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第2章・この世界の片隅で
第134夜・『社員昇格試験 ⑤』
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(前回からの続き)
そんな折、A君自身から、彼自身が書いた文章の内容を聞く機会があった。
それは、仕事を終えて仲間で話していたときのことだ。
<社員昇格試験>を落選したA君だが、まだチャンスはあったし、バイトとして引き続き仕事には残っていた。
私も、本採用の期日まではまだ数週間の間があった。
もし、私がA君の立場であったら、屈辱で即辞めていたと思うが、このA君は普通に仕事をしていた。
どうやら、彼の頭の中では、自分の過失の敗北感を、「脳内変換」で会社側の不徳としていたらしい。
つまり、彼が言うには、会社は、社員を増やしたくなくて自分を落した、と言う筋立てを妄想し、職場の仲間のバイト連に語っていた。
「俺は、小論文をこんな風に書いたんだ。・・・<仕事>と言う文字は、人に仕えると書く。ここで言う仕事とは、つまり、自分に給料を払う会社なり、お代をくれるお客様なりに仕えるということを意味し、お金を得るということは、作業の時間をやり過ごせば代金をもらえるバイトとは違うプロの意識を必要とする。プロ意識とはつまり、相手の用意したことをするのではなく、相手が何をして欲しいかをすることだ・・・、・・・」
私はそれを聞き、「ああ、そりゃ、駄目だ・・・」と思いつつ、高校時代に私の小論文を添削してくれた先生の言葉を懐かしく思い出した。
A君は39歳だった。
その39歳になるまで、自分の考え方に駄目出ししてくれる優しさを持った人物に出会わなかったのだろう。
もはや、39歳にもなると、思考回路の矯正などは難しいだろう。
私だったら、悔しさで辞めているだろう境遇の中でも、彼は平然としていた。
39歳になるまで、厳しくしてくれる人に出会うことなく、なんか変な自信だけは固まってしまっているのだろう。
今回の<社員昇格試験>に対しても、
「なんで、分かってくれないんだろう・・・」
などとしか思ってないのだろう。
だから、平然としていられるのだ。
上司も苦笑いしていたのだが、彼は、その文法上は間違いのない文章の、記されている内容と隔たった行動しかしていなかった。
みんなには「KY」と陰で言われ、自分のやりたい作業しかしていなかった。
言動の、あまりにもの不一致であった。
団体面接のとき、彼の受け答えは、非常に役員受けが良かった。
しかし、<リーダー十一ヶ条>の暗唱を、彼は出来なかった。
面接の受けが良かったが故に、暗唱が出来なかったことが、その「口先だけ」を明確に浮き彫りにしていた。
・・・会社は、彼を落さざるを得なかった。
・・・(2009/02/28)
そんな折、A君自身から、彼自身が書いた文章の内容を聞く機会があった。
それは、仕事を終えて仲間で話していたときのことだ。
<社員昇格試験>を落選したA君だが、まだチャンスはあったし、バイトとして引き続き仕事には残っていた。
私も、本採用の期日まではまだ数週間の間があった。
もし、私がA君の立場であったら、屈辱で即辞めていたと思うが、このA君は普通に仕事をしていた。
どうやら、彼の頭の中では、自分の過失の敗北感を、「脳内変換」で会社側の不徳としていたらしい。
つまり、彼が言うには、会社は、社員を増やしたくなくて自分を落した、と言う筋立てを妄想し、職場の仲間のバイト連に語っていた。
「俺は、小論文をこんな風に書いたんだ。・・・<仕事>と言う文字は、人に仕えると書く。ここで言う仕事とは、つまり、自分に給料を払う会社なり、お代をくれるお客様なりに仕えるということを意味し、お金を得るということは、作業の時間をやり過ごせば代金をもらえるバイトとは違うプロの意識を必要とする。プロ意識とはつまり、相手の用意したことをするのではなく、相手が何をして欲しいかをすることだ・・・、・・・」
私はそれを聞き、「ああ、そりゃ、駄目だ・・・」と思いつつ、高校時代に私の小論文を添削してくれた先生の言葉を懐かしく思い出した。
A君は39歳だった。
その39歳になるまで、自分の考え方に駄目出ししてくれる優しさを持った人物に出会わなかったのだろう。
もはや、39歳にもなると、思考回路の矯正などは難しいだろう。
私だったら、悔しさで辞めているだろう境遇の中でも、彼は平然としていた。
39歳になるまで、厳しくしてくれる人に出会うことなく、なんか変な自信だけは固まってしまっているのだろう。
今回の<社員昇格試験>に対しても、
「なんで、分かってくれないんだろう・・・」
などとしか思ってないのだろう。
だから、平然としていられるのだ。
上司も苦笑いしていたのだが、彼は、その文法上は間違いのない文章の、記されている内容と隔たった行動しかしていなかった。
みんなには「KY」と陰で言われ、自分のやりたい作業しかしていなかった。
言動の、あまりにもの不一致であった。
団体面接のとき、彼の受け答えは、非常に役員受けが良かった。
しかし、<リーダー十一ヶ条>の暗唱を、彼は出来なかった。
面接の受けが良かったが故に、暗唱が出来なかったことが、その「口先だけ」を明確に浮き彫りにしていた。
・・・会社は、彼を落さざるを得なかった。
・・・(2009/02/28)
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