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カステーラ王国からの返信
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「フラヴィオ様。マッティオ殿の商会から手紙が届いてございます」
「マッティオ殿から?」
「手紙のなかには更に手紙が入ってございます」
「更なる手紙…誰からだい」
「差出人の名はありませぬがカステーラ王国の紋でございます」
カステーラ!
ならばこれはアレクサ様からの返信。
商会の方々は手違いなくマッティオ殿へ委ねた手紙をカステーラの王城へ届けて下さったのだ。ありがたい…
あの手紙の差出人には見る者が見ればわかる、アスタリアでは知られていないルイージのセカンドネーム、カステーラでの通称を用いてある。
そして不審な手紙でないと示すために、アレクサ様がルイージにお与えになられた、カステーラの金線細工フィリグナーラを用いた王弟殿下の紋を模したブローチを同封しておいた。
我がアスタリアは海の無い内陸の国。カステーラ王国への接触であれば、海路を使った通信手段はもっとも安全といえよう。
マッティオ殿、そしてこの緣を紡いでくれたイヴには感謝してもしきれない。
一年近く不明であった我が子の生死、アレクサ様はどれほど安堵されたであろう…
「アレクサ様はなんと…」
見覚えのある流麗な文字。
一通は私宛に、もう一通はルイージへ。同封したブローチはもう一度彼のもとへ戻されたようだ。
カサリ…
王家の便箋に記された、だが私的な手紙。
そこには私への感謝が繰り返し何度も記されていた。
『あの乱戦の最中にあって常に人々の身を案じておられた心優しきあなたならば必ずやルイージをお守りくださると固く信じておりました』
『わたくしと王女の心配はいりません。カステーラ王家の庇護のもと万事問題なく暮らしております』
『生家であるカステーラ王家は此度の内乱に大変呆れておいでです。
わたくしが嫁いでいたことで約束していた支援などを、今回の件で打ち切る検討に入っております』
『今まではルイージの生死が不明であったため様子を見ていただけだというのに…彼らのなかに分別のある者は既に残って居ないようですね』
『父王はアスタリアの内乱に対し不干渉を貫いておりますが、わたくしの嘆願を聞き届け、アスタリアから逃げ出した無垢の民だけは幾らか受け入れてくださいました。が、アスタリアが民の流失を懸念し国境を閉ざした今、それももう不可能です。
国境を統括するのは第二王子カッシオ派でしたね。なんと惨いことをするのでしょう』
『あなたの柳のようにしなやかな精神を王妃ミランダ様は日和見と笑いましたが、それが王妃の仰るような弱き心だとわたくしは考えません。
あなたのその柔軟な思考は自身を守る鎧も同じ。きっと彼らでは到達出来ぬ豊かな未来へとあなたを運ぶことでしょう。自信をお持ちなさい』
『カステーラの父王はあなたからの手紙を読んで、あなたがサルディーニャからの支援を得、このアスタリアへ出るのであれば力を貸すと申しております。随時ご連絡を』
『一日も早くあなたと、あなたがお守りくださったわたくしの愛するルイージに会いたい、そう願ってやみません』
手紙をしたためた時点では公爵子息が出兵することになるとは微塵も考えていなかったのだが…
アレクサ様には既にその旨を記した後追いの手紙を送ってある。恐らくは今頃手にしておられるだろう。
そして私の手紙からそれほど間を置かず『黄金の剣』はアスタリアへ到着するはずだ。
アレクサ様、強いてはカステーラは私の意を汲み金の槍を陰ながらご支援下さるだろう。なんと心強い…!
己との確執がありながらもこうして元婚約者をアスタリアへ差し向けたイヴ。であればその実力は本物なのだろう。
自らは矢面に出ず、こうして安全な場所から事をなす私を、あのアスタリアならば臆病者と謗るだろう。
だがアレクサ様が仰るよう、私は私を卑下してはならないのだ。
どんな地の底でも己を信じ勝機を見いだすイヴのように…私も私の生き方を信じるべきだ。
あの強き人、イヴの夫として誰にも恥じぬよう…
「マッティオ殿から?」
「手紙のなかには更に手紙が入ってございます」
「更なる手紙…誰からだい」
「差出人の名はありませぬがカステーラ王国の紋でございます」
カステーラ!
ならばこれはアレクサ様からの返信。
商会の方々は手違いなくマッティオ殿へ委ねた手紙をカステーラの王城へ届けて下さったのだ。ありがたい…
あの手紙の差出人には見る者が見ればわかる、アスタリアでは知られていないルイージのセカンドネーム、カステーラでの通称を用いてある。
そして不審な手紙でないと示すために、アレクサ様がルイージにお与えになられた、カステーラの金線細工フィリグナーラを用いた王弟殿下の紋を模したブローチを同封しておいた。
我がアスタリアは海の無い内陸の国。カステーラ王国への接触であれば、海路を使った通信手段はもっとも安全といえよう。
マッティオ殿、そしてこの緣を紡いでくれたイヴには感謝してもしきれない。
一年近く不明であった我が子の生死、アレクサ様はどれほど安堵されたであろう…
「アレクサ様はなんと…」
見覚えのある流麗な文字。
一通は私宛に、もう一通はルイージへ。同封したブローチはもう一度彼のもとへ戻されたようだ。
カサリ…
王家の便箋に記された、だが私的な手紙。
そこには私への感謝が繰り返し何度も記されていた。
『あの乱戦の最中にあって常に人々の身を案じておられた心優しきあなたならば必ずやルイージをお守りくださると固く信じておりました』
『わたくしと王女の心配はいりません。カステーラ王家の庇護のもと万事問題なく暮らしております』
『生家であるカステーラ王家は此度の内乱に大変呆れておいでです。
わたくしが嫁いでいたことで約束していた支援などを、今回の件で打ち切る検討に入っております』
『今まではルイージの生死が不明であったため様子を見ていただけだというのに…彼らのなかに分別のある者は既に残って居ないようですね』
『父王はアスタリアの内乱に対し不干渉を貫いておりますが、わたくしの嘆願を聞き届け、アスタリアから逃げ出した無垢の民だけは幾らか受け入れてくださいました。が、アスタリアが民の流失を懸念し国境を閉ざした今、それももう不可能です。
国境を統括するのは第二王子カッシオ派でしたね。なんと惨いことをするのでしょう』
『あなたの柳のようにしなやかな精神を王妃ミランダ様は日和見と笑いましたが、それが王妃の仰るような弱き心だとわたくしは考えません。
あなたのその柔軟な思考は自身を守る鎧も同じ。きっと彼らでは到達出来ぬ豊かな未来へとあなたを運ぶことでしょう。自信をお持ちなさい』
『カステーラの父王はあなたからの手紙を読んで、あなたがサルディーニャからの支援を得、このアスタリアへ出るのであれば力を貸すと申しております。随時ご連絡を』
『一日も早くあなたと、あなたがお守りくださったわたくしの愛するルイージに会いたい、そう願ってやみません』
手紙をしたためた時点では公爵子息が出兵することになるとは微塵も考えていなかったのだが…
アレクサ様には既にその旨を記した後追いの手紙を送ってある。恐らくは今頃手にしておられるだろう。
そして私の手紙からそれほど間を置かず『黄金の剣』はアスタリアへ到着するはずだ。
アレクサ様、強いてはカステーラは私の意を汲み金の槍を陰ながらご支援下さるだろう。なんと心強い…!
己との確執がありながらもこうして元婚約者をアスタリアへ差し向けたイヴ。であればその実力は本物なのだろう。
自らは矢面に出ず、こうして安全な場所から事をなす私を、あのアスタリアならば臆病者と謗るだろう。
だがアレクサ様が仰るよう、私は私を卑下してはならないのだ。
どんな地の底でも己を信じ勝機を見いだすイヴのように…私も私の生き方を信じるべきだ。
あの強き人、イヴの夫として誰にも恥じぬよう…
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