銀色狼と空駒鳥のつがい ~境界の守り人~

彩田和花

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中学生編

10羽 初めてのデート −前編− ランジェリーショップ・ミッション

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二人がつがいになってから約2週間後の日曜日の朝─。
狼谷頼輝かみたにらいきは先月の自分の誕生日に璃音りねから貰ったパイロット狼のイラストの入ったTシャツにライトグレーのパンツを合わせ、兄から借りたブルーのデニムジャケットを羽織った姿で狼谷家から出てきた。
靴はいつものグレーにネイビーのラインの入ったスニーカー、銀の少し癖のある髪は兄のアドバイスに従い今日はヘアピンで留めず、ワックスで無造作気味に整えるのみにした。
右耳にはカバン代わりにもなる黒く輝くアイテムボックスの魔石のピアスをつけ、更に左右一箇所ずつの残りのピアス穴にはシルバーのシンプルなピアスをつけてみた。
(これ、兄貴がこないだの俺の誕生日プレゼントにくれたやつだけど、やっぱりカッコイイな。
学校につけて行くと校則違反になるからつけて出掛けるのは今日が初めてだけど、今日は璃音との記念すべき初デート・・・。
少しは格好良く見られたいもんな・・・。
璃音は一体どんな服を着てるんだろう?
まぁ璃音は何着てても可愛いけど・・・・・。)
頼輝はお洒落した璃音を色々と想像してニヤけながら自宅と璃音の家とを遮る道路を渡ると、”桜駒鳥の薬屋”から”碧鶫あおつぐみの薬屋”へと先週看板を書き換えられたばかりの璃音の実家を見上げ、ここ2週間の間の目まぐるしかった日々を思い返した。
(加納正子と話が付いた後、法璃のりあきさんが谷川村の家に残してきた荷物を達央さんがすべて送ってくれた。
法璃さんの家は境界に近くて便利だからと、達央さんが格安で買い取り住むことになったらしく、
「またいつでも遊びに来いよ!
あの可愛いつがいの子を連れて来るってなら尚更大歓迎だぜ!」
と言ってくれた。
そして”桜駒鳥の薬屋”だったこの店は、法璃さんが引き継ぐにあたり、法璃さんの通称”碧鶫あおつぐみ”から名を取って”碧鶫あおつぐみの薬屋”へと名前を変え、店の内容も少し形を変えることとなった。
今まで真瑠まるばあちゃんがやってた特注の薬の調合の他、世間一般で流通している常備薬や消毒液、絆創膏や包帯なんかの医薬品・医療用品の発注・販売は法璃さんがそのまま引き継ぐが、その他に法璃さんの医師としての受け持ちの患者さんにも引っ越しの連絡をして、これからは森中村まで来てもらう事となったんだ。
患者さん達は皆法璃さんが北海道の山奥でひっそりと医者をしていた事情を何となく察している人達ばかりだったので、余計な詮索などされることもなくむしろ、
「北海道の山奥まで足を運ばなくて良くなったから助かった!」
と喜ばれたらしいけどな。
なので看板はとなってはいるが、これからは医院としての側面も併せ持つこととなったんだ。
そして法璃さんの患者さん達のために、俺が怪我したときにいつも璃音に手当てしてもらっていた和室を診察室へと改装することになり、畳を床に張替え、達央さんが送ってくれた診察台、医療器具等や棚等を設置したりするのを俺も空き時間に手伝って、”碧鶫あおつぐみの薬屋”としての営業も無事今週の月曜からスタートしたところだった。
そしてその翌日、
「おじいちゃんのお店の方も無事スタートしたし、デート・・・今週末なら大丈夫だよ!」
と登校途中で璃音がはにかみながら言ってくれたので、俺の境界守りの役目がオフだった今日にようやくデートに行くこととなった訳だ。
まぁ今日はデートと言ってもそのメインの目的は、”璃音からお守りとして預かってた下着を俺が使しまって返せなくなってしまったお詫びに、新しいものを買いに行くこと”なんだけどな・・・。
璃音は富蘭町ふらんちょうにあるランジェリーショップに行ってみたいと嬉しそうに言ってたけど、俺・・・そんな場所に足を踏み入れることが出来るんだろうか・・・・・?
女性の下着専門店とか、男子中学生にはマジでハードルが高すぎるんだけど・・・・・。
いやいや!
俺が璃音のパンツを駄目にしたわけだし、出来る限りのお詫びはしないと・・・・・。
そうだ、兄貴からも弁償するぶんとは別に、俺が選んだ下着をプレゼントしろって軍資金まで貰ってるんだった・・・。
それなのに勇気が無くて買えませんでした、なんて兄貴に言ったら、
「ハァ!?お前マジヘタレだな!
お前がそんなんじゃ、結婚するまで璃音とキスより先の関係に進めなくてひたすら悶々とするぜ!?
そーなっても俺、知らねーから!」
とか言われて呆れられるんだろうな・・・・・。
はぁ・・・・・)
ランジェリーショップでのミッションへの不安に、思わず大きなため息をついてしまう頼輝だったが、
(でも、それさえクリアすれば後は璃音とデートだ!
璃音と一緒に昼飯食って、映画館とかゲームセンターにも行ってみたいな!
すげー楽しみ!!)
と璃音との楽しい時間を想像することですぐに気持ちが切り替わり、ニヤニヤと口元を緩めるのだった。
そして胸元からスマホを取り出して時間を確認する。
(約束の時間の10分前だし、そろそろ良いかな?)
ドキドキしながら店の扉を開いた。

─カランカラン─
来客を告げる鈴の音が響く。
頼輝の愛しの彼女は、既に薬屋が開店している時間のためにカウンターに入って店番をしていたが、
「あっ、頼輝!」
と嬉しそうに顔を上げると、いつも店に出るときにしているエプロンを外してカウンターから出て来て頼輝の元へと駆け寄ってきた。
今日の璃音はサックスブルーのピンタックが入ったリネンワンピースに白のレース編みのカーディガンを羽織っており、艷やかな黒髪は三つ編みをカチューシャのように前髪の上に通して、頼輝が彼女とつがいとなった日に贈った空駒鳥の髪飾りをその左サイドにつけていた。
靴はアイボリーのリボンの飾りの付いたパンプスを履き、手には藤で編まれたバックを持っていた。
「おはよう!
今日はよろしくね!」
えへへっと頬を染めてはにかみながら彼女が言った。
「おはよう!
こちらこそよろしく!
つーか、璃音の格好・・・可愛すぎてマジやばい・・・・・」
頼輝は耳まで赤く染めながら率直な感想を述べた。
「えっ!?そう!?
ありがとう・・・!
今日の服は留奈に何着ていけばいいかなって相談したらコーデしてくれたんだよ!
このバッグはおばあちゃんのお下がりなの!
頼輝こそ、今日はいつもに増して格好いいね・・・!
私が誕生祝にあげたシャツ、着てくれて嬉しいな!
ヘアピンしてない髪もピアスも、大人っぽくてドキドキする・・・。」
璃音も耳まで赤く染めながら頼輝の格好を褒めた。
「ありがと・・・。
兄貴がヘアピン外してピアスつけろって言ってさ・・・。
璃音が褒めてくれたし、言う通りにしてみて良かったよ。
ところで法璃さんは?」
「おじいちゃんなら今診察室の方にいるよ?
電車の時間もあるし、声をかけてから駅に向かおうか!」
「うん!」
頼輝は璃音に続いて診察室にいる法璃に顔を出した。
「おお、頼輝くんおはよう!
今日は診察予定の患者もないし、薬局のほうだけなら僕一人で大丈夫だから心配しないでいいよ。
夕食も僕が作っておくし、ゆっくりデートを楽しんでおいで!」
法璃は薬品の在庫チェックを行っていたらしく、その手を止めて手を振って二人を送り出してくれた。
「ありがとうございます!
それじゃ、行ってきます!」
「ありがとうおじいちゃん!
行ってきます!」

薬屋を出た二人は最寄りの駅に向かって歩き出した。
頼輝は璃音と手を繋ぎたいと思ったが、言い出すタイミングを逃して仕方なくそのまま隣を歩いていた。
しかし、最初の横断歩道の手前で璃音が小石に躓いてよろけたので、咄嗟にその手を掴んだのだった。
「おっと!」
「わっ!危なかった・・・。
ありがとう頼輝!
今日の靴可愛くて気に入ってるんだけど、ヒールが細くて歩きにくいから、ちょっとしたでこぼこですぐに転びそうになるの・・・。」
「そうか・・・女の子は大変だよな。
靴擦れは大丈夫なのか?」
と優しく声をかけて璃音の足を心配そうに見る頼輝。
「うん、今のところは平気!」
「痛くなったら無理せず言えよ?
・・・転ぶと危ないからこのまま手を繋いで行こうか。」
「う、うん!」
(やった!
切っ掛けは何であれ、手繋ぎ成功だ・・・!)
頼輝は心の中でガッツポーズを取った。
二人はギュッと手を握り、互いに赤い顔ではにかみながら横断歩道を渡り始めた。
「・・・今日行くランジェリーショップね、留奈の従姉妹のお姉さんが店員をやってるんだよ。」
「へぇ~、花井さんの従姉妹か。
この村出身の人だっけ?」
「うん!
留奈に雰囲気が似た美人さんだから、見たらすぐにどの人かわかると思うよ!」
「そっか。
知ってる店員さんがいると心強いよな。
つーかそこ、マジで男の俺が行っても大丈夫な店?」
「大丈夫だよ!
前に行った時は彼氏連れの人も結構来てたよ?」
「そっか・・・それを訊いて少しホッとした(笑)」
そんな事を話しているとあっという間に森中駅に到着した。

森中駅は小さな駅で、止まる電車も各駅停車のみで本数も少ないが、この駅があるお蔭で車に乗れない人達でも気軽に他の地域へのアクセスが可能となっていた。
二人がこれから向かう富蘭町ふらんちょうは森中駅の2駅隣で、頼輝の兄春輝やそのつがいの洋榎ひろえも富蘭町の高校へ通うのにこの電車を利用していた。
頼輝と璃音の通う中学校は森中村内にあるため、二人がこの駅を利用するのは富蘭町を始めとした他の区域へ遊びや用事で出掛ける時のみで、二人共定期券やICカードを持っていなかったので、切符を買って改札を通った。
駅のホームはこれから町へ出掛けようとする人達でそこそこの賑わいを見せており、電車を待つ人達の中に二人と顔見知りの男の先輩の姿もあった。
(げっ・・・あれは璃音狙いの1学年上の保城ほしろ先輩を中心としたグループじゃないか・・・!
あの人らも多分富蘭町に行くんだろうけど、見つかると絡まれて色々と面倒だな・・・。
先輩達からは死角になる自販機の影で電車を待つとしよう・・・。)
と頼輝が思っていると、
「あら空駒鳥ちゃん!
今日は銀色狼くんとお出掛け?」
と後ろから来た村の見知ったおばちゃんが大きな声で話しかけてきたため、保城達に頼輝と璃音がここにいることがバレてしまった。
「園村さん!おはようございます!
はい、私達これから富蘭町までお買い物に行くんです!
園村さん、おばあちゃんのお葬式ではお手伝いをありがとうございました!」
「いえいえ、いいのよあれくらい。
桜駒鳥さんが亡くなって2週間経つけど、何か困った事は無い?」
「えぇ、おじいちゃんがいてくれるので大丈夫です!」
と璃音はおばちゃんに対して愛想良く答えた。
(そういやこの人園村さんって名前だったな・・・。)
頼輝にはあまり接点のないおばちゃんだったので、璃音がそう呼んでいるのを訊いてようやくその名前を思い出した頼輝なのだった。
「その桜駒鳥さんの跡を継いだ碧鶫あおつぐみさんだけどねぇ、本当に桜駒鳥さんの息子さんなのよね?
眼帯なんてされててちょっと近寄り難いけれど、上手くやれてるの?
おばさん貴方が心配でねぇ・・・。」
と眉を寄せる園村さん。
「はい!
おじいちゃんあぁ見えて凄く優しいですよ?
薬師としても医師としても色々と頼りになりますし。」
「あらまぁ、そうなの!
それなら今度私の足の痛みのことを相談してみようかしらね?
今日みたいに晴れた日は大丈夫なんだけど、雨の日になるとしくしくと痛むの。」
「はい!お気軽にどうぞ!」
「ええ、そうするわ!
ところで私、これから富蘭のデパートのバーゲンセールに行くところなんだけど、今日は一緒に行けるお友達が捕まらなくて一人で寂しかったのよ!
2人も富蘭に行くって言ってたわよね?
それなら途中まで一緒に行かない?」
園村さんはそう言った後、頼輝と璃音の左手の小指についた赤い糸の痕に気が付いて大きく目を見開いた。
「あら!
良く見たら銀色狼くんと空駒鳥ちゃんのその小指の赤い糸!
2人はつがいになったのね!?」
「「は、はい・・・」」
二人ははにかみながら揃って頷いた。
「まぁまぁ!それはおめでとう!!
それならデートの邪魔をしちゃ悪いわよね!
気が利かないおばさんでごめんなさいね!」
園村さんはそう言って二人の前から去ろうとした。
(普段ならそうしてもらえたほうが二人きりの時間が出来て有り難いけど、ここで園村さんが離れて行くと、代わりに保城先輩達が押し寄せて来て間違いなく今日のデートの邪魔をされるぞ・・・。
それなら・・・!)
「いえいえ!
俺達で良かったらデパートの前まで一緒に行きましょう。
な?璃音。」
と頼輝は璃音に同意を求めた。
璃音は保城達がこちらを見ていることにはまだ気がついていないようだったが、もう少し園村さんと話をするのも楽しそうだと思ったようで、
「うん!
一緒に行きましょ!園村さん!
あっ、電車が来ましたよ!」
と笑顔で言うのだった。

電車の中は所々席が空いていたが、三人揃っては座れなかったので、二人掛けのシートに園村さんと璃音を座らせて、頼輝は近くに立って二人の話を聞いていた。
保城達は同じ車両の少し離れたところに立って馬鹿話をしていたが、隣の駅で乗ってきた人達に奥へと押しやられ、頼輝の視界から消え去った。
そしてその次の富蘭町駅で乗客の約半分が降りたが、保城達は頼輝達より先に降りたらしく、頼輝達が園村さんに付き添いながらゆっくりと降りはじめたときにはもう車両に残ってはいなかった。
(よし、邪魔者は退散したぞ!)
園村さんとはデパート前で手を振り別れ、ようやく璃音と二人きりになった。
頼輝がまた璃音と手を繋ぎたいなと思っていると、今度は璃音のほうから頼輝の手を取り、若者向けの店舗が沢山立ち並ぶアーケードの方を指差し言った。
「お店こっちなの!
行こっ!」
「うん!」
二人は手を繋いだままアーケードへ向かった。

今日のアーケードはいつもの日曜よりも賑わっており、頼輝達のような中学生から社会人と思われる人達や家族連れまで、沢山の人々が訪れていた。
頼輝は何度か兄や友人達と一緒にこのアーケードに来たことがあったが、璃音と二人だけで来るのは初めてだった。
中学生という若さながらも見た目の整った二人はかなり目立っており、通り過ぎる人達が振り返って見ては、
「あの女の子見て!超可愛い!
アイドルか何かかな?」
「ホントだ可愛いー!
隣の男の子は彼氏だよね?
手、繋いでるし。
銀髪ピアスでちょいワルそーだけどイケメン!
彼女が居なかったら声かけたのに!」
等と噂話をしており、耳の良い頼輝には当然全て聞こえていたが、璃音は全く気が付かずに楽しそうに通りを眺めながら歩いていた。
(あぁ・・・璃音はマジで可愛いな・・・。
隣に居てくれるだけですげー幸せだ・・・。)
と頼輝はそんな璃音を見て頬が緩みっぱなしだった。
やがて璃音の案内により、頼輝が一度も来たことのない通りへと入って行った。
その通りは頼輝達男子の間で通称”女子通り”と呼ばれている通りであり、その名の示す通り、女性向けの店舗ばかりが立ち並んでいた。
その女子通りを少し進んだ所に”Angelina”と書かれた看板のあるランジェリーショップがあり、璃音はその店の前で足を止めた。
「ここだよ!」
Angelinaの店の規模はなかなかのもので、頼輝が良く行く好きなブランドを取り扱っている服屋よりも1.5倍程の広さがあった。
その外観は白やピンクを基調とされておりラブリーで、ショーウインドウには女性の下着と天使の羽根を着けたマネキンが数体、レースやリボンや花等、女子の好きそうな装飾もあちこちに施されていた。
それを見て冷や汗を垂らす頼輝。
(これは・・・想像以上に男泣かせな店構えだな・・・。
ここに入るには相当な勇気が要るぞ・・・。
俺の他にこの店に入ろうとする男性客は・・・・・)
と頼輝が周囲を見渡すと、大学生くらいの腕を組んだカップルが笑いながら店内へ入って行った。
(よし、あの男性客が店内にいる今なら俺も何とか入れそうだな。)
「じゃ、じゃあ入ろうか・・・。」
と、まだ緊張から微妙な顔をしながら頼輝が言った。
「う、うん・・・!
でも頼輝、無理してない?
私一人で入って買い物終わった後で合流するのでもいいよ?」
と璃音が頼輝に気を利かせてそう言った。
「いや!
それだとお詫びにならないし!
そ、その・・・流石に店内で下着を一緒に見て回るのは無理かもしれないけど、店には一応入るよ・・・。
それで璃音の選んだ商品の代金は全額俺が持つから、お会計の時に声をかけて欲しい・・・。」
「う、うん・・・。
ありがとう・・・・・。」
二人は顔を真っ赤に染めながらそんなやり取りをすると、手を繋いで店内へと入った。

「いらっしゃいませ~!」
店内に入るとすぐ一人の女性店員に声をかけられた。
「あっ、恵理奈さん!
こんにちは!」
璃音はその店員を見て嬉しそうに微笑むと、頼輝と繋いでいた手をぱっと離して彼女へと駆けて行った。
頼輝は離された手を寂しそうに見た後に、その店員に視線を移した。
彼女が璃音の言っていた花井留奈の従姉妹なのだろう。
顔立ちが留奈と似て穏やかかつ上品な雰囲気で整っており、花井家の遺伝なのか留奈や留奈の母同様に胸が大きく腰はキュッと括れており、スタイル抜群だった。
最も頼輝は璃音以外の女性を性的な目で見たことは無いのだが、もし頼輝が本多結人であれば、鼻息を荒くして留奈と彼女の親子どんぶりならぬ従姉妹どんぶりな身勝手な妄想をし、今宵は気の済むまで精を吐き出していたかもしれない。
「璃音ちゃん!
留奈から今日璃音ちゃんが店に来るってメッセージが来てたから待ってたんだよ!
来てくれて嬉しい!
その彼がつがいのお相手?」
「はい!
狼谷頼輝くんです!」
璃音に紹介されたので頼輝は恵理奈に会釈をした。
「狼谷って境界守りの家系の!?
わぁ!超イケメンくんじゃない!
私は花井留奈の従姉妹で花井恵理奈です!」
と恵理奈が頼輝に挨拶をしたところで、
「花井さーん!
採寸ご希望のお客様がいらっしゃるんですけどー、ご対応いただけますかー?」
と他の店員から声がかかった。
恵里菜はそれに対してこう返した。
「あっ、採寸でしたら私でなくて墨川すみかわさんで対応をお願いできませんか?
この子達は私の知り合いなんですけど、事前に今日いらっしゃっることがわかっていたので、私の方で接客させていただきたいと店長に事前にお話してあるんです。」
「えっ、でもこちらのお客様、採寸だけでなくご相談もご希望とのことでしたのでー、私よりも花井さんのほうが適任かと思いましてー。」
そう言ってスレンダーな墨川という店員が指し示した客はかなり太っており、その客と体型が近いと言うのは恵里菜に対して余りにも失礼ではないかと璃音は思ったらしく、ムッとして眉を吊り上げると墨川という店員を無言で睨んだ。
「そうですか。
そういうことでしたら私が対応致します。
・・・というわけだから璃音ちゃんに頼輝くん。
悪いけど私は別のお客様の接客に入ることになったから、少し待っててくれる?
手が空いたらすぐに戻るから、それまで店内を見ててね!」
恵里菜はそう言って申し訳無さそうに頭を下げると、太ったお客の方へと急いで行ってしまった。
取り残された頼輝と璃音が顔を見合わせていると、先程の墨川という店員がこちらへやって来て、やる気がなさそうに声をかけてきた。
「いらっしゃいませー・・・。
何をお探しでしょうか、お客様・・・。」
彼女は近くで見るとあまり眠れていないのか目の下にはメイクで隠しきれていないくまがあり、何処か虚ろな目をしていた。
そしてその左目には◆の印があった!
(◆の印だと!
鬼女の手駒がこんな所に・・・。
成る程・・・さっきの感じの悪い態度の裏には何か鬼女に付け入られる理由がありそうだな・・・。)
頼輝は緊張して眉を寄せながら慎重に彼女を見た。
「あ、はい。
私の下着を見に・・・ですけど・・・・・」
◆の印のことなど知らない璃音は、墨川という店員の先程の恵里菜に対する態度にムカついてはいただろうが、その素直な性格からか、彼女を警戒しつつもそう答えた。
「へぇ・・・カップルで下着を見に・・・ですか。
お客様って中学生でしょ?
今時の中学生カップルって随分とマセてるんですね?
普通当店にご来店されるカップルのお客様って、関係性がかなり進んでらっしゃる大人の方ばかりなんですけどー・・・。
もしかしてお客様って、中学生でもうセックスを経験されてるんですか?
そうだとしたら余計なお節介かも知れませんけど、その彼氏さん大丈夫ですか?
ちゃんと避妊してくれてます?
見た感じも髪を染めてピアスなんか開けちゃってちょっとワルな感じですしー、正直女の子のことを大切にしてくれそうには見えないっていうかー・・・。
その年頃ってヤりたい盛りでしょうから、無責任に甘い言葉なんかを囁いてきたりして、お客様もつい押し切られて身体を許しちゃったのかもしれませんけど、お付き合いはもっと慎重になさったほうがいいと思いますよ?」
頼輝は自分に対して含まれたことは別にいいが、璃音に投げつけられたあからさまに毒のある言葉に怒りを覚え、キツく言い返してやろうかと思ったが、璃音が頼輝の袖を引き、頭を振ってそれを制してから墨川に対してこう言った。
「私達つがいになってまだ2週間ですし、そんな関係じゃありません。
二人で下着を買いに来たのにはある事情がありまして、彼・・・恥ずかしいのを我慢して私のために一緒にお店に来てくれたんです。
確かに店員さんの言うように、年齢に見合った慎重なお付き合いをすることは大切だと思いますけど、彼のことを悪く言ったり、ワルだと決めつけて物を言ってきたことに対しては許せないし、私、とても怒ってます・・・・・。
さっきも恵里菜さんに対して失礼な物言いをしてましたよね・・・?
恵里菜さんと頼輝に謝ってください・・・」
璃音は普段の穏やかな彼女からは想像し難い黒いオーラを次第に強く纏いながら、墨川に向かってそう要求したのだった。
(うわっ!
ブラック璃音が降臨してしまった・・・!
璃音は昔から本気で怒るとこうなるんだが、このときの璃音を止められるのは今までばあちゃんだけだったんだよな・・・。
そう言えば法璃さんも加納正子を追い返した時にブラックになっていたし、璃音のこういう所は法璃さん譲りなのかもしれないな・・・。
暫く様子を見てみるが、あまり状況がまずくなるようなら璃音を店から連れ出すしか無いな・・・・・。)
と冷や汗をかく頼輝。
すると璃音の要求にキレた墨川が、敬語を使うことも忘れて一気に黒い感情を撒き散らし始めた。
「ふん!
何で私が謝らなきゃならないの?
花井は私の彼氏を誘惑したクソビッチだし、あんたの彼氏が髪を染めてピアスしてるのだって事実じゃないの!
そもそも傷心の私の前でイチャイチャ仲良さそうにしている奴ら全員が憎くて憎くてたまらないのよ!
そんな時に、よりにもよって中学生で恋人ごっこをしてるだなんて奴らが目の前に現れてさ!
頭の中でそんな奴らを許すなって声が煩いから、私はそれに従っただけ!
私は悪くない!」
その直後、璃音の空色の目がチカッと光ったかと思うと、その平手が墨川の頬を叩いていた!

─パンッ!─

頼輝を始めとした近くにいた人達が皆驚いてこちらを見ている。
「悪いのは貴方のほうでしょ!
そんなに悪意を撒き散らしてみんなを傷付けて!
恵里菜さんのことは、貴方の元彼が勝手にそう言ってるだけよ!
だって恵里菜さんは森中村の出身で、つがいを経て祝福を受けた特別な恋人がいるんだもの!
貴方だって富蘭で働いているなら、近隣にある森中村のつがいについてくらい聞いたことがあるでしょ!?
なのに恵里菜さんが他の人を誘惑なんてするわけがない!
頼輝の銀髪だって地毛で小さい頃からずっとこの色だし、ピアス穴は境界守りのお役目で必要だから開けてるだけ!
そのピアス穴にお休みの日に好きなピアスをつけたって別に構わないでしょ!?
不幸せなときなら恋人達を見て不愉快になることだってあるかもしれない。
でもだからといって、関係のない人にまでその負の感情をぶつけることは、貴方自身をより孤独に追い込む最低な行為なんだよ!?」
璃音はそう言い返すが、墨川は先程までの強気な様子と明らかに変わって狼狽え、泣きながら震える声で言い返した。
「そ、そんな事言われても、この孤独から抜け出すにはどうすればいいのよ!
寂しさを埋めるために何度か新しい彼氏を作ったりもしたけど、どいつもこいつもすぐにヤれると思ってるゲス男ばかりですぐに別れたわ!
中学生のあんたにこんなこと言ったってわかんないだろうけど・・・ぐすっ・・・うえっ・・・」
頼輝はその時墨川の瞳から◆の印が消えていることに気が付いた。
(どういうことだ?
さっきまでは確かに左目に◆印があった・・・。
なのに、この墨川という店員の様子が変わったのと同時に◆印が消えた・・・。
璃音の目が光ったことと何か関係があるのか・・・!?)
頼輝は眉間にシワを寄せながら墨川と璃音を交互に見た。
「そんなことないです。
確かに私は貴方と比べて人生経験は少ないですけど、亡くなったおばあちゃんが色んなことを教えてくれたから、貴方の気持ちに寄り添うことなら出来ます。
おばあちゃんなら今の貴方に、
”女が弱っている時に寄ってくる男は大抵ろくなものじゃないから、そんな時は恋愛よりも何か他に打ち込める物を探して自分磨きをするほうがいい、そうすれば自然といい出会いも引き寄せるし、自分にマイナスになる人も寄ってこなくなるんだ。”
ってきっと言うと思います。
墨川さんでしたっけ?
貴方、何か趣味とかないんですか?
今まで元彼やそれに関する人を恨むことに使ってた時間を自分の好きなことに使ってみるの。」
璃音は墨川の態度が軟化したこと、そして話しながら曾祖母のことを頭に思い浮かべたからなのか、先程よりも随分と冷静さを取り戻してそう尋ねた。
「趣味・・・?
そう言えば彼と付き合う前は恋愛小説を書いてネットで公開をしていたわ・・・。
結構ブックマークやコメントをしてくれる人もいて、何度かランキングにも入ったこともあるのよ。
でも彼がそういうオタクっぽい趣味は好きじゃないって言うから、更新を止めてずっと放置してたけれど・・・。
もうそんなこと言う人も側に居ないのだし、久し振りに続きを書いて更新してみようかしら・・・?
新連載をスタートさせるのもいいわね。
浮気した元彼をギッタギタに打ちのめしてやる復讐劇を書きたいわ・・・。」
と墨川は楽しくなってきたのかふふふっと笑った。
「それ、とても良いと思います!
私も是非読んでみたいので、URL、もしくは作品名を教えてもらえますか?」
璃音がそう言ってスマホを取り出すと、墨川は言った。
「私の小説を読んでくれるの?
ありがとう・・・。
でも私の書くお話って少女向けじゃなくて、大人同士のドロドロした嫌な場面も結構出てくるのだけど、貴方みたいな可愛くて純粋そうな中学生の女の子が読んじゃって大丈夫かしら・・・?
・・・いえ、あのを持った貴方ならきっと大丈夫でしょう。
でも今は仕事中でスマホは持っていないから、公開中の作品名と作家名を教えるわ。
”小説家を目指せ!”というサイトで公開しているから・・・」
そう言って墨川は胸ポケットからメモ帳を出すと、それに作品名と作家名を書いて璃音に手渡した。
それらのやり取りが済んだ頃、接客を終えた恵里菜が息を切らしながらこちらに駆けてきた。
「璃音ちゃん大丈夫!?
さっき墨川さんと言い争いをしてたってバイトの子から訊いて・・・!
私その時丁度、お客様の商品の在庫を取りに違う部屋に行ってたから気付けなくて・・・ごめんね!
って墨川さん、その頬どうしたんですか!?」
と璃音に叩かれて赤くなった墨川の頬を指差す恵里菜。
「恵里菜さん!
これはその・・・私がカッとして叩いちゃったから・・・。」
そう言って頭を下げる璃音に墨川が頭を振って言った。
「いえ、私がそれだけのことをお客様に言ったんだから仕方が無いわ。
それに何故か貴方に叩かれてから妙に頭がスッキリして、頭の中で聴こえていた声も聞こえなくなったし、今までのネガティブな気持ちが嘘みたいに晴れていったのよ。
だから寧ろ叩かれて感謝してるくらいだわ。」
(璃音のお蔭で墨川さんの◆印は消え、鬼女の呪縛から解き放たれた・・・。
もしかしたら璃音には隼人さんの炎みたいに、鬼の付けた印を取り除く特別な力があるのかもしれないな・・・。
明日学校で巴くんに訊いてみよう。
神官見習いで千里眼能力者の彼なら何か知っていそうな気がする・・・。)
と頼輝は思った。
「そうだとしても頬は冷やしたほうがいいですよ!
腫れが長引くと大変ですから、墨川さんはすぐに休憩してきてください!
その間私とバイトの子で店を回しますし、昼前には店長も来られますから!」
と恵里菜が汗を飛ばしながらそう言った。
「あっ、そうですよね!
私ったら頬の腫れのこと放ったらかしでごめんなさい!
湿布ならうちが薬屋だからいつも持ち歩いてるので、良かったらこれを使ってください!」
璃音はそう言って急いでバッグから湿布を取り出し、墨川に手渡した。
墨川はそれを受け取ると言った。
「お客様も花井さんもありがとうございます。
それでは休憩をいただきますね。
あ・・・その前に花井さん。」
「はい?」
と小首をかしげる恵里菜。
「私・・・最近イライラして貴方に八つ当たりばかりしていたわ。
ごめんなさい・・・。
元彼が貴方へ心変わりをしたのは彼の問題であって、貴方のせいじゃないのに・・・」
「えっ!?
それは・・・墨川さんの気持ちを考えれば仕方のないことなのかなって半ば諦めてました・・・。
でも同じ職場で働く仲間ですし、そういったわだかまりが消えて仲良くなれたら良いのに・・・ともずっと思っていて・・・。
でも、璃音ちゃんのお蔭で墨川さんの辛い気持ちが少しでも楽になれたのなら私も嬉しいです!
これからは仲良くしてくれますか・・・?」
そう言って恵里菜は墨川に手を差し出した。
墨川はその手を取ると、柔らかく微笑み言った。
「えぇ、こちらこそ、よろしくお願いします・・・!」
墨川は恵里菜と微笑み合い握手を終えると、今度は頼輝と璃音のほうに向き直ってこう言った。
「彼にも偏見で酷いことを言ってしまってごめんなさいね・・・。」
「いえ、別に良いですよ。
あれは酷くネガティブになっていたときの貴方がうっかり吐き出してしまった言葉であり、今の素のままの貴方の言葉じゃ無いですから。」
と少し照れくさそうに返す頼輝。
「うふふっ!
頼輝は不良だとかは言われ慣れてるもんね!
それよりも頬、早く冷やしたほうが良いですよ?
おばあちゃんの湿布は良く効くので15分もあれば綺麗に腫れが引くと思いますけど、早く対処したほうがより早く効きますから。」
と璃音。
「えぇ、そうさせていただきますね。
今度こそ失礼致します。」
墨川は頼輝と璃音、恵里菜にもう一度頭を下げると、休憩室のほうへと去って行った。

「お騒がせしてごめんね、二人共・・・。
本人からある程度訊いたとは思うけど、彼女・・・恋人と上手くいかなくなって別れてから度々あんなトラブルを起こしていたの。
店長にも今度お客様からの苦情が来たら、彼女をクビにすると言われていて・・・。
二人には嫌な思いをさせたと思うけど、折角彼女、前を向き始めたようだから、今回の件は二人の胸の中に収めておいてもらえないかな?」
と恵里菜。
「勿論です・・・!
墨川さん、話せばちゃんとわかってくれましたから、苦情なんて言いません。
ね?頼輝。」
と璃音。 
「うん、俺も璃音と同じ気持ちです。」 
と頼輝は頷いた。
「良かったぁ!
・・・それはそうと、璃音ちゃんはうちに新しい下着を見に来たのよね?
普段遣いのリーズナブルなのがいいの?
それとも頼輝くんがドキドキしちゃいそうな勝負出来そうなのがいい?
それか折角彼が一緒に来てくれてるんだし、思い切って彼に選んで貰うのはどうかな?
璃音ちゃんならあそこのマネキンが着けてるティーン向けのチェックのガーリーなのも似合いそうだし、あっちの青と水色のレースが沢山あしらわれた天使みたいなセットも璃音ちゃんのイメージにぴったりだし、少しセクシーな総レースのセットもいいと思うんだけど・・・頼輝くんはどれがお好みかな?」
と恵里菜が頼輝を見ていたずらっぽく微笑んだ。
頼輝は恵里菜が指し示した下着を璃音が身につけている姿をリアルに想像してしまい、ボボッ!と瞬時に耳まで赤く染めて頭から湯気を立ち昇らせて俯いた。
「あらら・・・。
頼輝くんは思った以上にシャイみたいだね・・・。
誂っちゃってごめんね!」
と恵里菜は頼輝に向けて両手を合わせた。
「い、いえ・・・・・。」
(やばい・・・。
さっきの妄想のせいで股間が半勃起した・・・!
どうする?
これ以上大きくなるようならトイレに緊急避難するしか無いが、そもそもこの店に男子トイレなんてあるのか・・・!?)
頼輝は心の中でそう叫びながら冷や汗を沢山垂らしていた。
すると、
「あの・・・私も頼輝と一緒に下着を見るのはまだ恥ずかしいので、自分で選びます・・・。
その間、頼輝はここで座って待っててくれる?」
と真っ赤に顔を染めた璃音が、カウンター向かいに置かれたソファーを指差しそう言った。
(このソファー周辺には今誰も居ないし、幸い股間も半勃起で収まってるから、ここで座って待っていたほうが股間も隠せていいかもしれないな・・・。)
頼輝はそう思うと、ソファーに腰掛けて股間をさり気なく隠すために足の間に手を置いた。
「う、うん、わかった。
璃音は気の済むまで好きなのを選んで来るといいよ。
あ、恵里菜さん。
会計は俺が全額持ちますので、よろしくお願いします・・・!」
「あら!頼輝くんったら太っ腹なのね!
えぇ、畏まりました!
それじゃあ璃音ちゃん、ご案内しますね!」
璃音は恵里菜と一緒に店の奥の方へ消えて行った。
暫くすると股間の方は何とか鎮まったが、まだ納まらない顔の熱をパタパタと手で仰ぎながら頼輝が顔を上げると、丁度目の前にあった幾つかの展示品が目に飛び込んで来た。
(下着・・・いや、水着って書いてあるな。
よく見ると上下が繋がっているのもあるし・・・。)
その中で璃音に近い体型の小柄なマネキンが着ている上下セパレートの青いフリルのついた水着が非常に璃音に似合いそうだと感じた頼輝は、吸い寄せられるように席を立ち、そのマネキンへと向かった。
(兄貴からの俺の選んだ下着を璃音にプレゼントするっていうミッション、水着じゃ駄目なのかな・・・?
俺、これを着た璃音を見てみたい・・・。
一体幾らするんだろう?)
値札を裏返して見ると1万2千円と書いてある。
(兄貴がくれた五千円からは大分はみ出すけど、小遣いは多めに持ってきてるからいける・・・。
兄貴に万が一「何で下着じゃねーんだよ!」とか言われたら五千円を返せばいいし・・・。
よし!
これを璃音にプレゼントしよう・・・!)
頼輝がそう決意したところで、すっかり頬の腫れが引いた墨川が休憩室から出てきて頼輝に声をかけた。
「あらお客様、水着を見てらしたんですか?
ランジェリーショップで水着を扱うなんて珍しいでしょう?
昨年、花井さんの案で水着も取り扱ってみたんですけど、大変好評を頂きましたので今年も扱うことになったんですよ。
お客様が見てらっしゃるその水着・・・清楚で愛らしく、彼女さんにとても似合いそうですね!」
「墨川さん!
はい・・・璃音にプレゼントしようかと思って見てました・・・。
あ、頬の腫れはもう引いたんですね!
良かった・・・。」
と墨川を振り返り見ながら頼輝が言った。
「えぇ。
彼女さんのくれた湿布がとても良く効いたお蔭様で早く戻って来れたんです。
ところでその水着のサイズ等、私で宜しければご相談に乗りますよ?
プレゼント包装も500円で承っておりますが。」
とにっこり営業スマイルを向けてくる墨川。
「あっ、それじゃあよろしくお願いします。
これ、サプライズでプレゼントしたいので、璃音に見つからないように支払いと包装をお願いしたいのですが・・・。」
「畏まりました。
お任せください!」

頼輝が水着の会計を済ませ、プレゼント包装してもらった水着の入った紙袋をアイテムボックスにしまい込んだその少し後、商品を選び終えた璃音が恵里菜と共にカウンターへと戻ってきた。
璃音がどんな下着を選んだのかはカゴ越しだったのではっきりとは見えなかったが、どうやら頼輝が使したために返せなくなったものと同様のデザインの普段使いのショーツ単品と、ちょっとだけ背伸びした上下セットの下着の計2点のようだった。
上下セットのものは璃音が自分で代金を支払うと言って訊かなかったので、最終的には頼輝が折れてショーツ単品の代金だけを支払うこととなった。
そしてランジェリーショップでの目的を無事果たした銀色狼と空駒鳥のつがいは、恵里菜とすっかり頬の腫れの引いた墨川に見送られ、ランジェリーショップ”Angelina”を後にするのだった。
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