巻き戻し?そんなの頼んでません。【完】

雪乃

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父の姿を見かけたとき、足が竦んで動けなかった。


喉が渇いて、痛くて、苦しくて、
わたしは戻ってきて初めて涙を流した。


義妹を見てもこうはならなかったのに、義妹がさせたことなのに、

わたしは父に恐怖を感じ、父の行動に深く傷ついていることを自覚した。






腹が立った。
怒りを感じた。


父を、義妹を、周りの人間を、世界を呪ってやっと終われたと思ったのに。


ーー死んだ殺された人間が、
もう一度人生をやり直せることができた?

ふざけないで。

諸手を挙げて、手放しで、
それを喜べる人間がどれだけいるというの。


復讐する?
しあわせになるために努力する?

愛されるために。
愛するために。


ーーそれをどんな思いで、諦めたのかも知らずに。


わたしは許さない。許したくない。


わたしは誰を憎めばいい。
誰を恨めばいい。



これ以上何をーー。


そうしないでいられる方法があるなら、教えてよ。








 





「ーー…ラ、…ルコラ!」

「っ!」

「どうしたのぼうっとして。…あなたやっぱり最近変よ、何かあったの?」

「なんでもないの、試験勉強で疲れちゃって」

「…ならいいけど…何かあったら話してね、勉強も徹夜なんかしたらだめよ。そのせいで旅行に行けないなんてなったら悲しすぎるもの」

「……それなんだけど、「旅行!?お義姉さま旅行に行くんですか!?いいなぁ~ロレインも行きたい」


明日から始まる学期末の試験が終われば休暇に入る。そのあいだ、自身の家が持ついちばん大きな港がある街への旅行にセナが誘ってくれた。
うれしかったけれど義妹まで行くことになり、前回はちっとも楽しめなかった。


「…ロレイン失礼よ。ごめんなさい、セナ」


そして今回も同様、義妹が強請ってくる。


「いいのよ。申し訳ないけれどロレイン嬢は無理だわ。ルコラは侯爵家当主になるのだから、わたし個人としてだけではなく、家としての招待でもあるの。親交を深めてもらうためにね。あなたは必要ではないわ」


セナが断ってくれるのもおなじ。
セナの手前、しおらしく引いてみせた義妹にそのあとずっと付き纏われ、寝かせてもらえない日々が続きわたしが折れたのだ。
旅先では平民よりもひどい振る舞いをする義妹を嗜めることもできず、セナにもご家族にも散々迷惑をかけてしまった。

だから今回は断るつもりだ。


「えーひどい!わたしだって侯爵家の令嬢なんですよ?挨拶くらいできます!それにわたしがいたほうが皆さんも喜ぶわ!…ねぇ、お義姉さまもそう思うでしょ…?」


そう言って痛いくらいわたしの腕を掴む。
十四の少女の力とは思えない。
手入れされた長い爪が食い込むけれど、無表情を貫く。


「セナ、…大変ありがたいお誘いだけれど、今回は遠慮させていただこうと思っているの」


義妹の力が強くなるがかまいやしない。



セナはきょとんして、だめよ、と言った。


「実はね…」
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