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彼の成果
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「イヴ、屋敷の前に馬車が停まっているのだが…マッティオ殿…それともヴィットーレ殿だろうか?」
「マッティオさんの馬車はもっと実用的だしヴィットーレの馬車は正面に侯爵家の紋が入ってます。あれは違うから…えーと…あっ!」
フラヴィオとの憩いのひと時を終え屋敷に戻れば、普段ほとんど来客の無い玄関前に珍しく一台の馬車が停まっていた。
その馬車から降り立ったのはなんと…ダリオだ。
「な、何しに来たのダリオ…」
「いやなに、経過を少し報告に。だが…ここがお前の屋敷か。ふーん…没落した男爵家といったところだな」
なんでわかった!まさにその通りだよ!
「どいつもこいつも…挨拶代わりに僕を落とさないと気がすまないワケ?」
「仕方が無いだろう。それぐらいあの〝イヴァーノ様” がうらびれた生活に満足してるっていうのが信じられないんだからな」
そうだろうとも。実際僕だってあのイヴァーノが日本の庶民代表家でどんな暮らしをしてるか見てみたいもんな。
この辺りは貴族街でも下位エリアで、そのうえここは端の端、屋敷と言っても日本の小金持ちが住む程度のお屋敷である。
幸い裏にはそれなりに広い庭もあるし厩舎もあるけど、表玄関などは馬車道から門超えてすぐの、非常に機動性の高い作りだ。
貴族街の住宅地とは、僕の知る知識の中で最も高級な住宅地、ビバリーヒルズみたいな東地区からはじまり、真ん中付近で田園調布みたいな地区になり、西に入るとしばらく高級タウンハウス群があり、それを抜けると普通の富裕層住宅地エリアになる。その最西端がここね。コレッティ家があるのはビバリーヒルズ。このあたりがどれくらいつつましいか比較できたかな?
「しょうがないなぁ…お茶くらいはごちそうするから中入って。馬車はそこのドン突ききに停めて。駐禁来ないから」
「チュー…?まあいいだろう」
とてもパーティーは開催できない小さなホールだが、不幸中の幸いというか、フラヴィオのおかげでホールとサロンは来客に恥じない程度に整えられている。ルイルイが毎日飾ってくれるお花(エヴァへの贈り物)も実にいい感じだ。
貴族とは午後のお散歩を終えると夕食前に友人とお茶しながらダベるのがわりと普通である。
ダリオが友人かどうかはこの際置いといて…最近の我が家は少しずつ〝貴族” を取り戻しつつあるようだ。
庶民街での口げんかを覚えているフラヴィオだが、あの時遣り込められていたのがダリオの方だったこと、その後ダリオが公約通り大量のハムを贈ってきたことであまり気にしてはいないようだ。
この間のヴィットーレといいダリオといい、イヴを訪ねる来客が『ドキナイ』の攻略者たちばかり、っていうのがなんで?っていう感じだが、彼らはイヴァーノアンチ勢だっただけで、基本はキラキラ系BLゲーのキャラ達である。立場さえ替わればなんだかんだ言ってコミュ力の高い人物たち。
ロデオがお茶とお菓子を運んでくると、あっという間に奴とフラヴィオは打ち解け始めた。
「その節はイヴが無理を言って申し訳ない」
「いいや。賭けは賭けだ。まさか本当に落ちるとは思わなかったが…」
いや、むしろ学生時代あれだけ二コラを追いかけまわしてて、なんで受かってると思った!?
「すごく美味しいハムだったね」
「あれはかなり上等なものではないのかい?」
「どういった経緯であろうと贈るからには二級品など贈れるものか」
ってお家の人が言ったワケだね。
ダリオのお家は伯爵家だが、まあまあ豊かな領を持つ優良な伯爵家だ。ダリオがアマーディオたちと幼馴染なのも、ダリオんちの領が、王家の保養地に近かったからだっていう話(ゲーム内情報)だよ。
「それで経過って?あれからどうなった?」
「それなんだが、お前が言うよう私はあの週末海岸を探し歩いた」
「何か見つけた?」
「私にはどれが不穏なものかの判別は付きかねたが…とりあえずいくつかの品を正騎士団長のところへ持って行った。血がにじんで見える…ような布片だったり難破した船の欠片…に見える木片など」
「ふんふん…」
「その結果三つほどのガラクタが破棄されずに受け取っていただけた」
「三つ…、ダリオ、取得物いくつ持ってったの?団長のとこに」
「木箱一つ分だ」
クラリ…「ま、まあいいよ。自己判断するなって言ったの僕だし」
ガラクタばかりひと箱分…団長もたいがい人が良いとみた…
「その中にはお前が言った紙切れの入った瓶もあった」
「ふんふん!で?中身は?」
「子供が書いたと思われる手紙だ…」
ハイキタコレーーーー!!!よくやったダリオ!褒めて遣わす!
「それは両親を偲ぶ短い手紙で…うっ…」ウルッ
この涙もろさもダリオのダリオたる部分だ。
「はいハンカチ。で?団長はなんて?」
チーン「難しい顔で気になることがある、と。そしてこう言われたのだ。場合によっては報奨が贈られるかもしれないとな。そこでお前に言われたよう、「自分は正騎士団への入団志願者で浪人生だ」と伝えた」
「上出来」
「分からないがなかなか良い手ごたえを感じる。まさか本当にこんなことで…だがこれは一応の礼だ。とっておいてくれ」
手渡されたのは鮭の燻製、こ、これは…まさか…スモークサーモンではありませんかーーー!!!
「うちのシェフのオリジナルだが…お前はどうも燻製肉が好きなようだからな。これも気に入るだろうと思」
「大好物です!」ズズイッ!
ハムの人はたった今からハムの御方に格上げされましたー!
「団長殿は現在その手紙の内容をブルボンに密偵を出して精査しておられるところだとアマーディオが言っていた」
「へー?」
すっご。ゲーム通りじゃん。
「先日宰相様とすれ違った時にも「目端の利く若者だ」とお褒めいただいた」
「おおっ!」
嬉しそうなダリオ。微笑ましい…
「もしこれで入団が決まればそれはお前のおかげだ。イヴァーノ、学生時代お前とは何度も言い争ったが…互いにもう成年だ。過去の件はお互い水に流してはどうだろうか」
水に流す過去など所詮僕には無い。って事はその申し出に不満はない。だが…
「いいですけど…ハムは別件ですからね」
これだけはハッキリしておかないと。
「マッティオさんの馬車はもっと実用的だしヴィットーレの馬車は正面に侯爵家の紋が入ってます。あれは違うから…えーと…あっ!」
フラヴィオとの憩いのひと時を終え屋敷に戻れば、普段ほとんど来客の無い玄関前に珍しく一台の馬車が停まっていた。
その馬車から降り立ったのはなんと…ダリオだ。
「な、何しに来たのダリオ…」
「いやなに、経過を少し報告に。だが…ここがお前の屋敷か。ふーん…没落した男爵家といったところだな」
なんでわかった!まさにその通りだよ!
「どいつもこいつも…挨拶代わりに僕を落とさないと気がすまないワケ?」
「仕方が無いだろう。それぐらいあの〝イヴァーノ様” がうらびれた生活に満足してるっていうのが信じられないんだからな」
そうだろうとも。実際僕だってあのイヴァーノが日本の庶民代表家でどんな暮らしをしてるか見てみたいもんな。
この辺りは貴族街でも下位エリアで、そのうえここは端の端、屋敷と言っても日本の小金持ちが住む程度のお屋敷である。
幸い裏にはそれなりに広い庭もあるし厩舎もあるけど、表玄関などは馬車道から門超えてすぐの、非常に機動性の高い作りだ。
貴族街の住宅地とは、僕の知る知識の中で最も高級な住宅地、ビバリーヒルズみたいな東地区からはじまり、真ん中付近で田園調布みたいな地区になり、西に入るとしばらく高級タウンハウス群があり、それを抜けると普通の富裕層住宅地エリアになる。その最西端がここね。コレッティ家があるのはビバリーヒルズ。このあたりがどれくらいつつましいか比較できたかな?
「しょうがないなぁ…お茶くらいはごちそうするから中入って。馬車はそこのドン突ききに停めて。駐禁来ないから」
「チュー…?まあいいだろう」
とてもパーティーは開催できない小さなホールだが、不幸中の幸いというか、フラヴィオのおかげでホールとサロンは来客に恥じない程度に整えられている。ルイルイが毎日飾ってくれるお花(エヴァへの贈り物)も実にいい感じだ。
貴族とは午後のお散歩を終えると夕食前に友人とお茶しながらダベるのがわりと普通である。
ダリオが友人かどうかはこの際置いといて…最近の我が家は少しずつ〝貴族” を取り戻しつつあるようだ。
庶民街での口げんかを覚えているフラヴィオだが、あの時遣り込められていたのがダリオの方だったこと、その後ダリオが公約通り大量のハムを贈ってきたことであまり気にしてはいないようだ。
この間のヴィットーレといいダリオといい、イヴを訪ねる来客が『ドキナイ』の攻略者たちばかり、っていうのがなんで?っていう感じだが、彼らはイヴァーノアンチ勢だっただけで、基本はキラキラ系BLゲーのキャラ達である。立場さえ替わればなんだかんだ言ってコミュ力の高い人物たち。
ロデオがお茶とお菓子を運んでくると、あっという間に奴とフラヴィオは打ち解け始めた。
「その節はイヴが無理を言って申し訳ない」
「いいや。賭けは賭けだ。まさか本当に落ちるとは思わなかったが…」
いや、むしろ学生時代あれだけ二コラを追いかけまわしてて、なんで受かってると思った!?
「すごく美味しいハムだったね」
「あれはかなり上等なものではないのかい?」
「どういった経緯であろうと贈るからには二級品など贈れるものか」
ってお家の人が言ったワケだね。
ダリオのお家は伯爵家だが、まあまあ豊かな領を持つ優良な伯爵家だ。ダリオがアマーディオたちと幼馴染なのも、ダリオんちの領が、王家の保養地に近かったからだっていう話(ゲーム内情報)だよ。
「それで経過って?あれからどうなった?」
「それなんだが、お前が言うよう私はあの週末海岸を探し歩いた」
「何か見つけた?」
「私にはどれが不穏なものかの判別は付きかねたが…とりあえずいくつかの品を正騎士団長のところへ持って行った。血がにじんで見える…ような布片だったり難破した船の欠片…に見える木片など」
「ふんふん…」
「その結果三つほどのガラクタが破棄されずに受け取っていただけた」
「三つ…、ダリオ、取得物いくつ持ってったの?団長のとこに」
「木箱一つ分だ」
クラリ…「ま、まあいいよ。自己判断するなって言ったの僕だし」
ガラクタばかりひと箱分…団長もたいがい人が良いとみた…
「その中にはお前が言った紙切れの入った瓶もあった」
「ふんふん!で?中身は?」
「子供が書いたと思われる手紙だ…」
ハイキタコレーーーー!!!よくやったダリオ!褒めて遣わす!
「それは両親を偲ぶ短い手紙で…うっ…」ウルッ
この涙もろさもダリオのダリオたる部分だ。
「はいハンカチ。で?団長はなんて?」
チーン「難しい顔で気になることがある、と。そしてこう言われたのだ。場合によっては報奨が贈られるかもしれないとな。そこでお前に言われたよう、「自分は正騎士団への入団志願者で浪人生だ」と伝えた」
「上出来」
「分からないがなかなか良い手ごたえを感じる。まさか本当にこんなことで…だがこれは一応の礼だ。とっておいてくれ」
手渡されたのは鮭の燻製、こ、これは…まさか…スモークサーモンではありませんかーーー!!!
「うちのシェフのオリジナルだが…お前はどうも燻製肉が好きなようだからな。これも気に入るだろうと思」
「大好物です!」ズズイッ!
ハムの人はたった今からハムの御方に格上げされましたー!
「団長殿は現在その手紙の内容をブルボンに密偵を出して精査しておられるところだとアマーディオが言っていた」
「へー?」
すっご。ゲーム通りじゃん。
「先日宰相様とすれ違った時にも「目端の利く若者だ」とお褒めいただいた」
「おおっ!」
嬉しそうなダリオ。微笑ましい…
「もしこれで入団が決まればそれはお前のおかげだ。イヴァーノ、学生時代お前とは何度も言い争ったが…互いにもう成年だ。過去の件はお互い水に流してはどうだろうか」
水に流す過去など所詮僕には無い。って事はその申し出に不満はない。だが…
「いいですけど…ハムは別件ですからね」
これだけはハッキリしておかないと。
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