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10.
しおりを挟む解消の話は難航していた。
彼がどうしても頷いてくれないと。
わたしと話がしたい、と。
疲れて帰ってくる両親の顔を見るたび申し訳なさは募って。
これもわたしを苦しめるための手段だとしたら、それは成功している。
何を話すというのだろう。
わたしから解消を言いだしたのがそれほどゆるせないのだろうか。
今までとおなじように呆けて見ていろと。
黙って置き物のように、大人しくただーー。
「…っ」
ーー無理だ。
あの凍えるような冷たい瞳に見下ろされるのは、もう。
あんなこともう二度と、誰ともしたくない。
彼を愛していなかったのなら、彼の気まぐれに甚振られても平気だったのかもしれない。
だけどわたしは愛していた。愛されていないと思い知った。
嫌われてはいないと。いつかまた元に戻れると。
いつまでも過去に縋るわたしは愚かだと身をもって、突きつけられた。
手放したくないと縋っていたものがほんとうは何だったのか。
もう自分の気持ちさえ信じられなくなってしまった。
会わないで、話もしないで、このまま消えてしまいたかった。
でも彼はゆるしてくれない。
明日が来るのが怖い。
二人きりではないこと。
…アベルがいないこと。
安堵しているわたしに気づきませんように、と。
このまま夜が明けなければいいと。
空虚な心が、いつまでも願っていた。
「ーー…俺はレイラを愛しています。解消など絶対にしません。」
虚しく、思っていた。
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