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 あくせく動き回るスタンピードの様子を高みの見物しながら鼻で笑う。

 いけるかもしれない。勝てるかもしれない。そう思うと、俄然やる気が出てきた。

 一応対魔術結界も張ってから、私はもう一度ギルドへ戻る。攻撃意思のないモノだけを通すように設定した結界は、私を拒むことなく内側に通してくれ、完全な術の成功を示していた。

 箒で家々を下目に飛行して、ギルド前で立ち尽くしている冒険者の方々へ状況を説明する。

「対物理結界と対魔術結界を張りました。恐らく破られることはないと思います。これで、スタンピードの侵入と攻撃は防げるはずです」

 一度、忙しい中状況を説明してくれたスキンヘッドのおじさんに聞いてみる。

 上の結界を見上げて、ぼんやりしていたおじさんは、はっと我に返って私の肩を掴んで前後に振ってくる。力が強くて痛い。

「これは、この光はお前の魔法なのか!?」
「はいぃ…そうなんですけど、揺さぶるの止めて貰えませんか……」

 止めて止めてと訴えると、大急ぎで止めてくれた。やっぱりいい人なんだろうか。

 横から、露出度の高い魔術師風のお姉さんが身を乗り出してきた。相手の髪の香りがダイレクトにかかってくる。良い匂い。

「こんな、こんな街一つ包む大結界を一体どうやったの?」
「流す魔力を一定に保つことが出来れば、簡単です」

 私は、眼帯で隠れた右目と晒されたままの左目を交互に指さした。眼帯をつけていない左眼は紫色。瞳において、異人と定義されるのはオッドアイと希色の眼、それと魔眼の三つだが、私はこれのフルセットなのだ。

 左右の瞳は色が違うし、片方は掻き回されたパレットみたいに色が変わるし、左眼には瞳孔を覆うような白い模様がある。

 いかにも気色の悪いお目目ではあるけれど、魔眼があるおかげで魔法の可能性は無限大ともいえる。

 私は一息ついて、深呼吸をする。吃らないで、相手を見て話す心を整えた。

「少し相談があるんです。私にスタンピードの掃討をさせて貰えませんか」

 小娘がそんなことを抜かして見せたので、周囲は一気に呆れたように静まり返った。
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