銀色狼と空駒鳥のつがい ~境界の守り人~

彩田和花

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中学生編

7羽 指切り ─君を一人にはさせない─

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璃音りねの心情を表すかのように降り出した雨の中、桜駒鳥の薬屋にて真璃まるの通夜式が行われた。
真璃は森中村の皆に慕われていたことから、多くの村人が薬屋へ真璃との別れに訪れた。
璃音はセーラー服を身に纏い、頼輝らいきの母すみれに付き添われながら、訪れた人々に頭を下げていた。

そして、その翌日の告別式の日─。
生前の真璃と親しかった人々が次々と集まる中、60代くらいの歳の割に派手な雰囲気をした女が璃音に声をかけた。
「この度はご愁傷様です。
・・・貴方、璃音ちゃんよね?」
璃音は顔を上げた。
「私、京都の加納かのう正子まさこです。」
その名前を聴いた頼輝は眉間に皺を寄せ、凝視した。
(父さんと母さんはこの人には連絡をしなかった筈だ・・・。
何故告別式に来た!?)
頼輝は巌しい顔で正子を警戒して見ていたが、何も事情を知らない璃音は泣き腫らした顔で、丁寧に正子に対して頭を下げた。
「・・・加納様・・・。
曾祖母のお知り合いの方ですか?
京都から態々足を運んで下さり、ありがとうございます。」
そんな璃音に対し、正子は冷たい視線を投げかけ、口を開いた。
「・・・呆れた。
あの人ったら、私のことを貴方に何ひとつ話していなかったのね!?
私、貴方の祖母に当たります。
貴方のお父さんの実母で、ちゃんとした血の繋がりもあるのですよ。」
正子の言葉に璃音は「えっ・・・」と戸惑い眉を寄せた。
「・・・故人の遺志もあり、真璃さんが亡くなったことをまだ貴方には知らせていない筈ですが。」
頼輝の父颯輝そうきが正子の側まで出るとそう告げた。
「えぇ・・・。
でも、この村のとあるに教えてえてもらいましたから。」
正子は颯輝に対して含みのある笑顔で答えると、参列者の中にいる璃音と同じ中学の制服を着た女子生徒達に目を向けた。
その中にいた居宿いすき夜花よはなは、何か後ろめたいことがあるのか焦りを顔に浮かべ、気まずそうに目を逸らして俯いた。
夜花の隣りにいたともえ勝生かつきはそのことに気がついたようでチラッと彼女を見たが、他の生徒達は誰一人として夜花の様子を気に留めなかった。
だが、正子の視線に注視していた頼輝はそのことに気がつき、夜花の瞳にあるダイヤの印も見逃さなかった。
(◆の印!?
何故居宿いすきに?
法璃さんの話では、両目に◆印のある女が鬼女本人であり、心に隙のある人が本人に接触しない限り、◆の印は刻まれない筈だ・・・!
今まであまり居宿のことを気に留めて見たことなんてなかったけど、確か前に話したときには、そんな印は無かった筈だ。
もしかしたら◆の鬼女がこの村に来ているのか・・・・・!?)
頼輝は辺りを警戒して見渡したが、特に変わった様子はなかった。
(さっきの様子からして、居宿が正子・・・いや、いくら警戒すべき相手でも、目上の人を呼び捨てにするのは失礼か・・・。
加納さん・・・と呼ぼう。
居宿が加納さんにばーちゃんが亡くなったことを知らせた・・・!?)
夜花と正子を交互に観察する頼輝の手を、璃音が不安そうに見上げてそっと握った。
(璃音・・・不安だよな・・・。
無理もない・・・。
突然会ったことも、話に訊いたことすらも無い祖母が、招かれてもいない告別式に顔を出したんだ・・・。)
頼輝は璃音を少しでも安心させたくて、その小さな白い手をしっかりと握り返した。
(きっと加納さんは式が終わったら本題を切り出してくる筈だ・・・。
頼みの綱だったばーちゃんの遺言書も、誰かの手により開封され、無効にされてしまった・・・。
だけど、俺は必ず璃音を守り抜いて見せる・・・!
璃音を京都になんかやるものか・・・!!)
頼輝はそう強く決意し、瞳に力を宿した。
そんな頼輝を夜花が複雑そうな顔で見て俯き、呟いた。
「狼谷くん・・・・・。
やっぱりあんなことをしても・・・貴方の気持ちを手に入れられっこない・・・・。
わかってた・・・筈なのに・・・・・。」

告別式が終わり、後は火葬場に行くのみとなった。
火葬場は親族のみで向かうが、他に向かえる親族のいない璃音には、頼輝と頼輝の両親が共に向かう予定だった。
その間留守になる薬屋を、頼輝の兄春輝はるきとそのつがいである洋榎ひろえが番をし、真璃と親しかった法璃の幼馴染である診療所の所長の那須田なすださん、そして森中村の村長さん、頼輝と璃音の担任教師、そして璃音と同級生の全員が(結人と留奈、勝生とヤコブ、そして夜花も)告別式の片付けを手伝うために桜駒鳥の薬屋へと残っていた。
それ以外の参列者達が帰って行った後、霊柩車が来るまでの待ち時間に、案の定正子が頼輝の予測していたことを言い出した。
「璃音ちゃん。
真璃さんの火葬が終わったら、お骨を持って私と一緒に京都に来なさい。
貴方の荷物は後で送ってもらえばいいから。」
「えっ・・・。」
璃音は怪訝な顔をして空色の瞳を揺らした。
すると、颯輝が璃音を庇うように前に出て、正子に告げた。
「加納さん、それは貴方が決めることではない筈だ。
貴方は璃音ちゃんの血縁かもしれないが、後のことは真璃さんの遺言で私に託されています。
告別式ももう終わりましたから、貴方は京都にお帰りになってくださって結構です。」
「遺言?
この遺言書のことですか?
これに何が書かれていたとしても、開封されているのなら無効でしょう?」
そう言って正子は封の開いた遺言書の入った封筒で、ひらひらと顔を扇いで見せた。
璃音はその封筒を正子からバッ!と取り返し、その胸元に大事そうに抱え込んで震える声で言った。
「おばあちゃんが・・・私のために書いてくれたものを・・・触らないで・・・!」
夜花はその封筒に何か後ろめたいことがあるのか、顔色をみるみる青く染めると、逃げるように、その場から走って帰ってしまった。
「お、おい居宿、どうした・・・!?
勝手に帰るな・・・!」
担任教師が驚き声を上げた。
頼輝は今の夜花の反応から、遺言書の封を開けたのは彼女であると確信した。
本来であれば夜花を追いかけてその事を問い正すべきなのだろうが、今この状況で璃音をとても放ってはおけないので、ひっく・・・ひっく・・・と嗚咽を零す璃音をそっと抱きしめた。
そうしている間にも正子と颯輝が火花を散らしていた。
「私の妻がこの遺言書を真璃さんと共に役場に届けに行き、保証されたのを見届けています。
それを誰かが真璃さんの亡き後に開封したのだろうが、書かれている内容はここに残っているとおりです。
私達はこの遺言書が公的に保証されるものでなくなったとしても、故人の遺志、そして璃音ちゃんの意志を、尊重すべきでしょう?
貴方が親権を辞退すれば、丸く収まる筈だ。」
「あら?
ただの紙切れも同然となった遺言書に従うなんて馬鹿馬鹿しいこと、私は致しませんよ・・・!
それに、璃音ちゃんの意志と言いますけど、この子はまだまだ子供で感情に囚われやすく、生きていくために必要な冷静な判断が出来ません。
貯蓄だって、全て璃音ちゃんへやると遺言書には書いてありますけど、子供ではお金の使い道も正しく判断できないのですから、璃音ちゃんが成人するまではきちんと大人がしてあげるべきです!」
(管理だと・・・!?
自分の好きに使う気だろうが・・・!)
頼輝はギリッと歯を食い縛った。
「そもそも、子供の意志がどうであろうと、この国の法律では、血の繋がりのないご近所の境界守りの方より、血の繋がりのある私のほうに親権が譲渡されるようになっているのですよ?
の貴方がどう言われようと、私、火葬が終わりましたら、今夜の新幹線で璃音ちゃんを連れて京都に帰ります!
この後の火葬場へも、である私が付き添いますから、狼谷家かみたにけの方はもう帰って頂いて結構ですよ?
璃音ちゃん、こちらにいらっしゃい。」
正子はそう言って璃音の手を引こうとしたが、璃音は頼輝の胸元にしっかりしがみついて離れない。
「いや!
私、京都になんか行かないわ!
森中村を離れないから!!」
頼輝は怒りに震える璃音を守るようにギュッと強く抱きしめると、鋭い瞳で正子を睨み、言った。
「璃音もそう言っていますし、俺も俺の家族もここに居る者皆、璃音の味方です。
貴方の元に行かせるつもりはありません。
帰ってください。」
「・・・何よ・・・さっきから貴方、うちの孫にベタベタして穢らわしいったらありゃしない・・・!
幼馴染だか彼氏だか知りませんけどね?
この子は京都の名家の嫁にやるんですよ!
貴方みたいな虫を付ける訳にはいかないの!
早く離れて頂戴!!」
正子が強引に頼輝を押し退けようとするが、頼輝は表情一つ変えず、ピクリとも動かない。
「私、貴方が決めた相手なんて絶対に嫌!
私には・・・もう心に決めた人がいるの!!
その人とつがいになれるかは、まだわからないけれど・・・。」
そう言って、璃音は頼輝を見上げて頬を染めた。
「璃音・・・・・。」
頼輝も頬を染め、璃音に優しい眼差しを向けた。
二人はそのまま少しの間見つめ合うと、気恥ずかしくなって目を逸らして俯いた。
正子はその様子に苛ついて大人気なく地団駄じだんだを踏んだ後、眉間により一層深く皺を刻み、腕を組んで指先で苛立たし気にリズムを刻みながら言った。
「璃音ちゃん・・・冷静になってお考えなさいな。
その縁談、貴方にとってはまたとない良いお話なのよ?
確かに貴方の幼馴染くん・・・目付きはキツイけど、かなり男前ね!
貴方が離れたくないのも頷けるわ・・・!
だけど、境界守りだなんて・・・世の中に必要な仕事だとは思うけれど、所詮しょせん汚れ仕事じゃない!
一方、貴方の許嫁候補の彼は、昔から日本を支えてきた武家、剣持家けんもつけの坊っちゃんなのよ!
見た目だってとっても素敵で、お母様がフランス人とかで本物の金髪碧眼で、王子様みたいに綺麗な顔をしているの!
しかも、剣道大会で日本一になるくらい強いのよ!?
そんな彼に地域の交流会で出会って、東京に最上さいじょう璃音りねという名前の貴方と同い年の孫がいると話したら、すごく興味を持ってくれてね!
貴方のことをもっと詳しく知りたいっていうの!
でも・・・私、真璃さんに貴方に会わせて貰えないものだから、仕方なく探偵に貴方の調査を依頼して、彼に貴方のことを教えてあげたの!
そしたら貴方と将来結婚したいって言ってくれたのよ!」
(胡散臭い話だな・・・・。
そいつ、璃音の見た目を気に入ったとか、そんな単純な話ではなさそうだな・・・。
一体何が目的なんだ?
つか、勝手に璃音のことを調べやがって・・・。)
頼輝は腹立たしさのあまり、正子を物凄い形相で睨みながら舌打ちした。
「璃音ちゃん!
貴方、彼と結婚したら、名家の仲間入りが出来るのよ!?
ほら、見てご覧なさい!
こんなに素敵な人なのよ!」
そう言って正子は一枚の写真を璃音に見せた。
そこには頼輝達と同級生くらいのキラキラスマイルの剣道着姿の金髪碧眼の美少年が写っていた。
「こんな野蛮な境界守りの彼なんかより、ずっと将来有望で、お金にも困らず幸せにっ・・・」
璃音は正子が最後まで言い切らないうちに、その写真を力強く突き返した。
「そんなのどうだっていい!!
お婆ちゃんはもう・・・天国に行ってしまったけれど・・・・・
私はこの森中村で、頼輝と、留奈と、洋榎さんと、頼輝の家族の人達と、那須田さんと・・・大好きな人達みんなに囲まれて、自分の意志で色んなことを決めて、うんと素敵な恋をして、大人になっていきたいの!!
貴方なんて、お婆ちゃんが生きているときに一度も私に会いにも来なかった癖に、急に現れて保護者面しないでよ!!
帰って・・・!
今すぐ京都へ帰ってよ・・・!!」
璃音はキッ!と強く正子を睨んで叫ぶようにそう告げた。
「・・・貴方・・・大人しそうに見えたけど、あのババアに育てられただけあって、気が強くてとても頑固なのね・・・。
だけど、貴方がどれだけそれを望んで駄々を捏ねたって、仕方がないのよ?
貴方の血縁は私だけ。
少なくとも貴方が成人するまでは、私の保護下に来るしかないの。
それなら残された血縁同士、仲良くやっていくほうが、互いのためではないかしら?」
璃音はそれでも正子を拒絶し、涙を散らしながら強く首を降リ続けた。
頼輝は璃音を抱いたまま、低く落ち着いた声で正子に向けて言った。
「・・・・・貴方は先程血の繋がりのない俺の父より、血の繋がりのある貴方のほうに親権がある、璃音の血縁は私だけだと言いましたね?
でも、璃音にはお爺さんがいるはずです。
あなたの元夫である法璃のりあきさんが・・・。」
告別式の片付けを手伝っていた診療所の那須田さんが、頼輝の口から出た法璃という名前にハッとして顔を上げた。
「もし・・・もしもですが・・・。
この場に法璃さんがいて、璃音の親権を申し出たのなら、彼は貴方と対等の権利を持つ筈ですよね・・・?」
頼輝はわざと法璃の所在に自信がなさそうな口調でそう言ってみせた。
「ふんっ、あのババア・・・貴方に法璃のことまで話していたのね・・・。
確かに、親権はあの人にも私と同じくあるけれど・・・どこに居るのか、生きているのかさえわからないのよ?
あの人がくれた慰謝料が足りなくなったときとか、息子夫婦が事故死して産まれてばかりの璃音の養育を押し付けられそうになったときとか・・・他にも時々居場所を知りたいときがあったから、その都度探偵を使ってあの人の行方を探させたけど、それでも見つからなかったのよ?
そんな人、いないも同然だわ!
でも・・・そうね。
もし私の帰る時間・・・今夜20時までに、あの人をここに連れてこれたなら・・・いいわ。
親権を法璃に譲って、私は璃音を諦めて、一人で京都に帰ってあげる・・・!
その代わり、時間までに貴方があの人を連れて戻れなかったら・・・璃音は今夜京都へ連れて行くわよ?」
正子は勝ち誇ったかのようにそう笑ってみせた。
だが、頼輝はその言葉を待っていたと言わんばかりにニヤリと口角を上げ、瞳をギラリと光らせると頷いた。
「・・・・・わかりました。
加納さんが帰る時間までに法璃さんをここに連れて来ます。」
「!」
正子は頼輝の意外な反応に驚き、眉を寄せた。
「・・・到底見つかりっこない相手を残り5時間で連れてこいって言ってるのよ!?
それなのに何よその顔!!
まさか・・・あの人の居場所に心当たりでもあるというの?
いえ・・・有りえないわ・・・!
・・・さっきも言ったけれど、あれだけ探しても見つからなかった人なのよ!?
仮に見つかったとして、あの人、過去に悪い女にそそのかされて、親身になってくれた幼馴染を酷い言葉で傷つけた挙げ句、女との仲を反対した父親を逆上して殺しかけたんでしょう?
酷く酔ったときに、私をあのババアと勘違いしてか、馬鹿みたいに泣いて許しを請うていたわ・・・。
”僕はあのときどうかしていた・・・!
父さんを巻き込むつもりはなかったんだ・・・!
母さん、許してくれ!”
ってね。
もうもこの世に居なくなったのに、そんな後ろめたい故郷へあの根性なしが戻って来れる訳が無いわよ!
まぁ、顔立ちは整っていたし、医者だから将来有望だと思って結婚してあげたのに、どこの病院でも長続きしないし、出世する気が全く無い・・・。
飛んだ読み間違いよ・・・!
あんな陰気な甲斐性なし、早々に別れて正解だったわ!」
法璃を侮辱する言葉を次々に吐く正子に頼輝は怒りを覚えるが、相手が女性だけに殴るわけにもいかず、拳をグッと握り込み、じっと耐えていた。
すると、診療所の那須田さんがツカツカとこちらへ歩み寄ってきて、正子のそのつらを思い切りグーで殴りつけた!
一同は驚いて目を見開いた。
「あらぁ、ごめんなさい!
あんまり私の幼馴染のことを侮辱するもんだからさ、ついつい手が出ちまったわ!」
唖然とする正子の鼻から一筋の鼻血がたらーっと垂れた。
「いや、手っつっても平手じゃなくてグーパンじゃねぇか・・・。
流石那須田のばーちゃん・・・おっかねぇ・・・。」
そう春輝が引き攣り、苦笑いした。
「うるさいね!春坊!
安心おし?
うちは診療所をやってるから、手厚く手当てしてやるよ。
来な!京都の女狐が!」
「ちょっ、私はこれから火葬場にっ・・・!」
「そんなのは狼谷んとこに任せときな。
真璃さんもアンタなんかに骨を拾われたかないだろうからね。」
那須田さんはそう言いながら正子を強引に引っ張って行く。
そして、少し進んでから振り返ると、頼輝に言った。
「頼坊・・・。
もしも法璃に会えたなら・・・アンタが昔ワタシに言ったこと、1杯奢ってくれたら許してやるって言っておいてよ。
よろしく頼むね・・・。」
「うん・・・わかってる。」
頼輝が深く頷くと、那須田さんはニッと歯を見せて笑った。
「さあ、さっさと来な!
女狐!!」
「い、痛っ!
強く引っ張らないで下さる!?
いいですか!?
私、20時には村を出て駅に向かいますから!
それまでに法璃を連れてこれなかったら、璃音を連れていきますからね!!」
那須田さんはまだ何か文句を言っている正子を自分の診療所の方向へズルズルと引っ張って行った。

二人が居なくなった後、璃音が不安気に表情を曇らせ、頼輝をそっと見上げた。
「頼輝・・・・・・。」
頼輝は璃音の肩に手を当てると、真っすぐに彼女を見つめて言った。
「・・・璃音。
俺、今から璃音のお爺さん・・・法璃さんを連れてくる。
だから・・・火葬が終わったら、俺の家で待っていてくれるか?」
璃音が泣きそうな顔になり、激しく首を左右に振った。
「で、でも、私のおじいちゃん、どこに居るのかもわからないんだよね?
それに、今夜20時までだなんて・・・もう15時を回ってるのに、あと、5時間弱しなかいよ!
そんなのどう考えたって無茶だよ!!
頼輝・・・・・私、おばあちゃんを失ったけれど・・・・・それでも、頼輝が側にいてくれるなら、きっと前を向いて生きていけると思った・・・・・。
それなのに、それなのに・・・京都になんて連れていかれたら・・・私、どうやって生きていけばいいの!?
嫌・・・嫌だよ・・・・・
もう一時ひとときだって、離れたくないのに・・・・・・・うっ・・・・・ひっく・・・・・」
璃音は顔を両手で覆って泣き崩れてしまった。
頼輝は璃音をギュッと抱きしめ、優しく宥めるように言った。
「璃音・・・大丈夫だよ。
璃音の傍にこれからもずっといられるように、俺、必ず法璃さんを連れて時間までに戻ってくると約束する。
俺を信じて・・・?」
「・・・・・頼輝・・・・・・
信じたい・・・信じたいけど・・・!
もし、これが最後の別れになってしまったら・・・・・私っ・・・・・・」
璃音はどうしても頷けなくて、涙を散らしながら首を振り続けた。
頼輝は少しの間考えてから、学ランの内ポケットから空駒鳥の髪飾りを取り出し、璃音にそっと手渡した。
「璃音・・・・・。
これ、璃音に作ったんだ・・・・・。
一日遅れになったけど、14歳の誕生日プレゼント・・・・・。
受け取ってくれるか・・・・・?」
璃音は、目を見開いてそれを見た。
丁寧に彫り込まれた木工細工の空駒鳥には、青と黄色で丁寧に色が付けられ、足元には空色のビーズが揺れていた。
「・・・空駒鳥の髪飾り・・・・・
可愛い・・・・・・・!
頼輝が、作ってくれたんだ・・・。」
「うん・・・・・。
髪飾りには、狼谷家に代々伝わる習わしがあってさ。
好きな子に、つがいを申し込むときに渡すものなんだ。」
「・・・・・・!!!」
璃音はその言葉の意味を理解して、見る見るうちに真っ赤に頬を染めていく。
その場にいる者は皆、目の前の二人のやり取りに息を飲み、ただ祈るように見守っていた。
「・・・璃音・・・。
帰ってきたら、ちゃんと告白する。
だから・・・・・この髪飾りを俺だと思って・・・俺を信じて・・・待ってて・・・・・?」
「・・・・・うん・・・・・」
璃音は、大事そうに空駒鳥の髪飾りを胸に抱くと、柔らかく微笑んでゆっくりと頷いた。
「母さん・・・。
火葬が終わったら、俺が帰るまで璃音についていてあげてくれないか?」
「えぇ、任せて。」
菫が璃音の肩に手を置き頷いた。
「あの・・・おばさん!
私も・・・狼谷くんが戻るまで、璃音の側にいさせてください・・・!」
留奈が璃音に駆け寄ってそう言った。
「ええ、花井さんは頼輝の代わりに火葬場にも一緒に来てくれるかしら?
その後うちで頼輝を待ちましょう。」
「はい・・・!
お母さんにそのことを連絡しておきます!」
留奈はそう言うと母親に連絡するためスマホを取り出した。
「花井さん、ありがとう。」
頼輝が留奈に頭を下げた。
「ううん・・・!
狼谷くん・・・璃音のために、必ず帰って来て・・・!」
「うん、わかってる。」
頼輝はそう言って頷いた。
「頼輝、あたしも薬屋の番が終わったら戸締まりをして、春輝と一緒にあんたの家で待ってる。
あの京都のお婆さんが璃音を迎えに来ても、あんたが戻るまでは絶対に連れて行かせないから!」
洋榎が頼もしい笑顔でそう言った。
「うん、ありがとう、洋榎姉さん。」
頼輝は洋榎に礼を言った後、拳をグッと握り気合を入れた。
(あとは、北海道へ飛ぶだけだ!
そのためには・・・)
頼輝は親友である本多結人の近くに行くと、女子達に聞こえないように小声で彼に尋ねた。
『・・・結人、昨日学校で話した絵、出来てるか?』
『お?勿論出来てるぜ!
昨日真璃ばーちゃんが亡くなったって訊いて、そんな時にエロいの描くなんてどうかと思ったけどよ・・・。
俺にできることってそれくらいだし、委員長がお前に必要だって言うなら、きっと何か意味があるんだろうって本気で仕上げたんだ!
で、既にお前とのメッセージに高解像度でアップしてある!』
『マジで!
ありがとう!』
頼輝は結人とクロス当てを交わし、スマホを取り出して結人とのメッセージ画面を開いた。
すると、そこには頼輝の希望通りの璃音の絵が2枚既にあげられており、サムネイルだけでも相当えげつないイラストであることが見て取れた。
頼輝はボボッ!と真っ赤になると、慌ててスマホのメッセージ画面を閉じた。
しかし、それを横からさっと盗み見していた春輝が割って入った。
「おおっ、流石結人・・・GJグッジョブ!」
「へへっ!
春輝にーさんに褒められるなんて光栄っす!」
クロス当てを交わす二人。
「だが・・・折角いいおかずがあっても、頼輝はそーいうとこは繊細だからな・・・。
状況がどうあっても行為に没頭できる程のが必要か・・・。
よし・・・。」
春輝はそう呟くと、菫と洋榎、留奈と一緒にいる璃音のところに行き、璃音にだけ聴こえるように何かをコソコソと耳打ちした。
すると、璃音は瞬時に真っ赤になって頭から湯気を立ち昇らせ、顎に手を当て少しの間考えた後、自宅のトイレへと一人で駆け込んで行った。
「璃音・・・?」
留奈が不思議そうに小首を傾げた。
洋榎は春輝が璃音に何を言ったのか見当がついたらしく、呆れたように頭を抱えていた。
トイレに行った璃音は真っ赤な顔のままで戻ってくると、頼輝の傍まで駆け寄って、学ランのポケットにハンカチに包まれた何かをぐいっと突っ込んだ。
「えっ・・・何だ?」
頼輝はそれが何なのかを取り出して確認しようとポケットに手を入れた。
すると、璃音が火が着きそうなくらい顔を赤く染めて、ガシッと頼輝の手を全力で止めて首を強く左右に振りながら言った。
「みみみみ・・・見たりしたらっ・・・絶っ対っ・・・駄目だからねっ!!!」
だが既に頼輝の指先は璃音によりポケットに入れられた物に触れており、指先から伝わる感触は妙に生暖かくて柔らかく、璃音の酷く恥じらった様子も相まって、頼輝にもそれが何であるかわかってしまった。
(これってまさか・・・・・
璃音が・・・さっきまで履いていた・・・パ、パ、パンツかーーーーー!?)
頼輝の鼓動がドッキーーーン!と強く跳ね上がり、人前なのにも関わらず、ビクン!と股間が反応し、脈打ってしまった。
(うっ・・・!やべっ・・・!)
そして、璃音は下半身を心もとなさそうにそわそわさせながら、蚊の鳴くような小さな声で頼輝に言った。
「こ、こ、こんなものが本当に頼輝のお守りになるのかわからないけど・・・・・。
頼輝に時間までに必ず帰ってきて欲しいから・・・・・こ、これも一緒に持って行って・・・・・・・。
でも・・・お気に入りのだから・・・ちゃんと返してね・・・・・。
約束・・・・・・・・・」
そう言って真っ赤に顔を染めた璃音が小指を差し出した。
「・・・・・うん。
約束する。」
頼輝はその小指に自分の小指を絡め、微笑んだ。

「春雷の銀狼・・・流石狼谷くんのお兄さんですね・・・。
本多くんの絵の力は凄いですが、それだけでは少し不安があった・・・。
それを、僕が何か言うまでもなく、勘だけで弟に必要なものを判断し、最上さんから手渡させてしまうだなんて・・・。」
指切りを交わす二人を見ながら勝生がそう呟いた。
「えっ、えっ、えっ、最上、頼輝に何を渡したんだぁ!?」
隣りにいるヤコブが疑問符を沢山飛ばしながら首を捻っていた。
「屋古くんが森中様に邪な気持ちを抱いているうちは、永遠に手に入れることのできないですよ?」
「はぁ!?
なんだってぇ!?」
勝生とヤコブのやり取りが可笑しくて、皆がアハハ!と笑った。 
そこで、渋滞で遅れていた霊柩車がようやく到着した。
「あっ・・・霊柩車が来た。
私もそろそろ火葬場に向かう準備をしなくちゃ。」
璃音は霊柩車を見ながらそう言うと、もう一度頼輝に向き直る。
璃音の綺麗な黒髪をそよ風がさわさわとなびかせた。
「頼輝・・・・・。
帰ってきたらちゃんと告白するって言ってくれたから・・・。
私・・・髪飾りをまだ付けないで待ってる・・・・・。
だから・・・・・約束・・・忘れないで・・・・・。
今夜20時・・・私に・・・この髪飾りをつけてください・・・・・。」
璃音は頬を赤く染めてはにかみながら一言一言丁寧に言葉を紡いだ。
「・・・うん・・・必ず。」
頼輝は璃音の頬に手を当て、柔らかく微笑み頷くと、その手をそっと下ろし、言った。
「・・・それじゃ、行ってきます・・・!」
璃音は胸元の髪飾りをぎゅっと握り締めてから笑顔を作り、頷いた。
「うん・・・行ってらっしゃい・・・!」
頼輝は笑顔で手を振り、境界の森へと向かって駆けていく。
「あれっ・・・そっち、駅じゃないよ・・・?」
璃音が頼輝に手を振りながら首を傾げていると、洋榎がコソッと耳打ちした。
『璃音・・・!
火葬場に向かう前に下、急いで穿いておいで・・・!』
「あっ・・・!」
璃音は自分が今下着を身に着けていないことを思い出し、真っ赤になって洋榎に頭を下げ、自分の部屋へと駆け上がって行った。
「・・・なぁヒロ。
璃音、頼輝に帰ってきたらパンツ返してとか言ってたけど、多分あれ返ってこねーから、今度ヒロからテキトーに新しいのプレゼントしてやって?
その金、俺が出すから。」
春輝がニヤリと笑ってそう言った。
「えっ・・・なんで返って来ないのよ?」
「ん?
そりゃ、白濁液まみれになったパンツなんて本人に返せねーだろ?」
「・・・いや、あんたじゃないんだから、頼輝はそんなことしないでしょ・・・。」
「いや、するね。
あいつ、俺の弟だぜ?
好きな女の匂いのついたパンツなんかムラムラしないわけ無いじゃん。
俺、今でも持ってるぜ?
ヒロが中学の頃のガキっぽいパンツ♥」
「・・・・・あんたとつがいになる前の中学の時、プールの授業の後あたしのパンツが何度か消えたことがあった・・・・・。
その数日後に必ず新品のやたらセクシーなパンツが机の中に入ってて気味が悪かったんだけど・・・それってあんたの仕業だったのね・・・・・!?」
「流石小鹿ちゃん!
ご明察☆」
洋榎は躊躇なく鋭い切れ味の回し蹴りを繰り出し、それを春輝はすんでのところでかわした。
「あっぶねー・・・!」
春輝が冷や汗をかいていると、その後ろで留奈が不安気に胸に手を当てて呟いた。
「狼谷くん・・・ちゃんとお爺さんを連れて時間までに帰ってこれるかな・・・。」
それに対して結人が答えた。
「大丈夫だって留奈ちゃん。
あいつ、昔から出来ない約束はしないんだ。
俺には良くわからねーけど、あいつなりに何か勝算があるんだと思うぜ?」
それを聞いていた春輝が後ろの二人を振り返って言った。
「あぁ!
きっと今頃、恐ろしく冷静に状況を分析して、璃音のじーさんを確実に連れてくる方法を導き出してるぜ・・・・?」

兄の予測通り、狼谷かみたに頼輝らいきは西の境界の森で、生け捕りにした角イノシシをロープで繋いだ状態で木の枝にしゃがみ込み、思考していた。
(今回は自分一人でただ行って帰ってくるだけじゃない。
帰りは法璃さんを連れて帰らなければならないんだ。
まず、自分以外の人を運べるのかどうか・・・それを試す必要がある。)
頼輝は足元の角イノシシと繋がった自分の左手に巻き付けたロープを確認した。
(初めて俺が空を飛んだ時、結人の原稿を手に持ったまま北海道までたどり着いた。
それを考えると、射精の瞬間俺が手に持っているものや身に着けているものは一緒に飛ぶことが出来るんだ。
それなら、ロープで繋いだこの角イノシシと一緒に北海道まで飛べるか試してみる・・・!
角イノシシが連れていけるなら、きっと法璃さんも大丈夫だ。)
頼輝はそう決意すると、頬を染めて学ランのポケットの中からを取り出した。
それはハンカチに包まれていたので、頼輝はその薄い布をを開き、中身を取り出した。
既に時間が経過したため暖かくはなくなっていたが、白くて柔らかい控えめにフリルの入った小さな三角の布・・・紛れもなく、大好きな女の子が自分の為に真っ赤に羞恥しながら授けてくれた使用済みのパンツだった。
頼輝はごくっと生唾を飲み込むと、角イノシシが木の下でジタバタしている音をBGMにしながら、そのパンツをそっ・・・と、鼻に当てた。
(っ・・・甘くて・・・柔らかいにおいがする・・・・・。
璃音・・・璃音・・・璃音・・・璃音・・・・・!
・・・このクロッチの部分・・・璃音のあそこが当たってたんだよな・・・。
ちょっと湿っぽくて・・・・・ここだけ匂いが他より濃い・・・・・・。)
頼輝の股間はそれだけで張り裂けそうなほど大きく膨らんだ。
(このままこれで俺のを包んで、存分にシコってしまいたい・・・!
けど・・・今は最初のきっかけ作りだけで我慢だ・・・!
使のは帰りにとっておかないと・・・!)
頼輝はぐっ!と高ぶる欲を振り払うように頭を振ると、パンツをポケットにぐっと押し込んだ。
(前に結人とヤコブがエロトークしているときに言ってたからな・・・。
同じ日に間を置かずに射精すると、一発目より二発目のほうが精液が薄くなって、快楽の質も落ちていくって。
もし俺の”空を飛ぶ力”に、精液の濃さ、もしくは快楽の質が影響するとしたなら、一発目より二発目のほうに強い刺激を残しておいた方がいい・・・。
二発目は法璃さんと繋がった状態で射精して、法璃さんを連れて森中村まで飛ばないといけない。
きっと、一人でするときみたいに集中も出来ないし、中途半端な状態で射精して、もし途中で落ちるようなことになったら、法璃さんを危険に晒してしまう・・・!!
それだけは絶対にあってはならない・・・!
だから、一発目は結人のおかずの力のみで飛ぼう・・・!)
頼輝は反対側のポケットからスマホを取り出し、結人が描いてくれた絵のうちの一枚、首輪を着け、鎖を繋がれた状態で、”←頼輝のモノ♡”と書かれた男性器を口にしている璃音の絵を開いた。
その絵は時間不足が原因か、線に多少粗さはあったが、丁寧に色まで着けてあり、頼輝の注文以外の部分でも結人らしい気配りがされていた。
その気配りの内容は、背中には青い羽根をつけて、淫らにはだけたセーラー服の隙間からピンク色の小さな頂のある胸が見えている、というものだった。
(・・・この胸、巨乳好きの結人が描いたからか実際の璃音よりも大きいよな・・・・・。
あいつ、小さいの描くの苦手で、ついデカくなるって言ってたし・・・。)
そう思い出して苦笑いしながら、頼輝はすっかり硬く大きくなった股間のものを取り出し、しごき始めた。
「っ・・・あっ・・・はっ・・・り・・・璃音・・・・・!
お、俺アブノーマルっ・・・なのかな・・・
璃音に首輪とか・・・・・やばすぎだろ・・・・・くっ・・・・・!」
頼輝は結人の絵から更に妄想を広げるために目を閉じた。
誰もいなくなった夕暮れの教室で、璃音に首輪をつけてフェラチオを要求する。
「璃音・・・口でして・・・」
妄想と同じセリフが口をついて出る。
璃音は羞恥のあまり涙目になって首を横に振るが、頼輝は無言でグッ!と強く鎖を引く。
それを再現すべく、右手で自分のものを扱きながら、左手の手首に繋いだ角イノシシと繋がったロープをグッ!と引いた。
すると璃音とは程遠い角イノシシ(♂)の「ブモーーー!」という叫び声が耳に入り、一気に現実に引き戻され、折角昂っていたモノが少し萎えてしまう。
「・・・・・はぁ・・・・・。
お前が璃音だったら最高なんだけどなぁ・・・。」
頼輝はジト目で足元の角イノシシを見て、軽くため息をついた。
(いや・・・いつか璃音と一緒に空を飛べる日が来る!
その為に、今は集中するのみ・・・!!)
そして再び目を閉じて、璃音が涙を浮かべながら懸命に自分のモノをしゃぶってくれているところを想像し、手を動かした。
妄想の中で、その小さな胸を手で弄ぶ。
すると、璃音は口の中を頼輝のモノでいっぱいにしながらも与えられる快楽に身をよじらせて、くぐもった声をあげる。
「あっ・・・いいよ・・・璃音・・・!
そう・・・そこ・・・気持ちいい・・・♥」
そう喘ぎながら先程のパンツをくれた後の璃音のそわそわした様子をふいに思い返してゾクゾク身を震わせた。
「はあっ・・・璃音・・・璃音・・・・・!」
首輪を着けた璃音の口の中を存分に犯しながら、同時に何も穿いていない璃音の制服のスカートをめくって白い尻を撫で、とろとろに濡れた無防備なあそこを己の欲の塊で激しく貫く。
首輪を着けてフェラしている璃音と、バックから自分に犯されれいる璃音の姿が頼輝の頭の中でシンクロする。
頼輝の熱り立ったモノの先端から先走りが垂れ、肉棒を扱く音がぬちゃぬちゃしたものへ変わっていく─。
「あ゛っくっ、はっ・・・璃音っ・・・好き・・・大好きだ・・・・・!
欲しい・・・全部・・・欲しい・・・・・!
あっ・・・うあっ・・・はっ、はっ、はっ、はっ、あっ・・・
も、もう出る・・・受け止めてくれ・・・・・璃音・・・璃音っ・・・・・
っ・・・あっ・・・ああっ・・・・・・・うっ!!!」
放たれた精液が空中で弧を描いた。
頼輝は木の幹に背を預け、はーっ、はーっ・・・と荒い息をつきながら一日ぶりの快楽の余韻に浸っていた。
すると、丁度真下にいた角イノシシ♂の頭に頼輝の精液が落下してきて、ぺとっと付着した。
”フザケンナよこのヤロー!
俺にこんなもんかけやがって!”
と言わんばかりに、ロープで繋がった角イノシシが怒って大きく暴れた。
その勢いで頼輝は引っ張られ、危うく木の上から落ちそうになるが、そこで身体が透き通り始め、角イノシシも道連れにして空へと昇って行ったので、落ちずに済んだのだった。
「よし・・・!
角イノシシ、ちゃんと着いて来てるな!」
頼輝は空中で訳もかからず漂っている角イノシシを見て小さくガッツポーズを取った。
そして目を閉じて、その行き先を北海道の谷川村へと定める。
すると、頼輝と角イノシシの身体が北へ向かってスッ・・・と動き始めた。
そのままどんどん加速していく頼輝と角イノシシ。
頼輝が左手に持ったままのスマホで時間を確認すると、15時半を回っていた。
(前回は北海道までおおよそ1時間半で着いた。
谷川境界での着地地点を鳥居の近くに選べば、法璃さんの家まですぐだ・・・。
だとしたら着くころには17時か・・・。
帰りにも同じだけ時間がかかるとしたら、法璃さんを説得する時間は1時間半・・・いや、射精に至るまでの時間も考えたら1時間強か・・・。
結構シビアかもしれないな・・・・・。)
頼輝は不安を振り払うように強く頭を振ると、顔を上げて真っすぐ先だけを見た。
(・・・いや・・・璃音の為にも何としても法璃さんを説得してみせる・・・!
貴方の帰る場所は既にあそこにあるんだと・・・・・!)
頼輝は銀の髪をなびかせ、夕焼けに染まる空を北海道へ向かって翔けながら、そう強く決意するのだった。
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