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第2章・この世界の片隅で

   第146夜・『社長の視察と、恥知らずな俺:完結篇』

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   (前回からの続き)

 私は、三つのミスを犯した。

 犯しまくっちゃった。

 見境なしだ。

   ①・最初の挨拶後の指差呼称の失念

   ②・フォーク作業、隣りのパレット、5センチ弾き

   ③・軍手し忘れ、素手作業

 私は、何度も何度も、頭の中で、それらのミスをリピートした。

 先ず、①だが、これはおそらく、視察集団の誰も気にかけていまい。

 ②だが、これはヤバかった。

 ひたすらに「安全第一」を掲げる会社である。

 5センチとは言え、それで、充分に人身事故もあり得るのである。

 だが…、とも思った。

 私は心配性なのだと。

 これも、多分、誰も気付いていないのではないだろうか。

 こういうのって、自分の中では接触や擦過音が過剰に感じられるけど、他人は意外に気づかないものである。

 うん、大丈夫、大丈夫!^^

 そして、③である、支店の上司がコッソリと教えてくれたということは、社長からその指摘はなかったのだろう。

 これも大丈夫^^

 その後も、私は、①が見咎められた時の②と③とか、

 ③が社長に見咎められた時の①と②とか、

 色々、頭の中で反芻した。

 一番ヤバいけど、②が社長に見咎められた場合は、少なくとも、①と③の問題などは吹っ飛ぶだろうと思った。

 が、私の頭の中では、②はバレてないと思いたかったので、①と③もバレないだろう・・・、と、ムチャクチャ能天気な結論を下していた。

 だが、まだまだ色々と心配なので、同僚に、それら経緯を話しまくった。

「いやぁ、社長、見に来ないと思っていたら、来たじゃないですか~^^ まいっちゃいましたよ~、ずーっと僕の作業を見ているんですもの~^^;」

 なんか、こんな風に、周囲の者に話すと、なんとなく、起こったことがなかったことになるような気がしたのだ。

 4,5人に話すと、私は、なんとなく、問題ないことのように思えた。

 午前中に、あまり気の良い対応を出来なかった「少年ジャンプ大好き少女」とも、作業の合間に、非常に盛り上がって話した。

 この娘、外見も普通以上にオシャレにしているし、仕事振りも堅実だが、「少年ジャンプ」の話をし出すと、とたんに凄くなる。

 おいおい、そんなディープな話を、それ程に親しくない俺に話しちゃっていいのかよ・・・、と私は心配になる。

 私の彼女も、たいがい『ワンピース』好きだが、この、「少年ジャンプ大好き娘」は、その比じゃない。

 私だから対応できるが、彼女の外見に惹かれた男は、「あれ?」とドン引きする可能性も高かろう。

 ここに具体的な話をかけないですまん^^;

 でも、近日、その子を主役に、「ドリーム小説」を書いてやろうと思っている。

 ・・・とまあ、私は、この日も、楽しく仕事を終えた。

 残業が連日続き、私は定時であがれることとなった。

 終礼だ。

 私は、定時あがりが嬉しくてホクホクしながら終礼の場へ。

 そこには、ヒッチコック(にそっくりの)リーダーがいた。

 ヒッチコック・リーダーは、私と目が合うとニヤリとした。

「聞いたよ聞いたよ、団地クン!! 社長の前でやらかしたってね~!!!^^」

     エーッ!!!

 ・・・マ、マジカルエミィ・・・^^;;;;

           ・・・(2011/08/05)
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