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中学生編
3羽 村外れの闇医者と放浪の兄妹
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──”ら・・・らいき・・・頼輝・・・頼輝!
お願い、返事をして!死んじゃヤダ!!”
璃音が俺に膝枕をしながら大粒の涙を流し、何度も名前を呼ぶのが聴こえる。
”あぁ・・・俺の大好きな璃音・・・。
そんなに泣くなよ・・・。
俺、これくらいで死なないから・・・”
声にしたくても何故か声にならないので、せめてその涙を拭おうと頬に手を伸ばした。
すると、誰かがその手をそっと握り返してくれたのを感じた。
でもそれは璃音の手じゃないとすぐに気がついた。
少し冷たくて、硬くて骨ばってて少し荒れてるけど、何処か優しい手だ・・・。
誰だ・・・?──
「君・・・君・・・大丈夫か?」
頼輝がハッとして目を覚ますと、目の前には知らないお爺さんの姿があった。
頼輝は自分の手を握り返してくれたのは、このお爺さんだと気がついた。
お爺さんは頼輝を心配そうに見つめていて、何処か建物の中なのか、その背後には木で作られた天井が見えた。
「・・・は、はい・・・・・。
・・・ここは?」
頼輝はそうお爺さんに尋ねながら、そっとベッドから身を起こし、辺りを見渡した。
そこはワンルームのログハウスだった。
奥に桜駒鳥の薬屋と同じような薬を作るためのすり鉢や鍋や道具類、壁には干した薬草や茸が見え、机の上には注射器や薬品の入った瓶や医療器具が乱雑に置かれていた。
窓の外は夜が明けたのか明るく、朝の日差しが心地良く差し込んでいた。
お爺さんの歳は60代くらいだろうか。
片目を失っているのか眼帯をしており、無事な方の目にだけレンズの入った眼鏡をかけていた。
頭髪は半分くらいの割合で白髪で、それをオールバックにして撫でつけていた。
だが顔立ちは優しく、璃音と同じ空色の瞳が印象的だった。
「ここは村外れにある僕の家だよ。
僕は医者をやっていてね。
まぁ、医者は医者でも脱獄囚や裏稼業の奴等、訳ありの患者ばかりの相手をしている世間で言うところの”闇医者"というやつだがね・・・。
君が森で倒れているのを発見したからここに運び、治療を行ったんだ。」
頼輝は自らのことを闇医者だと自嘲気味に笑うお爺さんを見て思った。
(何故だろう・・・。
闇医者だというけれど悪い人には見えない。
それどころか、ばあちゃんや璃音に似た雰囲気を持っていて、何処か一緒に居て落ち着く人だ・・・。)
「・・・そうですか・・・。
ありがとうございます。」
頼輝はそう頭を下げてから改めて自分の状態を確認して見ると、腹部には新たに包帯が巻かれ、腕には点滴の針がか刺さっており、かなり身体が楽になっていることに気がついた。
「しかし一晩でここまで回復するとはね。
君の驚異的な回復力に驚いたよ。
具合はどうだい?」
「は、はい。
お陰様でかなり楽になりました・・・!」
「それなら良かった。
君の倒れていた場所の近くに黒い牛の魔獣が死んでいたけど、あれを倒したのは君だろう?
しかもそんな手負いの状態で・・・凄いね。」
「・・・!
ちゃんと倒せていたんだ・・・良かった・・・。
俺、あいつが息絶えるのを見届ける前に気を失ったから・・・。」
頼輝は安心して小さくため息をついた。
「・・・お爺さんは魔獣が彷徨いている中、危ない目に遭いませんでしたか?」
頼輝はお爺さんを気遣って尋ねた。
「ははは、実は危ないところだったんだけど、君のお陰で命拾いしたんだよ。」
「俺のお陰、ですか?」
「あぁ。
夜寝ようと思ったら外が騒がしいから何事かと思ってそっと窓から覗いて見たら、外を魔獣が彷徨いているのが見えてね(汗)
見つからないように家の中に息を潜めて隠れていたんだが、魔獣は人の気配が解るのかな?
すぐに奴らに見つかってしまってね。
危うく家を壊されるところだったんだけど、咄嗟に混乱作用のある薬を窓から投げつけたんだよ。
それで魔獣同士を同士討ちさせようとしたんだけど、あの黒い牛が他のより格上だったようで、他の魔獣を倒してしまったんだ。
今度こそ家を壊されて襲われると死を覚悟したところに君が来たんだ。
助かった・・・ありがとう。」
お爺さんが頭を下げる。
頼輝は(それであのとき角イノシシとか野熊が倒れていたのか・・・。)と納得した。
「いえ、お礼を言うのは俺の方です。
お爺さんが治療をしてくれなかったら、俺はあそこで倒れたまた死んでいたかもしれない・・・。」
頼輝はもう一度感謝の言葉を伝えた。
「・・・君の腹部の傷は元々あったものだね?
きちんと治療もされていたみたいだけど、あの黒い牛とやり合ったからかな?
それが完全に開いてしまっていて、そのせいで発熱もしていたし、とにかく出血が酷かったからね。
僕はただ傷口を縫い直して輸血をしただけだよ。
お礼を言うなら血をくれた彼に言うといいよ。」
「彼?
ここには他にも誰かが?」
頼輝はもう一度部屋を見渡すが、この家には他に部屋があるようには見えなかったため、首を傾げた。
「あぁ、その彼、魔獣が境界外に出たことによる避難勧告が出ているのも知らずに避難していない僕のことを神官さんから聞いて、僕を助けにうちまで来てくれた青年なんだよ。
今は連れの女の子と一緒に外の安全確認に行ってるよ。
昨日の夜、君をここに連れてきて輸血しようと思ったら、丁度O型の輸血用の血液パックを切らしてしまっていてね。
僕はA型だから分けてあげられないし、どうしようかと困っていたところに丁度彼らが来たんだよ。
それで、二人に血液型を訊いたら彼が君と同じO型だったから、献血を頼んだんだ。
そしたら快く引き受けてくれたよ。
もうそろそろ戻ってくるんじゃないかな・・・?」
お爺さんがそう言い玄関の方を見ると、丁度良いタイミングで玄関ドアが開いた。
「爺さん、安心しな!
外に魔獣はもう居なかったぜ?
・・・ただ、境界の中がどうなっているのかは確認出来なかった。
入り口の鳥居に封印術が施されてるみたいで中に入れなかったんだよ。」
栗色の髪の陽気な雰囲気を持った青年が家へ入ってくるなりそう言った。
彼は学ランを着ており、頼輝の兄の春輝と同じくらいの歳に見えた。
顔立ちは春輝のように誰もが振り返る程の美形では無かったが、人懐っこく可愛い系統で整っており、女子にモテそうだな・・・と頼輝は思った。
そして、頼輝はその彼に常人とは違う”何か”を感じた。
(この人、境界守りではなさそうだけど、何か特殊な力を持っている・・・。)
その彼の後ろには小柄な少女がいて、彼に続いて小屋に入ってきた。
見た感じは頼輝や璃音と同じ歳の頃で、凛とした佇まいをしており、紺地に3本の白線が入ったセーラー服を身に纏い、艷やかなストレートの黒髪を肩のところで切り揃えていた。
(この人もだ。
彼と同じ力を感じる・・・。
でもちょっと不思議な感じもするな・・・。
何処か、この世の人じゃないみたいな・・・。)
頼輝が二人をじっと見ていると、青年のほうが頼輝に気がついて笑顔で話しかけてきた。
「よっ、目が覚めたんだな!
俺は神崎隼人っていうんだ。
鬼門から漏れ出した人の世ざる存在を退治して回ってるフリーの退治屋だ。
こっちは妹の美紅。」
紹介された妹がペコッと頭を下げて会釈した。
「神崎美紅といいます。
兄さんの助手です。」
(えっ、兄妹なのか。
顔、あんまり似てないからつがい(※森中村では恋人のこと)かと思った。
妹さんのほう・・・よく見ると何処か璃音に似てるかも・・・。
顔は系統が違うけど、色白で小柄な所とか、胸が小さい所とか・・・。)
ボーッと彼女を見ながら頼輝がそんなことを考えていると、
「あの、さっきから何でしょう?
人をジロジロ見て失礼ですよ?」
と、少し不機嫌に眉を吊り上げた彼女に言われた。
「あっ、すみません!
君が俺の幼馴染に少し似てると思ったから・・・。」
(性格は璃音より手厳しいな・・・。
でも確かに、先に自己紹介をしてもらったのに名乗りもしないで見てた俺が悪い・・・。)
「俺は狼谷頼輝と言います。
・・・えっと、神崎さん。」
「あぁ、隼人でいいぜ?」
「えっ・・・じゃあ隼人さん。
俺に血を下さったそうでありがとうございました・・・!」
頼輝は隼人に向かって頭を下げた。
「あぁ、気にすんなよ!」
隼人はハハハッ!と歯を見せて笑うとそう言った。
「そうですよ。
うちの馬鹿兄は血の気が多いですから誰かに分けてあげるくらいで丁度良いんです。」
妹の美紅も冗談交じりに微笑んで兄をからかう。
頼輝も闇医者のお爺さんも釣られて笑ってログハウス内に和やかな空気が流れた。
「まずは朝ごはんにしませんか?
皆さんお腹が空いたでしょう?
お爺さん、お台所をお借りしてもいいですか?」
美紅がそう言うと、お爺さんが頷いた。
「あぁ、どうぞ。
食材も好きに使っていいから。」
朝ごはんと聞いて隼人と頼輝の腹が同時にぐううぅぅぅ・・・と情けない音を立てた。
「あっ・・・!」と自分の腹を見下ろす頼輝。
「ははは!
そいや俺らも昨夜から何も食ってなかったっけ!」
と隼人も笑いながら言った。
「兄さん。
近くの小川に芹がありましたから、幾つか採ってきてくれませんか?
冷蔵庫に葉物のお野菜がないので・・・。」
美紅が台所からヒョコッと顔を覗かせてそう言った。
「おう、りょーかい!
ついでに魔獣の死骸、片付けて回るかな。」
隼人はそう言うと小屋を出て行った。
頼輝もじっとしていられなくてベッドを下りようとしたら、お爺さんに腕を掴まれ止められた。
「待ちなさい。
医者としてそれはまだ認められないよ。」
「あの、でも俺もう動けますから。」
頼輝はそう言うが、お爺さんは首を横に振った。
「あれだけ血を失った後なんだから駄目だよ。
動くのはせめて点滴が終わってからだ。
食事を待っている間に打ち終わるから。」
頼輝は本当は少しでも早く神社に武器を取りに行きたかったが、お爺さんに厳しい視線を向けられた為諦めた。
「・・・わかりました・・・。
では、せめて電話だけでもお借りできませんか?
家族に連絡を取りたいんです。
そろそろ俺が居なくなったことに気がついて心配し始める頃だと思うから・・・。」
(俺の家族に伝えておけば、璃音にも俺の無事が伝わる筈だし、余計な心配をかけずに済む・・・。)
と、頼輝は大好きな璃音の顔を思い浮かべてそう思った。
「あぁ・・・それはそうだよね。
はいどうぞって言ってあげたいんだが、僕は電話が嫌いでね。
この家には引いていないんだよ。
でも村のタバコ屋の隣に公衆電話があった筈だから後で行ってみるといい。」
「・・・わかりました。
ありがとうございます。」
それなら今は休息に専念しようと、頼輝は点滴を受けながら少し横になった。
一そして、約一時間後──。
頼輝の目の前には海苔が巻かれたおにぎりと茸と油揚げと葱のお味噌汁、それに卵焼き、芹を茹でておひたしにしたものが並んでいた。
「簡単なものですけど召し上がって下さい。」
と言って美紅はお茶を淹れに再び台所へと消えていった。
(いい匂い・・・美味そうだ・・・。)
「いただきます。」
頼輝は手を合わせてから食事に手を付けた。
「で、頼輝っつったっけ?
お前の名前以外のこと、もう少し聞いていいか?」
隼人がそのおにぎりを頬張りながら切り出した。
「まず、お前一体何者なんだ?
あの黒い牛を倒したのはお前だろ?
ろくな装備もなしで、只者じゃねーよな?
それに、どうやってここまで来たんだよ?
今はこの村、魔獣被害がこれ以上広がらないようにって、唯一の出入り口の橋を上げて通れなくしてるってのに・・・。
俺らは爺さんの救助を神官に頼まれたから通してもらえたけどよ・・・。」
「兄さん、それ、既に”もう少し”じゃなくて”質問攻め”じゃないですか・・・。」
美紅が盆に皆のお茶を乗せて運んで来ると呆れたように言った。
「あはは!すまねぇ。
だってすげー気になってさ・・・。」
隼人が苦笑いして頭を掻いた。
(・・・まぁ、気になるよな・・・。
この人達悪い人じゃ無さそうだし、下手に嘘を付くよりは、正直に打ち明けたほうが良さそうだな・・・。
信用してもらえれば、魔獣殲滅に協力してもらえるかもしれない。)
頼輝はそう考えてから口を開いた。
「・・・俺は東京の森中村ってところで境界守りをしています。
何故ここに来たのか・・・それは俺にもよくわからないんですけど・・・。」
(射精したら飛ばされた、なんて流石に恥ずかしくて言えないから、そこだけは適当にはぐらかして・・・。)
頼輝は顔を赤らめてから続けた。
「・・・信じてもらえるかわからないけど・・・
夜寝てたら急にここの境界に飛ばされて来たんです。
それで・・・境界内には沢山魔獣が湧いていたんですけど、武器を持ってなかったから、ひとまず境界から抜け出して来て、これ以上の魔獣が外に出てこれないよう門に俺が封印術をかけたんです。」
「あぁ!
それで境界に入れなかったのか!
つか、東京から北海道まで飛ばされてきたってどういうことだ?」
「兄さん、それはさっき彼がよくわからないって言っていたじゃないですか。
彼自身戸惑っているんですよ・・・。」
頼輝が説明しようとした気持ちを美紅が代弁してくれて、頼輝は彼女に軽く会釈をした。
「そっか・・・そうだよな・・・すまねぇ。
まぁ俺も職業柄理屈の通らねぇ不思議なことは何度も体験してるから、その類かもしれねーし・・・。
それに、神官のおっちゃんが言ってたけど、境界守りってのはお前の住んでる土地の神様が加護を与えてるんだろ?
それなら、その神様が考えあってお前をここに寄越したのかも知れねーな?」
「・・・・・そうか、森中の神様のお考えか・・・。」
頼輝は隼人に言われて、その可能性について考えてもみなかったが、ありえないとは言い切れないと思った。
(実際にこの村の境界守りのおじさんも、神様の加護に守られて亡くなった後も食われずにいたからな・・・。
おじさんが中級の境界守りの首飾りを身につけていたから、格下もしくは同等ランクの魔獣が手を付けられなかったってことだと思うけど、その加護だって神様の不思議な力を裏付けている・・・。)
そう考えて頼輝は一人頷いた。
「それにしても一人であの強そうな黒い牛を倒したんだろ?
まだ若いのにすげー境界守りなんだなお前!」
隼人が人懐っこい笑顔を向けてそう言った。
「あ・・・いえ!
ここの境界守りらしき人が門の内側で亡くなっていて・・・。
その人が持っていた斧を借りたんです。
それが凄く良い斧だったから・・・。
それも黒牛との戦いで折れてしまいましたけど・・・。」
「・・・彼、亡くなってしまったのか・・・。
・・・その斧なら君の荷物と一緒にそこに置いてあるよ。」
お爺さんは少し離れたところにある小さな机を指差した。
そこには折れた斧と結人の漫画が蔦を解いて伏せた状態で置いてあった。
「本当だ!
ありがとうございます・・・!」
頼輝はそれらの荷物が無事であったことにホッとしてからすぐに結人の漫画原稿の内容を思い出して赤くなった。
(普通に考えたら内容を確認するよな・・・?
変に思われただろうか・・・。)
頼輝は気まずそうに顔を真っ赤に染めて口を波打たせて俯いた。
「あっ、そうそう!
あの漫画のことも聞きたかったんだ!
すげぇなあれ!
お前が描いたのか?」
(やっぱり見られてた!!)
頼輝は一瞬で茹で蛸のように真っ赤になり、顔中に汗が溢れ出した。
「描いたのは俺の親友ですけど・・・・・。
よ、よ、読んだんですか・・・・・。」
頼輝は膝に手を付いて居た堪れなそうに身を縮ませた。
「あぁ~・・・わりぃ、ちょっとだけ・・・な?」
隼人は苦笑いをしつつ頭を掻いた。
「嘘おっしゃい。
人のものを勝手に読むのは良くないですよってあれ程言ったのに、何度も繰り返し読んでたじゃないですか・・・。
ホント、エロ馬鹿兄なんだから。」
と彼の妹が呆れ顔でツッコミを入れた。
「マジかよ・・・最悪だ・・・!」
頼輝は羞恥のあまり耳まで赤いまま机の上に突っ伏した。
「まぁまぁ安心しなって!
確かに読んだけど、あの漫画に描かれてるのって、お前とお前の好きな子だろ?
ガチでエロかったから読んでて興奮はしたけどさ、第三者にエロ本みたいに扱われるのはお前が嫌なんじゃねーかと思ったから、そういう風には読んでねーし。
まぁそんなことしなくても、俺には相手もいることだし・・・?」
と言って隼人がチラッと美紅に視線を送ると、彼女はサッと赤くなって目を逸らした。
(・・・??)
頼輝はそのやり取りを見て少し不思議に思ったが、隼人がすぐに話しかけて来たのでそちらに集中した。
「つかお前の親友、絵、すげー上手いよな!
丁寧に心理描写も描かれてて面白かったし。
あれだけ上手けりゃすぐにプロになれるんじゃね?」
「えっ!そうですか!?
ありがとうございます!
あいつ、エロ漫画家目指してるから、今の隼人さんの感想を伝えたら喜びます!
でもまだ14だから出版社に持ち込みするにも後4年も待たなきゃいけないんですけどね・・・。」
頼輝が苦笑いしながら言った。
「は!?14!?
って、お前も!?」
隼人が目を丸くして箸を落とした。
「え?はい。
そうですけど・・・。」
頼輝はキョトンとして答えた。
「あなた歳下だったのですね・・・。
背が高いし大人びているから私と同じくらいだと勝手に思ってました。」
美紅が複雑そうに顔を歪めてそう言った。
「えっ?
美紅さんって今お何歳なんですか?」
「今16歳・・・高2ですよ。」
「えっ!俺の兄貴と同じ学年!?」
頼輝は頭の中で自分の兄と目の前の彼女を比べてみて、とても同じ学年に見えないと驚き、手に持っていたおにぎりを落としてしまった。
すると美紅の隣に座る隼人がケラケラと笑った。
「まぁ美紅は幼く見えるからな!
胸も平らだしな(笑)」
「平らではないですよ!
・・・・・知ってるくせに・・・・・。」
美紅は赤くなってジト目で隼人を見て、最後のほうは消えそうな声で言った。
「・・・・・。」
隼人もその彼女の言葉に思い当たることがあるのか、顔を赤らめ汗を飛ばした。
(ん・・・?
さっきからこの二人、妙だな・・・。
本当に兄妹か・・・?)
頼輝は二人の間に流れるピンク色の空気を疑問に思うが、そこは触れないで、話題を変えることにした。
「あの・・・今後のことなんですけど。
俺はこの村の神社で武器を手に入れたらすぐに境界に戻ろうかと思います。
門の封印術はあまり長く使っていると他の境界に負担がかかるから、そろそろ解除しないと・・・。
解除したなら魔獣を殲滅にかかります。
だけど境界内に50体はいたから、俺一人ではとても捌ききれない・・・。
そこで、隼人さんと美紅さんに協力をお願いしたいのですが・・・。」
「あぁ、勿論いいぜ!
最初から境界の中の魔獣も何とかしねーとと思ってたしな!
・・・だが、神社に武器は無いぜ?」
「えっ?」
頼輝が怪訝な顔をすると、美紅が兄の続きを話した。
「私達は今までいろんな妖かしを倒してきましたが、”魔獣”と戦った経験は実は無いんです。
そこで、私達の武器が魔獣に通用するかがわからなかったので、念の為に専用の武器をお借りしようと思って避難所にいる神官さんに尋ねたんです。
そうしたら、先日神社に保管されてる武器を、境界守りの人のドラ息子がこっそり盗み出してネットオークションで売ってしまったそうで、今は一つもないそうなんです。」
「・・・何だって!!?」
頼輝は予想もしない事態に驚き、険しい顔で席を立った。
「何でも境界守りの武器には”魔石”が埋め込まれているらしいんですけど、それが高値で売れると入れ込んでいる女性に唆されたみたいですよ?
しかもそのドラ息子が変な壺を持って境界の中に入る所を村長さんが見ているんです。」
「・・・壺・・・だって・・・?」
頼輝は席を立ったままで眉間に深く皺を寄せて青ざめ呟いた。
「えぇ。
それを村長さんから聞いた境界守りの人が、血相を変えてその壺を回収しに境界に入ったそうなんです。
そしてその人は境界の中で亡くなってしまった・・・。
頼輝さんは境界守りとしてその壺に何か心当たりは?」
「・・・・・それは父さんから聞いたことのある”瘴気の壺”かもしれない・・・・・。」
頼輝が眉を寄せて呟くように言った。
その言葉にお爺さんがハッ!と反応してから影を落として俯くが、その場の誰も話に集中していて気が付かなかった。
「その名の通り、瘴気を封じ込めた呪いの壺で、一般人が扱える代物じゃないと思うし、その息子さんがどうやってそれを手に入れたかはわからないけど・・・。
”瘴気の壺"を境界内で開け放ってしまったのなら、元から境界内に立ち込めている瘴気に壺の中のものがプラスされて、この境界ではありえない強い魔獣を鬼門から引き寄せてしまう・・・!
そうか・・・だからあの世の中枢から離れたこの境界で黒牛が出たのか・・・!
もしも壺がまだ境界の中で開け放たれたままだったとしたら、黒牛よりも更に強い魔獣が出てきてしまうぞ・・・!
そうなったら俺だけでは手の打ちようがない!
武器を取りに神社に行くついでに家に連絡しようと思ってたけど、そんな時間はない!
すぐに確認しないと・・・!」
頼輝は居ても立っても居られなくて、すぐに境界に向かおうと玄関に向かって走り出した。
「待てよ!」
その腕を兄が掴んで引き止めた。
「武器も無しでどうするんだよ!」
「・・・それはそうですが、でも・・・!」
「・・・焦る気持ちは解りますが先ずは落ち着いて態勢を整えましょう。
武器については、私達のものが魔獣に通用するものであればそれを使えますから。
それを貴方に見てもらいたいのです。
兄さん、あれを出してあげてください。
私のものは私の手から離すことは出来ませんから。」
「あぁ、そうか・・・!
わかった。」
隼人はそう言うと、右手の人差し指の先に黒い宇宙のような小さな空間を作り出した。
それを出した状態で彼が緩やかに円を描くと、その指の軌道に黒い宇宙のような空間が伸びた。
それが始点と終点で繋がると、真ん中の部分も黒い空間として塗り潰された。
(これはアイテムボックス!?
いや、でも彼は魔石無しでそれをやっている・・・。
一体何者なんだ・・・?)
頼輝は境界守りでもなかなか手に入れにくい闇の魔石”アイテムボックス”によく似た彼の不思議な技を凝視した。
隼人はそれを察してか、苦笑いを浮かべて言った。
「・・・まぁ・・・気になるよな?
後で説明するから、まずはこいつを見てくれ。」
彼はそうして出来た直径30㎝くらいの真っ暗な空間に手を差し込むと、一本の刀を取り出した。
その刀はかなり使い古されており、青色の鞘には小さな傷が幾つもあり、鍔には”疾風”と書かれていた。
(あっ、父さんの通称と同じだ・・・。)
頼輝は自分の父”狼谷颯輝”こと通称”疾風の銀狼”の姿を思い浮かべた。
「これは俺が昔使ってた刀なんだが・・・。」
と言って隼人は柄の先についた青い石を見せた。
「この石は俺らが”霊珠”と呼んでいる、妖怪やら悪霊等の霊的存在の心臓部にある核となる不思議な力の結晶体だ。
昔の俺は自分の中にある”力”をうまく引き出せなかったから、こいつを使ってた。
これはお前らの言う所の”魔石”と同質のものか?」
頼輝はそれを隼人から渡された。
「・・・この石に触ってみても?」
「あぁ、いいぜ。」
頼輝がそっとその石に触れて軽く意識を集中すると、フワッと風が巻き上がり、その部屋にいる4人の髪を撫でた。
「凄い・・・!
鎌鼬の持つ風の魔石よりもずっと高濃度な魔石だ・・・!」
隼人が頼輝のその反応を見てニヤリと笑った。
「つーことは、その刀、魔獣に通用しそーだな?」
「はい!
寧ろ、俺が普段使ってる刀より強力だと思います!
魔獣はあの世で生まれた普通の動物と魔法の力の融合体なんです。
普通の武器でもあいつらの身体を傷付けることは出来るけど、心臓部には魔石があるためか他の部分より魔法による防御壁が厚く、傷を付ける事すら出来ない・・・。
あいつらに止めを刺すには、その防御壁を唯一打ち破れる力・・・魔法が必要なんです。
だから境界守りの武器には魔法の力を秘めた魔石が埋め込まれています。
この刀なら魔法の力が籠められるから、あいつらに止めを刺すことが出来ます・・・!」
頼輝の瞳が希望に満ちて輝いた。
「そうか。
魔石から生み出される魔法と霊珠から放つ術が同質のものっていうなら、俺と美紅の武器も通用するな!」
「えぇ・・・!」
隼人と美紅は顔を見合わせて頷いた。
そして隼人は頼輝に向き直ると真面目な顔をして口を開いた。
「頼輝、”疾風”の霊珠に触れるだけで風が起こせるなら、お前には風の資質があるってことだ。
だから・・・そいつをお前にやる。」
「えっ・・・!?でも・・・・・。」
頼輝は唇を引き結び、隼人を見た。
「いいんだよ。
どうせ俺はその刀をもう使えないんだ。」
と言って、彼は掌から炎を出した。
その目が炎のように赤く輝く。
そして、隼人の頭部には短い犬のような耳が、臀部にはふさふさの尻尾が生えた。
「俺は風の力より炎の力を選んだんだ。
今の俺がそいつを握っても、風を起こすことすら出来ない何の変哲もないナマクラなんだよ。
ただ捨てられなくて持っていただけだから、お前が使ってくれよ。」
頼輝は隼人の炎のように煌めく不思議な赤い瞳を暫く見つめた後、ゆっくりと頷いた。
「・・・・・わかりました。
ありがとうございます。
俺が貰って良いのなら、有難く使わせて頂きます。」
と言って刀を腰に刺そうとするが、今は寝間着のままで刀を納めるベルトが無いことに気がついて手が宙を描いた。
「ははっ!
刀納められねーのも不便だし、その装備、寝間着だよな?
靴も履いてねーし。
これから戦いに行くのに危ねーから俺の予備の服とブーツを貸してやるよ。
服は少しデカいかもしれねーけど、お前中坊にしちゃ体格いいからまぁ着れるだろ。
ブーツは紐である程度調整出来るしよ。
あ、こっちは戦いが終わったら返せよ?」
と言って、彼はまた黒い空間を作り出すと中から替えの学ランと帷子とブーツを出した。
「もう高校を卒業して着る必要ないのに、いつまでも学生気分が抜けきれずに着ているだけなんですから、服も疾風と一緒にあげればいいじゃないですか・・・。」
と美紅が突っ込むと、
「うるせー!気に入ってんだよ!
それに学生に見えるほうが何かと都合がいいだろ!?」
と隼人は美紅に軽く牙を剥いた。
(隼人さん、もう高校卒業してたのに学ラン着てたんだ・・・。)
と頼輝は苦笑いしながらそれを受け取った。
「あ、ありがとうございます・・・。
でも・・・・・この刀といい、不思議な力といい・・・貴方達は一体・・・?」
頼輝はそう言って彼等に尋ねた。
「あぁ・・・。
俺と美紅は半妖・・・人間と妖怪のハーフなんだよ。」
彼がそう言い隣の妹に視線を送ると、彼女は頷き目を閉じた。
すると、美紅の頭部にも猫のような耳が現れ、スカートの下からは黒くて長い猫のような尻尾がシュルっと生えた。
「ま、こんな感じでこの耳と尻尾があるのが俺達のデフォルトなんだが、目立つから人前に出るときは霊力・・・お前らの言う所の魔法の力な。
それで隠してるんだよ。
まぁ、半妖で獣の特徴持ちの奴はみんなこうやって隠すから表には出ねーけど、俺達みたいな混ざりものもこの世には一定数いるんだよ。
この世界ではどうなのかはわかんねーけどな。
さっきみたいに空間から物を取り出せるのも火を出せるのも、半妖だからなせる技っつーか、俺の体の中に存在する霊珠を使って出してるんだ。」
「えっ・・・!?
半妖!?
っていうか、隼人さんは犬で、美紅さんは猫!?
二人って兄妹では・・・??
それにこの世界ではって・・・!?」
色々と処理仕切れない情報か飛び込んで来て、頼輝が疑問符を沢山浮かべながら同意を求めてお爺さんを見ると、お爺さんも同じ心境なのか困ったように笑っていた。
「あぁ~・・・俺らは親同士の再婚で兄妹になったけど、血の繋がりは無いんだよ。
それに、別世界の住人でもある。
この世界の鬼門を調査しろって上の命令でこっちに来てるイレギュラーな存在なんだが・・・これ、他の奴らにはナイショな?
周りに知られると仕事やりにくくなるから。
頼輝と爺さんを信用したから打ち明けたんだ。」
頼輝はお爺さんと顔を見合わせてから互いに頷き、再び神崎兄妹の方へ向き直ると優しく微笑み答えた。
「・・・はい、わかっています。」
「サンキュー!
さて、これで戦える準備は整った!
後は頼輝がさっき渡した俺の服に着替えれば・・・っと、こいつを忘れてた。」
と隼人は言いかけて何かを思い出したのか、ポケットの中を探った。
「あ、あった。
これ、お前のものだから渡しておく。」
隼人はポケットから石を幾つか取り出して頼輝に渡した。
「俺のもの?」
頼輝が首を傾げた。
「あぁ。
さっき魔獣の死骸を処理してるとき、お前が倒した黒い牛の心臓を切り開いて霊珠があるかを調べてみたらこいつが出てきたんだよ。
これって魔石だろ?」
全部で7個ある魔石は殆どがありふれた闇と力の魔石だったが、その中に一際小さく深い黒色をした珍しい魔石が一つ混じっていた。
頼輝はそれを指で摘むと目を輝かせて声を上げた。
「これ、アイテムボックスだ!!」
「えっ?レアな魔石なのか?」
「はい!
闇属性の魔獣が持ってる魔石の中でも極めて珍しく貴重なもので、境界守りの中でも俺の父さんと兄貴くらいしか持ってる人を見たことが無いです!
これ、さっきの隼人さんみたいに、アイテムを収納したり出し入れしたり出来る空間を生み出す力があるんですよ。」
と言って頼輝はその魔石に触れて指先に黒い軌道を作り出すと、緩やかに円を描いて小さな空間を生み出して見せた。
「あ、マジだ。」
神崎兄妹が目を見開いて驚いた。
「これで狩った魔獣も綺麗に残さず持ち帰れる・・・!
でもホントに俺が貰って良いんですか?
取り出したのは隼人さんなのに。」
「いいに決まってるだろ?
お前が倒した魔獣なんだし、俺は既に持ってる力だから必要ねーし。
じゃ、頼輝は早く着替えて来いよ。
女がいると着替えづらいだろーから、美紅連れて先に行ってるから!」
隼人はそう言うと頼輝に背中を向けて美紅に行くぞ、と声をかけた。
「いいのかな・・・これ500万くらいで売れるのに・・・。」
頼輝がポソッとそう言うのを聞いて、隼人は「マジで!」と叫んで名残惜しそうに頼輝を振り返った。
「は、はい・・・そうですけど・・・。
やっぱり返しましょうか?」
頼輝が寝間着のトップスにかけた手を止めてそう返した。
「い、いや・・・・・!
お前のものだからお前が持ってろ!
美紅、行くぞ!」
隼人は500万円を振り払うかのように首をブンブンと強く振って妹を連れて玄関へと向かった。
「ふふふ、兄さんったら、そんな高価なものだと事前に知っていればネコババしましたか?」
「いや・・・ど、どうかな・・・。
でも500万もあれば俺の愛車もかなりカスタマイズ出来るし、新居の頭金も・・・。」
等とブツブツ言っている隼人の背を美紅がぽんぽんと叩いて微笑んだ。
「どうせ無理なんでしょ?
だから万年金欠なんですよ。
でも、そんな所も好きですけどね・・・。」
二人がそんなことを言いながらログハウスから出て行くのを見て、お爺さんがクツクツと笑いながら軟膏を棚から取り出し、頼輝に手渡した。
「これを持って行きなさい。
僕の作る傷薬の中でも1番即効性が高いものだから、役立つと思うよ。」
「ありがとうございます!」
「それと、腹部の傷はしっかりと縫っておいたから余程のことがない限りは開くことは無いとは思うけど、左側を捻る動きは極力避けなさい。」
「はい、わかりました・・・!」
「それから・・・・・。」
お爺さんは眉間に皺を寄せ、低く抑えた声で続けた。
「瘴気の壺を見つけたなら、決して触れないようにしなさい・・・。
君は境界守りだから他の人よりは影響を受けにくいと思うけど、あれは人を狂わすとても危険な代物だから。
壺に蓋をするときは、蓋だけを持って壺の真上からそっと落とすようにしなさい。
そして壺を持ち帰るときにはさっきのアイテムボックスだったかな?
その軌道で壺の周りを囲って触れないようにして入れてしまうといい。
昔あれを持ち帰った境界守りはそうしていたから。
そして、持ち帰った後は君の知る中で1番信頼のおける経験豊富な境界守りに全てを託しなさい。」
「えっ・・・お爺さん、瘴気の壺を知っているんですか?」
「・・・・・あぁ。
僕も昔騙された口だから・・・。
ゴメンね。
今はこれ以上は言えないけれど・・・・・。」
『でも、あのイレギュラーな兄妹と頼輝君が来てくれたお陰で、今回ばかりは君の思い通りには行かないようだね・・・・・ざまぁみろ・・・。』
お爺さんは最後の方は頼輝にも聞き取れない位小さな声で呟いた。
頼輝はお爺さんの様子から何か深い事情があるのだろうと察し、今は追求しないでおくことにした。
「・・・ありがとうございます。
瘴気の壺の扱いには重々気をつけます・・・。」
頼輝そう言うと、お爺さんが頷いた。
「うん。
君たちの無事を祈りながら僕はここで待っているよ。
どうか気をつけて。」
「・・・ありがとうございます。
行ってきます!」
頼輝はお爺さんに頭を下げると、学ランに袖を通してログハウスを後にするのだった。
お願い、返事をして!死んじゃヤダ!!”
璃音が俺に膝枕をしながら大粒の涙を流し、何度も名前を呼ぶのが聴こえる。
”あぁ・・・俺の大好きな璃音・・・。
そんなに泣くなよ・・・。
俺、これくらいで死なないから・・・”
声にしたくても何故か声にならないので、せめてその涙を拭おうと頬に手を伸ばした。
すると、誰かがその手をそっと握り返してくれたのを感じた。
でもそれは璃音の手じゃないとすぐに気がついた。
少し冷たくて、硬くて骨ばってて少し荒れてるけど、何処か優しい手だ・・・。
誰だ・・・?──
「君・・・君・・・大丈夫か?」
頼輝がハッとして目を覚ますと、目の前には知らないお爺さんの姿があった。
頼輝は自分の手を握り返してくれたのは、このお爺さんだと気がついた。
お爺さんは頼輝を心配そうに見つめていて、何処か建物の中なのか、その背後には木で作られた天井が見えた。
「・・・は、はい・・・・・。
・・・ここは?」
頼輝はそうお爺さんに尋ねながら、そっとベッドから身を起こし、辺りを見渡した。
そこはワンルームのログハウスだった。
奥に桜駒鳥の薬屋と同じような薬を作るためのすり鉢や鍋や道具類、壁には干した薬草や茸が見え、机の上には注射器や薬品の入った瓶や医療器具が乱雑に置かれていた。
窓の外は夜が明けたのか明るく、朝の日差しが心地良く差し込んでいた。
お爺さんの歳は60代くらいだろうか。
片目を失っているのか眼帯をしており、無事な方の目にだけレンズの入った眼鏡をかけていた。
頭髪は半分くらいの割合で白髪で、それをオールバックにして撫でつけていた。
だが顔立ちは優しく、璃音と同じ空色の瞳が印象的だった。
「ここは村外れにある僕の家だよ。
僕は医者をやっていてね。
まぁ、医者は医者でも脱獄囚や裏稼業の奴等、訳ありの患者ばかりの相手をしている世間で言うところの”闇医者"というやつだがね・・・。
君が森で倒れているのを発見したからここに運び、治療を行ったんだ。」
頼輝は自らのことを闇医者だと自嘲気味に笑うお爺さんを見て思った。
(何故だろう・・・。
闇医者だというけれど悪い人には見えない。
それどころか、ばあちゃんや璃音に似た雰囲気を持っていて、何処か一緒に居て落ち着く人だ・・・。)
「・・・そうですか・・・。
ありがとうございます。」
頼輝はそう頭を下げてから改めて自分の状態を確認して見ると、腹部には新たに包帯が巻かれ、腕には点滴の針がか刺さっており、かなり身体が楽になっていることに気がついた。
「しかし一晩でここまで回復するとはね。
君の驚異的な回復力に驚いたよ。
具合はどうだい?」
「は、はい。
お陰様でかなり楽になりました・・・!」
「それなら良かった。
君の倒れていた場所の近くに黒い牛の魔獣が死んでいたけど、あれを倒したのは君だろう?
しかもそんな手負いの状態で・・・凄いね。」
「・・・!
ちゃんと倒せていたんだ・・・良かった・・・。
俺、あいつが息絶えるのを見届ける前に気を失ったから・・・。」
頼輝は安心して小さくため息をついた。
「・・・お爺さんは魔獣が彷徨いている中、危ない目に遭いませんでしたか?」
頼輝はお爺さんを気遣って尋ねた。
「ははは、実は危ないところだったんだけど、君のお陰で命拾いしたんだよ。」
「俺のお陰、ですか?」
「あぁ。
夜寝ようと思ったら外が騒がしいから何事かと思ってそっと窓から覗いて見たら、外を魔獣が彷徨いているのが見えてね(汗)
見つからないように家の中に息を潜めて隠れていたんだが、魔獣は人の気配が解るのかな?
すぐに奴らに見つかってしまってね。
危うく家を壊されるところだったんだけど、咄嗟に混乱作用のある薬を窓から投げつけたんだよ。
それで魔獣同士を同士討ちさせようとしたんだけど、あの黒い牛が他のより格上だったようで、他の魔獣を倒してしまったんだ。
今度こそ家を壊されて襲われると死を覚悟したところに君が来たんだ。
助かった・・・ありがとう。」
お爺さんが頭を下げる。
頼輝は(それであのとき角イノシシとか野熊が倒れていたのか・・・。)と納得した。
「いえ、お礼を言うのは俺の方です。
お爺さんが治療をしてくれなかったら、俺はあそこで倒れたまた死んでいたかもしれない・・・。」
頼輝はもう一度感謝の言葉を伝えた。
「・・・君の腹部の傷は元々あったものだね?
きちんと治療もされていたみたいだけど、あの黒い牛とやり合ったからかな?
それが完全に開いてしまっていて、そのせいで発熱もしていたし、とにかく出血が酷かったからね。
僕はただ傷口を縫い直して輸血をしただけだよ。
お礼を言うなら血をくれた彼に言うといいよ。」
「彼?
ここには他にも誰かが?」
頼輝はもう一度部屋を見渡すが、この家には他に部屋があるようには見えなかったため、首を傾げた。
「あぁ、その彼、魔獣が境界外に出たことによる避難勧告が出ているのも知らずに避難していない僕のことを神官さんから聞いて、僕を助けにうちまで来てくれた青年なんだよ。
今は連れの女の子と一緒に外の安全確認に行ってるよ。
昨日の夜、君をここに連れてきて輸血しようと思ったら、丁度O型の輸血用の血液パックを切らしてしまっていてね。
僕はA型だから分けてあげられないし、どうしようかと困っていたところに丁度彼らが来たんだよ。
それで、二人に血液型を訊いたら彼が君と同じO型だったから、献血を頼んだんだ。
そしたら快く引き受けてくれたよ。
もうそろそろ戻ってくるんじゃないかな・・・?」
お爺さんがそう言い玄関の方を見ると、丁度良いタイミングで玄関ドアが開いた。
「爺さん、安心しな!
外に魔獣はもう居なかったぜ?
・・・ただ、境界の中がどうなっているのかは確認出来なかった。
入り口の鳥居に封印術が施されてるみたいで中に入れなかったんだよ。」
栗色の髪の陽気な雰囲気を持った青年が家へ入ってくるなりそう言った。
彼は学ランを着ており、頼輝の兄の春輝と同じくらいの歳に見えた。
顔立ちは春輝のように誰もが振り返る程の美形では無かったが、人懐っこく可愛い系統で整っており、女子にモテそうだな・・・と頼輝は思った。
そして、頼輝はその彼に常人とは違う”何か”を感じた。
(この人、境界守りではなさそうだけど、何か特殊な力を持っている・・・。)
その彼の後ろには小柄な少女がいて、彼に続いて小屋に入ってきた。
見た感じは頼輝や璃音と同じ歳の頃で、凛とした佇まいをしており、紺地に3本の白線が入ったセーラー服を身に纏い、艷やかなストレートの黒髪を肩のところで切り揃えていた。
(この人もだ。
彼と同じ力を感じる・・・。
でもちょっと不思議な感じもするな・・・。
何処か、この世の人じゃないみたいな・・・。)
頼輝が二人をじっと見ていると、青年のほうが頼輝に気がついて笑顔で話しかけてきた。
「よっ、目が覚めたんだな!
俺は神崎隼人っていうんだ。
鬼門から漏れ出した人の世ざる存在を退治して回ってるフリーの退治屋だ。
こっちは妹の美紅。」
紹介された妹がペコッと頭を下げて会釈した。
「神崎美紅といいます。
兄さんの助手です。」
(えっ、兄妹なのか。
顔、あんまり似てないからつがい(※森中村では恋人のこと)かと思った。
妹さんのほう・・・よく見ると何処か璃音に似てるかも・・・。
顔は系統が違うけど、色白で小柄な所とか、胸が小さい所とか・・・。)
ボーッと彼女を見ながら頼輝がそんなことを考えていると、
「あの、さっきから何でしょう?
人をジロジロ見て失礼ですよ?」
と、少し不機嫌に眉を吊り上げた彼女に言われた。
「あっ、すみません!
君が俺の幼馴染に少し似てると思ったから・・・。」
(性格は璃音より手厳しいな・・・。
でも確かに、先に自己紹介をしてもらったのに名乗りもしないで見てた俺が悪い・・・。)
「俺は狼谷頼輝と言います。
・・・えっと、神崎さん。」
「あぁ、隼人でいいぜ?」
「えっ・・・じゃあ隼人さん。
俺に血を下さったそうでありがとうございました・・・!」
頼輝は隼人に向かって頭を下げた。
「あぁ、気にすんなよ!」
隼人はハハハッ!と歯を見せて笑うとそう言った。
「そうですよ。
うちの馬鹿兄は血の気が多いですから誰かに分けてあげるくらいで丁度良いんです。」
妹の美紅も冗談交じりに微笑んで兄をからかう。
頼輝も闇医者のお爺さんも釣られて笑ってログハウス内に和やかな空気が流れた。
「まずは朝ごはんにしませんか?
皆さんお腹が空いたでしょう?
お爺さん、お台所をお借りしてもいいですか?」
美紅がそう言うと、お爺さんが頷いた。
「あぁ、どうぞ。
食材も好きに使っていいから。」
朝ごはんと聞いて隼人と頼輝の腹が同時にぐううぅぅぅ・・・と情けない音を立てた。
「あっ・・・!」と自分の腹を見下ろす頼輝。
「ははは!
そいや俺らも昨夜から何も食ってなかったっけ!」
と隼人も笑いながら言った。
「兄さん。
近くの小川に芹がありましたから、幾つか採ってきてくれませんか?
冷蔵庫に葉物のお野菜がないので・・・。」
美紅が台所からヒョコッと顔を覗かせてそう言った。
「おう、りょーかい!
ついでに魔獣の死骸、片付けて回るかな。」
隼人はそう言うと小屋を出て行った。
頼輝もじっとしていられなくてベッドを下りようとしたら、お爺さんに腕を掴まれ止められた。
「待ちなさい。
医者としてそれはまだ認められないよ。」
「あの、でも俺もう動けますから。」
頼輝はそう言うが、お爺さんは首を横に振った。
「あれだけ血を失った後なんだから駄目だよ。
動くのはせめて点滴が終わってからだ。
食事を待っている間に打ち終わるから。」
頼輝は本当は少しでも早く神社に武器を取りに行きたかったが、お爺さんに厳しい視線を向けられた為諦めた。
「・・・わかりました・・・。
では、せめて電話だけでもお借りできませんか?
家族に連絡を取りたいんです。
そろそろ俺が居なくなったことに気がついて心配し始める頃だと思うから・・・。」
(俺の家族に伝えておけば、璃音にも俺の無事が伝わる筈だし、余計な心配をかけずに済む・・・。)
と、頼輝は大好きな璃音の顔を思い浮かべてそう思った。
「あぁ・・・それはそうだよね。
はいどうぞって言ってあげたいんだが、僕は電話が嫌いでね。
この家には引いていないんだよ。
でも村のタバコ屋の隣に公衆電話があった筈だから後で行ってみるといい。」
「・・・わかりました。
ありがとうございます。」
それなら今は休息に専念しようと、頼輝は点滴を受けながら少し横になった。
一そして、約一時間後──。
頼輝の目の前には海苔が巻かれたおにぎりと茸と油揚げと葱のお味噌汁、それに卵焼き、芹を茹でておひたしにしたものが並んでいた。
「簡単なものですけど召し上がって下さい。」
と言って美紅はお茶を淹れに再び台所へと消えていった。
(いい匂い・・・美味そうだ・・・。)
「いただきます。」
頼輝は手を合わせてから食事に手を付けた。
「で、頼輝っつったっけ?
お前の名前以外のこと、もう少し聞いていいか?」
隼人がそのおにぎりを頬張りながら切り出した。
「まず、お前一体何者なんだ?
あの黒い牛を倒したのはお前だろ?
ろくな装備もなしで、只者じゃねーよな?
それに、どうやってここまで来たんだよ?
今はこの村、魔獣被害がこれ以上広がらないようにって、唯一の出入り口の橋を上げて通れなくしてるってのに・・・。
俺らは爺さんの救助を神官に頼まれたから通してもらえたけどよ・・・。」
「兄さん、それ、既に”もう少し”じゃなくて”質問攻め”じゃないですか・・・。」
美紅が盆に皆のお茶を乗せて運んで来ると呆れたように言った。
「あはは!すまねぇ。
だってすげー気になってさ・・・。」
隼人が苦笑いして頭を掻いた。
(・・・まぁ、気になるよな・・・。
この人達悪い人じゃ無さそうだし、下手に嘘を付くよりは、正直に打ち明けたほうが良さそうだな・・・。
信用してもらえれば、魔獣殲滅に協力してもらえるかもしれない。)
頼輝はそう考えてから口を開いた。
「・・・俺は東京の森中村ってところで境界守りをしています。
何故ここに来たのか・・・それは俺にもよくわからないんですけど・・・。」
(射精したら飛ばされた、なんて流石に恥ずかしくて言えないから、そこだけは適当にはぐらかして・・・。)
頼輝は顔を赤らめてから続けた。
「・・・信じてもらえるかわからないけど・・・
夜寝てたら急にここの境界に飛ばされて来たんです。
それで・・・境界内には沢山魔獣が湧いていたんですけど、武器を持ってなかったから、ひとまず境界から抜け出して来て、これ以上の魔獣が外に出てこれないよう門に俺が封印術をかけたんです。」
「あぁ!
それで境界に入れなかったのか!
つか、東京から北海道まで飛ばされてきたってどういうことだ?」
「兄さん、それはさっき彼がよくわからないって言っていたじゃないですか。
彼自身戸惑っているんですよ・・・。」
頼輝が説明しようとした気持ちを美紅が代弁してくれて、頼輝は彼女に軽く会釈をした。
「そっか・・・そうだよな・・・すまねぇ。
まぁ俺も職業柄理屈の通らねぇ不思議なことは何度も体験してるから、その類かもしれねーし・・・。
それに、神官のおっちゃんが言ってたけど、境界守りってのはお前の住んでる土地の神様が加護を与えてるんだろ?
それなら、その神様が考えあってお前をここに寄越したのかも知れねーな?」
「・・・・・そうか、森中の神様のお考えか・・・。」
頼輝は隼人に言われて、その可能性について考えてもみなかったが、ありえないとは言い切れないと思った。
(実際にこの村の境界守りのおじさんも、神様の加護に守られて亡くなった後も食われずにいたからな・・・。
おじさんが中級の境界守りの首飾りを身につけていたから、格下もしくは同等ランクの魔獣が手を付けられなかったってことだと思うけど、その加護だって神様の不思議な力を裏付けている・・・。)
そう考えて頼輝は一人頷いた。
「それにしても一人であの強そうな黒い牛を倒したんだろ?
まだ若いのにすげー境界守りなんだなお前!」
隼人が人懐っこい笑顔を向けてそう言った。
「あ・・・いえ!
ここの境界守りらしき人が門の内側で亡くなっていて・・・。
その人が持っていた斧を借りたんです。
それが凄く良い斧だったから・・・。
それも黒牛との戦いで折れてしまいましたけど・・・。」
「・・・彼、亡くなってしまったのか・・・。
・・・その斧なら君の荷物と一緒にそこに置いてあるよ。」
お爺さんは少し離れたところにある小さな机を指差した。
そこには折れた斧と結人の漫画が蔦を解いて伏せた状態で置いてあった。
「本当だ!
ありがとうございます・・・!」
頼輝はそれらの荷物が無事であったことにホッとしてからすぐに結人の漫画原稿の内容を思い出して赤くなった。
(普通に考えたら内容を確認するよな・・・?
変に思われただろうか・・・。)
頼輝は気まずそうに顔を真っ赤に染めて口を波打たせて俯いた。
「あっ、そうそう!
あの漫画のことも聞きたかったんだ!
すげぇなあれ!
お前が描いたのか?」
(やっぱり見られてた!!)
頼輝は一瞬で茹で蛸のように真っ赤になり、顔中に汗が溢れ出した。
「描いたのは俺の親友ですけど・・・・・。
よ、よ、読んだんですか・・・・・。」
頼輝は膝に手を付いて居た堪れなそうに身を縮ませた。
「あぁ~・・・わりぃ、ちょっとだけ・・・な?」
隼人は苦笑いをしつつ頭を掻いた。
「嘘おっしゃい。
人のものを勝手に読むのは良くないですよってあれ程言ったのに、何度も繰り返し読んでたじゃないですか・・・。
ホント、エロ馬鹿兄なんだから。」
と彼の妹が呆れ顔でツッコミを入れた。
「マジかよ・・・最悪だ・・・!」
頼輝は羞恥のあまり耳まで赤いまま机の上に突っ伏した。
「まぁまぁ安心しなって!
確かに読んだけど、あの漫画に描かれてるのって、お前とお前の好きな子だろ?
ガチでエロかったから読んでて興奮はしたけどさ、第三者にエロ本みたいに扱われるのはお前が嫌なんじゃねーかと思ったから、そういう風には読んでねーし。
まぁそんなことしなくても、俺には相手もいることだし・・・?」
と言って隼人がチラッと美紅に視線を送ると、彼女はサッと赤くなって目を逸らした。
(・・・??)
頼輝はそのやり取りを見て少し不思議に思ったが、隼人がすぐに話しかけて来たのでそちらに集中した。
「つかお前の親友、絵、すげー上手いよな!
丁寧に心理描写も描かれてて面白かったし。
あれだけ上手けりゃすぐにプロになれるんじゃね?」
「えっ!そうですか!?
ありがとうございます!
あいつ、エロ漫画家目指してるから、今の隼人さんの感想を伝えたら喜びます!
でもまだ14だから出版社に持ち込みするにも後4年も待たなきゃいけないんですけどね・・・。」
頼輝が苦笑いしながら言った。
「は!?14!?
って、お前も!?」
隼人が目を丸くして箸を落とした。
「え?はい。
そうですけど・・・。」
頼輝はキョトンとして答えた。
「あなた歳下だったのですね・・・。
背が高いし大人びているから私と同じくらいだと勝手に思ってました。」
美紅が複雑そうに顔を歪めてそう言った。
「えっ?
美紅さんって今お何歳なんですか?」
「今16歳・・・高2ですよ。」
「えっ!俺の兄貴と同じ学年!?」
頼輝は頭の中で自分の兄と目の前の彼女を比べてみて、とても同じ学年に見えないと驚き、手に持っていたおにぎりを落としてしまった。
すると美紅の隣に座る隼人がケラケラと笑った。
「まぁ美紅は幼く見えるからな!
胸も平らだしな(笑)」
「平らではないですよ!
・・・・・知ってるくせに・・・・・。」
美紅は赤くなってジト目で隼人を見て、最後のほうは消えそうな声で言った。
「・・・・・。」
隼人もその彼女の言葉に思い当たることがあるのか、顔を赤らめ汗を飛ばした。
(ん・・・?
さっきからこの二人、妙だな・・・。
本当に兄妹か・・・?)
頼輝は二人の間に流れるピンク色の空気を疑問に思うが、そこは触れないで、話題を変えることにした。
「あの・・・今後のことなんですけど。
俺はこの村の神社で武器を手に入れたらすぐに境界に戻ろうかと思います。
門の封印術はあまり長く使っていると他の境界に負担がかかるから、そろそろ解除しないと・・・。
解除したなら魔獣を殲滅にかかります。
だけど境界内に50体はいたから、俺一人ではとても捌ききれない・・・。
そこで、隼人さんと美紅さんに協力をお願いしたいのですが・・・。」
「あぁ、勿論いいぜ!
最初から境界の中の魔獣も何とかしねーとと思ってたしな!
・・・だが、神社に武器は無いぜ?」
「えっ?」
頼輝が怪訝な顔をすると、美紅が兄の続きを話した。
「私達は今までいろんな妖かしを倒してきましたが、”魔獣”と戦った経験は実は無いんです。
そこで、私達の武器が魔獣に通用するかがわからなかったので、念の為に専用の武器をお借りしようと思って避難所にいる神官さんに尋ねたんです。
そうしたら、先日神社に保管されてる武器を、境界守りの人のドラ息子がこっそり盗み出してネットオークションで売ってしまったそうで、今は一つもないそうなんです。」
「・・・何だって!!?」
頼輝は予想もしない事態に驚き、険しい顔で席を立った。
「何でも境界守りの武器には”魔石”が埋め込まれているらしいんですけど、それが高値で売れると入れ込んでいる女性に唆されたみたいですよ?
しかもそのドラ息子が変な壺を持って境界の中に入る所を村長さんが見ているんです。」
「・・・壺・・・だって・・・?」
頼輝は席を立ったままで眉間に深く皺を寄せて青ざめ呟いた。
「えぇ。
それを村長さんから聞いた境界守りの人が、血相を変えてその壺を回収しに境界に入ったそうなんです。
そしてその人は境界の中で亡くなってしまった・・・。
頼輝さんは境界守りとしてその壺に何か心当たりは?」
「・・・・・それは父さんから聞いたことのある”瘴気の壺”かもしれない・・・・・。」
頼輝が眉を寄せて呟くように言った。
その言葉にお爺さんがハッ!と反応してから影を落として俯くが、その場の誰も話に集中していて気が付かなかった。
「その名の通り、瘴気を封じ込めた呪いの壺で、一般人が扱える代物じゃないと思うし、その息子さんがどうやってそれを手に入れたかはわからないけど・・・。
”瘴気の壺"を境界内で開け放ってしまったのなら、元から境界内に立ち込めている瘴気に壺の中のものがプラスされて、この境界ではありえない強い魔獣を鬼門から引き寄せてしまう・・・!
そうか・・・だからあの世の中枢から離れたこの境界で黒牛が出たのか・・・!
もしも壺がまだ境界の中で開け放たれたままだったとしたら、黒牛よりも更に強い魔獣が出てきてしまうぞ・・・!
そうなったら俺だけでは手の打ちようがない!
武器を取りに神社に行くついでに家に連絡しようと思ってたけど、そんな時間はない!
すぐに確認しないと・・・!」
頼輝は居ても立っても居られなくて、すぐに境界に向かおうと玄関に向かって走り出した。
「待てよ!」
その腕を兄が掴んで引き止めた。
「武器も無しでどうするんだよ!」
「・・・それはそうですが、でも・・・!」
「・・・焦る気持ちは解りますが先ずは落ち着いて態勢を整えましょう。
武器については、私達のものが魔獣に通用するものであればそれを使えますから。
それを貴方に見てもらいたいのです。
兄さん、あれを出してあげてください。
私のものは私の手から離すことは出来ませんから。」
「あぁ、そうか・・・!
わかった。」
隼人はそう言うと、右手の人差し指の先に黒い宇宙のような小さな空間を作り出した。
それを出した状態で彼が緩やかに円を描くと、その指の軌道に黒い宇宙のような空間が伸びた。
それが始点と終点で繋がると、真ん中の部分も黒い空間として塗り潰された。
(これはアイテムボックス!?
いや、でも彼は魔石無しでそれをやっている・・・。
一体何者なんだ・・・?)
頼輝は境界守りでもなかなか手に入れにくい闇の魔石”アイテムボックス”によく似た彼の不思議な技を凝視した。
隼人はそれを察してか、苦笑いを浮かべて言った。
「・・・まぁ・・・気になるよな?
後で説明するから、まずはこいつを見てくれ。」
彼はそうして出来た直径30㎝くらいの真っ暗な空間に手を差し込むと、一本の刀を取り出した。
その刀はかなり使い古されており、青色の鞘には小さな傷が幾つもあり、鍔には”疾風”と書かれていた。
(あっ、父さんの通称と同じだ・・・。)
頼輝は自分の父”狼谷颯輝”こと通称”疾風の銀狼”の姿を思い浮かべた。
「これは俺が昔使ってた刀なんだが・・・。」
と言って隼人は柄の先についた青い石を見せた。
「この石は俺らが”霊珠”と呼んでいる、妖怪やら悪霊等の霊的存在の心臓部にある核となる不思議な力の結晶体だ。
昔の俺は自分の中にある”力”をうまく引き出せなかったから、こいつを使ってた。
これはお前らの言う所の”魔石”と同質のものか?」
頼輝はそれを隼人から渡された。
「・・・この石に触ってみても?」
「あぁ、いいぜ。」
頼輝がそっとその石に触れて軽く意識を集中すると、フワッと風が巻き上がり、その部屋にいる4人の髪を撫でた。
「凄い・・・!
鎌鼬の持つ風の魔石よりもずっと高濃度な魔石だ・・・!」
隼人が頼輝のその反応を見てニヤリと笑った。
「つーことは、その刀、魔獣に通用しそーだな?」
「はい!
寧ろ、俺が普段使ってる刀より強力だと思います!
魔獣はあの世で生まれた普通の動物と魔法の力の融合体なんです。
普通の武器でもあいつらの身体を傷付けることは出来るけど、心臓部には魔石があるためか他の部分より魔法による防御壁が厚く、傷を付ける事すら出来ない・・・。
あいつらに止めを刺すには、その防御壁を唯一打ち破れる力・・・魔法が必要なんです。
だから境界守りの武器には魔法の力を秘めた魔石が埋め込まれています。
この刀なら魔法の力が籠められるから、あいつらに止めを刺すことが出来ます・・・!」
頼輝の瞳が希望に満ちて輝いた。
「そうか。
魔石から生み出される魔法と霊珠から放つ術が同質のものっていうなら、俺と美紅の武器も通用するな!」
「えぇ・・・!」
隼人と美紅は顔を見合わせて頷いた。
そして隼人は頼輝に向き直ると真面目な顔をして口を開いた。
「頼輝、”疾風”の霊珠に触れるだけで風が起こせるなら、お前には風の資質があるってことだ。
だから・・・そいつをお前にやる。」
「えっ・・・!?でも・・・・・。」
頼輝は唇を引き結び、隼人を見た。
「いいんだよ。
どうせ俺はその刀をもう使えないんだ。」
と言って、彼は掌から炎を出した。
その目が炎のように赤く輝く。
そして、隼人の頭部には短い犬のような耳が、臀部にはふさふさの尻尾が生えた。
「俺は風の力より炎の力を選んだんだ。
今の俺がそいつを握っても、風を起こすことすら出来ない何の変哲もないナマクラなんだよ。
ただ捨てられなくて持っていただけだから、お前が使ってくれよ。」
頼輝は隼人の炎のように煌めく不思議な赤い瞳を暫く見つめた後、ゆっくりと頷いた。
「・・・・・わかりました。
ありがとうございます。
俺が貰って良いのなら、有難く使わせて頂きます。」
と言って刀を腰に刺そうとするが、今は寝間着のままで刀を納めるベルトが無いことに気がついて手が宙を描いた。
「ははっ!
刀納められねーのも不便だし、その装備、寝間着だよな?
靴も履いてねーし。
これから戦いに行くのに危ねーから俺の予備の服とブーツを貸してやるよ。
服は少しデカいかもしれねーけど、お前中坊にしちゃ体格いいからまぁ着れるだろ。
ブーツは紐である程度調整出来るしよ。
あ、こっちは戦いが終わったら返せよ?」
と言って、彼はまた黒い空間を作り出すと中から替えの学ランと帷子とブーツを出した。
「もう高校を卒業して着る必要ないのに、いつまでも学生気分が抜けきれずに着ているだけなんですから、服も疾風と一緒にあげればいいじゃないですか・・・。」
と美紅が突っ込むと、
「うるせー!気に入ってんだよ!
それに学生に見えるほうが何かと都合がいいだろ!?」
と隼人は美紅に軽く牙を剥いた。
(隼人さん、もう高校卒業してたのに学ラン着てたんだ・・・。)
と頼輝は苦笑いしながらそれを受け取った。
「あ、ありがとうございます・・・。
でも・・・・・この刀といい、不思議な力といい・・・貴方達は一体・・・?」
頼輝はそう言って彼等に尋ねた。
「あぁ・・・。
俺と美紅は半妖・・・人間と妖怪のハーフなんだよ。」
彼がそう言い隣の妹に視線を送ると、彼女は頷き目を閉じた。
すると、美紅の頭部にも猫のような耳が現れ、スカートの下からは黒くて長い猫のような尻尾がシュルっと生えた。
「ま、こんな感じでこの耳と尻尾があるのが俺達のデフォルトなんだが、目立つから人前に出るときは霊力・・・お前らの言う所の魔法の力な。
それで隠してるんだよ。
まぁ、半妖で獣の特徴持ちの奴はみんなこうやって隠すから表には出ねーけど、俺達みたいな混ざりものもこの世には一定数いるんだよ。
この世界ではどうなのかはわかんねーけどな。
さっきみたいに空間から物を取り出せるのも火を出せるのも、半妖だからなせる技っつーか、俺の体の中に存在する霊珠を使って出してるんだ。」
「えっ・・・!?
半妖!?
っていうか、隼人さんは犬で、美紅さんは猫!?
二人って兄妹では・・・??
それにこの世界ではって・・・!?」
色々と処理仕切れない情報か飛び込んで来て、頼輝が疑問符を沢山浮かべながら同意を求めてお爺さんを見ると、お爺さんも同じ心境なのか困ったように笑っていた。
「あぁ~・・・俺らは親同士の再婚で兄妹になったけど、血の繋がりは無いんだよ。
それに、別世界の住人でもある。
この世界の鬼門を調査しろって上の命令でこっちに来てるイレギュラーな存在なんだが・・・これ、他の奴らにはナイショな?
周りに知られると仕事やりにくくなるから。
頼輝と爺さんを信用したから打ち明けたんだ。」
頼輝はお爺さんと顔を見合わせてから互いに頷き、再び神崎兄妹の方へ向き直ると優しく微笑み答えた。
「・・・はい、わかっています。」
「サンキュー!
さて、これで戦える準備は整った!
後は頼輝がさっき渡した俺の服に着替えれば・・・っと、こいつを忘れてた。」
と隼人は言いかけて何かを思い出したのか、ポケットの中を探った。
「あ、あった。
これ、お前のものだから渡しておく。」
隼人はポケットから石を幾つか取り出して頼輝に渡した。
「俺のもの?」
頼輝が首を傾げた。
「あぁ。
さっき魔獣の死骸を処理してるとき、お前が倒した黒い牛の心臓を切り開いて霊珠があるかを調べてみたらこいつが出てきたんだよ。
これって魔石だろ?」
全部で7個ある魔石は殆どがありふれた闇と力の魔石だったが、その中に一際小さく深い黒色をした珍しい魔石が一つ混じっていた。
頼輝はそれを指で摘むと目を輝かせて声を上げた。
「これ、アイテムボックスだ!!」
「えっ?レアな魔石なのか?」
「はい!
闇属性の魔獣が持ってる魔石の中でも極めて珍しく貴重なもので、境界守りの中でも俺の父さんと兄貴くらいしか持ってる人を見たことが無いです!
これ、さっきの隼人さんみたいに、アイテムを収納したり出し入れしたり出来る空間を生み出す力があるんですよ。」
と言って頼輝はその魔石に触れて指先に黒い軌道を作り出すと、緩やかに円を描いて小さな空間を生み出して見せた。
「あ、マジだ。」
神崎兄妹が目を見開いて驚いた。
「これで狩った魔獣も綺麗に残さず持ち帰れる・・・!
でもホントに俺が貰って良いんですか?
取り出したのは隼人さんなのに。」
「いいに決まってるだろ?
お前が倒した魔獣なんだし、俺は既に持ってる力だから必要ねーし。
じゃ、頼輝は早く着替えて来いよ。
女がいると着替えづらいだろーから、美紅連れて先に行ってるから!」
隼人はそう言うと頼輝に背中を向けて美紅に行くぞ、と声をかけた。
「いいのかな・・・これ500万くらいで売れるのに・・・。」
頼輝がポソッとそう言うのを聞いて、隼人は「マジで!」と叫んで名残惜しそうに頼輝を振り返った。
「は、はい・・・そうですけど・・・。
やっぱり返しましょうか?」
頼輝が寝間着のトップスにかけた手を止めてそう返した。
「い、いや・・・・・!
お前のものだからお前が持ってろ!
美紅、行くぞ!」
隼人は500万円を振り払うかのように首をブンブンと強く振って妹を連れて玄関へと向かった。
「ふふふ、兄さんったら、そんな高価なものだと事前に知っていればネコババしましたか?」
「いや・・・ど、どうかな・・・。
でも500万もあれば俺の愛車もかなりカスタマイズ出来るし、新居の頭金も・・・。」
等とブツブツ言っている隼人の背を美紅がぽんぽんと叩いて微笑んだ。
「どうせ無理なんでしょ?
だから万年金欠なんですよ。
でも、そんな所も好きですけどね・・・。」
二人がそんなことを言いながらログハウスから出て行くのを見て、お爺さんがクツクツと笑いながら軟膏を棚から取り出し、頼輝に手渡した。
「これを持って行きなさい。
僕の作る傷薬の中でも1番即効性が高いものだから、役立つと思うよ。」
「ありがとうございます!」
「それと、腹部の傷はしっかりと縫っておいたから余程のことがない限りは開くことは無いとは思うけど、左側を捻る動きは極力避けなさい。」
「はい、わかりました・・・!」
「それから・・・・・。」
お爺さんは眉間に皺を寄せ、低く抑えた声で続けた。
「瘴気の壺を見つけたなら、決して触れないようにしなさい・・・。
君は境界守りだから他の人よりは影響を受けにくいと思うけど、あれは人を狂わすとても危険な代物だから。
壺に蓋をするときは、蓋だけを持って壺の真上からそっと落とすようにしなさい。
そして壺を持ち帰るときにはさっきのアイテムボックスだったかな?
その軌道で壺の周りを囲って触れないようにして入れてしまうといい。
昔あれを持ち帰った境界守りはそうしていたから。
そして、持ち帰った後は君の知る中で1番信頼のおける経験豊富な境界守りに全てを託しなさい。」
「えっ・・・お爺さん、瘴気の壺を知っているんですか?」
「・・・・・あぁ。
僕も昔騙された口だから・・・。
ゴメンね。
今はこれ以上は言えないけれど・・・・・。」
『でも、あのイレギュラーな兄妹と頼輝君が来てくれたお陰で、今回ばかりは君の思い通りには行かないようだね・・・・・ざまぁみろ・・・。』
お爺さんは最後の方は頼輝にも聞き取れない位小さな声で呟いた。
頼輝はお爺さんの様子から何か深い事情があるのだろうと察し、今は追求しないでおくことにした。
「・・・ありがとうございます。
瘴気の壺の扱いには重々気をつけます・・・。」
頼輝そう言うと、お爺さんが頷いた。
「うん。
君たちの無事を祈りながら僕はここで待っているよ。
どうか気をつけて。」
「・・・ありがとうございます。
行ってきます!」
頼輝はお爺さんに頭を下げると、学ランに袖を通してログハウスを後にするのだった。
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