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すばらしきかな、領地!
しおりを挟むそれから追いかけまわされる日々が始まった。
エルファリ様に好意を持つご令嬢方にいじめられかけたり、わたしごときがエルファリ様を袖にするなんて、と白い目で見られたり。
…お陰で友人と呼べる人は未だにいない…。
わたしは逃げ足だけ速くなり避けまくっていた結果起きたのが、先日のエルファリ様の暴挙。
エルファリ様は危険だ。
やさしくてかわいいエルファリ様はもういないのだ。
わたしは護身術を習おうと決めた。
お義兄様もお父様とおなじ他人はどうでもいいというお方なので、親身になって話を聞いてくれるはずだ。
そんなことを考えながらわたしはまた、眠気がやってくるのを待った。
ーー三日後。
「…お姉様っ!お久しぶりです!」
「クリスタ…疲れたでしょう?大変だったわね」
「…お義兄様は不在ですよね…?」
「お帰りは夜よ。晩餐は一緒にね?」
「はい…っ」
それを聞いたわたしは安心してもう一度だいすきなお姉様に抱きついた。
懐かしいみんなにも挨拶を済ませ、荷物を少し片付けてからテラスでお姉様とお茶をする。
わたしの話を詳しく聞きたいというお姉様に包み隠さず話した。お姉様は眉を下げ悲しそうに「とんだ変態野郎だわね」、と。
表情と儚げな雰囲気からは想像できないお口の悪さで言うが、お姉様はわりと毒舌なのだ。
「…あの、お姉様…お義兄様もやっぱり、…こういう感じでしたか…?」
もしそうなら対策を知りたいと失礼を承知で聞いた。
「旦那様は誠実だったわ。もちろんこってり濃厚な愛情表現は変わらないけれど…。
婚姻するまで口づけ以上のことはされていないのよ、わたくしは」
「そうなのですか…」
「えぇ。それも婚約してからよ」
意外だった。
…ちがう。それがふつうなのだ。
やっぱりエルファリ様はご乱心…と、つぶやいてしまったら「そうねぇ。狂っているわ」お姉様は困ったように笑う。
「小さい頃は仲が良かったし、てっきりそのままかと思っていたけれど、…お慕いしてはいないの?」
「それ、は、…わかりません…でも怖いんです…まるで別人で、知らない人、…みたいで」
「現実はロマンス小説のようにはいかないものよ」
「…っ、お姉様、」
だからなぜ知っているの?まさかお義兄様も知っている?
「ふふっ。…でもクリスタにその気がないのに無体を働くなんて許せるものではないわ。
…とっくにご存知かとは思うけれど、もしいらしても旦那様に追い返してもらうから安心して。
しばらくゆっくりしてそれからまた考えましょう」
「…はい…」
お姉様の優しさにじぃんとして。それからは楽しい時間を過ごした。
お義兄様が戻られて「愛する妻のために憂いをはらうよ。安心して離れで過ごしなさい」麗しい笑顔で言われてもうれしいと思うほどに。
わたしは心強い味方を得た気になって、スローライフを満喫していた。
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