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おわりのはじまり④
しおりを挟む……エルファリ様はいったい何に大金を使っているのだろう。
ギタラベル商会といえば扱う商品は多岐に渡り、人材の技術レベルもスキルもトップクラス。王宮からの注文も多いことで有名で、評判は国外へも届いている。
そんな商会に、なにを。
気の遠くなりそうなわたしをよそに、アンナ様は語る。
わたしのことはエルファリ様にきいていたらしく、知っていたのだそう。
さっきは何をしていたのか聞くと、
今開発途中の傷薬を、平民用に安価に提供できないか似た効用の薬草を探し、集めているのだそうだ。
茂み巡りが最近のルーティンだと笑う。
"…一回だけ、じっさいの効果を試してみませんか?私が破落戸役をするので!"
前のめりの懇願は必死で断った。
ちょっと奇特な、アンナ様。
それから何度か中庭で会うようになり、そうして気づけば"友だち"になっていた。
わたしには初めての友だち。
お互い名前で呼び合う、友だち。
アンナ様は興味のあるものとないものの差が激しいけれど、知識には貪欲だ。
『ーー…学園には通うつもりなかったんです。兄妹もいるし、商会の仕事ができればよかったし。でも両親や家族に説得されて。今は通ってよかったなと思ってます。やっぱり学べることも多いし、……侯爵令嬢様と、友だちになれたので』
『、…クリスタと、呼んでください…』
『……"アンナ"』
照れたように自分を指差し、微笑んだ。
なんだかぐっとして、胸がくるしい。
口調もだんだんほどけて、どんどん仲よくなった。放課後にお誘いを受けるほどに。
恋の相談も、できるほどに。
「ーーでもさ、あの方がよく許可くれたね?」
「お義母様が社交だ、って、…命令…?」
「ふふっ。それは従うしかないね!」
「ふふ、うん。」
「……好きになりそう?」
「、…わかんない…きらいじゃない、けど」
「私も婚約者のこと嫌いじゃないよ。だから結婚する」
「…」
「考えてみたら?…しあわせになれるかなって」
「しあわせ、」
「うん。私は今でもじゅうぶんそうなんだけど、彼とならこの先もっとしあわせになれるだろうなぁって思ったの」
「そうなんだ…」
「心があるじゃない?貴族の仮面つけていてもその下には心がある。彼なら、その心を守ってくれると思って」
……守る。そういった意味では、
「エルファリ様は鉄壁かも…」
つぶやくとアンナ様は笑いながらうんうんと頷く。
「恋は落ちるものだけど、愛は初めからあるもの、でしょ?」
「……ルイ王子、」
「ふふっ…クリスタは恋をしたいってずっと言ってるけど、…もうはじまってるのかもしれないよ?」
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