涙袋 ~現代居酒屋千夜一夜物語~

与四季団地

文字の大きさ
146 / 299
第2章・この世界の片隅で

   第147夜・『彼女にレベル上げさせることについて』

しおりを挟む
 すまん、午後10時まで残業でして、明日も早いので手短に・・・。

 今日は早く終わったら、『世界侵略:ロサンゼルス決戦』を見たかったのにな。

 ゲームをやる暇は当然にない。

   ◇

 この間、甥っ子の「ドラクエ1」をやる姿を見た弟が、昔を懐かしみ、私に言った。

「ああ・・・、そう言えば、三笠が、彼女にレベルアップだけさせていたっけ・・・^^;」と言った。

 三笠は弟の中学生時代の友人だ。

 「ドラクエ1」は、弟が中学生時代に発売されたのだ。

 なんちゅうか、私には、中学生時代に異性と交際するという経験がないので、なんとも、そういう話を聞くと、

 なんか、心に、ノスタルジックな痛みがもやもやしてくるのだ。

 人はそれを「コンプレックス」と呼ぶ。

 私が、女学生のセーラー服やブレザー、ブルマなどに異常な執着を持っているのは、この頃の「空虚」に由来する・・・。

 なんか、中坊の癖して、彼女を部屋に呼び、長い長い時間がかかるロールプレイングゲームをしながら、疲れたから寝て、その間、自分の彼女に「レベル上げしとけよ」とか言うのである。

 クキーッ! なんか悔しい。

 だが、ここは大人になって、「そりゃ、ひどい彼氏だな^^;」と答えた。

 ・・・しかし、思い出すに、確か、その、三笠クンの彼女は、私の同級生だった矢部の妹じゃなかったっけ。

 そのことについても、半年くらい前に知って、私は、無性に悔しくなって弟に詳しく聞いたものだった。

 矢部君の家は洋館で、居間に暖炉があり、そこは、段々になった床で家族がくつろげるようになっていた。

 私は、市長の息子と仲良く、当時から金持ちの市長の屋敷にも出入りしていたが、矢部君の家の暖炉と段々床のインパクトはそれはもう大きかった。

 それはさておき、矢部君には姉と妹がいた。

 矢部君自身が、色白のハーフっぽい顔立ちだったが、その姉と妹も綺麗だった。

 私は過保護に育てられてきた。

 だが、具体的にどんなことを言われたかはわからないが、その矢部姉は、初対面で、私にズケズケと何か言った記憶がある。

 美しい顔をして、なんか私を遠ざけるのではなく、私を取り込むかのような酷いことを言ったのである。

 ・・・いや、私は魅かれたね。

 で、その妹は、姉を幼くした顔立ちだが、美人ではあった。

 記憶の中では人懐っこい笑顔をしている。

 そのクールビューティーな姉妹の下のほうが、数年後には、彼氏によって、ゲームのレベル上げという使役に従事させられるのである。

 私が「彼氏」であったならば許せる。

 しかし、それが他人の話だと、私は何十年昔の話だろうと嫉妬の炎がメラメラと燃え上がる。

「つきあっていたって、どんなつきあいだよ」

 私は言った。

 弟は、私の表情に浮かんだただならぬ気配を感じ取ったようだ。

「いやぁ^^ 中学生だから、たかが知れたつきあいだよ^^」

「キスはしていたのか!」

「いや、俺らの世代はうぶだったから、一緒にいるだけで、つきあっているってことだったんだよ^^;」

 弟は、私の気性を慮って、状況のフォローをした・・・。

「ならば良し!」

 私は矛を収めた。

         ・・・(2011/09/17)
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

真面目な女性教師が眼鏡を掛けて誘惑してきた

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
仲良くしていた女性達が俺にだけ見せてくれた最も可愛い瞬間のほっこり実話です

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

処理中です...