まるで司令官のような有能感を漂わせる。
そして邪魔なフリルや余分な装飾を排除し合理的な思考力を想像させる。

代りにジャケットの本体は、コレッティ家から借りパクした最も生地の良いあのジャケットを流用したものだ。
一か八かの賭けだが…きっと若者なら通じるはず!あとはフラヴィオから発せられる謎に優雅なオーラに期待するしかない!

因みにこのジャケットは昨日ギルドに登録済である。この新しいジャケットのデザインは…かなりお高い。何故なら…トップセレブ層がくいつくまでは下位貴族にホイホイ使われては困るからだ。

あとは小物使いで貴族の矜持を底上げ。

あのジャケットに合わせるならローファーでなくロンブー一択!僕はオレンジの皮で古い老男爵のブーツを極限まで磨き上げている。男のおしゃれは足元からって言うしね。おかげで足元は新最高級の様にピカピカだ。

クラバットもシンプルながら上等なシルクで清潔感を前面に。そしてその中央を飾るのは…これまた上品な輝きの一粒ダイヤ!

貴族の見栄は装飾でなく素材の質で!ここが今回の肝!これぞ上流男性の気品!

ダイヤのタイピンと銀細工のカフスボタンにはコレッティの実家から持ち込んだ僕の宝飾品を少し加工して使いまわしたが…
実家から持ちだせた宝飾品にハイブランドはない。ってことはこれらも多分安物だろう。ごめんねフラヴィオ、今はこれが精一杯…ショボン…いつか…いつか必ず…

さて、同伴者二人の装いだが…
セルジオの服は朗読会にフラヴィオが着ていったのと同じデザイン、つまり型落ちね。セルジオはそれでも今話題の衣装に大喜びだよ。

そしてフランコのはかなり前世に近い、トラウザーズにジャケット、開襟シャツの中にスカーフを仕込んだスーツスタイルね。ジローラモって感じ。本人もまんざらではなさそうだ。
なーんかまだまだトラウザーズと呼ばれる長いズボンは庶民層、もしくは平服のイメージなんだよねー。

あーそうそう、フランコのお父さんが腕のいい鍛冶師って言うのは本当だよ。でも貴族街に進出したがってるかどうかは……不明だ。でも、恐らくほんの少し、きっと潜在意識化では多分そう思っているに違いない。だからウソは言ってない。


「三人とも見違えるほどカッコいいよ。じゃあ…行ってらっし」
「待つんだイヴ。君は何故エヴァの制服を着ているんだい?今日は土曜じゃないか」

「ああ、実は院長に二、三時間でいいからって休日出勤頼まれてて、ちょっと行って来るね」
「では無理はしないように。いいね」

「はーい!セルジオ、フランコ、フラヴィオをよろしくねー!行ってらっしゃーい!」





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