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未練
しおりを挟む再構築。
それは一方だけが思っていても叶わない。
俺だけが、思っていても。
テーブルに積み重なる何通目かの断りの手紙に、何度も思った事を思う。
「今日もフラれたのか」
「…アシュトン」
「執務はーー…終わってるんだな」
「何かやってないとティアの事ばかり考える。…おかげで捗るよ」
「ふうん。俺としては助かるけど」
「そーかよ」
「…で?また駄目だったのか?」眼鏡の奥の揶揄うような琥珀にうんざりしながら起き上がる。身体が痛い。
「楽しむなよ…挫けそうなんだぞこっちは」
「じゃあ諦めるのか」
「…いや、」
「学園では話すんだろう?」
「……王太子に、挨拶はしてくれるよ」
他人行儀で、礼儀正しい仕草で。
会話はクラスメイトとして当たり障りのないものだけ。
昼食に誘っても断られる。正確にはティアの困り顔に耐えられなくなる俺が引いてしまう。
それでも何度かは一緒にとる事ができた。
…二人きりではなく、皆を交えてだが。
離れた席にいる彼女を見つめながら、物理的なだけじゃない距離を思い知る。
ーーティアが学園に復帰してしたばかりのころは、噂がまだ勢いよく飛び交っていた。
いつだったか、呼び出されたと知って追いかけた事があった。
『ーー…私が至らない未熟者だっただけです。
貴族令嬢としての価値もないに等しく、皆さまの懸念するような事態にはならないでしょう。
私は今後一切王太子殿下と関わるつもりはありません。』
打ちのめされた。
聞こえてきた凛とした声に、改めて現実を突きつけられた。
建物の陰で盗み聞きのかたちで、情けなく立ち尽くす自分が惨めだった。
そうして皮肉にもその絶縁宣言が、噂の火消しに役立った。
俺の助けなんて必要なく、ティアはまた一人で解決した。
ティアはもう一人で、立っていた。
「……笑顔が見たいんだ、俺は」
「笑ってただろ」
「友人たちの前ではな。…俺の前では、笑ってくれない、…心からは」
「…」
「俺は友だちにもなれない。俺はそんなものになりたいわけじゃない。俺が欲しいのはーー」
手に入らないから求めるのか
手に入れてたから求めるのか
たぶんどちらも正解で、どちらも間違っている。
だから足掻くのを止めない。
困らせていると分かっていても、
もう一度きみに、触れたいんだ。
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