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壁(ドン)が迫ってくる!②

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あっというまだった。





目の前とうしろに壁。



くちびるが、濡れてしまったような感触。





見開くわたしの目に映る、アクアマリンがゆらりと揺れた。



組んでいた両手を片手で掴んで、残りは後頭部の隙間へ撫でるようにすべらせて。
硬直した身体をこじ開けるように、エルファリ様はわたしの口のなかにまで侵入してきた。



「…っ…っ…!」



頭はまっしろ。


生温く、熱い舌が這い回って背中が粟立つ。
捩っても逃げられない。
無理矢理開かれた口は、わたしの意思では閉じることもできない。

角度を変えて、何度も。

くちゅり、と聞こえる音に涙が滲んで、
舌の上から上顎をなぞられた時にはもう立っていられなかったけど、
いつのまにか腰にまわっていたエルファリ様の腕がわたしを支えていた。


力が抜けてぐったりしたところでやっと離され、
その中で浅い呼吸をくり返す。


「クリス大丈夫?」

「…っは、…さ、いてい、です、っ」

「悪いのはクリスでしょ。…ほら、ゆっくり息して」


落ち着かせるみたいに背中を撫でられるけど、落ち着くわけがない。涙が止まらない。

どうしてわたしが悪いの?
わたしが何をしたの?

…初めてだったのに、こんな、…








「っ…だいっきらい…っ!」


突き飛ばすほどの勢いじゃない。
それでもわたしはよろけてしまった。


エルファリ様は笑顔のままだ。

言いながらわたしが、くちびるを拭っているのを見ても。


送るよ、とまた近づこうとするからもつれそうな足で後退りながら首を振ると、


「…歩けないでしょ?いい子だから言うこときいて」


呆れたようなため息を吐いて言った。


かっと身体が熱くなったけど。
反論したい言葉を飲み込んで背中を向ける。


纏わりつくような視線を感じる。
もう話が通じるとは思えない。

この方は、



「ーークリスタ。」



エルファリ様は、









「逃がさないよ」




とんでもなく、ご乱心していらっしゃる。
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