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情緒が足りない。
しおりを挟む「ごめんな秋。好きだけど愛せない」
「わかった諦める」
「や、でも待って。…ワンチャン女装、「ばーか」
お詫びにオゴった昼メシの焼きそばパンを食いながらのキメ顔。キマってないけどお詫びだから最後のメンチカツもあげることにして投げる。
非常階段。やっぱまだ少し寒い。
河野への土下座は拍手で迎えられたけどスマホは戻ってこなかった。
ぎゃあぎゃあ騒ぎだすから、戻んのもっと遅くなんぞと言いくるめて逃げてきた。
光はパンを二個食ったところでやっと俺のしたことを思いだしたらしい。
「悪かったな」
「べつにいーよ減るもんじゃねえし」
「軽い」
「愛せないけど」
ふ、と笑うと光も大笑いして、「アイツすげー顔してたな」と言った。
「知らん。見てないし」
「めっちゃ睨んでたじゃん」
「…へえ」
「俺は売られても勝てっけど秋はへなちょこだかんな~気をつけろよ」
「好きなら守れよ」
「明日もオゴり?」
バカ話をして、午後の授業から放課後。
俺と光は噂になってて、フラれた俺が慰められるという不本意な扱いを甘んじて受ける。
ーーそれまで会うこともケンカを売られることもなく光と駅で別れて家に着くーー
手前。
塀に寄りかかるあほ金髪が見えた。
どうする。
戻るか、進むか。
光はバイトだ。
家にはかーちゃんがいる、はず。
てかなんでいんだよ。待ちぶせとかキモすぎる。
「…チッ」
ぐるぐると、腹の奥が疼いて吐きそうになった。
ーー…だめだ、戻ってどっか、時間つぶそ。
イライラして、今なら俺でも勝てんじゃないかと思ったけど、また大笑いされそうだ。
二時間くらい適当に時間つぶして帰る。
六時過ぎだけど余裕でまだ明るい。
夏が、近づいてるんだ。
特別好きでもなかった夏が大嫌いなものに変わったのは、
「……おかえり」
さすがにもういないと思って、気が緩んでたわけでもないけど遠くで目が合った気がして。
振り返って走った。
「逃げないで、…秋、」
あっさり追いつかれて、今どき誰もやんないような行動で、
俺を壁に押しつける。
「いいって言って。…じゃないとまた、無理矢理にやるよ」
親指を口に突っ込んで、噛んでんのに抜かない。
涎を垂らして喘いでるまぬけに欲情した眼を向ける、
「かわいい…秋…」
イカれた男のせいだ。
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