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おわりのはじまり
しおりを挟む崖崩れの後始末を終え、お義兄様とお姉様が戻ってきた。
家屋の被害はなく、軽症のケガ人がわずかにいただけで大事には至らなかったそうだ。
塞がれていた道も元どおり。よかった。
わたしの心のなかは暴風雨のままだけれど。
つやつやとした容貌のお義兄様と、なんだかあやうい憂いを帯びたお姉様。
目を逸らしたさきのエルファリ様もつやつやだった。さまよったすえ、ぱちりとお姉様と目が合う。
「……残念だわ……鬼畜の罠に嵌ってしまってごめんなさいね、クリスタ」
こちらの顔が赤くなってしまうほどの色をまといながら、……あやまられてしまう。
いたたまれない。
「きみが謝ることじゃないよアリー。この道しかないことにやっと気づいたんだから。…しあわせになるさ、…たぶんね」
心底どうでもいい。
わたしにはお義兄様がそう言っているように聞こえた。きっとまちがってない。
「鬼畜なんてヒドイなぁ~それはそこの腹黒野郎でしょ?きみの夫は嬉々として協力してくれたんだよ?きみに嫌われないようにクリスを追い出そうと必死だったんだから」
「黙れゲス」
「お前が黙れクズ」
とても友人同士とは思えない会話が飛び交う。
「…えぇ。だからお二人のことを言ったのよ。…どちらも最低の塵屑野郎だわ」
ふう…、と悩ましげなため息と一緒に吐かれる毒舌。お義兄様の動きが止まった。
時間停止している腕からするりと抜けでて、わたしたちのまえまでくる。
「……クリスタ、こうなったら腹を括るしかないわ。お父様も脱兎の如く準備をしているはずよ。
レガント公爵夫妻にはわたくしからも手紙を出すわ。わたくしはそばにいられないからせめて状況を見守ってくださるようお願いするから」
「、おねえさま…」
なんだろう。今生の別れ、みたいな。
二度と会えないみたいな、雰囲気だ。
なんで、こんな、悲壮感ただよう感じなのだろう。
「まだ子どもよ。あまり無理をさせないで。泣かせたり、拗らせとかすれちがいとかしょうもないことで傷つけたら容赦なく捻り潰して使いモノにならなくしてやる」
「…啼かせる、のはいーよね、?」
軽蔑するような視線もおそろしい言葉もエルファリ様は飄々と躱し、たのしそうに首をかしげる。
「…そうね…時間と場所と体調を考慮してちょうだい」
「お、おねえさま…っ?」
まじめに答えることですか?重要だ、みたいな物言いやめてもらっていいですか?
「……しあわせにしてねとかは、ないわけ?」
お姉様は不機嫌そうに答える。
「…………そんなのあなたはそうするに決まってるでしょう」
お義兄様はまだ停止ちゅうだった。
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