拾われ子のスイ

蒼居 夜燈

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第五章 再会

拾われ子を残して

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 西大陸の関門を出て四日目。今日もスイとエトマはコハクに乗り、早朝からオアシスを目指していた。
 雨が殆ど降らない砂漠には青空が広がっており、たなびく煙のように雲が伸びている。

『(……龍みたい)』

 今はもういないセイを思って、寂しさを感じながらスイは砂漠を見回した。

『(今日もモンスター一匹見えないや)』

 砂漠を突っ切る形で走っていれば、デザートワームやロッククラブなど西大陸お馴染みのモンスターから、何処にでもいるバンディットウルフまで見掛けそうなものだが影も形も見えない。
 モンスターの相手の強さを感知する本能は相当強く、同時に正確であると思い知らされる。

 エトマを連れている今、この状況は有難いのでスイは少々の申し訳無さを覚えながらも砂漠を横断していく。
 そうして戦闘を避けながら進んでいると、関門からオアシスまでに点在する中で最もオアシスに近い簡易宿所ゲストハウスに着いた。

《スイ、どうする? 寄るか?》

『うん。此処が最後の簡易宿所だし、行程には余裕があるから少し休んでいこう。エトマ、休憩しよう』

「うん」

 コハクから降りて、二人と一匹は砂埃を払い落としてから簡易宿所に入る。石材で作られた椅子に座り、朝作っておいた冷茶を出してふたつのカップに注いだ。
 コハクの分は冷水だ。走るのが好きでも、長時間炎天下を走っていれば当然喉は乾く。深皿に注いだ水はすぐに無くなった。

『コハク。毎日私達を乗せて走って、疲れてない?』

《大丈夫だ。二人とも軽いし、広い砂漠を走るのは楽しい》

『なら良かった。エトマは体調大丈夫?』

「うん。コハク速くて楽しい!」

 砂漠に出て二日目に酷い筋肉痛に悩まされたエトマだが、回復薬と慣れで今は問題無くコハクに乗っている。
 疲労だけはどうしても溜まってしまうが、スイが様子を見てはまめに休憩を取っているので、オアシスまで順調に進んでおり今日中には着く予定だ。

『そっか。此処を出たらあとはオアシスまでもうすぐだよ』

「もうすぐ!? 行こう、速く!」

 冷茶を飲み終えたエトマは急いでゴーグルを着ける。その様子にスイは『ちょっとだけ待ってて』と笑うと、カップと深皿を手早く洗って拭き、アイテムポーチに入れた。

『じゃあコハク、オアシスまでもうひとっ走りお願い』

《うん。ちょっと飛ばすから二人ともしっかり掴まっててくれ》

「うん!」

 前足で触れてから、自分の声でコハクはエトマに伝える。
 元気に返事をしたエトマは、しがみつくようにコハクの背中にぺったりと張り付いた。

《…………》

『……エトマ、それ多分酔うよ?』

「大丈夫!」

 落ちなさそうではあるが、多分大丈夫じゃない。
 スイもコハクも、小さな不安を抱きながらそれぞれ準備をする。

《じゃ、じゃあ行くぞ》

 戸惑ったままコハクが走り出して数十秒。

「…………」

 そっと上体を起こしたエトマの背中を、スイは静かに摩り、振り返ったコハクは青い顔をしているエトマを心配そうに見つめた。

《……止まるか……?》

「……だいじょぶ……」

 案の定酔ったエトマに一人と一匹、ハラハラしながらオアシスに向かっていたが、エトマは体調を持ち直すと流れる景色を前のめりになって楽しんでいた。
 その様子に安堵したスイも、エトマの後ろで景色を眺めながら吹き付けてくる風に気持ち良さそうにしている。
 やがてオアシスの町が小さく見え始めた頃、エトマに声を掛けようとしたスイは素早くショートソードに左手を添えた。

《スイ!》

『うん、何か来てる』

 後ろから異様な気配がとてつもない速さで近付いてくるのを、スイと同時にコハクも感じ取った。スイが振り返って確認するが何も見当たらない。視線を下げたスイの眼は、砂に向けられた。

『コハク、多分砂の中にいる』

《砂? ワームか?》

『それは解らない。でも、私達を追い掛けて来ている。コハク、進行方向を変えて蛇行で走って』

 まだ距離はあるが、真後ろに付かれている。このまま行けばオアシスまで連れていってしまう。
 エトマを怖がらせない為にもスイは声を抑え、指示に従って向きを変えて走るコハクの上で、アイテムポーチに手を入れた。

『エトマ、これを持っていって』

 ふたりの会話に固まっていたエトマは恐る恐る振り返り、スイが差し出してきた物を見て驚愕の表情を浮かべる。

「これ、ハンターの証……。何で……!?」

『エトマは先にコハクと一緒にオアシスに行って。コハク、私が戻るまでエトマの護衛と衛兵さん達への説明をお願い』

《……っ、すぐにハンターを向かわせるから、絶対無茶はするなよ》

『うん。三秒数えたら私は降りる。エトマは振り落とされないように、しっかりコハクに掴まってて』

「スイは……!?」

『大丈夫、私も後から行くから。……三、二、一!』

 コハクの背から跳んだスイが砂面に水魔法を放った。モンスターの気配が止まったのを確認し、コハクは再び向きを変えると速度を上げてオアシスへと走る。

《(……「後から行くから」は、嫌いだ)》

 またスイだけを置いていく。スイ以外の人間を乗せて。
 北大陸で飲まされた苦汁の味を、コハクは忘れていない。
 
《(あの時と同じだ……。けれど、オアシスに行けばすぐに助けを頼める。今のスイにとって、誰よりも強力な助っ人がいる筈だ……!)》

 煙の匂いを嗅ぎ取ったコハクが振り向くと、空に赤い煙が見えた。「意図せず強敵と戦闘」している事を知らせる発煙筒だ。

《!》

 オアシスの出入口にある詰所から、数人の衛兵が出てきた。全員煙を見上げているが、その内の一人がコハク達に気付き大声をあげる。
 大型モンスターが町を襲いに来たと認識して武装した衛兵達を、コハクは念話で制止した。

《やめろ! オレは野生のモンスターじゃない、従魔だ! 人間の子どもを乗せているから手を出すな!》

「「「!?」」」

 スイとエトマ相手に練習した甲斐もあって、念話は衛兵全員に通じた。
 困惑と驚愕の表情を浮かべながらも、背中に確かにエトマ子どもが乗っているのを見て衛兵達は武器を下げる。

《エトマ、あいつらにハンターの証を見せられるか? 無理なら、オレの口に引っ掛けてくれ》

「…………!」

 出てきた衛兵は全員男だ。怯えた表情のエトマは、震える手で握っていたハンターの証をコハクに預ける。

「さっきの声はお前か? バンダナを着けているし、確かに従魔のようだが……主はその子か?」

「待て、何か咥えてるぞ」

《この子どもは違う。オレはスイの従魔だ。スイのハンターの証は此処にある》

 ん、と顎をしゃくったコハクの口から、衛兵の一人がハンターの証を受け取る。
 そのプレートに、スイの名前が彫られている事を確認して目を見開いた。

「確かにスイとある。水晶も……っ!? もしや、この町でハンターになったあのスイか!?」

 この衛兵は三年前もオアシスにいたらしい。肯定したコハクは状況を説明する。

《オアシスの近くで、砂漠に生きる奴等とは思えない異様な気配のモンスターに追い掛けられた。エトマ……この子どもとオアシスの安全を優先して、スイは一人で引き付けて戦ってる。頼む、すぐに強いハンターを向かわせてくれ》

「わ、解った! 至急ハンターズギルドに連絡する!」

 衛兵の一人が急いでハンターズギルドに向かう。背中の毛を強く握られている感覚に、コハクは首だけ振り向いて最初に一鳴きした。ハッとしたエトマと眼が合う。

《大丈夫だ。オレが一緒にいる》

「う、うん……ありがとう、コハク……」

 今にも泣きそうなエトマの手は、ぐっしょりと汗で濡れている。
 残った衛兵がエトマに話しかけようとしたが、その前にコハクが止めた。

《待ってくれ。コイツは人間のオスが苦手なんだ。聞きたいことがあるならオレが答える》

「! わ、解った。その子について訊いても良いか? 親御さんはどうした?」

《極秘の依頼だから、オレが言っていいかわからない。依頼書はスイが持ってるから、後でスイに訊いてくれ》

「そうか、ならば仕方無いな。……来たぞ、ハンター、だ……!?」

《!!》

 ふたつの走ってくる足音に衛兵とコハクが顔を向ける。
 衛兵は、一人がハンターズギルド支部長である事に。コハクは、今最も望んでいる人物が来てくれた事に、それぞれ目を見開いた。

「セ、セオドア殿!」

《シュウ!! オレだ、コハクだ!》

「! ……随分様変わりしたな、コハク。今のは念話か?」

《そうだ! 流石シュウ、話が早い!》

「コ、コハク……!? うわわわ……!」

 シュウトの周りをくるくると回るコハクは、エトマの戸惑う声に冷静さを取り戻し、集中してセオドアとシュウトの二人に念話で話し始める。
 先程衛兵に伝えた事を簡潔に話し終わると、コハクはシュウトを見上げた。

《シュウ、早くスイの所に行ってくれ。いつものスイなら勝てる相手だと思うけど、砂漠の奴等とは掛け離れた強さだった。それに……スイは今、万全じゃない》

「何? どういう事だ」

《行けば……見れば・・・解る。シュウ、オレじゃ駄目だったんだ。スイはオレには話してくれなかった。でもシュウには多分話せるんだ。お願いだ、スイを助けてくれ》

「! 支部長、俺はすぐに向かう」

 オアシスからも激しく戦闘している様子が見える。
 頷いたセオドアに、オアシスを飛び出したシュウトの姿はあっという間に小さくなっていった。

《(……やっぱり、シュウは凄い)》

 コハクは、北大陸で感じた焦燥感が微塵もない事にシュウトの存在の大きさを再認識する。

《(やっと、独りで何かと戦い続けているスイを助けられる)》

 三年前も独りで悩みを抱えていたスイをシュウトは何度も救ってくれた。今回も絶対にスイを助けてくれる。
 心の底から安堵したコハクは、揃って戻ってくるであろうスイとシュウトを一番に出迎える為に、砂漠をじっと見つめていた。
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